2 / 19
にっ
しおりを挟む
当日。鯉川は可愛らしい格好をしてきた。
グッとくる──んだろうな。こういうのが好きな男は。
結局は最後は服なんて着ないのに。
大きなあくびをして水族館に向かうオレに対して、鯉川は楽しそうだ。
横目に他の高校生カップルを見る。
男が女に興味をそそることを話すなんて所詮最初だけだ。
親密になるほど無口になる。
逆に女の方が話し出す。それを聞いてる方が楽。
鯉川はオレが話すことを期待してるんだろうけど、特段話すことなんてない。なにか話してくれた方が楽だ。
「あの……」
「なに?」
「お魚、何が好きなんですか?」
「なんだろ? エビとか?」
「エビ? プ」
口を押さえて笑い出す鯉川。こういうのは可愛い。
作られた表情じゃなくて、不意な笑顔。
だいたいは気に入られようと演技で表情作るからな。大人の方がそれは顕著だ。
へー。鯉川、いい顔で笑うんじゃん。
「エビのコーナーとか想像つかないです」
「そう? 甲殻類が好きだけどな」
「へー。意外ですね」
「何が好きだと思った?」
「サメとかですかね? イルカとか」
「たしかに嫌いじゃない」
「じゃイルカのショーも見ましょう!」
う。なかなか活発だな。めんどい。
笑ったタイミングから親密度が増したと感じたんだな。失敗。
こんなんで一日グイグイ来られちゃ疲れる。
水族館到着。
楽しそうな彼女について、水族館の順路をただ巡るだけ。
エビもイルカも大して覚えちゃいない。
昼食を軽くとって、電車で移動。
夕方ぐらいまで一緒の予定だったけど、なんかもう疲れた。
適当に駅近くの公園のベンチで座っていた時だった。
「先輩……。楽しかったですか?」
少し落ち込んだような声。
つーか、そういうの言うから楽しくなくなんだよ。もう帰ろう。
「いや良かったよ。でも今日はちょっと疲れたから帰ろう」
「え──?」
立ち上がるオレの腕にすがってくる鯉川。なんなんだよ。
「まだいいじゃないですか」
「いや、昨日寝てないんだよね」
「だったらどこかで休みます?」
は?
彼女の視線の方にはホテル。つか前に誰かと行ったことあるけど、狭いし汚いんだよな。古いから。
「なんだよ。そんなこと言う子じゃないと思ってたのに」
「だって先輩が──」
「おいおい。あれは冗談だって」
「私、先輩なら、先輩になら」
「いや、今日は金も持って来てねーし」
「私持ってます」
グイグイうぜぇー!
しがみつく彼女をどうにははがそうとしていると、公園の散歩道を駆ける音が聞こえる。
普段なら気にもならないが、ふと顔を上げると見覚えのある顔。
そいつと目が合うとニヤリと笑う。
「タケルー。泣かせんなよー」
そう茶化して目の前を通り過ぎてしまった。
近所に住む細井 令。
短髪で男みたいなスタイルだがれっきとした女。
小学校の頃はよく遊んだが、中学からは疎遠。高校は別なところ。
ランニングスーツに身を包んで走っているのは、たしか陸上部とかって言ってたな。
走っているのに、女なのに、揺れてるものがまったくない。
だけど──。
なんでこんなにドキッとするんだ?
しばらく彼女の後ろ姿をながめていた。
なんだろう。こんなふうに思うの初めてだ。
うらやましいのかな。
走りに賭けてるっつーか、恋愛なんて関係ねーってスタイルなのか。
妙にかっこいい。短い髪が風になびいてる。
今までたくさんの女を抱いて来たけど、正直、こんなキレイなもんみたの初めてかもしんねぇ。
グッとくる──んだろうな。こういうのが好きな男は。
結局は最後は服なんて着ないのに。
大きなあくびをして水族館に向かうオレに対して、鯉川は楽しそうだ。
横目に他の高校生カップルを見る。
男が女に興味をそそることを話すなんて所詮最初だけだ。
親密になるほど無口になる。
逆に女の方が話し出す。それを聞いてる方が楽。
鯉川はオレが話すことを期待してるんだろうけど、特段話すことなんてない。なにか話してくれた方が楽だ。
「あの……」
「なに?」
「お魚、何が好きなんですか?」
「なんだろ? エビとか?」
「エビ? プ」
口を押さえて笑い出す鯉川。こういうのは可愛い。
作られた表情じゃなくて、不意な笑顔。
だいたいは気に入られようと演技で表情作るからな。大人の方がそれは顕著だ。
へー。鯉川、いい顔で笑うんじゃん。
「エビのコーナーとか想像つかないです」
「そう? 甲殻類が好きだけどな」
「へー。意外ですね」
「何が好きだと思った?」
「サメとかですかね? イルカとか」
「たしかに嫌いじゃない」
「じゃイルカのショーも見ましょう!」
う。なかなか活発だな。めんどい。
笑ったタイミングから親密度が増したと感じたんだな。失敗。
こんなんで一日グイグイ来られちゃ疲れる。
水族館到着。
楽しそうな彼女について、水族館の順路をただ巡るだけ。
エビもイルカも大して覚えちゃいない。
昼食を軽くとって、電車で移動。
夕方ぐらいまで一緒の予定だったけど、なんかもう疲れた。
適当に駅近くの公園のベンチで座っていた時だった。
「先輩……。楽しかったですか?」
少し落ち込んだような声。
つーか、そういうの言うから楽しくなくなんだよ。もう帰ろう。
「いや良かったよ。でも今日はちょっと疲れたから帰ろう」
「え──?」
立ち上がるオレの腕にすがってくる鯉川。なんなんだよ。
「まだいいじゃないですか」
「いや、昨日寝てないんだよね」
「だったらどこかで休みます?」
は?
彼女の視線の方にはホテル。つか前に誰かと行ったことあるけど、狭いし汚いんだよな。古いから。
「なんだよ。そんなこと言う子じゃないと思ってたのに」
「だって先輩が──」
「おいおい。あれは冗談だって」
「私、先輩なら、先輩になら」
「いや、今日は金も持って来てねーし」
「私持ってます」
グイグイうぜぇー!
しがみつく彼女をどうにははがそうとしていると、公園の散歩道を駆ける音が聞こえる。
普段なら気にもならないが、ふと顔を上げると見覚えのある顔。
そいつと目が合うとニヤリと笑う。
「タケルー。泣かせんなよー」
そう茶化して目の前を通り過ぎてしまった。
近所に住む細井 令。
短髪で男みたいなスタイルだがれっきとした女。
小学校の頃はよく遊んだが、中学からは疎遠。高校は別なところ。
ランニングスーツに身を包んで走っているのは、たしか陸上部とかって言ってたな。
走っているのに、女なのに、揺れてるものがまったくない。
だけど──。
なんでこんなにドキッとするんだ?
しばらく彼女の後ろ姿をながめていた。
なんだろう。こんなふうに思うの初めてだ。
うらやましいのかな。
走りに賭けてるっつーか、恋愛なんて関係ねーってスタイルなのか。
妙にかっこいい。短い髪が風になびいてる。
今までたくさんの女を抱いて来たけど、正直、こんなキレイなもんみたの初めてかもしんねぇ。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り
あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。
しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。
だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。
その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。
―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。
いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を
俺に教えてきた。
―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。
「――――は!?」
俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。
あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。
だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で
有名だった。
恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、
あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。
恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか?
時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。
―――だが、現実は厳しかった。
幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて
出来ずにいた。
......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。
―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。
今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。
......が、その瞬間、
突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり
引き戻されてしまう。
俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が
立っていた。
その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで
こう告げてくる。
―――ここは天国に近い場所、天界です。
そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。
―――ようこそ、天界に勇者様。
...と。
どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る
魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。
んなもん、無理無理と最初は断った。
だが、俺はふと考える。
「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」
そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。
こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。
―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。
幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に
見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと
帰還するのだった。
※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
ボカロカップ9位ありがとうございました!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
ローズフィアの物語 青銀の聖女
ひしん
ファンタジー
大教会で聖女と崇められるシャーレンには秘密があった。 正体不明の【仮面の魔術師】として密かに反乱軍に手を貸しているのだ。 そんな彼女の前に現れた、平民出身の美貌の異端審問官ロゼス。 何かと親切にしてくれる彼にシャーレンは次第に心を許していくが――。 心優しい天然聖女と、消せない闇を抱いた美貌の異端審問官。 二人の愛憎を軸に巡っていく、取り返しのつかないところから始まる恋愛戦記ファンタジー。 ドSで腹黒な美貌の異端審問官×心優しい天然聖女様です。 バカップル目指してますが、ロゼスが本当にしゃれにならない鬼畜外道なのでご注意ください。 軽めに拷問シーン等を含みます。 そそっかしいお付の神官、お人よしで底抜けに明るい盗賊、幼馴染の廃王子、寡黙で冷徹な兄騎士、苛烈で傲慢な王子……等々個性的なキャラが売りです♪
恋なんて必要ないけれど
水ノ瀬 あおい
青春
恋よりバスケ。
「彼女が欲しい」と耳にする度に呆れてしまって、カップルを見ても憐れに思ってしまうセイ(小嶋誠也)。
恋に全く関心がなくて、むしろ過去の苦い経験からできれば女とは関わりたくもない。
女に無駄な時間を使うならスコアを見直してバスケのことを考えたいセイのバスケと……恋愛?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる