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第七部 これからの日常、異世界の日常
異世界の章・その7 仁義なき抗争?
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サムソン辺境王国。
ストーム・フォンゼーン王が統治するラグナ・マリア屈強の国家。
いくつもの鉱山を保有し、そして腕のいい鍛治師を大量に抱えている巨大鍛治国家。
加えて近年は、以前から行なっていた魔道具の解析なども行い、カナン魔導連邦とも技術提携を行なっている。
そのサムソンで、先日大規模な人事整備が行われた。
それまでは執務官でしかなかったキャスバルがサムソン宰相に任命され、各領地の貴族達による貴族院を新たに設立。
サムソンはキャスバルと貴族院によって国家運営を行う事になった。
「それでも最終的な決定権は俺とキャスバルが持っているので。大概のことはキャスバルに任せるよ」
王城内の議会室。
その中央でストームが周囲にいる貴族院の代表に説明している。
「しかしフォンゼーン王。いきなり国家運営を私たちに任せていいのですか?」
挙手してからクレスト辺境伯が問いかける。
これには地方領主代表で参加しているガイスト伯爵とイダテン辺境伯も頷いているが。
「私たちの手腕を信じているからこそ、フォンゼーン王は私たちにサムソンの未来を託してくれました。だからこそ、私たちはその信頼に応えなくてはいけないのでは?」
セシール伯爵がそう問いかけると、新たに領主となったスティンガー男爵とキュクロス男爵も頷いている。
スティンガー男爵は元マクドガル伯爵に仕えていた貴族、キュクロス男爵はガリクソン伯爵の息子にあたる。
共に10年間で立派に領主としての手腕を身につけたので、新しく男爵位を授けて領地を任せたらしい。
「セシール伯爵に褒められるとむず痒いのだが。もう身体は大丈夫なのか?」
「はい。マチュア様とミア導師のおかげです。そろそろ領主を引退してシルヴィーの元に引っ越したいのですけれどね」
「その代わりに|転移門(ゲート)を繋げただろう?まあもう少しだけ頑張れ。次代のニアマイアー領を任せられる人材が育たなくてなぁ」
そう笑うストーム。
「しかし、フォンゼーン王は私たちが謀反を起こすのではという危惧は抱かないのですか?10年前にサムソンが独立した時は、私たちは王に対して非協力的だったのですよ?」
イダテン辺境伯が恐る恐る問いかけるが。
「なあに。謀反を起こす勇気があるのか?」
「そ、そんな滅相も無い。剣聖相手に謀反など」
「そういう事だよ。俺のサムソンとマチュアのカナンでは、誰かが謀叛を起こすかもという危惧はない。謀反が成功するという自信が何処から来るのかと逆に聞きたいわ」
そう話してから、ストームはゆっくりと席を立つ。
「これから先、俺はサムソンを大きくする気はない。今のまま、のんびりとした国にして欲しいんだ‥‥それを邪魔するのなら俺が実力で排除するが、そうでない小さなことは全てここにいる者達と貴族院に任せる」
その言葉に全員が頷く。
それでこの日の会談は終わるはずであった。
そうは問屋が卸さないと、キャスバルが静かに挙手。
「どうしたキャスバル、何か問題でも?」
「ええ。フォンゼーン王、この件はわがサムソンの未来を揺るがしかねない事案です。いつか話さなくてはと思いましたが‥‥」
その真剣な表情に、ストームも何かを感じた。
「良いだろう。ここで話して対策を考えよう。それでなんだ?」
そう問いかけるストームに、キャスバルは静かに一言。
「フォンゼーン王の妃について。つまり王の婚姻についてがこれからの議題です」
――ガタッ
突然の話に椅子から落ちるストーム。
「ま、まて。それの何処がサムソンの未来に‥‥ああ、そうか」
「ええ。ラグナ・マリアは王位は代々直系男子に受け継がれます。いない場合は直系女子。ですが、フォンゼーン王は未だに婚姻の儀を執り行なおうとはしません」
「そ、それはだな。相手が」
「いないとは言いませんよね?私の姪であるシルヴィーがいるではありませんか」
にこやかに告げるセシール。
さらに。
「それとラグナ・マリア十大商家であるアルバート家の長女カレン・アルバート。北方大陸カムイのシャーマン家の長女クッコロ、これだけの妃候補がいてどうしてですか?」
その問いかけに、ストームは腕を組んで考える。
暫しの沈黙。
だが、ストームはゆっくりと口を開くと、机の上に|魂の護符(プレート)を置いた。
「まあ、これが俺が婚姻しない理由だ」
青銀色の|魂の護符(プレート)。
それを見た瞬間、その場の全員が絶句した。
「どうやら誰も何も言わないからわかっているんだな。赤神竜の眷属ボルケイド討伐、ティルナノーグの魔族侵攻、バイアス連邦侵攻の際の魔人竜ベネリ討伐。この三つの偉業で、俺の魂は亜神に昇華している」
「ですが、それが妃を娶らない理由には」
「なるんだよ。余程のことがない限り俺は死なない。老化すらしない‥‥俺が婚姻したとして、妻も、子供も、孫も‥‥俺はずっと大切なもの達の死を見ていかなくてはならない‥‥それがどれだけ辛いか分かるか」
沈黙。
そのストームの悲痛な叫びを、誰もが理解した。
「ですが。より多くの幸せを見て生きる事もできます。死が王と最愛のものを分かつのなら、より多くの生を愛していけば良いのです」
セシールは静かにそう告げる。
その言葉の重みをストームは知っている。
だからこそ。
「より多くの生か。だが、そんな事をしたら、サムソンの民の全てが俺の血を受け継ぐことになるかもしれないぞ」
「王国民全て剣聖の血筋。それもまた楽しそうですなぁ。わが娘もついでに娶ってください」
誰かが笑いながら呟く。
「うちは娘はいないが、孫なら可愛い子がいる。フォンゼーン王、あと15年待ってくれれば妻として差し出しますぞ」
「まだ一歳かよ‼︎ ない話だわ‥‥」
そう叫んでいるが、ストームの瞳からは涙が溢れている。
「今の話から考えると、ミナセ女王も亜神ですか。初代ラグナ・マリアの王のようにミナセ女王とも婚姻を結べば、新しくストーム・マチュア帝国が」
――スパァァァァン
そう叫んだイダテン辺境伯の顔面にツッコミハリセンが炸裂する。
「あいつと結婚するぐらいなら、自ら命を絶つ。それにあいつは友達であり異性としては考えていない。イダテン辺境伯、次に同じ事を呟いたら刀で突っ込むぞ」
笑いながら話すストーム。
それにはその場の全員が大笑いした。
「そうだな。こういう笑い声をいつまでも聞いていたいよな‥‥婚姻の儀、前向きに検討するとしよう」
椅子に座ってそう呟く。
「やれやれ。初めてフォンゼーン王が負けを認めましたか」
「ああ、そうだな。今回は俺の負けだ。近いうちに関係者とは話をするさ」
「ではこれで、本日の会談を終わることとしましょう」
キャスバルが締めの言葉を告げると、全員が席を立って部屋から出ていく。
その姿を見送ってから、ストームも最後に部屋から出て行った。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
今度はカナン魔導連邦。
「客室を10個、急ぎ貴賓室のように設えて下さい。カナン魔導騎士は明日から異世界日本の言語講習を始めます」
王城内の謁見の間で、マチュアは集まっている全ての魔導騎士団に指示を出していた。
異世界日本から戻ってきた翌日、今度は日本からの査察団を迎える準備をしなくてはならない。
だんだんと国交を結ぶための準備が始まったので、魔導騎士団にも雑務が増えてきている。
「マチュア様、査察団に対しての対応の件ですが。食事などはどのようなものを用意したら良いのですか?」
「明日までにメニューを作成します。ああっ、ドライやツヴァイの手を借りたいわ」
ツヴァイは異世界ギルドで受け入れ準備のための細かいルールを作成中。
ドライは2年間の南方出向。
さらにファイズとゼクスは使節団の護衛任務のため、日本語の講師として騎士団に勉強を教えている。
「クィーンは何しているのよ」
「私はカナン魔導連邦の執務です。異世界ギルドの件は私は手伝えませんよ」
堂々と告げるクィーン。
それは仕方ないとマチュアは諦めた。
「さて、それじゃあ各ギルドに協力依頼。商人達は異世界人との交渉の禁止をギルドを通じて通達をお願いします」
一通りの指示を終えると、マチュアは晩餐会などのメニュー作成を始めた。
そんなこんなで5日が経過すると、いよいよ今日、日本国から査察団がやってくる。
最初の謁見は|マチュア(クィーン)に任せて、マチュアは綺麗な商人服に身を包むと、異世界ギルドで日本人の到着を待っていた。
――キィィィィィィン
やがて魔法陣が輝くと、使節団の第一便がやってきた。
「‥‥」
興奮で言葉を失っている人々。
だが、マチュアの姿を見ると、すぐに頭を下げてくる。
「これは女王自らのお出迎え恐縮です」
菅野官房長官がマチュアにそう告げるが。
「初めまして。私はこの異世界ギルドのギルドマスターを務めていますマチュアと申します」
青銀色に輝く異世界ギルドカードを差し出す。
「ミ。ミナセ女王ですよね?」
「いえいえ。不思議なことですが私は商人のマチュアです。女王とは名前も同じですが別人ですよ」
ニッコリと笑うマチュア。
その言葉をどれだけ信じるか不安ではあるが。
「そうでしたか。今回のお招きありがとうございます」
菅野官房長官以下三名も頭を下げるので、マチュアももう一度頭を下げた。
「では、まず此方で検疫を行います。魔法による浄化で、皆さんの体内の悪い病原菌を浄化します」
そう説明すると、マチュアは隣の部屋に案内する。
――ガチャッ
扉を開けて室内に入ると、そこにも魔法陣が床に記されていた。
そして部屋には、猫族のギルド職員であるミヌエットが待機している。
「はじめまして。検疫官のミヌエットでっす~。ではこれから検疫しますねー。荷物も全てそこにおいてくださいね」
ミヌエットが指差したのは魔法陣の中央。
「ここに入れば良いのですか?」
使節団の女性議員‥‥伊達陽子議員‥が恐る恐る入っていく。
「はい。では浄化しますね。『|範囲指定(ポイントセット)・|浄化陣(ピュリファイ)』っっっ」
ミヌエットが詠唱すると、魔法陣がゆっくりと輝く。
これによって異世界の病原菌やウィルスは浄化されてしまう。
やがて魔法陣がすっと消えると、ミヌエットは隣の部屋に続く扉を開いた。
「検疫終わりです。こちらの扉から次の部屋へどうぞ。次は手荷物検査ですので」
「あら、そこまで厳重なの?」
そう問いかける伊達にコクコクと頷くと、伊達はその言葉に従った。
今度はカウンターといくつかの仕切りのある巨大なテーブルが置いてある部屋。
伊達の姿を見た女性職員は、伊達を手招きすると説明を始めた。
「ここでは手荷物の検査を行います。機械類は一切持ち込めませんので、ここで預かることになります。預けなくて壊れても、私たちは一切責任は負えませんので」
説明書をガン見しながらそう説明すると、簡単に手荷物を確認する。
(まあ、スマホやカメラなんて、この世界にはない文化でしょう?形を見た程度では分かるはずないわ)
手荷物の中にスマホとハンディカメラを入れている伊達。
異世界に来た以上は、少しでも自分たちに有利に話をしたいのである。
そのための証拠集めのため、持ち込み禁止と告げられている機械類をバッグに入れていた。
「ふむふむ。問題ないですね~」
(ほらね。所詮は文明の遅れている世界。せいぜい日本に貢いで貰いましょう)
「あらもう終わりなの?」
「ええ。機械類は入っていませんよね?」
「入っていないわよ。このあとは何処へ?」
「そちらから部屋を出てください。隣が異世界ギルドの事務所ですので。そこを通り抜けると外に出れますし、事務所では通貨の換金も行なっています」
「あらそうなの?どうもありがとうね」
丁寧に頭を下げると、伊達議員は荷物を待ってて荷物検査室を出たが。
――ボンボンボンッッッ
荷物の中のスマホやハンディカメラが小さく爆発した。
「な、なによ今の音は?」
「さぁ?私達にはわかりませんが」
慌て荷物を調べると、壊れたスマホとハンディカメラが入っている。
「これはどういう事よ?私のスマホやカメラが壊れたじゃない。どうしてくれるのよ?」
そう職員に怒鳴る伊達議員だが。
「はて?機械類は入っていなかったのですよね?」
キョトンとした表情で頭を捻る職員。
その瞬間、伊達議員の顔が真っ赤になる。
「そ、そうね。そうよ、これは私の勘違いだわ‥‥それで、どこで待ってたら良いのかしら?」
「では此方の席でどうぞらお待ちください」
そう勧められて、伊達議員は先に着く。
職員がハーブティーを持ってくると、それを一口喉に流し込む。
――ゴクッ
(ふう。規約違反したのは私だから何も言えないわ。それに、この子達も何も知らないようだから)
そんな事を考えていると、菅野官房長官が部屋から出てくる。
しっかりと規約を守ったいたので何も爆発しない。
「おや、伊達くんが早かったか。どうかね?」
「意外としっかりしていますね。あの魔法による検疫は日本でもやってみたいです」
そんなことを話していると。
――ボボボボボボボボンッッッ
同行していた記録官の手荷物と服のボタン、胸元の万年筆などが次々と爆発した。
「うわぁぁぁぁ、なんだなんだ。何が起こった‼︎」
記録官もカバンやポケットの中から壊れたスマホや隠しカメラ、ハンディカメラなどを取り出した。
中には一台百万を超える高性能なものまであるが、当然ギルドの職員たちにはわからない。
「ど、どうしてくれるんだ、弁償してもらえるのか?」
そう、職員に詰め寄るが。
「何をですか?」
「何をじゃないよ。スマホやカメラが壊れたんだよ」
「はあ。どうしてですか?」
「こっちが聴きたいよ。カバンに入れてあったカメラなんて高かったんだぞ?」
「はぁ。確か手荷物検査の時は、機械類は入っていないって言ってましたよね?」
「そ、それは‥‥」
突然モゴモゴとする記録官。
「もういい、神崎君、あれだけ念を押したのに、どうして持ち込もうとするのかね?」
菅野の言葉で、神崎と呼ばれた記録官は荷物を片付けると椅子に座って小さくなっている。
「やあやあ、やっと終わりましたよ。おや、神崎君どうしたの?」
最後に出てきた南原崇議員が、神崎を見てそう問いかけていると。
「えっと、南原さん、此方が機械類の預かり証です。帰還時にお返ししますので、無くさないでくださいね」
カウンターで南原に声をかけると、木製の預かり証を手渡す職員。
「あ、これはどうも」
それをポケットにしまうと、南原議員も菅野や伊達たちのいるテーブルにやってくる。
「どうしたの神崎君。それに伊達さんも顔色悪いですよ」
そう二人に問いかけるが。
「まあ、議員の悪い癖だ。バチが当たったんですよ。これで懲りたでしょう?」
菅野はそう二人に諭すように問いかける。
「無事にチェックは終わりましたか。それでは此方へどうぞ」
マチュアは外で待っている馬車に一行を案内すると、そのままミナセ女王の待つ王城へと案内した。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
そして3日が経過した。
異世界からやってきた使節団は、無事に3日の視察を終えて日本へと戻った。
この間に、入れ替わったマチュア女王との会談や各種ギルドの見学、都市市街地観光などを体験して戻っていった。
その最後に、今度はマチュアが日本の国会に招待されたのである。
「次は是非、我が国の最高機関である国会で色々と話を聞かせてほしいですね」
菅野がマチュア女王にそう話している。
「国会というのですか。私達の世界で言う元老院のようなものですね?」
「ニュアンス的にはそうでしょう。今回の査察の件でも、かなり大勢の議員たちがカリス・マレスに来たいといっていました。もし宜しければ近々日本国で話を聞かせて貰えませんか?」
(まさかの国会招致だわ。テレビではよく見ていたたけれど、まさかそこに行くことになるとは)
そんなことを考えているが、行かないと話にならない。
「それは構いませんが。我が国の方針に従って返答するかもしれませんので、それで宜しければ」
「ほう。このような公の場での方針があるのですか?」
「ええ。国というよりは私の方針ですけれど。言葉で殴られたら殴り返します。国会という場所がどれほどの建物が存じませんが、その気になれば全て破壊できる力を持っていることを十分に踏まえた上で宜しくおねがいします」
そう話すが決して頭を下げない。
「まあ、それほど無礼な話をする者はいませんので。どうぞよろしくおねがいします」
「そうですね。一週間後、またそちらに伺わせていただきます。そのときに国会とやらに向かうとしましょう」
それで話は全て終わった。
最後に握手をして、マチュアは査察団を無事に見送った。
‥‥‥
‥‥
‥
「さーてと。|深淵の書庫(アーカイブ)起動。媒体は水晶球、魔力感知と識別能力を付与。触れた対象の魔力の数値化‥‥よしよし」
直径20cmほどの魔力の篭った水晶球を作り出すと、次にマチュアはそれを量産し始めた。
「量産化。数は‥‥とりあえず100個で‥‥おおう6時間20分か、そのあとで配達にでも行きますか」
にこやかに話をしているマチュアだが。
異世界ギルドの奥の事務室でそんなものを見せられると、さすがの職員たちもビビる。
「あの、マチュア様。その服装でそんなことをしていますと、マチュア様が女王であることをまじまじと見せつけられて職員たちが困っているのですが」
そう告げられて気がつくと、査察団を見送りに来たときの女王の服装そのままで|深淵の書庫(アーカイブ)を起動していたのである。
「あらこれは失礼。内緒ね?」
口元に人差し指を当てて職員たちにそう話しかける。
「もうここの職員には説明してありますからから大丈夫ですけれど‥‥もう少しだけ周囲の目を気にして頂けると助かります」
フィリップがマチュアにそう話すと、マチュアはすぐさま商人スタイルに換装した。
――シュンッ
「まあまあ。このあとはエンジになって日本行ってきますね。護衛は不要で、ちょっと裏工作してきます」
「裏工作ですか?」
「ええ。あっちの人間なのに導師級の魔力保持者がいまして。あの娘はちょっとおもしろいけど、あのまま放っておいたら日本国の餌にされてしまう。実はね‥‥」
赤煉瓦亭の赤城というコックの事を説明していると、フィリップもそれには同意する。
「外交特権というのですか? こちらの世界と密接につながりを持たせて、なおかつ彼女に手を出すとどうなるかわかるよな。みたいなことをやんわりですね?」
「それそれ。まあこれが完成してからいってきます。それまでは少し休んでますので、あとは適当にお願いします」
職員たちに頭を下げると、マチュアは一旦馴染み亭へと戻っていった。
それを見送ると、職員たちもようやく緊張がほぐれたらしい。
「さて。ギルドマスターもああ仰言っていましたから、今日のところは早めに仕事を終わらせるとしましょう」
いつものようにフィリップが場を纏めると、職員たちもその言葉に従った。
ストーム・フォンゼーン王が統治するラグナ・マリア屈強の国家。
いくつもの鉱山を保有し、そして腕のいい鍛治師を大量に抱えている巨大鍛治国家。
加えて近年は、以前から行なっていた魔道具の解析なども行い、カナン魔導連邦とも技術提携を行なっている。
そのサムソンで、先日大規模な人事整備が行われた。
それまでは執務官でしかなかったキャスバルがサムソン宰相に任命され、各領地の貴族達による貴族院を新たに設立。
サムソンはキャスバルと貴族院によって国家運営を行う事になった。
「それでも最終的な決定権は俺とキャスバルが持っているので。大概のことはキャスバルに任せるよ」
王城内の議会室。
その中央でストームが周囲にいる貴族院の代表に説明している。
「しかしフォンゼーン王。いきなり国家運営を私たちに任せていいのですか?」
挙手してからクレスト辺境伯が問いかける。
これには地方領主代表で参加しているガイスト伯爵とイダテン辺境伯も頷いているが。
「私たちの手腕を信じているからこそ、フォンゼーン王は私たちにサムソンの未来を託してくれました。だからこそ、私たちはその信頼に応えなくてはいけないのでは?」
セシール伯爵がそう問いかけると、新たに領主となったスティンガー男爵とキュクロス男爵も頷いている。
スティンガー男爵は元マクドガル伯爵に仕えていた貴族、キュクロス男爵はガリクソン伯爵の息子にあたる。
共に10年間で立派に領主としての手腕を身につけたので、新しく男爵位を授けて領地を任せたらしい。
「セシール伯爵に褒められるとむず痒いのだが。もう身体は大丈夫なのか?」
「はい。マチュア様とミア導師のおかげです。そろそろ領主を引退してシルヴィーの元に引っ越したいのですけれどね」
「その代わりに|転移門(ゲート)を繋げただろう?まあもう少しだけ頑張れ。次代のニアマイアー領を任せられる人材が育たなくてなぁ」
そう笑うストーム。
「しかし、フォンゼーン王は私たちが謀反を起こすのではという危惧は抱かないのですか?10年前にサムソンが独立した時は、私たちは王に対して非協力的だったのですよ?」
イダテン辺境伯が恐る恐る問いかけるが。
「なあに。謀反を起こす勇気があるのか?」
「そ、そんな滅相も無い。剣聖相手に謀反など」
「そういう事だよ。俺のサムソンとマチュアのカナンでは、誰かが謀叛を起こすかもという危惧はない。謀反が成功するという自信が何処から来るのかと逆に聞きたいわ」
そう話してから、ストームはゆっくりと席を立つ。
「これから先、俺はサムソンを大きくする気はない。今のまま、のんびりとした国にして欲しいんだ‥‥それを邪魔するのなら俺が実力で排除するが、そうでない小さなことは全てここにいる者達と貴族院に任せる」
その言葉に全員が頷く。
それでこの日の会談は終わるはずであった。
そうは問屋が卸さないと、キャスバルが静かに挙手。
「どうしたキャスバル、何か問題でも?」
「ええ。フォンゼーン王、この件はわがサムソンの未来を揺るがしかねない事案です。いつか話さなくてはと思いましたが‥‥」
その真剣な表情に、ストームも何かを感じた。
「良いだろう。ここで話して対策を考えよう。それでなんだ?」
そう問いかけるストームに、キャスバルは静かに一言。
「フォンゼーン王の妃について。つまり王の婚姻についてがこれからの議題です」
――ガタッ
突然の話に椅子から落ちるストーム。
「ま、まて。それの何処がサムソンの未来に‥‥ああ、そうか」
「ええ。ラグナ・マリアは王位は代々直系男子に受け継がれます。いない場合は直系女子。ですが、フォンゼーン王は未だに婚姻の儀を執り行なおうとはしません」
「そ、それはだな。相手が」
「いないとは言いませんよね?私の姪であるシルヴィーがいるではありませんか」
にこやかに告げるセシール。
さらに。
「それとラグナ・マリア十大商家であるアルバート家の長女カレン・アルバート。北方大陸カムイのシャーマン家の長女クッコロ、これだけの妃候補がいてどうしてですか?」
その問いかけに、ストームは腕を組んで考える。
暫しの沈黙。
だが、ストームはゆっくりと口を開くと、机の上に|魂の護符(プレート)を置いた。
「まあ、これが俺が婚姻しない理由だ」
青銀色の|魂の護符(プレート)。
それを見た瞬間、その場の全員が絶句した。
「どうやら誰も何も言わないからわかっているんだな。赤神竜の眷属ボルケイド討伐、ティルナノーグの魔族侵攻、バイアス連邦侵攻の際の魔人竜ベネリ討伐。この三つの偉業で、俺の魂は亜神に昇華している」
「ですが、それが妃を娶らない理由には」
「なるんだよ。余程のことがない限り俺は死なない。老化すらしない‥‥俺が婚姻したとして、妻も、子供も、孫も‥‥俺はずっと大切なもの達の死を見ていかなくてはならない‥‥それがどれだけ辛いか分かるか」
沈黙。
そのストームの悲痛な叫びを、誰もが理解した。
「ですが。より多くの幸せを見て生きる事もできます。死が王と最愛のものを分かつのなら、より多くの生を愛していけば良いのです」
セシールは静かにそう告げる。
その言葉の重みをストームは知っている。
だからこそ。
「より多くの生か。だが、そんな事をしたら、サムソンの民の全てが俺の血を受け継ぐことになるかもしれないぞ」
「王国民全て剣聖の血筋。それもまた楽しそうですなぁ。わが娘もついでに娶ってください」
誰かが笑いながら呟く。
「うちは娘はいないが、孫なら可愛い子がいる。フォンゼーン王、あと15年待ってくれれば妻として差し出しますぞ」
「まだ一歳かよ‼︎ ない話だわ‥‥」
そう叫んでいるが、ストームの瞳からは涙が溢れている。
「今の話から考えると、ミナセ女王も亜神ですか。初代ラグナ・マリアの王のようにミナセ女王とも婚姻を結べば、新しくストーム・マチュア帝国が」
――スパァァァァン
そう叫んだイダテン辺境伯の顔面にツッコミハリセンが炸裂する。
「あいつと結婚するぐらいなら、自ら命を絶つ。それにあいつは友達であり異性としては考えていない。イダテン辺境伯、次に同じ事を呟いたら刀で突っ込むぞ」
笑いながら話すストーム。
それにはその場の全員が大笑いした。
「そうだな。こういう笑い声をいつまでも聞いていたいよな‥‥婚姻の儀、前向きに検討するとしよう」
椅子に座ってそう呟く。
「やれやれ。初めてフォンゼーン王が負けを認めましたか」
「ああ、そうだな。今回は俺の負けだ。近いうちに関係者とは話をするさ」
「ではこれで、本日の会談を終わることとしましょう」
キャスバルが締めの言葉を告げると、全員が席を立って部屋から出ていく。
その姿を見送ってから、ストームも最後に部屋から出て行った。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
今度はカナン魔導連邦。
「客室を10個、急ぎ貴賓室のように設えて下さい。カナン魔導騎士は明日から異世界日本の言語講習を始めます」
王城内の謁見の間で、マチュアは集まっている全ての魔導騎士団に指示を出していた。
異世界日本から戻ってきた翌日、今度は日本からの査察団を迎える準備をしなくてはならない。
だんだんと国交を結ぶための準備が始まったので、魔導騎士団にも雑務が増えてきている。
「マチュア様、査察団に対しての対応の件ですが。食事などはどのようなものを用意したら良いのですか?」
「明日までにメニューを作成します。ああっ、ドライやツヴァイの手を借りたいわ」
ツヴァイは異世界ギルドで受け入れ準備のための細かいルールを作成中。
ドライは2年間の南方出向。
さらにファイズとゼクスは使節団の護衛任務のため、日本語の講師として騎士団に勉強を教えている。
「クィーンは何しているのよ」
「私はカナン魔導連邦の執務です。異世界ギルドの件は私は手伝えませんよ」
堂々と告げるクィーン。
それは仕方ないとマチュアは諦めた。
「さて、それじゃあ各ギルドに協力依頼。商人達は異世界人との交渉の禁止をギルドを通じて通達をお願いします」
一通りの指示を終えると、マチュアは晩餐会などのメニュー作成を始めた。
そんなこんなで5日が経過すると、いよいよ今日、日本国から査察団がやってくる。
最初の謁見は|マチュア(クィーン)に任せて、マチュアは綺麗な商人服に身を包むと、異世界ギルドで日本人の到着を待っていた。
――キィィィィィィン
やがて魔法陣が輝くと、使節団の第一便がやってきた。
「‥‥」
興奮で言葉を失っている人々。
だが、マチュアの姿を見ると、すぐに頭を下げてくる。
「これは女王自らのお出迎え恐縮です」
菅野官房長官がマチュアにそう告げるが。
「初めまして。私はこの異世界ギルドのギルドマスターを務めていますマチュアと申します」
青銀色に輝く異世界ギルドカードを差し出す。
「ミ。ミナセ女王ですよね?」
「いえいえ。不思議なことですが私は商人のマチュアです。女王とは名前も同じですが別人ですよ」
ニッコリと笑うマチュア。
その言葉をどれだけ信じるか不安ではあるが。
「そうでしたか。今回のお招きありがとうございます」
菅野官房長官以下三名も頭を下げるので、マチュアももう一度頭を下げた。
「では、まず此方で検疫を行います。魔法による浄化で、皆さんの体内の悪い病原菌を浄化します」
そう説明すると、マチュアは隣の部屋に案内する。
――ガチャッ
扉を開けて室内に入ると、そこにも魔法陣が床に記されていた。
そして部屋には、猫族のギルド職員であるミヌエットが待機している。
「はじめまして。検疫官のミヌエットでっす~。ではこれから検疫しますねー。荷物も全てそこにおいてくださいね」
ミヌエットが指差したのは魔法陣の中央。
「ここに入れば良いのですか?」
使節団の女性議員‥‥伊達陽子議員‥が恐る恐る入っていく。
「はい。では浄化しますね。『|範囲指定(ポイントセット)・|浄化陣(ピュリファイ)』っっっ」
ミヌエットが詠唱すると、魔法陣がゆっくりと輝く。
これによって異世界の病原菌やウィルスは浄化されてしまう。
やがて魔法陣がすっと消えると、ミヌエットは隣の部屋に続く扉を開いた。
「検疫終わりです。こちらの扉から次の部屋へどうぞ。次は手荷物検査ですので」
「あら、そこまで厳重なの?」
そう問いかける伊達にコクコクと頷くと、伊達はその言葉に従った。
今度はカウンターといくつかの仕切りのある巨大なテーブルが置いてある部屋。
伊達の姿を見た女性職員は、伊達を手招きすると説明を始めた。
「ここでは手荷物の検査を行います。機械類は一切持ち込めませんので、ここで預かることになります。預けなくて壊れても、私たちは一切責任は負えませんので」
説明書をガン見しながらそう説明すると、簡単に手荷物を確認する。
(まあ、スマホやカメラなんて、この世界にはない文化でしょう?形を見た程度では分かるはずないわ)
手荷物の中にスマホとハンディカメラを入れている伊達。
異世界に来た以上は、少しでも自分たちに有利に話をしたいのである。
そのための証拠集めのため、持ち込み禁止と告げられている機械類をバッグに入れていた。
「ふむふむ。問題ないですね~」
(ほらね。所詮は文明の遅れている世界。せいぜい日本に貢いで貰いましょう)
「あらもう終わりなの?」
「ええ。機械類は入っていませんよね?」
「入っていないわよ。このあとは何処へ?」
「そちらから部屋を出てください。隣が異世界ギルドの事務所ですので。そこを通り抜けると外に出れますし、事務所では通貨の換金も行なっています」
「あらそうなの?どうもありがとうね」
丁寧に頭を下げると、伊達議員は荷物を待ってて荷物検査室を出たが。
――ボンボンボンッッッ
荷物の中のスマホやハンディカメラが小さく爆発した。
「な、なによ今の音は?」
「さぁ?私達にはわかりませんが」
慌て荷物を調べると、壊れたスマホとハンディカメラが入っている。
「これはどういう事よ?私のスマホやカメラが壊れたじゃない。どうしてくれるのよ?」
そう職員に怒鳴る伊達議員だが。
「はて?機械類は入っていなかったのですよね?」
キョトンとした表情で頭を捻る職員。
その瞬間、伊達議員の顔が真っ赤になる。
「そ、そうね。そうよ、これは私の勘違いだわ‥‥それで、どこで待ってたら良いのかしら?」
「では此方の席でどうぞらお待ちください」
そう勧められて、伊達議員は先に着く。
職員がハーブティーを持ってくると、それを一口喉に流し込む。
――ゴクッ
(ふう。規約違反したのは私だから何も言えないわ。それに、この子達も何も知らないようだから)
そんな事を考えていると、菅野官房長官が部屋から出てくる。
しっかりと規約を守ったいたので何も爆発しない。
「おや、伊達くんが早かったか。どうかね?」
「意外としっかりしていますね。あの魔法による検疫は日本でもやってみたいです」
そんなことを話していると。
――ボボボボボボボボンッッッ
同行していた記録官の手荷物と服のボタン、胸元の万年筆などが次々と爆発した。
「うわぁぁぁぁ、なんだなんだ。何が起こった‼︎」
記録官もカバンやポケットの中から壊れたスマホや隠しカメラ、ハンディカメラなどを取り出した。
中には一台百万を超える高性能なものまであるが、当然ギルドの職員たちにはわからない。
「ど、どうしてくれるんだ、弁償してもらえるのか?」
そう、職員に詰め寄るが。
「何をですか?」
「何をじゃないよ。スマホやカメラが壊れたんだよ」
「はあ。どうしてですか?」
「こっちが聴きたいよ。カバンに入れてあったカメラなんて高かったんだぞ?」
「はぁ。確か手荷物検査の時は、機械類は入っていないって言ってましたよね?」
「そ、それは‥‥」
突然モゴモゴとする記録官。
「もういい、神崎君、あれだけ念を押したのに、どうして持ち込もうとするのかね?」
菅野の言葉で、神崎と呼ばれた記録官は荷物を片付けると椅子に座って小さくなっている。
「やあやあ、やっと終わりましたよ。おや、神崎君どうしたの?」
最後に出てきた南原崇議員が、神崎を見てそう問いかけていると。
「えっと、南原さん、此方が機械類の預かり証です。帰還時にお返ししますので、無くさないでくださいね」
カウンターで南原に声をかけると、木製の預かり証を手渡す職員。
「あ、これはどうも」
それをポケットにしまうと、南原議員も菅野や伊達たちのいるテーブルにやってくる。
「どうしたの神崎君。それに伊達さんも顔色悪いですよ」
そう二人に問いかけるが。
「まあ、議員の悪い癖だ。バチが当たったんですよ。これで懲りたでしょう?」
菅野はそう二人に諭すように問いかける。
「無事にチェックは終わりましたか。それでは此方へどうぞ」
マチュアは外で待っている馬車に一行を案内すると、そのままミナセ女王の待つ王城へと案内した。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
そして3日が経過した。
異世界からやってきた使節団は、無事に3日の視察を終えて日本へと戻った。
この間に、入れ替わったマチュア女王との会談や各種ギルドの見学、都市市街地観光などを体験して戻っていった。
その最後に、今度はマチュアが日本の国会に招待されたのである。
「次は是非、我が国の最高機関である国会で色々と話を聞かせてほしいですね」
菅野がマチュア女王にそう話している。
「国会というのですか。私達の世界で言う元老院のようなものですね?」
「ニュアンス的にはそうでしょう。今回の査察の件でも、かなり大勢の議員たちがカリス・マレスに来たいといっていました。もし宜しければ近々日本国で話を聞かせて貰えませんか?」
(まさかの国会招致だわ。テレビではよく見ていたたけれど、まさかそこに行くことになるとは)
そんなことを考えているが、行かないと話にならない。
「それは構いませんが。我が国の方針に従って返答するかもしれませんので、それで宜しければ」
「ほう。このような公の場での方針があるのですか?」
「ええ。国というよりは私の方針ですけれど。言葉で殴られたら殴り返します。国会という場所がどれほどの建物が存じませんが、その気になれば全て破壊できる力を持っていることを十分に踏まえた上で宜しくおねがいします」
そう話すが決して頭を下げない。
「まあ、それほど無礼な話をする者はいませんので。どうぞよろしくおねがいします」
「そうですね。一週間後、またそちらに伺わせていただきます。そのときに国会とやらに向かうとしましょう」
それで話は全て終わった。
最後に握手をして、マチュアは査察団を無事に見送った。
‥‥‥
‥‥
‥
「さーてと。|深淵の書庫(アーカイブ)起動。媒体は水晶球、魔力感知と識別能力を付与。触れた対象の魔力の数値化‥‥よしよし」
直径20cmほどの魔力の篭った水晶球を作り出すと、次にマチュアはそれを量産し始めた。
「量産化。数は‥‥とりあえず100個で‥‥おおう6時間20分か、そのあとで配達にでも行きますか」
にこやかに話をしているマチュアだが。
異世界ギルドの奥の事務室でそんなものを見せられると、さすがの職員たちもビビる。
「あの、マチュア様。その服装でそんなことをしていますと、マチュア様が女王であることをまじまじと見せつけられて職員たちが困っているのですが」
そう告げられて気がつくと、査察団を見送りに来たときの女王の服装そのままで|深淵の書庫(アーカイブ)を起動していたのである。
「あらこれは失礼。内緒ね?」
口元に人差し指を当てて職員たちにそう話しかける。
「もうここの職員には説明してありますからから大丈夫ですけれど‥‥もう少しだけ周囲の目を気にして頂けると助かります」
フィリップがマチュアにそう話すと、マチュアはすぐさま商人スタイルに換装した。
――シュンッ
「まあまあ。このあとはエンジになって日本行ってきますね。護衛は不要で、ちょっと裏工作してきます」
「裏工作ですか?」
「ええ。あっちの人間なのに導師級の魔力保持者がいまして。あの娘はちょっとおもしろいけど、あのまま放っておいたら日本国の餌にされてしまう。実はね‥‥」
赤煉瓦亭の赤城というコックの事を説明していると、フィリップもそれには同意する。
「外交特権というのですか? こちらの世界と密接につながりを持たせて、なおかつ彼女に手を出すとどうなるかわかるよな。みたいなことをやんわりですね?」
「それそれ。まあこれが完成してからいってきます。それまでは少し休んでますので、あとは適当にお願いします」
職員たちに頭を下げると、マチュアは一旦馴染み亭へと戻っていった。
それを見送ると、職員たちもようやく緊張がほぐれたらしい。
「さて。ギルドマスターもああ仰言っていましたから、今日のところは早めに仕事を終わらせるとしましょう」
いつものようにフィリップが場を纏めると、職員たちもその言葉に従った。
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