28 / 122
第二章 過去から現代へ向かって ~過去二年半前
6 計画 Sideエヴァ
しおりを挟む「お帰りなさいませエヴァ様」
「うん、ただいまアナベル」
アナベルは何時もと変わらず私を台所の隠し扉の前で出迎えてくれた。
う~ん仮にもこの国の王妃がコソコソと、隠し通路から『ただいま』と言うのは如何なものかしらね。
それだけ私達がこの国で歓迎されていない証なのでしょう。
マックスの所で働いてからの私はかなり思い上がっていたのかもしれない。
この国にとって私は人質という存在でしかなかった筈なのに、何時の間にかフィオが自由に街を歩き幸せを謳歌しているだなんて、こんなに滑稽な事何てありはしない。
今日の診療所での件で私はフィオはあくまでも偽りの姿。
現実には離宮に囚われたエヴァンジェリンだと痛感させられてしまった。
はぁ余りにもこの一年もの間幸せ過ぎて、現実を忘れてしまった愚かで馬鹿なエヴァンジェリン。
そう七年半前私とアナベルはいえ、本当は私一人でルガートへ来ておればアナベルを巻き込む事もなかった。
彼女の人生を台無しにしてしまった罪は重い。
その贖罪の為にも後二年半後私は無事にアナベルをこの国より脱出させなければいけない。
また私自身この国とライアーンからも永遠に消息を絶たねばいけない。
先程のやり取りでわかった事はこの国はライアーンをいえ、この国と争っただろう少なくとも何らかの遺恨のある国を許してはいない。
先日アルノーさん達の話からでもわかるようにこの国は二年前に漸く戦争が終結したばかり。
一応表向きだけど戦争は終わった。
でも幾ら戦いが終わったからとは言えそれまでの遺恨をいいえ、特にシャロンとの……それに加担したライアーンを含めこの国の人間はまだ消化出来ない遺恨を今も抱えている。
本来であれば私は何時彼らに殺されても可笑しくはない。
そして今日捕まった間者の様に私は拷問を受けようとも何ら不思議ではない。
あの日私達は何もないこの離宮に打ち捨てられたのはきっと彼らの気まぐれだったのだろう。
ひょっとして今まで無事に生きていられたのが幸運だった?
どうしよう。
一体どうすればいい?
一応キリの良い十年まではこの国でひっそり暮らそうとアナベルと話をしていたけれどもよ。
もしかするとそれでは遅いのかもしれない。
何時彼らの、いいえ陛下の御心がお変わりになられでもすれば、私は最初からその心算でこの国へ嫁した身。
でもアナベルが彼らの刃にかかるのは主人として絶対に避けなければいけない。
本当は十年いる心算だったけれどもやはり今の内に第三国へ脱出した方が安全なのかもしれない。
嗚呼でも後一週間でお給料日⁉
そうよ。
お給料を受け取って直ぐにでもアナベルと一緒にこの国より脱出をしよう。
そう決意に至った私は入浴を済ませ、夕食後にアナベルへ今日の出来事を話したわ。
すると驚く事に彼女も私と同意見だった。
「そうですわね。エヴァ様は十分この国で頑張っていらっしゃいましたもの」
「そんな事はないわ。あなたがずっと傍にいてくれたからこそ私はやってこられたのよアナベル」
「いいえ、エヴァ様に御不自由をおさせ申し上げたのは私の不徳の致す所ですわ。エヴァ様には後もう少しだけ頑張って頂き、それに私の方もその頃に丁度お給金を頂きます。これより先の事を思えば一刻も早くこの国を脱出する事をお勧めしたいのですけれども、何と申しましても先立つモノは少しでも多い方が宜しいですものね。ですので残り一週間お互いに頑張りましょう」
「ええ、それと少々硬いけれども日持ちのするパンや食材も作らなければね」
「あぁそれとくれぐれも今日の様な人目を惹く行動はおやめ下さいませ。エヴァ様」
「ええわかったわ」
そうして私達は密やかに脱出計画を遂行する事に決めたの。
0
お気に入りに追加
249
あなたにおすすめの小説
学園アルカナディストピア
石田空
ファンタジー
国民全員にアルカナカードが配られ、大アルカナには貴族階級への昇格が、小アルカナには平民としての屈辱が与えられる階級社会を形成していた。
その中で唯一除外される大アルカナが存在していた。
何故か大アルカナの内【運命の輪】を与えられた人間は処刑されることとなっていた。
【運命の輪】の大アルカナが与えられ、それを秘匿して生活するスピカだったが、大アルカナを持つ人間のみが在籍する学園アルカナに召喚が決まってしまう。
スピカは自分が【運命の輪】だと気付かれぬよう必死で潜伏しようとするものの、学園アルカナ内の抗争に否が応にも巻き込まれてしまう。
国の維持をしようとする貴族階級の生徒会。
国に革命を起こすために抗争を巻き起こす平民階級の組織。
何故か暗躍する人々。
大アルカナの中でも発生するスクールカースト。
入学したてで右も左もわからないスピカは、同時期に入学した【愚者】の少年アレスと共に抗争に身を投じることとなる。
ただの学園内抗争が、世界の命運を決める……?
サイトより転載になります。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
草食系ヴァンパイアはどうしていいのか分からない!!
アキナヌカ
ファンタジー
ある時、ある場所、ある瞬間に、何故だか文字通りの草食系ヴァンパイアが誕生した。
思いつくのは草刈りとか、森林を枯らして開拓とか、それが実は俺の天職なのか!?
生まれてしまったものは仕方がない、俺が何をすればいいのかは分からない!
なってしまった草食系とはいえヴァンパイア人生、楽しくいろいろやってみようか!!
◇以前に別名で連載していた『草食系ヴァンパイアは何をしていいのかわからない!!』の再連載となります。この度、完結いたしました!!ありがとうございます!!評価・感想などまだまだおまちしています。ピクシブ、カクヨム、小説家になろうにも投稿しています◇
魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!
三原みぱぱ
ファンタジー
ある日、剣と魔法のファンタジー世界に放り込まれた竜ヶ峰清人(リュウガミネ キヨト)。
美少女レイティアが嫁として現れる。
しかし、そんな甘い事ばかりではない。
強力な魔法が使えるのは女性のみ!
使える魔法の数がステータス(社会的地位)となる女性が強い世界。
男は守られるべき存在のこの世界で、魔法も剣も使えない主人公。
モンスターと戦えば足手まといと怒られ、街中で暴漢を止めようとするとぼこぼこにされる。
そんな俺Yoeee主人公は、金髪美少女のレイティアに恋人として認められるのか?
師匠である剣豪ムサシマル助けられながら、恋のライバル、アレックスやソフィアを交えて進む、ラブコメファンタジー!
感想、心よりお待ちしております。
完結しました!
ノベルアッププラスで「ゼロの転移者」としてリニューアル連載していますよ。
騎士団に入る事になりました
セイラ
恋愛
私の名前はレイラ・エバーガーデン。前世の記憶を持っている。生まれは子爵家で、家庭を支える為に騎士団に入る事に。
小さい頃から、師匠に鍛えられていたレイラ。マイペースで無自覚な性格だが、悪戯を企む時も。
しかし、周りから溺愛される少女の物語。
精霊のジレンマ
さんが
ファンタジー
普通の社会人だったはずだが、気が付けば異世界にいた。アシスという精霊と魔法が存在する世界。しかし異世界転移した、瞬間に消滅しそうになる。存在を否定されるかのように。
そこに精霊が自らを犠牲にして、主人公の命を助ける。居ても居なくても変わらない、誰も覚えてもいない存在。でも、何故か精霊達が助けてくれる。
自分の存在とは何なんだ?
主人公と精霊達や仲間達との旅で、この世界の隠された秘密が解き明かされていく。
小説家になろうでも投稿しています。また閑話も投稿していますので興味ある方は、そちらも宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる