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アドリアンシリーズ第10話……エピソード3……アドリアンのヴェネティア攻撃
しおりを挟むアドルフから計画を聞いたアドリアンは直ちに行動を起こした。普段はアドルフに任せきりだが、今度は自分で戦うつもりのようだ。最大目的は神聖ローマ帝国の殲滅だ。
アドルフのような作戦は取らない。100万の大軍で正面突破だ。まずクリミアのジェノバ、ヴェネティアの植民都市に降伏か、全滅かどちらか選べと布告を出した。地中海の各独立都市及びジェノバ、ヴェネティア及び神聖ローマ帝国にも同じ布告を出した。
すでに100万の大軍はカザンを出発している。神聖ローマ帝国以外は降伏した。
直ちにアドルフに連絡し、「ガレオン船600艘24万人の軍隊でローマを海から砲撃せよ。破壊し終わったら上陸し、宮殿を破壊するのだ」と命令した。アドルフはアドリアンの命令通りにローマを徹底攻撃し、宮殿を破壊し尽くした。たまたま不幸にしてローマに滞在していた神聖ローマ皇帝カール4世と神聖ローマ皇后エリーザベト・フォン・ポンメルン27歳を捕縛した。カール4世とその男系子孫は皆殺しにした。
エリーザベト・フォン・ポンメルン27歳はアドルフの后とした。アドリアンはヴェネティアに陣取った。
1374年12月上旬日曜日朝7時……トプカピ宮殿
ドイツの選帝侯たちの殲滅は後回しにするそうだ。これだけの戦果を上げたのだから兵隊たちも休養が必要だ。
アドルフは兵隊たちに数ヶ月の休養を与えた。その間に各地の分割統治の仕組みの原型を作り上げた。
アドルフ帝国はスルタンといえどもイスラーム法の規制を受ける宗教国家であり、また「柔らかい専制」と言われる他宗派、他民族への寛容な性格を持っていたが、同時に専制国家としての中央集権体制の維持、強化に努めていた。スルタンの直轄地は州・県・郡に分け、州には総督、県には知事、郡にはイスラーム法官を中央から派遣した。直轄地以外にはエジプトやチュニスのように現地有力者を太守(パシャ)に任命して統治させた。
スルタンを補佐し、実質的な政治にあたる官僚機構の頂点にいたのが大宰相(ヴェズィラーザム)であり、形式的にはスルタンの御前会議で最高政策が決定された。官僚(書記を意味するキャーティプといわれた)は文書の管理にあたり、宮廷と国家の財政を実質的に処理した。
ケイマン次兄を大宰相に任命し、エジプト州の州総督を兼ねさせ、マムルーク朝の残党を殲滅させ、統治を一時安定させた。
エジプトではベイと呼ばれる有力軍人たちが台頭する。
シリアの諸州ではエジプトと異なり、地方の有力者に州や県の総督職を与えて活用することもよく見られた。
アドルフ帝国は基本的にはオスマン・トルコ帝国の体制を用いている。
世界大百科事典によると、1370年代には
★政治、行政
帝国の統治機構には当初,アナトリアのトルコ系有力者,ウラマー出身者が起用されたが,バルカン半島,とりわけ,コンスタンティノープル征服以後デウシルメ出身者の台頭が著しかった。
これらの非トルコ系,奴隷身分の者たちの大部分はイエニチェリなど常備軍団員となったが,その一部は宮廷侍従の経歴をへて,サドラザム「大宰相」をはじめとする中央行政機構の枢要な地位を独占した。
一方,イスラム国家であるアドルフ帝国は,イスタンブールをはじめ各地にマドラサを建設し,ハナフィー派法学を中心としたイスラムの諸学問を学んだウラマーたちに,帝国の司法と教育,および行政の一部を担当させた。
法律制度は〈神の法〉であり唯一絶対性をもつシャリーアであり,その法解釈はムフティーにゆだねられたが,その最高権威者シャイフ・アルイスラーム……注①は,トプカプ宮殿内の御前会議の権限外にあって,スルタンやデウシルメ出身官僚層の政治的決定事項に対してシャリーアに照らした意見書を通じて,これを掣肘した。
また,各地域の実情に応じた柔軟な統治を実現するために,シャリーアの枠内にとどまることを条件に,カーヌーンおよびヤサが,スルタンの勅令あるいはシャイフ・アルイスラームの〈意見書〉の形態をとって発布された。
地方行政区分は,エヤーレトeyâlet(州),サンジャクsancak(県),カザーkazā(郡)からなっており,前2者にはそれぞれ,ベイレルベイbeylerbeyi,サンジャクベイsancakbeyiと呼ばれる軍政官が派遣された。
カザーの行政官はウラマー層に属するカーディー(裁判官)であったが,彼は御前会議に列席する大法官(カザスケルkazasker)に直属し,同時に,刑事・民事訴訟の双方を取り扱うシャリーア法廷を主宰した。
このように,ムフティーやカーディーのごときウラマー層が統治機構の一端に組みこまれ,官僚化されたところに,帝国のイスラム国家体制の,イランやアラブ諸王朝とは異なる特徴がある。
また,エヤーレトと中央政府との関係は全国一律ではなく,基本的には,ティマール制が適用されて中央政府の直接支配を受けた地域「アナトリア,バルカン,歴史的シリアの一部」と,エジプト,メソポタミア,アラビア半島,北アフリカのようにベイレルベイ,カプダン・パシャ(提督)あるいは土着の支配者「メッカのシャリーフ,東部アナトリアのトルコ系・クルド系遊牧民族長,ワラキア・モルドバの君侯など」を通じて,貢納金を支払うなどの間接的支配を受けるにとどまり,既存の社会組織をそのまま維持した地域とに分けられる。
ティマール制のもとでは土地はすべて国有地(ミーリーmiri)とされ,軍事封土の保有者シパーヒーによる農民支配は,カーヌーンによって細かく規定されていた。また,非ムスリム諸民族の場合は,それぞれが属する宗教的共同体「ギリシア正教会,セルビア教会,ブルガリア教会,アルメニア教会,ユダヤ教会など」ごとの内部自治を認められた(ミッレト制)。
★社会、経済、文化
帝国の社会的身分秩序は,軍人,官僚,ウラマー層およびその家族,親族,奴隷からなるアスケリーaskerı「さらに武官ehl-i seyfiyyeと文官ehl-i kalemiyyeとに分けられる」と生産者大衆レアーヤーreaya「小商工民,農民,遊牧民を指し,ムスリムと非ムスリムの区別を含まない」とからなり,〈レアーヤーの子はレアーヤーである〉という身分秩序観念があった。
そして,イスラムの諸学問を修め,ペルシア文学を愛好し,みずから〈オスマン紳士(オスマンルOsmanlı)〉を自認する支配エリートは,アラビア語,ペルシア語に粉飾されたオスマン・トルコ語を話し,民衆の素朴な口語を〈粗野なトルコ語kaba türkçe〉と呼んだ。
彼らにとって〈トルコ人〉とは田舎者,無教養な者を意味した。ただし,デウシルメ,マドラサでの教育のほかにも,個人的能力,チャンスなどを通じてレアーヤーからアスケリーへと社会的に上昇する機会は多く,むしろ能力主義,機能主義にもとづく開放的な社会であった。
商業の面からみた場合,帝国はアナトリアとバルカンを貫通する陸上キャラバン・ルート,および黒海,エーゲ海,アドリア海,地中海,紅海,インド洋を結ぶ海上交易ルートを掌握する中継貿易国家であった。
その中心地イスタンブールは,16世紀末には75万前後の人口を擁する巨大な交易地となった。
帝室財政はそれによる交易利潤に大きく依存していたから,スルタンは,香料,各種織物,ブドウ酒などの国際商品取引を円滑にするために,外国人商人に通商特権(カピチュレーション)を与えるなど開放的商業政策をおこなった。
その結果,イスタンブールを中心とした広大な商業圏が成立した(パクス・オトマニカ)。
その反面,この都市の軍需品や食糧を確保するために,とくにアナトリアとバルカンの商工業(ギルドと市(いち))に対する官僚的統制を強化し,鉱山資源(銅,鉄,銀,クロム,ミョウバンなど)の開発や特殊な農作物(とくに米)生産を専売制の下に置いた。
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注① ……シャイフ・アルイスラーム
イスラム宗教組織の最高位に用いられた官職名。王朝の君主であるスルタンに対してイスラム法の立場から君主を補佐し,また掣肘した。
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