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第二部・浮遊大陸ティルナノーグ
浮遊大陸の章・その18 異世界ライフの楽しみ方
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マチュアとストームが王になって3ヶ月。
いつものように二人は退屈で楽しい毎日を送っていた。
日常と違うのは、数日に一度は王城に赴き、現在の状況と二人の承認が必要な書類等に目を通してサインを書くという事だけである。
それでも昼間は退屈な、楽しい毎日を送っているストームとマチュアであった。
――サムソンでは
「はいっ、ダブルバイセップス!!」
「「「ハイッ!!」」」
といつものストームブートキャンプが盛り上がっている。
「お、ストームさん久し振り。ちょっとダガーを研いでほしいんだけれど」
と久し振りにクリスティナがやって来た。
何処かで依頼を受けたのであろうか、装備がボロボロになっている。
「おや、ちょっとまっててな」
とブートキャンプを終えて頭から水を被ると、ストームは研ぎ場にやってくる。
既にそこにはアーシュが待機していて、午前中に終わらせないといけない砥ぎの注文書と武器を作業台に並べているところであった。
「はい店長、これが今日の分の砥ぎの依頼分ね。で、そちらのお嬢さんは砥ぎですか? それとも武具の発注ですか?」
とにこやかに問い掛けるアーシュ。
「ああ。午前中には出来るかい?」
「少々お待ちを。まあ、追加ぐらいなら大丈夫でしょう? 店長とっととお願いします」
アーシュは笑いながらストームに指示を出す。
どっかりと井戸の横に腰を落とし、予め水に付けておいた砥石を手に取ると、それを台の上にセットする。
――シューーッ、シューーーッ
「分かった分かった。まったく人使いが荒いわ‥‥」
ストームは順番に武器の砥ぎを開始した。
目の前におかれている注文書と武器を照らし合わせ、細かく欠けているところを修復しつつ、丁寧に元の斬れ味を取り戻させていく。
順調に作業は進み、昼ちょっと前には、クリスティナのツインダガーを研ぎ始めたのだが。
「随分と刃が欠けているなあ。一体何をしていたんだ?」
と問いかけてみる。
刃の部分だけでなく、芯までもが金属疲労で折れそうになっていた。
「ちょっと仕事で、北のグラシェード大陸にいっていたんだよ。まあ最悪なことに依頼は失敗。なんとか生きて帰ってきたけれど装備はボロボロでねぇ‥‥」
やれやれという感じに手を上げているクリスティナ。
「どんな依頼だよ」
「シュトラーゼ公国に潜入して、とある情報の信憑性を確認してこいっていう依頼さ。依頼主の関係でこれ以上はいえない。また装備を直したらすぐに向かわないと行けなくてねぇ‥‥」
「ふぅん。ちょっと待ってろ」
とストームが空間からツインダガーを取り出すと、それをクリスティナに手渡す。
「ほら、これやる。アダマンタイトで仕上げた極上品だ。アーシュ、店の中からクリスティナの身体に合うレザーアーマーを出して渡してくれないか」
「ボルケイノアーマーで?」
ストームがコクリと頷くと、アーシュは急いで店に戻った。
「ちょっと待って、そんなに良いもの貰えないよ。いままで使っていたやつを直してくれればいいんだけれど」
「それは無理だ、芯に亀裂が入っている。このツインダガーは申し訳ないが死んでいるんだ」
と少し悲しそうに告げるストーム。
「そうか。じゃあ有難く頂いていくよ。急がないと門のところでデグスター達が待っているんでね」
「ハァ? いまはあいつと組んでいるのか?」
暫く顔を見せていないと思ったら、いつのまにかチームを組んでいるデクスター。
しかし、こんな美人とチームとは羨ましいことである。
寧ろ『爆ぜろ!!』というところであろう。
「デグスターは意外と優秀だぞ。それじゃあありがとうな。依頼が終わったら奢らせてくれよ」
「ああ。それじゃあな‥‥」
とアーシュも店から戻って来ると、クリスティナにレザーアーマーを手渡した。
そしてクリスティナを見送ると、肩をトントンと叩きながら立ちあがる。
「今日はこれでおしまいですね。お疲れ様でした。午後は予定が入っていませんので‥‥ご自由‥‥に?」
テクテクと魔法使いの格好をした女の子がストームの元にやってきた。
「あのねあのね、すとーむのおぢちゃん、ミアのね、そらとぶほうきがおれちゃったの‥‥なおしてほしいの‥‥」
と懐から青銅貨を三枚取り出しながら、泣きそうな表情で頭を下げる。
「ほう。どれちょっと見せて見ろ?」
と受け取ると同時に、耳につけている通信用水晶球を起動して念話でマチュアを呼びつける。
――ピッピッ
『マチュア、聞こえるか?』
『なんだね?』
『いま暇か?』
『馴染み亭でまったりと魔導器の図面書いているけれど?』
『ミアちゃんが空飛ぶ箒が折れたって泣きそうになって来ているんだ。魔力が全て放出されていて、俺じゃあ直せないから予備持って来い』
『はいはい了解』
――ピッピッ
と通信を終えると、ストームは箒の折れたところに手を当てる。
「ちょっと待っていてな。すぐに来るから!!」
――ヒュゥゥゥゥゥゥゥッ
とストームたちの頭上から、マチュアが空飛ぶ箒に乗って降りてくる。
上空に転移してきたようであるが、相変わらず派手である。
「呼ばれて飛び出て、まあいいか‥‥」
「そこは最後まで言えよ!!」
ゆっくりと着地すると、ミアちゃんはマチュアの姿を見て泣いてしまった。
――フェェェェェェン
「ごめんなさーい。ごめんなさーい」
「あー、なるほどね。ちょっとまっててね」
と新しい箒を空間から取り出して、ミアちゃんに手渡した。
「前のやつよりは丈夫だよ。自由に飛べるようになったかい?」
「まだまちゅあさんみたいに、たかくとべないの」
「もっともっと魔法の修行しないとねぇ」
「それはどうやるの?」
マチュアはゴホンと咳払いを一つ。
「お父さんとお母さんの言うことをちゃんと聞くこと。それを毎日ね」
コクリと頷くミアちゃん。
そしてありがとうとお礼を告げると、そのまま箒にまたがってノロノロと飛んでいった。
アーシュはミアが居なくなるのを待ってから、マチュアたちのもとに戻ってくる。
「‥‥また儲からないことを。あれでも売れば十分に儲かるのでは無いでのすか?」
「アーシュには分からないよ。と、そういえば、アーシュ、もう魔力の刻印切れているでしょ? まだ仕事手伝っているの?」
――ポン
ポン、と手をたたきながらマチュアが問いかける。
「まあ、金にもなるしいいかなと。そんな事はどうでも良いんだけれど、時折二階からメルキオーレが降りてくるのだけは心臓に悪いんだけれど」
「知らんわ。慣れなさい」
「くっそぉぉぉぉっ」
と悔しそうに拳を握るアーシュ。
魔族最強の一角であるメルキオーレがひょいひょいとやってくると、流石に心臓には悪いのだろう。
「あ、そうだストーム。私、近々北の大陸に行ってくるわ」
「ああ、行ってらしゃい。呼びつけたらすぐに来いよ」
あんまり驚く事なくそう返事を返す。
突然居なくなるのはマチュアの常套句であると、ストームも理解している。
「寧ろストームに来て欲しいわ。とっとと転移覚えてくれない?」
「確かに俺も覚えた方が便利なんだよなぁ‥‥だが断る!!」
とキッパリと告げるストーム。
「分かっているよ、そんじゃアルバート商会でも冷やかしてから戻るわ。それじゃあねー」
「はいはい、お気をつけて。こっちも飯にするか‥‥」
とストームはアーシュを連れて、鋼の煉瓦亭に向かっていった。
○ ○ ○ ○ ○
いつも忙しそうなアルバート商会。
特にここ数日は、新たにカナン魔導王国にも支店を出すのが決定したのである。
そのため、ここサムソンの本店はカレンが譲り受け、現当主であるフィリップは半ば引退当然にカナンに引っ越すことになったのである。
「あのー、フィリップさんいますか?」
とマチュアがカウンターで受付に声をかけている。
「はい、 お約束は付けてありますか?」
「あー、取ってないけれど、駄目ですか」
と告げるが、受付はやれやれといった感じでマチュアに一言。
「そうですね。当主様はお忙しいので、申し訳ございません」
と丁寧に断りを入れられるマチュア。
まあ、突然の来訪だと仕方ない。
「了解しました。ではまた改めて伺います」
とマチュアも丁寧に頭を下げると、アルバート商会を後にした。
「いきなり暇になったなー」
と空飛ぶ箒を取り出して横座りすると、プカプカと浮いたままどうするか考えている。
「あらマチュア、こんな所でどうしてのかしら」
とアルバート商会に戻ってきたカレンが、空飛ぶ箒から降りてそう問いかけた。
「いやぁ、フィリップさんがカナンに引っ越して来るでしょ?王室御用達の審査が始まるのでそれの報告と、あとは暇つぶしに来ただけなんだよねー」
「なら、ちょっと魔導器作っていただけません?」
「個人?販売?」
「販売で、冒険者用のラージザックとバックバックそれぞれに空間拡張を。容量は10倍設定でお願いします。バック一つにつき白金貨一枚、トータルで白金貨20枚を即金で」
「小遣い稼ぎにはいいか、オッケーよ」
とその言葉に乗るマチュア。
そのままアルバート商会に戻ると、受付の女性がカレンに挨拶する。
「あら、お嬢様、そちらの方は旦那様に用事があるとかで先ほど見えてのですが、お約束されていなかったのでお断りしたのですが」
「あら。なら今後この方がいらしたら最優先で取り次いでちょうだい。こんな格好でも王族なのですからね」
「は、た、大変失礼しました」
と慌てて頭を下げる受付嬢に、マチュアも丁寧に頭を下げる。
「いえいえ、約束していなかった私も悪いのですよ。申し訳ありませんでした」
とカレンに引っ張られて、マチュアはあまり使われていない倉庫に案内された。
「ここでよろしいかしら?」
「そうだね。ちょっと待ってね」
と巨大な布を広げると、そこに魔法陣を書き込んでいく。
さらに魔導制御球を取り出すと、意識を集中して起動する。
「魔力コントロール。儀式魔法・空間拡張をセット。規模は容量10ボックス、魔法陣使用回数は10チャージ、オーナー権限は私とカレンが」
次々と設定を古代魔法語によって書き込んでいく。
そして魔法陣を完成させると、その中にバック類を置いていった。
「チャージオン、空間拡張起動」
魔法陣が大きく輝くと、やがて輝きはすっと消えていく。
――スッ‥‥
「はい完成ね」
とバックを纏めて渡すマチュア。
「本当にあっさりと作るわねぇ」
と完成したバックを一つ一つ確認して、木箱にしまい始めるカレン。
そして全てを収めて箱の蓋を閉じると、先ほどマチュアが使っていた魔法陣がまだ残っているのに気がついた。
「ふぅん。これは消えないのね」
「あ、この魔法陣の中に空間拡張したい物品を入れて魔力を注ぐと、その物品に空間拡張を施すことができるよー、回数は全部で10回、今一回使ったから残り9回だわね」
とあっさりと説明する。
その言葉には、流石のカレンも動揺を隠せていない。
「ちょ、ちょっと。それって私でも使えるの?」
「マスター権限をカレンに移せばね」
「一度に付与できるアイテム数は?」
「30個まで。つまりこの魔法陣一つで270個のアイテムが作れますが何か?」
クルクルと魔法陣の描かれているシートを丸めるマチュア。
カレンはその魔法陣シートをじっと眺めている。
「そ、それってかなり貴重な魔導器よね。流石のマチュアでもそれを売ることは出来ないと?」
「へ?今作ったばかりだし、こんなの幾らでも作れるけど?」
あっさりと告げるマチュア。
カレンもその言葉を聞いて目を白黒させる。
「遥か古代王国の遺産をこうも簡単に作れるなんてね」
「私、その遥か古代王国の魔術や秘儀を全て使えますが何か?」
――ニィィィィィッ
と笑いつつカレンを見る。
「はぁ。白銀の賢者の名前は伊達じゃないのよねぇ。こんなに簡単に魔導器を作って販売されたら、魔導器専門の商人は商売あがったりよね。そのうちクレームが来るわよ」
「だからこそ、カナン魔導王国では商人ギルド直属の魔導商会のみが、魔導器の販売を行うのですよ。冒険者や商人からどんな魔導器があったら便利か、とか聞いてね」
そのような売れ筋にはカレンも興味がある。
もっとも、冒険者たちが欲しいものは定番で人気の高いものが多い。
「荷物の移動に便利な空間拡張のバックと、もし存在するなら都市間を簡単に移動できる乗り物よねえ。マチュアのお店の転移魔法陣は、あれは使える人は限られているのでしょう?」
「今はラグナ・マリア王家と六代王家、私とストームとカレンに、ミストと私が発行した転移の割り符の所持者のみしか、あの転移の魔法陣は使えないけれどね。まあ、近々面白いことにはなると思うけれど」
そのマチュアの笑い声の正体が判明するのは、この一週間後である。
「で、その魔法陣はおいくらで売って頂けるのかしら?」
「買いたいですか?」
とトボけた表情で返事をする。
が、カレンはニィィィッと笑っている。
「さっきマスター権限の設定でわ・た・し、の名前も出ていたのは聞き逃しませんよー」
「そうねぇ。あと270個のアイテムが作れる魔法陣。それもカレンしか使えない。考え方によっては、これは最高の魔導器よねぇ」
いつもの悪い笑みを浮かべるマチュア。
「その気になれば、大きな箱でも何でも作れますからねぇ。ということで白金貨100枚で」
「え? 100枚でいいの?」
先程の取引を考えると、270個のアイテムが作れらのならば白金貨で270枚でもやむを得ないと考えていたカレン。
だがマチュアの提示した金額はその三分の一ちょいである。
――ポン
と魔法陣をカレンに手渡すと一言。
「条件は二つ、一つは主な販売店はカナンのアルバート商会、サムソンで売る時は少なめにすること。二つ目は、一日の作成個数は30個まで。それならばオッケーよ」
「カナンだけの販売は厳しいわねぇ」
「優秀な魔導器はカナン王家で独占販売したいのですよ。その一部でも販売権を得ることができる。この取引によって成立したくないのかな?」
「カナンのアルバート商会からサムソンに持って行って売るのはあり?」
「あり。それはアルバート商会の中での話なので。さっきも言ったけど、数は少なめでね。この契約に同意するなら、アルバート商会に卸す魔導器全てに王室御用達の紋章印を施してあげる」
――ガシッ
と両者同時に握手する。
「これでカナンにも転移で行けるので、かなり仕事の幅が広がるわねぇ」
「あ、あの転移の祭壇、一度使えなくなるから」
「何でェェェェ」
とカレンの絶叫が倉庫に響く。
「まあ、それよりも凄いものを作ったから、待ってなさい」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
ある日の正午。
カナンの商人ギルドの近くには、大勢の人々が集まっていた。
今までずっと隠されていた商人ギルド横の巨大な建物。
その天幕が外され、大きな店が姿を現した。
一階は全てが倉庫のようになっており、店舗は二階と三階にある。
その一階の倉庫に、様々な商人や貴族、カナンの冒険者が集まっている。
ちゃっかりとマチュアの新型ゴーレムのマチュアもそこに混ざると、これから起こる出来事に胸を弾ませている。
そして遠路遥々とやってきた貴族の中には、ミスト連邦のゴルドバの姿もあった。
――ザッ
とその場にいたもの全てが頭を下げる。
儀礼用に正装し、幻影騎士団のマントを羽織ったマチュアが姿を現した。
「まあ、皆さん楽にしてください。国の正式な発表なのでこの様な格好をしていますが、私としては賢者のローブの方が楽なのですよ」
と軽く挨拶をすると、その場にいた者達の緊張もほぐれたらしい。
あちこちからクスクスという笑い声が聞こえる。
(ツヴァイ、ゴルドバの影の中へ。つど定期連絡)
チラッとゴルドバを見て、マチュアは影の中のツヴァイに命令する。
「ではお披露目と行きましょう。我がカナン魔導王国が誇る最新型の魔導器です」
と倉庫の彼方此方に設置してある魔法陣を指差す。
何処から見てもただの魔法陣。
ザワザワと声が聞こえてきた時、マチュアが水晶球を取り出して語りかける。
「カナンのマチュアです。始めて頂戴っっっ」
『り、了解しました』
水晶球から声が聞こえてきた時、その場にいた者達から驚きの声が聞こえてくる。
「あ、あれはなんだ?どうなっているんだ?」
「女王陛下、まさかとは思いますが、失われている魔導器では?遠くのものを会話ができるという」
――サッ
「はいそこ正解。何処の商会?」
とマチュアが指をさす!!
「はっ、サムソンのライネック商会と申します」
自慢げに告げるライネック商会の男性。
と、マチュアが指をパチンと鳴らすと、それまで何もなかった魔法陣に、突然荷馬車が姿を現したのである。
「な、なんだってぇぇぇぇ」
「馬鹿な。転移ですって? それこそおとぎ話じゃない?」
――サッ
「はい正解。貴方はどちら?」
再びマチュアが、正解を告げた女性を指差した。
「ハッ、個人で隊商を営んでいるギャロップ商会と申します。陛下には何卒おみしり……あら」
「おや、マルチさんお久しぶり。マチュアですよー」
突然の再会に目を丸くするマルチ。
「まあ、マルチとライネック商会は後で王城まで。で、先程の話ですが、我がカナン魔導王国は、サムソン辺境王国とベルナー王国をこの大規模魔法陣・転移門で繋げることに成功しました。今サムソンからやってきたアルバート商会は、我が国とサムソンが発行した『特別交易許可証』を持っている為、自由にこの魔法陣を使うことができます」
商人にとっては涎が出るほど欲しい存在。
これがあると、新鮮な食料もすぐに他国へと運ぶことができるのである。
「この交易許可証は一つの国のものだけではダメです。出国地と目的地、二つの許可証があって初めて使うことができます」
以前ならばここで質問ぜめになっていただろうが、マチュアが女王という立場もあり、その様な事にはならない。
「では、色々と質問があるでしょうから、質問のある者は挙手を、私が許可したものから発言を許します」
この言葉にも驚きである。
一方的に通達し、あとは掲示板に張り出すだけの他国とは違い、女王自ら質問の答えをするというのである。
次々と無言で手を挙げる。
が、常人離れしたマチュアの目で、誰が一番早かったか確認すると、次々と質問に答えた。
「その特別交易許可証は、どの様にして手に入れるのですか?」
「商人ギルドに申請して下さい。厳正な審査によって発行します。我が国カナンの商人ギルドは10枚の発行権を持っていますので。それ以外に、私は個人で5枚の発行権を使わせてもらう事になっていますが、そのうちの一枚はアルバート商会が持っているので、私が自ら許可できるのはあと4つですね」
ニッコリと微笑むマチュア。
「厳正な審査とは?」
「独自の調査方法により、その商会が公正明大であるか、人道に反していないか、国にどれだけ奉仕することができるかです。だからといって大量の貢物を持ってくることは禁止しますので。ギルドにも持っていってはいけませんよ。もしそれで発行されたり優遇されるものが出た場合、恒久的な交易の禁止とするかもしれませんので」
これで賄賂などを送るものを減らそうというのである。
「特別交易許可証がないと使えないのですか?」
「有償で転移許可証は発行します。ですが、緊急時には無償で許可することもあります。但しそこでも虚偽がバレた場合は、それ相応の覚悟はしておいて下さいね」
「特別交易許可証は一度発行されると永遠ですか?」
「商人ギルド発行については半年毎に審査を受けて頂きます。私の発行したものは、私の気が変わったら取り消しますので、どちらが厳しいかは想像におまかせしますわ」
ニィィッと笑いながら告げる。
――サッ
「個人のものもですか?」
と後ろの方で見ていた冒険者も質問していた。
「とうぜん犯罪者になったら失効しますわ。それまでは一年毎に更新手数料を支払ってもらおうかなと思っています」
まあ、それは当然である。
犯罪者に転移門を使われた日には、取り締まるのが大変である。
「個人用の交易許可証を購入する値段は?」
「白金貨一枚でいかがでしょう。商人でしたらそれなりの値段でしょう? 各種ギルドカードを所持している方は、ギルドカードを特別交易許可証の代わりとすることが出来ますが、毎回通行手数料を支払って頂きますので」
白金貨一枚という金額を聞いて、呆然としていた冒険者であったが、まだ希望はあった。
「通行手数料はいくらほどで?」
「そうですねぇ‥‥そのクラスによって値段は様々です。Sクラスの転送は一回につきたったの金貨一枚にしましょう。まあ、頑張って下さいね」
つまり、鍛えなさいということである。
安穏とした者達には決して許可を出す気はないと、暗に告げているのである。
――オォォォォォォッ
と後ろの冒険者たちの闘志に日が突いた模様。
「商人ギルドと陛下以外から許可証を手に入れる方法はありますか?」
「その商会が『王室御用達』を、得ることができればその時は考えますわ」
ここでも王室御用達を出す。
一定の品質を保つためには、このような特権も必要であろうと考えたのである。
「私の上司が人使いがきびしいのですが?」
「その声はうちの侍女だな、後で正座な」
こっそりと手を上げて、隠れて質問しているメアリーだが、あっさりとバレた。
――クスクスッ
と彼方此方から笑い声が聞こえてくる。
「女王陛下が冒険者ギルドの駄目ックスターと似ていますが、まさか同じ人ですか?」
偶然通りかかったらしい冒険者ギルドの常連が、怖いもの知らずでそう質問している模様。
明らかにこちらを疑っているようにも感じるのだが、そのへんは抜かりがない。
「あの、後ろでポーッとしているのと一緒にするな」
と一番後方でこっちを楽しそうに見ているマチュアを指差すマチュア。
――スパァァァァン
「ここでも言うかぁぁぁぁ」
いつもの冒険者装備で立っているマチュアは、素早く駄目ックスターといった冒険者にハリセンを叩き込んでいる。
これで良し。
「カレーが食べたい」
「ストォォォォォム、こっち来いやぁぁぁ」
と貴族に混ざってフォンゼーン国王が姿を現した。
(あ、ストーム・マークIIか)
と瞬時に中身がゴーレムであることを見抜くと、ストームはマチュアの元にやってきて集まっているものたちに向かって一礼する。
それには全員が一礼すると、ストームは入り口横にある『貴賓用転移室』に入っていった。
「あちらの扉は各国の王城と繋がっていますので、皆さんでは使えません。あれこそ王家専用ですので。あとは質問はありませんか? なければ二階へ案内します」
とマチュア自ら二階へと上がっていく。
そして店内を見た時、商人と貴族たちはまたしても絶句する。
一見すると唯の雑貨屋だが、置いてあるものは全て魔導器である。
「店内全て魔導器です。カナン魔導王国はその名の通り、魔導器の販売と開発、研究を行います。三階がその研究施設ですが、優秀なものにはその技術を伝授する事も考えています」
――スッ
と、手を挙げる商人がいた。
「はい、あなたのお名前は?」
「ラパーナ商会と申します」
「はいラパーナさん質問を許可します」
にこやかに告げるマチュア。
「これらの商品を私達商人に卸すことは考えていますか?」
「今のところはアルバート商会が王都魔導商会から独占で購入権を持っていますので、仕入れは其方と交渉してください。当店ではサムソンのサイドチェスト鍛治工房の武具も入れる予定ですので」
――スッ
次々と手を挙げる商会達。
マチュアのやり方を理解したようである。
「ここにある魔導器は全てここで作られたとおっしゃいましたが、例えば特注品も作れるのですか?」
「例えば?」
少し挑戦的な口調の商人である。
こういうやつは好きである。
「冒険者か好んで使いそうな、油を使わないランタンとかは作れるのですか?」
やれるものならやってみろ、という感じで告げる商人。
明らかにここの魔導器について疑いの目を持っているのか、もしくは自分の店で魔導器を扱っているためにライバルに対して牽制を行っているかの何方かであろう。
(その挑戦、乗った!!)
「よろしい。では、今、この場で作って見せましょう」
とマチュアが少し離れると、深淵の書庫を起動する。
――オオオオオ
とあちこちから驚きの声が上がる。
その中で、マチュアは空間からクルーラーと魔晶石を取り出すと、見る見るうちにそれをランタンに変化させた。
万が一の為に、盗難保護の魔法も付けておく。
――スッ
と魔法陣が消滅し、綺麗な銀色のランタンを見せる。
「手にとって見て構いませんよ。どうぞ」
と手前の商人に手渡すと、受け取った承認はそれを点けたり消したりしている。そして次の商人に手渡すと、また同じように確認をして次にまわす。
そして一周して再びマチュアの元に戻ってくると、それが本物であることを確認する。
「いかがですか? 因みにこれには『盗難保護』の魔法もかけてありますので、盗もうとするととんでもない音が響くようにしてあります。ここに並んでいる商品にも全て行っていますので、血迷ってもここに盗みになんて入りませんように」
笑いながらマチュアが告げると、商人達も笑っている。
「ということですので、これでお披露目を終わります。本日はわざわざこんな辺鄙な国までいらして頂き有難うございました」
丁寧に頭を下げると、商人達も一礼し、その場を後にする。
‥‥‥
‥‥
‥
建物を出ると同時に、次々と商人達が隣の商人ギルドに走っていく姿が見えた。
特別交易許可証の申請を行うのだろう、中には冒険者が個人で申請に向かっている姿もちららと見えている。
そしてカナン魔導商会には、マチュアとフィリップ、そしてカレンの三名だけが残っていた。
「女王陛下、お疲れ様でした」
とその場に残っているフィリップ・アルバートが膝をつく。
「今日のお披露目に色々と尽力して頂き有難うございます、カレンもお疲れ様ね」
「はい。それでは失礼しますわ」
とフィリップとカレンは丁寧に挨拶を返すと、その場を後にした。
マチュアは周囲を見渡して、誰も居ないことを確認すると、耳につけてあるイヤリングに指を当てて馴染み亭にいるマチュア・ドライに連絡を入れた。
――ピッピッ
「はい終了。後ほど合流するから馴染み亭の二階で待機ね。王城のミナセ女王は執務をお願いします
『クィーン、了解ですわ』
『ドライも了解さん』
――ピッピッ
「さて、そんじゃあ馴染み亭にでも戻りますかー」
とチュニックにズボン、背中にバックパックという商人モードに換装すると、のんびりと歩いて馴染み亭へと戻っていった。
――そして
「いやー、しかし見ものだったぞ。女王陛下が駄目ックスターとそっくりなんだ」
「ま、まさか本物なのでは?」
「いや、直ぐ後ろに駄目ックスターがいたから。しかもいつもの」
と酒場では、先程の光景を思い出して飲んでいる冒険者の姿があった。
――スパァァァァァン
素早く後ろに回り込むと、新型ハリセンを引き抜いて力いっぱい殴りつける。
「さっきといい、今と言い、全くいつまで私は駄目ックスターなんだよ」
と笑いながら文句を告げる。
「おかげであそこの貴族や商会の人にも駄目ックスターって言われるんだぞ」
「「「事実じゃねーか」」」
と三人同時にツッコミを入れてきたので、静かに一言。
「ジェェェェェイク。ここの会計倍額で」
「嘘嘘、冗談だよ。まあ、飲め、今日は奢ってやるよ」
と酒盛りが発生する。
その楽しい時間の中で、マチュアはふと遠い世界を思い出していた。
もう戻ることのない、かつての故郷を……。
第ニ部、完
いつものように二人は退屈で楽しい毎日を送っていた。
日常と違うのは、数日に一度は王城に赴き、現在の状況と二人の承認が必要な書類等に目を通してサインを書くという事だけである。
それでも昼間は退屈な、楽しい毎日を送っているストームとマチュアであった。
――サムソンでは
「はいっ、ダブルバイセップス!!」
「「「ハイッ!!」」」
といつものストームブートキャンプが盛り上がっている。
「お、ストームさん久し振り。ちょっとダガーを研いでほしいんだけれど」
と久し振りにクリスティナがやって来た。
何処かで依頼を受けたのであろうか、装備がボロボロになっている。
「おや、ちょっとまっててな」
とブートキャンプを終えて頭から水を被ると、ストームは研ぎ場にやってくる。
既にそこにはアーシュが待機していて、午前中に終わらせないといけない砥ぎの注文書と武器を作業台に並べているところであった。
「はい店長、これが今日の分の砥ぎの依頼分ね。で、そちらのお嬢さんは砥ぎですか? それとも武具の発注ですか?」
とにこやかに問い掛けるアーシュ。
「ああ。午前中には出来るかい?」
「少々お待ちを。まあ、追加ぐらいなら大丈夫でしょう? 店長とっととお願いします」
アーシュは笑いながらストームに指示を出す。
どっかりと井戸の横に腰を落とし、予め水に付けておいた砥石を手に取ると、それを台の上にセットする。
――シューーッ、シューーーッ
「分かった分かった。まったく人使いが荒いわ‥‥」
ストームは順番に武器の砥ぎを開始した。
目の前におかれている注文書と武器を照らし合わせ、細かく欠けているところを修復しつつ、丁寧に元の斬れ味を取り戻させていく。
順調に作業は進み、昼ちょっと前には、クリスティナのツインダガーを研ぎ始めたのだが。
「随分と刃が欠けているなあ。一体何をしていたんだ?」
と問いかけてみる。
刃の部分だけでなく、芯までもが金属疲労で折れそうになっていた。
「ちょっと仕事で、北のグラシェード大陸にいっていたんだよ。まあ最悪なことに依頼は失敗。なんとか生きて帰ってきたけれど装備はボロボロでねぇ‥‥」
やれやれという感じに手を上げているクリスティナ。
「どんな依頼だよ」
「シュトラーゼ公国に潜入して、とある情報の信憑性を確認してこいっていう依頼さ。依頼主の関係でこれ以上はいえない。また装備を直したらすぐに向かわないと行けなくてねぇ‥‥」
「ふぅん。ちょっと待ってろ」
とストームが空間からツインダガーを取り出すと、それをクリスティナに手渡す。
「ほら、これやる。アダマンタイトで仕上げた極上品だ。アーシュ、店の中からクリスティナの身体に合うレザーアーマーを出して渡してくれないか」
「ボルケイノアーマーで?」
ストームがコクリと頷くと、アーシュは急いで店に戻った。
「ちょっと待って、そんなに良いもの貰えないよ。いままで使っていたやつを直してくれればいいんだけれど」
「それは無理だ、芯に亀裂が入っている。このツインダガーは申し訳ないが死んでいるんだ」
と少し悲しそうに告げるストーム。
「そうか。じゃあ有難く頂いていくよ。急がないと門のところでデグスター達が待っているんでね」
「ハァ? いまはあいつと組んでいるのか?」
暫く顔を見せていないと思ったら、いつのまにかチームを組んでいるデクスター。
しかし、こんな美人とチームとは羨ましいことである。
寧ろ『爆ぜろ!!』というところであろう。
「デグスターは意外と優秀だぞ。それじゃあありがとうな。依頼が終わったら奢らせてくれよ」
「ああ。それじゃあな‥‥」
とアーシュも店から戻って来ると、クリスティナにレザーアーマーを手渡した。
そしてクリスティナを見送ると、肩をトントンと叩きながら立ちあがる。
「今日はこれでおしまいですね。お疲れ様でした。午後は予定が入っていませんので‥‥ご自由‥‥に?」
テクテクと魔法使いの格好をした女の子がストームの元にやってきた。
「あのねあのね、すとーむのおぢちゃん、ミアのね、そらとぶほうきがおれちゃったの‥‥なおしてほしいの‥‥」
と懐から青銅貨を三枚取り出しながら、泣きそうな表情で頭を下げる。
「ほう。どれちょっと見せて見ろ?」
と受け取ると同時に、耳につけている通信用水晶球を起動して念話でマチュアを呼びつける。
――ピッピッ
『マチュア、聞こえるか?』
『なんだね?』
『いま暇か?』
『馴染み亭でまったりと魔導器の図面書いているけれど?』
『ミアちゃんが空飛ぶ箒が折れたって泣きそうになって来ているんだ。魔力が全て放出されていて、俺じゃあ直せないから予備持って来い』
『はいはい了解』
――ピッピッ
と通信を終えると、ストームは箒の折れたところに手を当てる。
「ちょっと待っていてな。すぐに来るから!!」
――ヒュゥゥゥゥゥゥゥッ
とストームたちの頭上から、マチュアが空飛ぶ箒に乗って降りてくる。
上空に転移してきたようであるが、相変わらず派手である。
「呼ばれて飛び出て、まあいいか‥‥」
「そこは最後まで言えよ!!」
ゆっくりと着地すると、ミアちゃんはマチュアの姿を見て泣いてしまった。
――フェェェェェェン
「ごめんなさーい。ごめんなさーい」
「あー、なるほどね。ちょっとまっててね」
と新しい箒を空間から取り出して、ミアちゃんに手渡した。
「前のやつよりは丈夫だよ。自由に飛べるようになったかい?」
「まだまちゅあさんみたいに、たかくとべないの」
「もっともっと魔法の修行しないとねぇ」
「それはどうやるの?」
マチュアはゴホンと咳払いを一つ。
「お父さんとお母さんの言うことをちゃんと聞くこと。それを毎日ね」
コクリと頷くミアちゃん。
そしてありがとうとお礼を告げると、そのまま箒にまたがってノロノロと飛んでいった。
アーシュはミアが居なくなるのを待ってから、マチュアたちのもとに戻ってくる。
「‥‥また儲からないことを。あれでも売れば十分に儲かるのでは無いでのすか?」
「アーシュには分からないよ。と、そういえば、アーシュ、もう魔力の刻印切れているでしょ? まだ仕事手伝っているの?」
――ポン
ポン、と手をたたきながらマチュアが問いかける。
「まあ、金にもなるしいいかなと。そんな事はどうでも良いんだけれど、時折二階からメルキオーレが降りてくるのだけは心臓に悪いんだけれど」
「知らんわ。慣れなさい」
「くっそぉぉぉぉっ」
と悔しそうに拳を握るアーシュ。
魔族最強の一角であるメルキオーレがひょいひょいとやってくると、流石に心臓には悪いのだろう。
「あ、そうだストーム。私、近々北の大陸に行ってくるわ」
「ああ、行ってらしゃい。呼びつけたらすぐに来いよ」
あんまり驚く事なくそう返事を返す。
突然居なくなるのはマチュアの常套句であると、ストームも理解している。
「寧ろストームに来て欲しいわ。とっとと転移覚えてくれない?」
「確かに俺も覚えた方が便利なんだよなぁ‥‥だが断る!!」
とキッパリと告げるストーム。
「分かっているよ、そんじゃアルバート商会でも冷やかしてから戻るわ。それじゃあねー」
「はいはい、お気をつけて。こっちも飯にするか‥‥」
とストームはアーシュを連れて、鋼の煉瓦亭に向かっていった。
○ ○ ○ ○ ○
いつも忙しそうなアルバート商会。
特にここ数日は、新たにカナン魔導王国にも支店を出すのが決定したのである。
そのため、ここサムソンの本店はカレンが譲り受け、現当主であるフィリップは半ば引退当然にカナンに引っ越すことになったのである。
「あのー、フィリップさんいますか?」
とマチュアがカウンターで受付に声をかけている。
「はい、 お約束は付けてありますか?」
「あー、取ってないけれど、駄目ですか」
と告げるが、受付はやれやれといった感じでマチュアに一言。
「そうですね。当主様はお忙しいので、申し訳ございません」
と丁寧に断りを入れられるマチュア。
まあ、突然の来訪だと仕方ない。
「了解しました。ではまた改めて伺います」
とマチュアも丁寧に頭を下げると、アルバート商会を後にした。
「いきなり暇になったなー」
と空飛ぶ箒を取り出して横座りすると、プカプカと浮いたままどうするか考えている。
「あらマチュア、こんな所でどうしてのかしら」
とアルバート商会に戻ってきたカレンが、空飛ぶ箒から降りてそう問いかけた。
「いやぁ、フィリップさんがカナンに引っ越して来るでしょ?王室御用達の審査が始まるのでそれの報告と、あとは暇つぶしに来ただけなんだよねー」
「なら、ちょっと魔導器作っていただけません?」
「個人?販売?」
「販売で、冒険者用のラージザックとバックバックそれぞれに空間拡張を。容量は10倍設定でお願いします。バック一つにつき白金貨一枚、トータルで白金貨20枚を即金で」
「小遣い稼ぎにはいいか、オッケーよ」
とその言葉に乗るマチュア。
そのままアルバート商会に戻ると、受付の女性がカレンに挨拶する。
「あら、お嬢様、そちらの方は旦那様に用事があるとかで先ほど見えてのですが、お約束されていなかったのでお断りしたのですが」
「あら。なら今後この方がいらしたら最優先で取り次いでちょうだい。こんな格好でも王族なのですからね」
「は、た、大変失礼しました」
と慌てて頭を下げる受付嬢に、マチュアも丁寧に頭を下げる。
「いえいえ、約束していなかった私も悪いのですよ。申し訳ありませんでした」
とカレンに引っ張られて、マチュアはあまり使われていない倉庫に案内された。
「ここでよろしいかしら?」
「そうだね。ちょっと待ってね」
と巨大な布を広げると、そこに魔法陣を書き込んでいく。
さらに魔導制御球を取り出すと、意識を集中して起動する。
「魔力コントロール。儀式魔法・空間拡張をセット。規模は容量10ボックス、魔法陣使用回数は10チャージ、オーナー権限は私とカレンが」
次々と設定を古代魔法語によって書き込んでいく。
そして魔法陣を完成させると、その中にバック類を置いていった。
「チャージオン、空間拡張起動」
魔法陣が大きく輝くと、やがて輝きはすっと消えていく。
――スッ‥‥
「はい完成ね」
とバックを纏めて渡すマチュア。
「本当にあっさりと作るわねぇ」
と完成したバックを一つ一つ確認して、木箱にしまい始めるカレン。
そして全てを収めて箱の蓋を閉じると、先ほどマチュアが使っていた魔法陣がまだ残っているのに気がついた。
「ふぅん。これは消えないのね」
「あ、この魔法陣の中に空間拡張したい物品を入れて魔力を注ぐと、その物品に空間拡張を施すことができるよー、回数は全部で10回、今一回使ったから残り9回だわね」
とあっさりと説明する。
その言葉には、流石のカレンも動揺を隠せていない。
「ちょ、ちょっと。それって私でも使えるの?」
「マスター権限をカレンに移せばね」
「一度に付与できるアイテム数は?」
「30個まで。つまりこの魔法陣一つで270個のアイテムが作れますが何か?」
クルクルと魔法陣の描かれているシートを丸めるマチュア。
カレンはその魔法陣シートをじっと眺めている。
「そ、それってかなり貴重な魔導器よね。流石のマチュアでもそれを売ることは出来ないと?」
「へ?今作ったばかりだし、こんなの幾らでも作れるけど?」
あっさりと告げるマチュア。
カレンもその言葉を聞いて目を白黒させる。
「遥か古代王国の遺産をこうも簡単に作れるなんてね」
「私、その遥か古代王国の魔術や秘儀を全て使えますが何か?」
――ニィィィィィッ
と笑いつつカレンを見る。
「はぁ。白銀の賢者の名前は伊達じゃないのよねぇ。こんなに簡単に魔導器を作って販売されたら、魔導器専門の商人は商売あがったりよね。そのうちクレームが来るわよ」
「だからこそ、カナン魔導王国では商人ギルド直属の魔導商会のみが、魔導器の販売を行うのですよ。冒険者や商人からどんな魔導器があったら便利か、とか聞いてね」
そのような売れ筋にはカレンも興味がある。
もっとも、冒険者たちが欲しいものは定番で人気の高いものが多い。
「荷物の移動に便利な空間拡張のバックと、もし存在するなら都市間を簡単に移動できる乗り物よねえ。マチュアのお店の転移魔法陣は、あれは使える人は限られているのでしょう?」
「今はラグナ・マリア王家と六代王家、私とストームとカレンに、ミストと私が発行した転移の割り符の所持者のみしか、あの転移の魔法陣は使えないけれどね。まあ、近々面白いことにはなると思うけれど」
そのマチュアの笑い声の正体が判明するのは、この一週間後である。
「で、その魔法陣はおいくらで売って頂けるのかしら?」
「買いたいですか?」
とトボけた表情で返事をする。
が、カレンはニィィィッと笑っている。
「さっきマスター権限の設定でわ・た・し、の名前も出ていたのは聞き逃しませんよー」
「そうねぇ。あと270個のアイテムが作れる魔法陣。それもカレンしか使えない。考え方によっては、これは最高の魔導器よねぇ」
いつもの悪い笑みを浮かべるマチュア。
「その気になれば、大きな箱でも何でも作れますからねぇ。ということで白金貨100枚で」
「え? 100枚でいいの?」
先程の取引を考えると、270個のアイテムが作れらのならば白金貨で270枚でもやむを得ないと考えていたカレン。
だがマチュアの提示した金額はその三分の一ちょいである。
――ポン
と魔法陣をカレンに手渡すと一言。
「条件は二つ、一つは主な販売店はカナンのアルバート商会、サムソンで売る時は少なめにすること。二つ目は、一日の作成個数は30個まで。それならばオッケーよ」
「カナンだけの販売は厳しいわねぇ」
「優秀な魔導器はカナン王家で独占販売したいのですよ。その一部でも販売権を得ることができる。この取引によって成立したくないのかな?」
「カナンのアルバート商会からサムソンに持って行って売るのはあり?」
「あり。それはアルバート商会の中での話なので。さっきも言ったけど、数は少なめでね。この契約に同意するなら、アルバート商会に卸す魔導器全てに王室御用達の紋章印を施してあげる」
――ガシッ
と両者同時に握手する。
「これでカナンにも転移で行けるので、かなり仕事の幅が広がるわねぇ」
「あ、あの転移の祭壇、一度使えなくなるから」
「何でェェェェ」
とカレンの絶叫が倉庫に響く。
「まあ、それよりも凄いものを作ったから、待ってなさい」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
ある日の正午。
カナンの商人ギルドの近くには、大勢の人々が集まっていた。
今までずっと隠されていた商人ギルド横の巨大な建物。
その天幕が外され、大きな店が姿を現した。
一階は全てが倉庫のようになっており、店舗は二階と三階にある。
その一階の倉庫に、様々な商人や貴族、カナンの冒険者が集まっている。
ちゃっかりとマチュアの新型ゴーレムのマチュアもそこに混ざると、これから起こる出来事に胸を弾ませている。
そして遠路遥々とやってきた貴族の中には、ミスト連邦のゴルドバの姿もあった。
――ザッ
とその場にいたもの全てが頭を下げる。
儀礼用に正装し、幻影騎士団のマントを羽織ったマチュアが姿を現した。
「まあ、皆さん楽にしてください。国の正式な発表なのでこの様な格好をしていますが、私としては賢者のローブの方が楽なのですよ」
と軽く挨拶をすると、その場にいた者達の緊張もほぐれたらしい。
あちこちからクスクスという笑い声が聞こえる。
(ツヴァイ、ゴルドバの影の中へ。つど定期連絡)
チラッとゴルドバを見て、マチュアは影の中のツヴァイに命令する。
「ではお披露目と行きましょう。我がカナン魔導王国が誇る最新型の魔導器です」
と倉庫の彼方此方に設置してある魔法陣を指差す。
何処から見てもただの魔法陣。
ザワザワと声が聞こえてきた時、マチュアが水晶球を取り出して語りかける。
「カナンのマチュアです。始めて頂戴っっっ」
『り、了解しました』
水晶球から声が聞こえてきた時、その場にいた者達から驚きの声が聞こえてくる。
「あ、あれはなんだ?どうなっているんだ?」
「女王陛下、まさかとは思いますが、失われている魔導器では?遠くのものを会話ができるという」
――サッ
「はいそこ正解。何処の商会?」
とマチュアが指をさす!!
「はっ、サムソンのライネック商会と申します」
自慢げに告げるライネック商会の男性。
と、マチュアが指をパチンと鳴らすと、それまで何もなかった魔法陣に、突然荷馬車が姿を現したのである。
「な、なんだってぇぇぇぇ」
「馬鹿な。転移ですって? それこそおとぎ話じゃない?」
――サッ
「はい正解。貴方はどちら?」
再びマチュアが、正解を告げた女性を指差した。
「ハッ、個人で隊商を営んでいるギャロップ商会と申します。陛下には何卒おみしり……あら」
「おや、マルチさんお久しぶり。マチュアですよー」
突然の再会に目を丸くするマルチ。
「まあ、マルチとライネック商会は後で王城まで。で、先程の話ですが、我がカナン魔導王国は、サムソン辺境王国とベルナー王国をこの大規模魔法陣・転移門で繋げることに成功しました。今サムソンからやってきたアルバート商会は、我が国とサムソンが発行した『特別交易許可証』を持っている為、自由にこの魔法陣を使うことができます」
商人にとっては涎が出るほど欲しい存在。
これがあると、新鮮な食料もすぐに他国へと運ぶことができるのである。
「この交易許可証は一つの国のものだけではダメです。出国地と目的地、二つの許可証があって初めて使うことができます」
以前ならばここで質問ぜめになっていただろうが、マチュアが女王という立場もあり、その様な事にはならない。
「では、色々と質問があるでしょうから、質問のある者は挙手を、私が許可したものから発言を許します」
この言葉にも驚きである。
一方的に通達し、あとは掲示板に張り出すだけの他国とは違い、女王自ら質問の答えをするというのである。
次々と無言で手を挙げる。
が、常人離れしたマチュアの目で、誰が一番早かったか確認すると、次々と質問に答えた。
「その特別交易許可証は、どの様にして手に入れるのですか?」
「商人ギルドに申請して下さい。厳正な審査によって発行します。我が国カナンの商人ギルドは10枚の発行権を持っていますので。それ以外に、私は個人で5枚の発行権を使わせてもらう事になっていますが、そのうちの一枚はアルバート商会が持っているので、私が自ら許可できるのはあと4つですね」
ニッコリと微笑むマチュア。
「厳正な審査とは?」
「独自の調査方法により、その商会が公正明大であるか、人道に反していないか、国にどれだけ奉仕することができるかです。だからといって大量の貢物を持ってくることは禁止しますので。ギルドにも持っていってはいけませんよ。もしそれで発行されたり優遇されるものが出た場合、恒久的な交易の禁止とするかもしれませんので」
これで賄賂などを送るものを減らそうというのである。
「特別交易許可証がないと使えないのですか?」
「有償で転移許可証は発行します。ですが、緊急時には無償で許可することもあります。但しそこでも虚偽がバレた場合は、それ相応の覚悟はしておいて下さいね」
「特別交易許可証は一度発行されると永遠ですか?」
「商人ギルド発行については半年毎に審査を受けて頂きます。私の発行したものは、私の気が変わったら取り消しますので、どちらが厳しいかは想像におまかせしますわ」
ニィィッと笑いながら告げる。
――サッ
「個人のものもですか?」
と後ろの方で見ていた冒険者も質問していた。
「とうぜん犯罪者になったら失効しますわ。それまでは一年毎に更新手数料を支払ってもらおうかなと思っています」
まあ、それは当然である。
犯罪者に転移門を使われた日には、取り締まるのが大変である。
「個人用の交易許可証を購入する値段は?」
「白金貨一枚でいかがでしょう。商人でしたらそれなりの値段でしょう? 各種ギルドカードを所持している方は、ギルドカードを特別交易許可証の代わりとすることが出来ますが、毎回通行手数料を支払って頂きますので」
白金貨一枚という金額を聞いて、呆然としていた冒険者であったが、まだ希望はあった。
「通行手数料はいくらほどで?」
「そうですねぇ‥‥そのクラスによって値段は様々です。Sクラスの転送は一回につきたったの金貨一枚にしましょう。まあ、頑張って下さいね」
つまり、鍛えなさいということである。
安穏とした者達には決して許可を出す気はないと、暗に告げているのである。
――オォォォォォォッ
と後ろの冒険者たちの闘志に日が突いた模様。
「商人ギルドと陛下以外から許可証を手に入れる方法はありますか?」
「その商会が『王室御用達』を、得ることができればその時は考えますわ」
ここでも王室御用達を出す。
一定の品質を保つためには、このような特権も必要であろうと考えたのである。
「私の上司が人使いがきびしいのですが?」
「その声はうちの侍女だな、後で正座な」
こっそりと手を上げて、隠れて質問しているメアリーだが、あっさりとバレた。
――クスクスッ
と彼方此方から笑い声が聞こえてくる。
「女王陛下が冒険者ギルドの駄目ックスターと似ていますが、まさか同じ人ですか?」
偶然通りかかったらしい冒険者ギルドの常連が、怖いもの知らずでそう質問している模様。
明らかにこちらを疑っているようにも感じるのだが、そのへんは抜かりがない。
「あの、後ろでポーッとしているのと一緒にするな」
と一番後方でこっちを楽しそうに見ているマチュアを指差すマチュア。
――スパァァァァン
「ここでも言うかぁぁぁぁ」
いつもの冒険者装備で立っているマチュアは、素早く駄目ックスターといった冒険者にハリセンを叩き込んでいる。
これで良し。
「カレーが食べたい」
「ストォォォォォム、こっち来いやぁぁぁ」
と貴族に混ざってフォンゼーン国王が姿を現した。
(あ、ストーム・マークIIか)
と瞬時に中身がゴーレムであることを見抜くと、ストームはマチュアの元にやってきて集まっているものたちに向かって一礼する。
それには全員が一礼すると、ストームは入り口横にある『貴賓用転移室』に入っていった。
「あちらの扉は各国の王城と繋がっていますので、皆さんでは使えません。あれこそ王家専用ですので。あとは質問はありませんか? なければ二階へ案内します」
とマチュア自ら二階へと上がっていく。
そして店内を見た時、商人と貴族たちはまたしても絶句する。
一見すると唯の雑貨屋だが、置いてあるものは全て魔導器である。
「店内全て魔導器です。カナン魔導王国はその名の通り、魔導器の販売と開発、研究を行います。三階がその研究施設ですが、優秀なものにはその技術を伝授する事も考えています」
――スッ
と、手を挙げる商人がいた。
「はい、あなたのお名前は?」
「ラパーナ商会と申します」
「はいラパーナさん質問を許可します」
にこやかに告げるマチュア。
「これらの商品を私達商人に卸すことは考えていますか?」
「今のところはアルバート商会が王都魔導商会から独占で購入権を持っていますので、仕入れは其方と交渉してください。当店ではサムソンのサイドチェスト鍛治工房の武具も入れる予定ですので」
――スッ
次々と手を挙げる商会達。
マチュアのやり方を理解したようである。
「ここにある魔導器は全てここで作られたとおっしゃいましたが、例えば特注品も作れるのですか?」
「例えば?」
少し挑戦的な口調の商人である。
こういうやつは好きである。
「冒険者か好んで使いそうな、油を使わないランタンとかは作れるのですか?」
やれるものならやってみろ、という感じで告げる商人。
明らかにここの魔導器について疑いの目を持っているのか、もしくは自分の店で魔導器を扱っているためにライバルに対して牽制を行っているかの何方かであろう。
(その挑戦、乗った!!)
「よろしい。では、今、この場で作って見せましょう」
とマチュアが少し離れると、深淵の書庫を起動する。
――オオオオオ
とあちこちから驚きの声が上がる。
その中で、マチュアは空間からクルーラーと魔晶石を取り出すと、見る見るうちにそれをランタンに変化させた。
万が一の為に、盗難保護の魔法も付けておく。
――スッ
と魔法陣が消滅し、綺麗な銀色のランタンを見せる。
「手にとって見て構いませんよ。どうぞ」
と手前の商人に手渡すと、受け取った承認はそれを点けたり消したりしている。そして次の商人に手渡すと、また同じように確認をして次にまわす。
そして一周して再びマチュアの元に戻ってくると、それが本物であることを確認する。
「いかがですか? 因みにこれには『盗難保護』の魔法もかけてありますので、盗もうとするととんでもない音が響くようにしてあります。ここに並んでいる商品にも全て行っていますので、血迷ってもここに盗みになんて入りませんように」
笑いながらマチュアが告げると、商人達も笑っている。
「ということですので、これでお披露目を終わります。本日はわざわざこんな辺鄙な国までいらして頂き有難うございました」
丁寧に頭を下げると、商人達も一礼し、その場を後にする。
‥‥‥
‥‥
‥
建物を出ると同時に、次々と商人達が隣の商人ギルドに走っていく姿が見えた。
特別交易許可証の申請を行うのだろう、中には冒険者が個人で申請に向かっている姿もちららと見えている。
そしてカナン魔導商会には、マチュアとフィリップ、そしてカレンの三名だけが残っていた。
「女王陛下、お疲れ様でした」
とその場に残っているフィリップ・アルバートが膝をつく。
「今日のお披露目に色々と尽力して頂き有難うございます、カレンもお疲れ様ね」
「はい。それでは失礼しますわ」
とフィリップとカレンは丁寧に挨拶を返すと、その場を後にした。
マチュアは周囲を見渡して、誰も居ないことを確認すると、耳につけてあるイヤリングに指を当てて馴染み亭にいるマチュア・ドライに連絡を入れた。
――ピッピッ
「はい終了。後ほど合流するから馴染み亭の二階で待機ね。王城のミナセ女王は執務をお願いします
『クィーン、了解ですわ』
『ドライも了解さん』
――ピッピッ
「さて、そんじゃあ馴染み亭にでも戻りますかー」
とチュニックにズボン、背中にバックパックという商人モードに換装すると、のんびりと歩いて馴染み亭へと戻っていった。
――そして
「いやー、しかし見ものだったぞ。女王陛下が駄目ックスターとそっくりなんだ」
「ま、まさか本物なのでは?」
「いや、直ぐ後ろに駄目ックスターがいたから。しかもいつもの」
と酒場では、先程の光景を思い出して飲んでいる冒険者の姿があった。
――スパァァァァァン
素早く後ろに回り込むと、新型ハリセンを引き抜いて力いっぱい殴りつける。
「さっきといい、今と言い、全くいつまで私は駄目ックスターなんだよ」
と笑いながら文句を告げる。
「おかげであそこの貴族や商会の人にも駄目ックスターって言われるんだぞ」
「「「事実じゃねーか」」」
と三人同時にツッコミを入れてきたので、静かに一言。
「ジェェェェェイク。ここの会計倍額で」
「嘘嘘、冗談だよ。まあ、飲め、今日は奢ってやるよ」
と酒盛りが発生する。
その楽しい時間の中で、マチュアはふと遠い世界を思い出していた。
もう戻ることのない、かつての故郷を……。
第ニ部、完
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他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
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