上 下
1 / 5

第1話 シンデレラ大地に立つ

しおりを挟む
 むかしむかし あるところにシンデレラと言うそれはそれは美しい女の子がいました。

 しかし、シンデレラは母さんを早くに亡くし──。
 父さんが連れて来た後妻さんには、二人の連れ子がおりました。

 突然、三人も家族が増えたわけですから、父さん発奮致しましてですね、頑張って働いたのですが、あえなく過労で倒れ、そのまま身罷みまかってしまいました。


 後妻さんは後家さんになってしまいました。
 子供は三人の女子ばかり。
 後家さん、これは途方に暮れます。

「私の人生、いいことなんてなにもなかった……。フレッ○スガムが2、3度当たったくらいよ……」

 とまぁ、大変な落ち込みようで、見てるこっちが可哀想になるくらいでした。

 シンデレラは気の毒な継母に声をかけました。

「まぁ、継母かあさん。人生いろいろあらぁな」
「そうね。フフ。いつまでも落ち込んでられない。さぁて! お針子でもしようかしらね?」

「その意気さね」

 後家さんは一生懸命働きました。
 しかし、このままでは後家さんも父さんと同じ道をたどってしまうかもしれません。
 シンデレラは妹たちに話しかけました。

「ねぇ。ドリゼラとアナスタシア? このままじゃ、母さんが病気になってしまうかもしれない。そうなったら、私たち体を売って生活しなくちゃならなくなるわよ?」

 妹たちは悲痛な声をあげました。

「でも、姉さんがなんとかしてあげる。継母さんが楽になるように、スライムでも100匹倒して来るわ!」

 妹たちは手を叩いて「わぁ」と喜びの声を上げました。

「ふふ。今日はお肉が食べられるかもね」

 シンデレラは両手を腰に当ててえばりました。




 シンデレラはすぐさまフィールド上にでました。

 ああ、説明してませんでしたね。これはこれは。
 大体見当はついたと思われますが、この世界は魔王と人間がバチバチやりあう世の中──。
 だから、外は魔物であふれてる……っていう。
(ていう?)

 シンデレラのその手には角材が握られてました。

「さぁ~て。とはいうもの──。スライムはどこにいるのかしらん?」

 と一人ごちますと、突然の戦闘音。

 スライムは シンデレラが みがまえるまえに おそいかかってきた!

 ミス! ダメージを受けない!

「当たらなければどうということはない」

 例えスライムが戦艦級のビームライフルを射撃してきたとしても当たらなければどうということはない。そういうことらしいです。
(なにが?)

 スライムは再度攻撃を仕掛けます。

 しかし、シンデレラはそれすらもかわしてしまいます!

「なぜ、攻撃がミスなのかわかる?」

 スライムに問いかけますが、人語を解しないスライムが答えられるわけがありません。
 それでも彼女は続けます。

「それは、私が未婚だからよ。ミセスじゃない。ミスだから」

 …………。

 静寂でした。

 あまりのくだらなさに、作者は自分で考えたことにしないことにしました。
 この女が勝手に言った──。そういうことにしようと。
(オマエが勝手だよ)

 シンデレラは角材をかまえ、スライムに狙いをさだめます。

「アンタを倒せば、2ゴールド手に入る。そしたらパンを家族分買って帰れる!」

 スライムは相当に怯えた顔をしました。
 ……まぁ、顔はどこにあるかわかりませんけどね。
 不定形生物だから。

 シンデレラは、このスライムを倒して2ゴールド。
 100匹倒せば200ゴールド。
 そしたら、あれも買って、これも買って──ウシシ。

「あ、あら?」

 スライムは逃げ出した!

畜生ガッデーームッ!」

 捕らぬ狸の皮算用をしている間に、敵もさるもの。
 スライムは命の危機を悟り逃げ出し、シンデレラは角材を地面に打ちつけたのでした。

「これじゃ、パンが買えない。なんてみじめなの──?」

 誰のせいでもありゃしない。

 その時、シンデレラの顔になにか張り付きます。

「キャ!」

 シンデレラは死ぬほどもがきました。

「なに! やだ! 虫!?」

 シンデレラは顔からそれを引きはがしました。

「──なんだ、紙かぁ。撒きチラシフライヤー??」

 手に取ってそれを見てみますと次のように書いてあります。

「えーと、何々? 愚かな人間たち各位……。愚かな人間たちにおかれましては日々ご健勝のことと拝察いたします。さて、このたび我々魔族帝国と滅ぼされるべき生き物、人間の親睦を図りまして、魔王様が武道会を開きます。賞金は100万ゴールドです。奮って参加してね! 待ってるよ。
 ※参加無料!だけど観戦は2ゴールド無心します。っと…。

 え? 100万ゴールド! 100万ゴールドですって!?
 それさえあれば、ドリゼラの大好きなサツマイモをたくさん買ってあげれる……。
 アナスタシアにトウモロコシだって……!

 ああ、神様! いやさ、魔王様!
 なんてこと!? なんてことなの!?

 ええと、武道会のルールは、武道台の上で戦い、相手が降参すれば勝ち、相手を場外に落とせば勝ち、相手を殺してしまっては負けという例のルール。なるほど! ドラゴン〇ールのあれね!」

 作者が伏せているのに、勝手にしゃべるこの女。
 この女が憎い。

 シンデレラは小躍りして帰りました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

【完結】夫もメイドも嘘ばかり

横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。 サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。 そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。 夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法

栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。

処理中です...