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だぃ ご わ
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実はオレ、女の子の部屋に上がるの初めてなので超ドキドキ……。
ジュダイがカギを開けて中に入れてくれた。
玄関から通路があって、キッチンが一体化されてる。
その奥に一間。ジュダイの生活空間だ。
この通路にトイレとバスがある。
なんてことない。普通の一人暮らしの部屋だ。
オレはニヤニヤが止まらなかった。
「うぉ~。女くせぇー……」
「ちょっと、なに? その感想……」
「いや~。はは。いい部屋ですな~」
完全に緊張してキョロキョロしていた。
意味もなく冷蔵庫の上なんかを背のびてしてみたりした。
端から見ればバカ、丸出し。
ジュダイは冷蔵庫から玉ねぎを出して押し付けて来た。
「ホイ。ロマン、みじん切りにして。出来るでしょ?」
「え? オレもやるの?」
「当り前。働かざるもの食うべからずだよ」
仕方なしにオレは玉ねぎを切った。
目がしみて涙がとまらねぇ。
それを見てジュダイは笑っていた。
「うぉい! 笑うな!」
「いや~。さっきのセミを思い出して。“な”くのは男の仕事ですな~。さぁ、どんどん切って!」
「……フン!」
なんていいながら恋人同士のように狭い通路で体をつけてじゃれ合って料理をした。
献立はハンバーグ。彼女は肉をこね始めた。
だが、ピタリと手を止めて玄関の方をじぃっと見ていた。
「どうした?」
「……いや。ねーロマン、こっち側に立って。お願~い」
そう玄関側の通路に押されながら立たされた。
おそらく、また見られる感覚があったんだろう。
それで彼女の気が休まるなら別に構わないかと思い、玄関側に立った。
彼女はニコニコして肉をこね、二人で一緒に丸めた。
部屋に上げるってことはつまり、その気があるってことだよな……。
なんて、悠長なことを考えてた。
肉が丸め終わったので、別の部屋でスマホでもいじくらせてもらおうと思い、
「ジュダイ、オレ、そっちの部屋でソシャゲさせてもらっててもいい?」
と聞くと、はぁ? というような顔をした。
「ダメ。焼くところ見てて」
「なんだよそれぇ~」
しかし、いい雰囲気。
こりゃ今日、二人はイシシシシ……。
なんて思ってると
ドチャ……
玄関のドアの向こうで嫌ぁーな変な粘るような水の音がした。
「キャ……!」
途端に抱きついて来る彼女。
柔らけぇ
暖ったけぇ
不謹慎だが、もうそっちの方しか考えていないオレ。
すぐに彼女の肩を抱きすくめて慰めた。
「大丈夫だよ……。大丈夫……」
ジュダイはブルブルと震えてしがみついていたが、オレはここぞとばかりに、彼女の顎に手を添えくっと顔を上げてその唇に自分の唇を重ねた。
彼女から震えが徐々に消えて行くように思えた。
しばらくそのままで互いの唇を合わせ続け温もりを感じ合っていたが、ジュダイははにかんで両手でオレの胸を押して来た。
「ンもう……」
「はは」
「順番めちゃくちゃだよ~。ロマン~」
「だよな~」
ジュダイの唇がちょっと濡れていてすっごく可愛らしかった。
「私まだ、ロマンの本名も知らないのに……」
「ああ、ツヨシ。ツヨシ。ジュダイさぁ~ん。好きでぇ~す。付き合ってくださぁ~い」
「軽! なにそれ~。しかも、平凡。ツヨシだったんだ~。ロマン関係ない。ロマンチストなんだねぇ」
「ジュダイは?」
「ん?」
「名前。名前」
「あ。ミサキだよ。ハンドルネーム覚えてる? ジュダイ33。女性大生ミサキをもじったんだ。“キ”が数字に出来なかったけどね~」
「あ、そーなんだ~。」
と、オレたちがやっていると、チリチリと音をたてて焦げ臭い匂いに変わって来た。
「あ! 焦げてる!」
「わ! わ~……」
マヌケ……。
ジュダイとキスしてる間にハンバーグ焦げた。
オレたちは焦げた部分を削いで、皿に盛りつけて食卓に運んだ。
小さい白のテーブル。
オレは壁側に寄りかかって座ると、ジュダイはその向かい合わせに座った。
しかし、すぐに皿をもって立ち上がりオレの隣りに笑いながら座った。自分の尻に、ジュダイの尻がぶつかり合う。
なんていい感触!
だがガツガツしてると思われたくないので強がった。
「ちょ……。狭いんだけど」
「いいから!」
「ほか、3か所空いてるじゃん……。一つのスペースに座るなんてめっちゃ不自然」
「いいじゃん。いいじゃん」
夏だと言うのにくっつき合う二人。
肘がジュダイに当たらないよう遠慮しながらハンバーグを食べた。ジュシーな好みの味。
なんかジュダイとは本当に合うなぁと思った。
「パぁーーーー。おなか一杯」
ジュダイは自分のおなかをポンポンと叩いた。
「オレはちょっともの足んないかな?」
「いいじゃん。腹八分目」
「そーだな」
テレビも付けずに二人の体を寄せ合ってる。
まるで小動物のように。
背中は壁に預け、この瞬間は恐怖や呪いなど忘れていた。
「ね、ロマン。ちょっとゲームする?」
「ゲーム? ゲームなんてあるの?」
「ミサキちゃん褒めゲーム!」
「なんだそりゃ。どうやるの?」
「ミサキ、かわいいの? って聞いて」
「なんで!」
「いいじゃん!」
「照れくせ~。オレになんのメリットあるんだよ……」
「いいからいいから。なにかいいことあるかもよ? ホラ。カモーン」
「えーーー……。ミサキ、かわいいの?」
「オーケー! ミッション達成!」
「イエーイ! ってそれだけでいいのかよ。簡単だな」
「次はちょっと難しいです」
「ほーう。なんか楽しみになって来た」
「レベル2は、さっきの言葉から“かわ”を取って下さい」
「あー。そーゆやつね。えーと。“かわ”、“かわ”……」
しばらく考えてみて、「ん?」となった。
ジュダイの顔が少しばかり赤い。
そしてオレの言葉を期待して待っていた。
「えーと。……ミサキ……いいの?」
「……うん。いいよ……」
速攻、オレはジュダイに覆い被さった。
なにも考えられない。
なにも考えない……。
水面に石を投げいれると、いくつも波紋が出来るように快感が広がっていく。
二人は、このぬるい気温の中、熱く熱く溶け合った。
壁とテーブルの狭い間の中で寝転び、裸のまましばらくうっとりと陶酔しあった。
「一緒に暮らす?」
ジュダイが聞いて来た。
「いいねぇ~」
オレは天井を向いていた顔を彼女の方に向きを変えながら言った。
「会社に通える?」
「ここからのほうが近い」
「わーお。家賃払ってよね~」
「ぜんぜんオーケー。近いうちに自室に荷物取りにいこーっと。ジュダイも付き合えよ?」
「うんうん」
まどろんでいると二人のスマホから「チンコン」とトークアプリの着信音が鳴った。
「同時?」
「数珠じゃね?」
二人して起き上がり、テーブルの上にあるスマホを取った。
トークアプリ着信の緑のランプが激しく点滅いていた。
「あー。やっぱ数珠」
「ん?」
二人ともそこに書いてあるメッセージに驚いた。
数珠「二人とも大丈夫か? 大変だ……。最近動物の死骸を見ていたが、今日はその最たるものだ。玄関の前に首が切られた犬の死骸があった」
ゾッとした。
悪質ないたずらだ。
それに、首を切っている?
尋常じゃない。猟奇的だ。
動物虐待の事件ものだろ……。
オレとジュダイは、「いたずらだ。気にするな」「警察に言った方がいい」と返信した。
だがお互い、気持ちの中には恐ろしいものが近づいて来ていると思い合っていた。
しかし言葉には出さなかった。
出してしまうと、それが現実になりそうで……。
その晩、ジュダイの部屋で彼女を抱きながら寝た。
恐ろしいのか、彼女はオレの胸の中に入り込んでいた。
それのため暑苦しく、ゴツゴツとした体が当たり、浅い眠りしか取れなかった。
……いや。
そう言い訳してるだけだ。
本当は怖くて仕方なかったんだ。
この部屋にも何か得体の知れないものが入り込んで、オレたちを見ている?
そんな感覚があった。
彼女を守れるのだろうか?
呪い?
それってなんだろう?
でもオレたちは何もしていない。
恨みや呪いなんて見当違いだろ。
呪いの方程式ってなんだろう……?
そんなことを思っていた。
やがて朝の光が差し込んで来た。
正直ホッとした。
鳥の声が聞こえる。
今日も暑くなりそうだ。
ジュダイは隣で寝ている。
ミサキか……。
正直呼び難い。
ジュダイで通していたし。
ま、これからもジュダイでいいか。
なんて思いながらそこから少し寝てしまった。
ユサユサユサ。
「ロマン! 起きて!」
「……ん? どした?」
ジュダイに揺すられて目が覚めた。
時計をみると一時間ほど失われていた。眠っていたのであろう。
意識がハッキリしてくるとザワザワと外から声が聞こえて来て騒々しさを感じた。
「なんか外が騒がしいな」
「そうなの。なんだろ? ちょっと見てみてよ」
「おーう」
オレは昨日着ていた服を着て、玄関先に出ようとすると
ピンポーン
と呼び鈴が鳴った。
「あん?」
「すいませーん。警察でーす」
え? え? え? 警察?
「ジュダイ、警察だって」
「え? なんだろ……」
意を決して、オレたちは部屋のドアを開けると「あ!」という声が外から聞こえた。
それとともに、ドアの下に虹の弧を描くように、血の跡が現れた。
「キャ!!」
ジュダイはドアから手を放し、その場に座り込んでしまった。
警察官がドアを手で止め、顔を出した。
「すいません。イタズラかもしれませんが、ドアの前に“犬の頭部”が置かれておりまして……。通報があったんです。二、三、話を聞かせていただけますか?」
「犬の……」
「頭部……」
そこには犬の頭部が置かれていた。
ドアを開けた時、頭部もズレて血の軌跡がついたのだ。
それにしても、数珠の玄関先には犬の胴体。
ジュダイとオレの方には犬の頭部。
偶然にしては出来すぎてる。
一体なんだ? なにが起きてるんだ?
オレたちは、数珠と会って話し合うことにした。
ジュダイがカギを開けて中に入れてくれた。
玄関から通路があって、キッチンが一体化されてる。
その奥に一間。ジュダイの生活空間だ。
この通路にトイレとバスがある。
なんてことない。普通の一人暮らしの部屋だ。
オレはニヤニヤが止まらなかった。
「うぉ~。女くせぇー……」
「ちょっと、なに? その感想……」
「いや~。はは。いい部屋ですな~」
完全に緊張してキョロキョロしていた。
意味もなく冷蔵庫の上なんかを背のびてしてみたりした。
端から見ればバカ、丸出し。
ジュダイは冷蔵庫から玉ねぎを出して押し付けて来た。
「ホイ。ロマン、みじん切りにして。出来るでしょ?」
「え? オレもやるの?」
「当り前。働かざるもの食うべからずだよ」
仕方なしにオレは玉ねぎを切った。
目がしみて涙がとまらねぇ。
それを見てジュダイは笑っていた。
「うぉい! 笑うな!」
「いや~。さっきのセミを思い出して。“な”くのは男の仕事ですな~。さぁ、どんどん切って!」
「……フン!」
なんていいながら恋人同士のように狭い通路で体をつけてじゃれ合って料理をした。
献立はハンバーグ。彼女は肉をこね始めた。
だが、ピタリと手を止めて玄関の方をじぃっと見ていた。
「どうした?」
「……いや。ねーロマン、こっち側に立って。お願~い」
そう玄関側の通路に押されながら立たされた。
おそらく、また見られる感覚があったんだろう。
それで彼女の気が休まるなら別に構わないかと思い、玄関側に立った。
彼女はニコニコして肉をこね、二人で一緒に丸めた。
部屋に上げるってことはつまり、その気があるってことだよな……。
なんて、悠長なことを考えてた。
肉が丸め終わったので、別の部屋でスマホでもいじくらせてもらおうと思い、
「ジュダイ、オレ、そっちの部屋でソシャゲさせてもらっててもいい?」
と聞くと、はぁ? というような顔をした。
「ダメ。焼くところ見てて」
「なんだよそれぇ~」
しかし、いい雰囲気。
こりゃ今日、二人はイシシシシ……。
なんて思ってると
ドチャ……
玄関のドアの向こうで嫌ぁーな変な粘るような水の音がした。
「キャ……!」
途端に抱きついて来る彼女。
柔らけぇ
暖ったけぇ
不謹慎だが、もうそっちの方しか考えていないオレ。
すぐに彼女の肩を抱きすくめて慰めた。
「大丈夫だよ……。大丈夫……」
ジュダイはブルブルと震えてしがみついていたが、オレはここぞとばかりに、彼女の顎に手を添えくっと顔を上げてその唇に自分の唇を重ねた。
彼女から震えが徐々に消えて行くように思えた。
しばらくそのままで互いの唇を合わせ続け温もりを感じ合っていたが、ジュダイははにかんで両手でオレの胸を押して来た。
「ンもう……」
「はは」
「順番めちゃくちゃだよ~。ロマン~」
「だよな~」
ジュダイの唇がちょっと濡れていてすっごく可愛らしかった。
「私まだ、ロマンの本名も知らないのに……」
「ああ、ツヨシ。ツヨシ。ジュダイさぁ~ん。好きでぇ~す。付き合ってくださぁ~い」
「軽! なにそれ~。しかも、平凡。ツヨシだったんだ~。ロマン関係ない。ロマンチストなんだねぇ」
「ジュダイは?」
「ん?」
「名前。名前」
「あ。ミサキだよ。ハンドルネーム覚えてる? ジュダイ33。女性大生ミサキをもじったんだ。“キ”が数字に出来なかったけどね~」
「あ、そーなんだ~。」
と、オレたちがやっていると、チリチリと音をたてて焦げ臭い匂いに変わって来た。
「あ! 焦げてる!」
「わ! わ~……」
マヌケ……。
ジュダイとキスしてる間にハンバーグ焦げた。
オレたちは焦げた部分を削いで、皿に盛りつけて食卓に運んだ。
小さい白のテーブル。
オレは壁側に寄りかかって座ると、ジュダイはその向かい合わせに座った。
しかし、すぐに皿をもって立ち上がりオレの隣りに笑いながら座った。自分の尻に、ジュダイの尻がぶつかり合う。
なんていい感触!
だがガツガツしてると思われたくないので強がった。
「ちょ……。狭いんだけど」
「いいから!」
「ほか、3か所空いてるじゃん……。一つのスペースに座るなんてめっちゃ不自然」
「いいじゃん。いいじゃん」
夏だと言うのにくっつき合う二人。
肘がジュダイに当たらないよう遠慮しながらハンバーグを食べた。ジュシーな好みの味。
なんかジュダイとは本当に合うなぁと思った。
「パぁーーーー。おなか一杯」
ジュダイは自分のおなかをポンポンと叩いた。
「オレはちょっともの足んないかな?」
「いいじゃん。腹八分目」
「そーだな」
テレビも付けずに二人の体を寄せ合ってる。
まるで小動物のように。
背中は壁に預け、この瞬間は恐怖や呪いなど忘れていた。
「ね、ロマン。ちょっとゲームする?」
「ゲーム? ゲームなんてあるの?」
「ミサキちゃん褒めゲーム!」
「なんだそりゃ。どうやるの?」
「ミサキ、かわいいの? って聞いて」
「なんで!」
「いいじゃん!」
「照れくせ~。オレになんのメリットあるんだよ……」
「いいからいいから。なにかいいことあるかもよ? ホラ。カモーン」
「えーーー……。ミサキ、かわいいの?」
「オーケー! ミッション達成!」
「イエーイ! ってそれだけでいいのかよ。簡単だな」
「次はちょっと難しいです」
「ほーう。なんか楽しみになって来た」
「レベル2は、さっきの言葉から“かわ”を取って下さい」
「あー。そーゆやつね。えーと。“かわ”、“かわ”……」
しばらく考えてみて、「ん?」となった。
ジュダイの顔が少しばかり赤い。
そしてオレの言葉を期待して待っていた。
「えーと。……ミサキ……いいの?」
「……うん。いいよ……」
速攻、オレはジュダイに覆い被さった。
なにも考えられない。
なにも考えない……。
水面に石を投げいれると、いくつも波紋が出来るように快感が広がっていく。
二人は、このぬるい気温の中、熱く熱く溶け合った。
壁とテーブルの狭い間の中で寝転び、裸のまましばらくうっとりと陶酔しあった。
「一緒に暮らす?」
ジュダイが聞いて来た。
「いいねぇ~」
オレは天井を向いていた顔を彼女の方に向きを変えながら言った。
「会社に通える?」
「ここからのほうが近い」
「わーお。家賃払ってよね~」
「ぜんぜんオーケー。近いうちに自室に荷物取りにいこーっと。ジュダイも付き合えよ?」
「うんうん」
まどろんでいると二人のスマホから「チンコン」とトークアプリの着信音が鳴った。
「同時?」
「数珠じゃね?」
二人して起き上がり、テーブルの上にあるスマホを取った。
トークアプリ着信の緑のランプが激しく点滅いていた。
「あー。やっぱ数珠」
「ん?」
二人ともそこに書いてあるメッセージに驚いた。
数珠「二人とも大丈夫か? 大変だ……。最近動物の死骸を見ていたが、今日はその最たるものだ。玄関の前に首が切られた犬の死骸があった」
ゾッとした。
悪質ないたずらだ。
それに、首を切っている?
尋常じゃない。猟奇的だ。
動物虐待の事件ものだろ……。
オレとジュダイは、「いたずらだ。気にするな」「警察に言った方がいい」と返信した。
だがお互い、気持ちの中には恐ろしいものが近づいて来ていると思い合っていた。
しかし言葉には出さなかった。
出してしまうと、それが現実になりそうで……。
その晩、ジュダイの部屋で彼女を抱きながら寝た。
恐ろしいのか、彼女はオレの胸の中に入り込んでいた。
それのため暑苦しく、ゴツゴツとした体が当たり、浅い眠りしか取れなかった。
……いや。
そう言い訳してるだけだ。
本当は怖くて仕方なかったんだ。
この部屋にも何か得体の知れないものが入り込んで、オレたちを見ている?
そんな感覚があった。
彼女を守れるのだろうか?
呪い?
それってなんだろう?
でもオレたちは何もしていない。
恨みや呪いなんて見当違いだろ。
呪いの方程式ってなんだろう……?
そんなことを思っていた。
やがて朝の光が差し込んで来た。
正直ホッとした。
鳥の声が聞こえる。
今日も暑くなりそうだ。
ジュダイは隣で寝ている。
ミサキか……。
正直呼び難い。
ジュダイで通していたし。
ま、これからもジュダイでいいか。
なんて思いながらそこから少し寝てしまった。
ユサユサユサ。
「ロマン! 起きて!」
「……ん? どした?」
ジュダイに揺すられて目が覚めた。
時計をみると一時間ほど失われていた。眠っていたのであろう。
意識がハッキリしてくるとザワザワと外から声が聞こえて来て騒々しさを感じた。
「なんか外が騒がしいな」
「そうなの。なんだろ? ちょっと見てみてよ」
「おーう」
オレは昨日着ていた服を着て、玄関先に出ようとすると
ピンポーン
と呼び鈴が鳴った。
「あん?」
「すいませーん。警察でーす」
え? え? え? 警察?
「ジュダイ、警察だって」
「え? なんだろ……」
意を決して、オレたちは部屋のドアを開けると「あ!」という声が外から聞こえた。
それとともに、ドアの下に虹の弧を描くように、血の跡が現れた。
「キャ!!」
ジュダイはドアから手を放し、その場に座り込んでしまった。
警察官がドアを手で止め、顔を出した。
「すいません。イタズラかもしれませんが、ドアの前に“犬の頭部”が置かれておりまして……。通報があったんです。二、三、話を聞かせていただけますか?」
「犬の……」
「頭部……」
そこには犬の頭部が置かれていた。
ドアを開けた時、頭部もズレて血の軌跡がついたのだ。
それにしても、数珠の玄関先には犬の胴体。
ジュダイとオレの方には犬の頭部。
偶然にしては出来すぎてる。
一体なんだ? なにが起きてるんだ?
オレたちは、数珠と会って話し合うことにした。
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