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第二章 過去から現代へ向かって ~過去二年半前
17 秘されし 計画前夜
しおりを挟むさて少し時間は戻り、今は脱出前夜で勿論エヴァは夢の中。
彼女は明日の自由を夢見てこの上なく可愛らしい寝顔をしている。
そんなエヴァを如何な理由とは言え結果騙す事になったアナベルは、彼女に対し良心の呵責に蝕まれ……?
少なくともアナベルの心の半分……いやそれより若干少なめに呵責に苛まれてはいる。
だが余りにも愛らしいエヴァの寝顔を見ているだけで、そうこの至高なる寝顔を護る為!!
元々少なかったであろうアナベルの良心と言う名の罪の意識何てものは遥か宇宙の彼方へと飛んで行ったのは言うまでもない。
脳筋令嬢恐るべし……。
その脳筋令嬢アナベルが愛らしい存在を残しこれから先向かうのは、決してエヴァに立ち入ることを許可しなかった奥の部屋。
そこに隠されているもう一つの隠し通路を通り目的地であるルガート国王ラファエルの執務室へと向かった。
アナベルが到着すると執務室には既にラファエルを始めとしてマックスにエヴァの護衛隊長となる第一騎士団団長のケネス・ブライアント達が揃っていた。
何れの男性も所謂タイプは違えどイケメン揃い。
一般的に女性ならばこれだけのイケメンに出迎えられれば素直に嬉しい筈。
だが実際アナベルはそんな彼らを見て深く嘆息……いやげんなりしていた。
天国からの地獄とはまさにこの事ですね。
心の中でつい悪態を吐くアナベル。
男ばかりのむさ苦しい環境に辟易しながらもそこは脳筋と言われようが彼女は伯爵令嬢。
「遅くなり申し訳御座いません」
そんな事等億尾にも出さず、貴族令嬢としての仮面を着けラファエルへ挨拶をした。
「では早速始めよう」
「「「御意」」」
ラファエルは集まった者達へ手短にこんかいの計画について説明した。
何故なら何時何かの切っ掛けでエヴァが目覚めるとも限らない。
これは決してエヴァに知られてはいけない。
七年半もの間ここにいる面々を中心として彼女をずっと護ってきた。
そしてこれはそれ以降も、真の意味でエヴァの危機が去るまで続けられる。
だからこそこの集まりは彼女が夢の世界の住人でいるほんの少しの時間だけなのである。
こんかいの計画の内容は明け方エヴァが薬入りのお茶を飲んで眠りに就くと共に開始される。
アナベルとマックスそしてケネスの三人が中心となってエヴァを護衛し目的地へと向かう。
エヴァが王都を留守にしている間にある筋より届けられたであろうリストアップされているドブネズミ達を誘き出し、そこで全員一網打尽にする。
捕えられるのは貴族は勿論その家族だけでなく一族郎党含まれる。
その後は爵位剥奪、領地没収家名断絶の上に全員処刑される。
当然リストアップされた者達の裏は当然の事ながら調べは当についている。
シャロンのネズミは一匹でも温情を与えると直ぐその100倍くらいへと膨れ上がれば、幾度となく報復を仕掛けてくる。
既に地図上にはシャロンという国は存在しない。
だが裏の世界ではまだシャロンは根強く残っているのだ。
その証拠に元王太子であるアーロンは今も何処かで生き延び、エヴァが幼い頃よりずっと執拗に狙い続けている。
またエヴァだけではない。
罪のない国民がじわじわとシャロンの毒牙に掛っているという報告も多数上がっている。
ルガートとしてもこれまで何も対処しなかった訳ではない。
所論の仕掛ける罠が多岐に渡り過ぎる故に対応しきれないと言うのが現状だった。
だが今回このリストのお蔭で主だった者達を一掃する事が出来る。
本音を言えば一日も早く根絶やしにはしたい。
だがシャロンの最後の王族であるアーロンを捜索するも一切表の世界へ姿を見せず、また裏の世界でもアーロンと接触が出来るものは極僅か。
腹立たしい事この上ないが今はその力を出来る限り削ぐ事へとシフトチェンジしたのである。
先ずは王妃エヴァンジェリンの安全の確保。
その為にも王宮と王都周辺日に潜むドブネズミの退治をしなけれならない。
時間にして最長で三日間。
エヴァが戻るまでに一掃が終える事。
また離宮内に何か仕掛けられていないかもチェックする必要がある。
限られた時間の中で明日からの業務の確認を済ませるとアナベルは即離宮へと戻っていく。
ケネスもまた明日からの準備があると言い執務室よりを辞した。
残ったのはマックスとその部屋の主のみ。
「王妃様を厳重に警護するのはわかりますけれど貴方は大丈夫なのですか?姫君……いえ王妃様の身を案じられるのはわかりますが、我々は貴方を失う訳にはいかないのですからね」
「あぁ十分に気を付ける。それよりもあの娘はギーの大事な宝物だ。だからこそ出来るだけ胸糞悪くなる様な真実を隠せるものなら隠したいだけだ。それに今までエヴァンジェリン姫は十分に苦しんだのだからな。叶うならば一刻も早くアーロンを探し出すと共にシャロンの裏の組織を壊滅し姫を家族に会わせてやりたい」
「陛下は王妃様にはお優しいですね」
「まぁ友人の娘だからな。そうでなければ私が女性に近づく訳はないし、実際姫とは一度しか顔を合わせてもいない」
そう言ってラファエルは机にある書類へと視線を落とした。
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