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第二章 過去から現代へ向かって ~過去二年半前
6 計画 Sideエヴァ
しおりを挟む「お帰りなさいませエヴァ様」
「うん、ただいまアナベル」
アナベルは何時もと変わらず私を台所の隠し扉の前で出迎えてくれた。
う~ん仮にもこの国の王妃がコソコソと、隠し通路から『ただいま』と言うのは如何なものかしらね。
それだけ私達がこの国で歓迎されていない証なのでしょう。
マックスの所で働いてからの私はかなり思い上がっていたのかもしれない。
この国にとって私は人質という存在でしかなかった筈なのに、何時の間にかフィオが自由に街を歩き幸せを謳歌しているだなんて、こんなに滑稽な事何てありはしない。
今日の診療所での件で私はフィオはあくまでも偽りの姿。
現実には離宮に囚われたエヴァンジェリンだと痛感させられてしまった。
はぁ余りにもこの一年もの間幸せ過ぎて、現実を忘れてしまった愚かで馬鹿なエヴァンジェリン。
そう七年半前私とアナベルはいえ、本当は私一人でルガートへ来ておればアナベルを巻き込む事もなかった。
彼女の人生を台無しにしてしまった罪は重い。
その贖罪の為にも後二年半後私は無事にアナベルをこの国より脱出させなければいけない。
また私自身この国とライアーンからも永遠に消息を絶たねばいけない。
先程のやり取りでわかった事はこの国はライアーンをいえ、この国と争っただろう少なくとも何らかの遺恨のある国を許してはいない。
先日アルノーさん達の話からでもわかるようにこの国は二年前に漸く戦争が終結したばかり。
一応表向きだけど戦争は終わった。
でも幾ら戦いが終わったからとは言えそれまでの遺恨をいいえ、特にシャロンとの……それに加担したライアーンを含めこの国の人間はまだ消化出来ない遺恨を今も抱えている。
本来であれば私は何時彼らに殺されても可笑しくはない。
そして今日捕まった間者の様に私は拷問を受けようとも何ら不思議ではない。
あの日私達は何もないこの離宮に打ち捨てられたのはきっと彼らの気まぐれだったのだろう。
ひょっとして今まで無事に生きていられたのが幸運だった?
どうしよう。
一体どうすればいい?
一応キリの良い十年まではこの国でひっそり暮らそうとアナベルと話をしていたけれどもよ。
もしかするとそれでは遅いのかもしれない。
何時彼らの、いいえ陛下の御心がお変わりになられでもすれば、私は最初からその心算でこの国へ嫁した身。
でもアナベルが彼らの刃にかかるのは主人として絶対に避けなければいけない。
本当は十年いる心算だったけれどもやはり今の内に第三国へ脱出した方が安全なのかもしれない。
嗚呼でも後一週間でお給料日⁉
そうよ。
お給料を受け取って直ぐにでもアナベルと一緒にこの国より脱出をしよう。
そう決意に至った私は入浴を済ませ、夕食後にアナベルへ今日の出来事を話したわ。
すると驚く事に彼女も私と同意見だった。
「そうですわね。エヴァ様は十分この国で頑張っていらっしゃいましたもの」
「そんな事はないわ。あなたがずっと傍にいてくれたからこそ私はやってこられたのよアナベル」
「いいえ、エヴァ様に御不自由をおさせ申し上げたのは私の不徳の致す所ですわ。エヴァ様には後もう少しだけ頑張って頂き、それに私の方もその頃に丁度お給金を頂きます。これより先の事を思えば一刻も早くこの国を脱出する事をお勧めしたいのですけれども、何と申しましても先立つモノは少しでも多い方が宜しいですものね。ですので残り一週間お互いに頑張りましょう」
「ええ、それと少々硬いけれども日持ちのするパンや食材も作らなければね」
「あぁそれとくれぐれも今日の様な人目を惹く行動はおやめ下さいませ。エヴァ様」
「ええわかったわ」
そうして私達は密やかに脱出計画を遂行する事に決めたの。
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