しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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「もう、だいじょうぶ。」

「本当に?歩けるの?」

「もう、全然平気!」

にこっと笑っておれの手を取った。

「夕飯、鮭?」

「あ、うん……。」

落とした食材を拾う。

「理人は料理上手いから楽しみだ。」

「料理って言っても焼いたり混ぜたりするだけだよ。」

「それでも美味しいもん。」

さ、帰ろ!と、手を引かれる。ほんとうに何でもなかったのかな。なんでもないなんてこと、あるのか?
でも本人が言いたくないなら、今問いつめるのも良くないよな。いつか自分から言ってくれるまで待とう。
家までの帰り道、光太は急に饒舌になって、学校のことや今日あったことを楽しげに話していた。まるで本当に何でもなかったかのように振る舞った。

家に着くと俺が料理を始めると、光太は「おれ、風呂洗うね。」と言っていそいそと風呂掃除を始めた。

ぎゃっ!と声がしたので何かと思って見に行くと、シャワーを頭から被った光太が居た。

「カランとシャワー間違えた……。」

あるあるな失敗をしている光太が居た。

「もうそのままシャワーしちゃいなよ。」

「うん……。」

脱いだ服を洗濯機に放り込んでいく。
しばらくすると風呂場からザーというシャワーを浴びる音が聞こえてきた。
しばらくしてりひとー!と呼ぶ声が聞こえた。

「なに?」

「ごめん、パンツとって……?」

恥ずかしそうに、タンスの二段目。という光太が可愛かった。
パンツを取って、渡す。

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

あとはご飯が炊けるのを待つだけだ。
光太が上がってきた。

「……その、さ、きょう、泊まってく……?」

「泊まってく!」

食い気味になってしまった。

「じゃぁ、お前もシャワー浴びてこいよ。今日、結構動いたから……。」

うん!と言って速攻風呂場に向かった。
ちょっとまって、これって、つまり、OKって意味……か?
考えながらシャワー浴びてたら身体が熱くなってきてしまったので水を浴びて出た。

丁寧に畳まれたパジャマが置いてあった。

「そこにパジャマ置いておいたからー!」
と部屋の方で声をかけてくれている光太。パジャマはちょっと小さかったけれどこのサイズだと光太にはでかいのでは?と思う微妙なサイズだった。

「それ、大きくてあんまり着てないから綺麗、な、はず……。」

なるほど。
それからしばらくしてご飯が炊けたので、夕ご飯にした。

鮭の身を解し骨をとってから光太の口に運ぶ。
椅子は一脚しかないので俺は中腰。
光太は「椅子、買うから……。」と申し訳なさそうに言っていた。
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