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第一章  過去から現在へ向かって ~十年前より三年前

11  アクシデント Sideエヴァ

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 差し当たって外出に際しとある事を決めたわ。
 先ず二人一緒に離宮より長時間の外出は非常時以外止めておく。
 これは万が一留守中に誰かが離宮へ訪れた際、逃亡云々等いらぬ誤解を今は出来るだけ招きたくないからって、まぁ本当に今更なのだけれど。
 
 次に私のお仕事をする時間は月、水、金と週3日。
 然もどんなに遅くとも午後三時までと決められてしまった。
 これって少し厳し過ぎないアナベルさん。

 アナベルは火、木土曜日の週三日へシフトチェンジ。
 女将さんとの勤務相談も問題なくあっさりと了承されたらしい。

 その次、これが意外と問題だったりする。
 つまり私の業種についてよ。

 客商売はダメ。
 食堂や酒場……元々時間外だからダメ。
 メイド関係もダメ。

 アナベルが私の仕事に求めるもの。
 それは目立たなくて健全で……ってそんな所なんて本当にあるの?
 過保護もここまでくると害悪よ。

 然もお仕事中はアナベルが常に傍にいないからという理由で何と新たに体術の稽古が始まると言う。
 近い将来私の身体が筋肉ムキムキになってしまったらどうしよう。
 とは言えあの外出より早三ヶ月……時間が経つのはいいけれど、思う様なお仕事は中々見つからないのが現状。

 アナベルがGoサインをくれる様な業種が本当に見つかるのかは最早謎。
 因みに外出は精々二時間くらいが今の所限界かな。
 何処で秘密がバレるかもしれないからと言われ十分注意はしているのだけれど、その注意と言っても何に気を付ければいいのか皆目見当つかないのも事実。
 今日も家事を済ませてからの外出なのだけれど、お仕事探しがこんなにも大変だとは正直思わなかっ――――!?


 ドン!!


 何かと衝突した勢いでその場で尻もちをついてしまった。
 は、恥ずかしいぃぃ。
 私はそそくさと直ぐに立ち上がり周囲から目立たない様に何処かへ移動をと思った。

「あっ、うっ、もぅ……っうぅ⁉」

 振り返えれば大きな荷物が地面に散乱していたのと、その横で大きな、はち切れんばかりのお腹を抱え蹲る女性。

 多分大きな荷物を抱えながら歩いていた為に前が見えなくて、私自身も考え事をしていてお互いの前方不注意の末に衝突したのは理解出来た。
 ただ何故この女性のお腹がこんなにも、そうまるで大きな風船をお腹に入れたかの様に膨らんでいるの?

 最初は何かの病気を疑ってしまった。
 これまで外部と隔絶した生活を送っていた私にはその女性が妊娠している事、お腹の中にもう一つの命が宿っている事を知らなかったの。
 
 だけどその女性がとても苦しんでいるのは理解出来る。
 顔中に脂汗を滲ませずっと呻いているのだもの。
 ただ私には苦しんでいる女性にどうすればいいのかがわからない。
 そうこうしている間に私とその女性の周りにわらわらと人が集まってくる。

 否が応でも周囲は私達に注目していく。
 本来ならば私は速やかにこの場を立ち去らなければいけない筈。

 頭ではちゃんと理解しているわ。
 アナベルの言う危険は私自身が一番理解しているもの。
 だけど頭では理解して……いえ違うわ。
 私の心が今この女性より離れてはダメだって強く思ったの。

 訳なんてわからなかったわ。
 でもね、目の前で苦しんでいる人をそのままにして逃げ出す事の方がいけない事だと思ったの。
 何もわからないまま自分のハンカチで苦しんでいる女性の汗を拭っていた時だった。


「先生早くこっちだよ!!」
「あぁマックス先生が来てくれたんだなぁ、もう大丈夫だ」
「あぁあぁ……もうそんなに引っ張らないで。患者さんの所へ行くまでに僕が転んで怪我をしてしまうよ」
「んあ?そん時は俺らがマックス先生の診療所までちゃんと担いで運んでやるさ」
「そんなめちゃくちゃな〰〰〰〰」

 人だかりの中から出てきたのは、明るい茶色ライトブラウンのサラサラな髪に澄んだ青い瞳をした優男風な長身のイケメン。
 着ている服は随分ヨレヨレだけれど医師としての腕は大丈夫なのかしら。
 だって世の中全てのイケメンが出来る男とは限らないでしょ。
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