27 / 58
真剣なアホは度し難い
しおりを挟む
突然の闖入者を見て、俺は叫んだ。
「お、お前は……シャルロット!? 西から戻って来てたのか!」
シャルロットはマリオンに剣を突きつけたまま、大声で怒鳴る。
「貴様ぁーっ! さっきから聞いてれば、撲殺だの洗脳だの世界征服だのと、不穏な事ばかりほざきおって! 挙句の果てに、我が国の英雄ジュータ殿を、是が非でも欲しいと勾引かそうとは捨て置けぬ! 王国の平和を乱す無法の輩は、正義の名の下に私が成敗してくれるわ! 『我、シャルロット・ドゥ・ヴィリエは、汝、ナゴヤ・ニャアコに対して決闘を宣言する!』 さあ正々堂々と、いざ尋常に勝負されたしっ!」
シャルロット・ドゥ・ヴィリエ(21才)、俺の知り合いの女騎士である。
レアスキル『デュエル』を所持していて、これは『対象の一人を決闘相手として宣言』することで、そいつからのスキルダメージを完全無効化し、さらに対象限定で攻撃と防御をアップするという、「自分だけパワーアップするくせに、正々堂々ってどういう意味ですかね?」と首をひねりたくなる代物だ。
しかも対象の名前は、『シャルロット本人が認識してる名前』でいいので、本名がわからなくても発動可能と、なかなか反則級のスキルである。
正直、俺が負ける相手がいるのなら、こいつかウラギールくらいだと思うのだが……シャルロットはオツムがあんまりよろしくないので、いつも多数相手に突っ込んで、他の奴らに袋叩きにされている。
最初に言っておく。
俺は、こいつを女だと思ってない。
重要な事なので、もう一度、言っておく。
俺は、こいつを女だと思ってない。
慌てた俺が割って入ろうと一歩前に踏み出すと、シャルロットは剣を俺へと向けてきた。真剣が光を反射して、冷たく輝く。
「ジュータ殿、動かないでくださいっ! こやつは先ほど、あなたに怪しげな術を掛けてました! あなたは、操られてる恐れがあります! これは警告です……抵抗するなら、あなたから倒す覚悟がある事を、お伝えしておきます!」
「な、なにぃ……っ!? バ、バカなぁー!!」
……くぅっ! こ、これは非常にマズイぞ!
はっきり言って、シャルロットはアホの子だが、俺はタイマンで、こいつに勝てるビジョンが思い浮かばないっ!
なにせ、剣の腕は向こうが圧倒してる上に、身体能力までアップしてるのだ。致命傷は『メガクラッシュ』の無敵で回避できるだろうが、こちらのスキルダメージも通らないんじゃ、ジリ貧になるだけだろう!
『デュエル』の宣言前に素早く組み敷こうにも、部屋の中で『メガクラッシュ』を使えば、マリオンまで巻き込む恐れがある。
ク……クソ、どうしたら……!?
マリオンが、おろおろしながら後ずさる。
俺は、大急ぎで叫んだ。
「マリオンっ、うかつに動くな! そいつは本物のアホだ! アホが凶器を持ってるんだぞ、大怪我する恐れがある!」
「うっ、ええ……えーっ!?」
マリオンが青い顔で、鞭を取り落す。
アホのシャルロットから発散される殺気が、マジもんだとわかったのだろう。キ●ガイに刃物である。下手をしたら、殺される……そりゃあ、怖いに決まってる!
マリオンは膝をガクガク笑わせて、可哀想なほど怯えきってしまった。
シャルロットは油断なく、俺らを交互に見ながら、マリオンに言う。
「ほう……? 自ら武器を捨てるとは、勝ち目なしと判断したという事ですね……よろしい。では、一思いに成敗してさしあげましょう!」
シャルロットが大きく剣を振りかぶった。
俺は自分の左手を指差して、阻止の声を上げる。
「まーっ!? 待て待てー! 見ろ、シャルロット! これを見てくれ! ほら、『一期一会』の刻印だよ! マリオンは、俺の奴隷なんだ!」
シャルロットは、俺の左手をジッと見た後で、不思議そうに首をかしげる。
「は? なんですかそれ……知りません!」
「……っ! マ、マジかよ! さすがはアホの子、一般常識も知らねえのか!」
次に俺は周囲を見回しながら、力の限り叫んだ。
「おーい、ウラギール! いないのか、ウラギールっ! この場を収められるのは、お前だけだーっ!」
シャルロットが、不敵に笑う。
「ふっふっふ……ウラギールはいませんよ! 彼は、ジュータ殿への手土産を買いに、菓子屋に寄りました。私は外で待ってるように言われたのですが、カワイイ猫ちゃんを見つけて抱っこしようと夢中で追っかけてるうちに、いつの間にかジュータ殿の屋敷の前にいたのです! 喉も乾いたし、お水でも飲ませて貰おうかと、これ幸いと一足先にお邪魔して勝手に井戸を使ってた所、楽しげな叫びが聞こえまして、仲間に入れて欲しいと窓から覗いて、今に至る……僥倖でした!」
「くぅうっ! 相変わらず、しょうもねえ行動ばっかしてやがる、こいつーっ!」
しかし、今の話は重要である。つまり、ウラギールもうちに向かってるという事だ。彼の到着まで時間を稼ぐ事ができれば……なんとかなるかもしれない!
最悪なパターンは、ウラギールがシャルロットを探して、時間を浪費する事だが……こればっかりは、どうしようもない。
俺は、俺にできる事をするだけだ!
「お、お前は……シャルロット!? 西から戻って来てたのか!」
シャルロットはマリオンに剣を突きつけたまま、大声で怒鳴る。
「貴様ぁーっ! さっきから聞いてれば、撲殺だの洗脳だの世界征服だのと、不穏な事ばかりほざきおって! 挙句の果てに、我が国の英雄ジュータ殿を、是が非でも欲しいと勾引かそうとは捨て置けぬ! 王国の平和を乱す無法の輩は、正義の名の下に私が成敗してくれるわ! 『我、シャルロット・ドゥ・ヴィリエは、汝、ナゴヤ・ニャアコに対して決闘を宣言する!』 さあ正々堂々と、いざ尋常に勝負されたしっ!」
シャルロット・ドゥ・ヴィリエ(21才)、俺の知り合いの女騎士である。
レアスキル『デュエル』を所持していて、これは『対象の一人を決闘相手として宣言』することで、そいつからのスキルダメージを完全無効化し、さらに対象限定で攻撃と防御をアップするという、「自分だけパワーアップするくせに、正々堂々ってどういう意味ですかね?」と首をひねりたくなる代物だ。
しかも対象の名前は、『シャルロット本人が認識してる名前』でいいので、本名がわからなくても発動可能と、なかなか反則級のスキルである。
正直、俺が負ける相手がいるのなら、こいつかウラギールくらいだと思うのだが……シャルロットはオツムがあんまりよろしくないので、いつも多数相手に突っ込んで、他の奴らに袋叩きにされている。
最初に言っておく。
俺は、こいつを女だと思ってない。
重要な事なので、もう一度、言っておく。
俺は、こいつを女だと思ってない。
慌てた俺が割って入ろうと一歩前に踏み出すと、シャルロットは剣を俺へと向けてきた。真剣が光を反射して、冷たく輝く。
「ジュータ殿、動かないでくださいっ! こやつは先ほど、あなたに怪しげな術を掛けてました! あなたは、操られてる恐れがあります! これは警告です……抵抗するなら、あなたから倒す覚悟がある事を、お伝えしておきます!」
「な、なにぃ……っ!? バ、バカなぁー!!」
……くぅっ! こ、これは非常にマズイぞ!
はっきり言って、シャルロットはアホの子だが、俺はタイマンで、こいつに勝てるビジョンが思い浮かばないっ!
なにせ、剣の腕は向こうが圧倒してる上に、身体能力までアップしてるのだ。致命傷は『メガクラッシュ』の無敵で回避できるだろうが、こちらのスキルダメージも通らないんじゃ、ジリ貧になるだけだろう!
『デュエル』の宣言前に素早く組み敷こうにも、部屋の中で『メガクラッシュ』を使えば、マリオンまで巻き込む恐れがある。
ク……クソ、どうしたら……!?
マリオンが、おろおろしながら後ずさる。
俺は、大急ぎで叫んだ。
「マリオンっ、うかつに動くな! そいつは本物のアホだ! アホが凶器を持ってるんだぞ、大怪我する恐れがある!」
「うっ、ええ……えーっ!?」
マリオンが青い顔で、鞭を取り落す。
アホのシャルロットから発散される殺気が、マジもんだとわかったのだろう。キ●ガイに刃物である。下手をしたら、殺される……そりゃあ、怖いに決まってる!
マリオンは膝をガクガク笑わせて、可哀想なほど怯えきってしまった。
シャルロットは油断なく、俺らを交互に見ながら、マリオンに言う。
「ほう……? 自ら武器を捨てるとは、勝ち目なしと判断したという事ですね……よろしい。では、一思いに成敗してさしあげましょう!」
シャルロットが大きく剣を振りかぶった。
俺は自分の左手を指差して、阻止の声を上げる。
「まーっ!? 待て待てー! 見ろ、シャルロット! これを見てくれ! ほら、『一期一会』の刻印だよ! マリオンは、俺の奴隷なんだ!」
シャルロットは、俺の左手をジッと見た後で、不思議そうに首をかしげる。
「は? なんですかそれ……知りません!」
「……っ! マ、マジかよ! さすがはアホの子、一般常識も知らねえのか!」
次に俺は周囲を見回しながら、力の限り叫んだ。
「おーい、ウラギール! いないのか、ウラギールっ! この場を収められるのは、お前だけだーっ!」
シャルロットが、不敵に笑う。
「ふっふっふ……ウラギールはいませんよ! 彼は、ジュータ殿への手土産を買いに、菓子屋に寄りました。私は外で待ってるように言われたのですが、カワイイ猫ちゃんを見つけて抱っこしようと夢中で追っかけてるうちに、いつの間にかジュータ殿の屋敷の前にいたのです! 喉も乾いたし、お水でも飲ませて貰おうかと、これ幸いと一足先にお邪魔して勝手に井戸を使ってた所、楽しげな叫びが聞こえまして、仲間に入れて欲しいと窓から覗いて、今に至る……僥倖でした!」
「くぅうっ! 相変わらず、しょうもねえ行動ばっかしてやがる、こいつーっ!」
しかし、今の話は重要である。つまり、ウラギールもうちに向かってるという事だ。彼の到着まで時間を稼ぐ事ができれば……なんとかなるかもしれない!
最悪なパターンは、ウラギールがシャルロットを探して、時間を浪費する事だが……こればっかりは、どうしようもない。
俺は、俺にできる事をするだけだ!
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
★完結!★【転生はもう結構です!】崖から落とされ死んだ俺は生き返って復讐を誓うけど困ってるドラゴン助けたら女になって娘が出来ました。
monaka
ファンタジー
99万9999回転生を繰り返し最後に生き返りを選択した男の
転生&生き返り子育てTSファンタジー!
俺、ミナト・ブルーフェイズはテンプレの如く信じていた仲間に裏切られて殺されてしまった。
でも死の間際に走馬燈代わりに前世でイカレ女に惨殺された記憶を思い出すってどういう事だよ!
前世ではヤバい女に殺されて、転生したら仲間に殺される。俺はそういう運命なのか? そんなの認められるはずないよなぁ!? 絶対に復讐してやる謝ったってもう遅い!
神との交換条件により転生はせず生き返ったミナトは自分を殺した奴等に復讐する為動き出す。しかし生き返った彼に待っていたのは予想外の出会いだった。
それにより不思議な力(と娘)を手に入れた彼の人生は想定外の方向へ大きく動き出す。
復讐を果たす為、そして大切なものを守る為、ミナト最後の人生が今始まる。
この小説は小説家になろう、カクヨムにも連載しております。
文字数の都合上各サイトによりタイトルが微妙に違いますが内容は同じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる