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第2章

雨空に焦がれて-1

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 次の授業のため音楽室へ行こうとしたとき、廊下の向こうから神々しいオーラを放って悠然と歩く一人の男子生徒の姿が見えた。

 生徒会長の、藤川先輩だ。

 背も高いしスタイルが良いので、本人にそのつもりはなくとも嫌でも目立つ。

 目があってはいけないと思った私は若干下を向き、教科書を抱きしめ廊下の端の方を歩いた。
 積極的な女子は、廊下の窓からキラキラと降り注ぐ太陽光を浴びた彼を、じっと熱い目差しで見つめている。

 いい香りまで漂ってきそうな藤川先輩とすれ違いかけたとき。
 なぜか彼はちょうど斜め前で立ち止まり、私のことを見下ろしてきた。

 突然の事態にパニックになる私。冷や汗までもが出そうになってくる。

 彼のような人が私に用事などあるわけがない。
 お辞儀をしてそのまま去ろうとしたのに、藤川先輩の手が私の二の腕を掴んだ。


「ちょっと待って」

 低めの甘い声が耳をくすぐる。
 軽く腰をかがめ、私の顔を検品するかのようにじっくりと眺めてくる。

 間近で見た藤川先輩は、柔らかく微笑みながらも鋭い目尻が特徴的な、冷たくて近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
 例えば。表の顔は真面目で優しいけれど、心の底では残酷なことを密かに企んでいる、腹黒なタイプに思えた。


「ねえ、君。生徒会に興味ある?」
「え……?」

 あくまで相手を怖がらせないためか、柔らかく喋りかける生徒会長。
 でもあいにく、私は生徒会に興味はない。美術部のことで精一杯だから。


「良かったら、一緒に生徒会やらない? 人手不足で困ってるんだ」
「えっと、あの……私は……」

 どうやって穏便に断ろうか、考えを巡らせていたとき。


「藤川。白坂さんに何の用?」

 背後から声がかかり、振り向くと斜め後ろの位置に柏木先輩が立っていた。


「……その手、離してくれる?」

 ゆっくりとした低い声がさらに近づき、藤川先輩に掴まれていた腕はその声により自然と緩む。
 その隙に柏木先輩が私の手首を引き、藤川先輩との距離が開いた。
 バランスを崩した私の体は、微かに柏木先輩の制服に触れ、ドキリとする。
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