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第33話 ハグならいいでしょ
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薄暗くなって来て、丘の上で夜景を見ようと言うことになった。
オレは見たことがなかったので言われるがまま、二人並んで丘へ向かって行った。
途中に移動式の売店があり、遊園地のグッズが販売されていた。
マコは立ち止まり、小さなキーホルダーを手に取った。
小さい男女の人形がついている。
二人は結婚式の衣裳を来て腕を組んでいた。
女の子はもう片手にブーケを持っていてとても可愛らしいキーホルダーだった。
「買ってやるか?」
「え……。いいの?」
「明日の大会頑張れって意味も含めてな」
「やった。うれしー!」
小さい白い紙袋に入れてもらったものを、マコ用の買い物袋に押し入れた。
マコのテンションはまた上がって、ベタベタくっ付いて来た。
これはこれで嬉しい。
彼氏がいるって言うマコがくっついてくるんだから突き放す言われはないだろうとそのままにした。
やがて丘の上に登り、街の夜景を見た。
盆地に光る夜景はそれは見事だった。
港の船にも灯りが付いて、ちょうど出航するところだった。
オレたちは息を飲んでため息をついた。
感激しながら柵に寄りかかってしばらく眺めていたが、そろそろ家に帰らなくてはいけない。
明日大会なのにマコを遅くまで連れ回してと、全親から言われる。
師匠には蹴られるかも知んねぇ。
「マコ。そろそろ帰るか」
「え?」
オレが体を出口に向けたのに、マコは柵にもたれかかってこちらにこようとしなかった。
「おい。夜も遅ぇし」
「分かってるよ」
「だったら早く」
「…………」
マコは中々こちらにこないので近づいて行くと、小さな声でこう言った。
「は、ハグは?」
「え?」
「ハグだよ。キスがダメなら……。こう抱きしめ合って、大会頑張れ~って」
ハグ。聞いたことある。
外人さんが挨拶がわりに抱きしめあうやつ。
少し抵抗があるけど、彼氏持ちの当人がやりたいってんだからやってもいいのかな……。
でも抱きしめるってわけだろ?
ちょっと待ってくれよ。興奮する。
マコを全身で感じれるわけだもんな……。
幸い人もちょうどいなくなった。
チャンスは今しかない。
「よ、よし、ハグだな」
「え? いいの?」
「お、おう。動くなよ。逃げんじゃねーぞ。オメー」
「うふふ。うんうんうん」
オレたちは音がするほど接触した。
そして互いの肩の上に首を預け熱い熱い抱擁。
「おー……。これは……」
「なによ~。声出さないで~」
「マコ! 大会頑張れよ! 優勝を目指せ!」
「うんうん」
しばらく抱きついていたが、この丘に続いている階段から声が聞こえて来た。
残念ながらまた人が来たらしい。
オレは名残惜しくマコと離れた。
五月の風は少々寒い。それがマコの温もりで吹っ飛んだ。
「じゃぁ、帰るか」
「うんうん」
さっきとは打って変わって元気のいいマコ。
オレたちはバスに乗り込んで駅に向かい、家に着く頃は夜の8時だった。
オレは見たことがなかったので言われるがまま、二人並んで丘へ向かって行った。
途中に移動式の売店があり、遊園地のグッズが販売されていた。
マコは立ち止まり、小さなキーホルダーを手に取った。
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二人は結婚式の衣裳を来て腕を組んでいた。
女の子はもう片手にブーケを持っていてとても可愛らしいキーホルダーだった。
「買ってやるか?」
「え……。いいの?」
「明日の大会頑張れって意味も含めてな」
「やった。うれしー!」
小さい白い紙袋に入れてもらったものを、マコ用の買い物袋に押し入れた。
マコのテンションはまた上がって、ベタベタくっ付いて来た。
これはこれで嬉しい。
彼氏がいるって言うマコがくっついてくるんだから突き放す言われはないだろうとそのままにした。
やがて丘の上に登り、街の夜景を見た。
盆地に光る夜景はそれは見事だった。
港の船にも灯りが付いて、ちょうど出航するところだった。
オレたちは息を飲んでため息をついた。
感激しながら柵に寄りかかってしばらく眺めていたが、そろそろ家に帰らなくてはいけない。
明日大会なのにマコを遅くまで連れ回してと、全親から言われる。
師匠には蹴られるかも知んねぇ。
「マコ。そろそろ帰るか」
「え?」
オレが体を出口に向けたのに、マコは柵にもたれかかってこちらにこようとしなかった。
「おい。夜も遅ぇし」
「分かってるよ」
「だったら早く」
「…………」
マコは中々こちらにこないので近づいて行くと、小さな声でこう言った。
「は、ハグは?」
「え?」
「ハグだよ。キスがダメなら……。こう抱きしめ合って、大会頑張れ~って」
ハグ。聞いたことある。
外人さんが挨拶がわりに抱きしめあうやつ。
少し抵抗があるけど、彼氏持ちの当人がやりたいってんだからやってもいいのかな……。
でも抱きしめるってわけだろ?
ちょっと待ってくれよ。興奮する。
マコを全身で感じれるわけだもんな……。
幸い人もちょうどいなくなった。
チャンスは今しかない。
「よ、よし、ハグだな」
「え? いいの?」
「お、おう。動くなよ。逃げんじゃねーぞ。オメー」
「うふふ。うんうんうん」
オレたちは音がするほど接触した。
そして互いの肩の上に首を預け熱い熱い抱擁。
「おー……。これは……」
「なによ~。声出さないで~」
「マコ! 大会頑張れよ! 優勝を目指せ!」
「うんうん」
しばらく抱きついていたが、この丘に続いている階段から声が聞こえて来た。
残念ながらまた人が来たらしい。
オレは名残惜しくマコと離れた。
五月の風は少々寒い。それがマコの温もりで吹っ飛んだ。
「じゃぁ、帰るか」
「うんうん」
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