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第一部・二人の転生者と異世界と

ラグナ動乱・その1・めぐりあい、そら見たことか

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 ベルナー邸の朝は早かった。

 騎士団員たちは日課の早朝訓練を行い、邸内の使用人たちは主人たちの朝食の準備や、邸内の清掃を開始する。
 屋敷の外では、御者が馬車の手入れを行い、下男たちが馬に餌をやり毛並みを整える。
 それがいつもの彼らの日課であり日常である。
 そして此方も、いつもの日常

――フォォォォォォォォォォォォォォォォ

 中庭で、ストームは上半身裸の状態でストレッチを行っていた。
 右手にはインゴットから成形したダンベルを持ち、簡易ベンチに左膝と左手を付ける。
 そのままダンベルキックバックと呼ぶトレーニングを数セット行い、一息入れて次は両手でダンベルを持ったダンベルカールに繋げる。
 最近は自重トレーニング以外にも、自家製ダンベルでトレーニングを行っていた。

「‥‥ストーム、相変わらずすごいトレーニングだな‥‥」
 一休みしている所にスコットがやってくる。
 彼もまた、接合したばかりの腕と脚のリハビリをストームに教わっていたのだ。
「ああ、日課なのでな。一日もサボってはいけないからねぇ」
 馬車での移動中でも、夜と朝には自重トレーニングを行っていたストーム。
 この世界にきて、更に身体全体が引き締まったようだ。

(こっちで鍛えて、保存されている本体にどれだけ影響が出ているか‥‥)

 と考えはするが、それでもこの日課はやめられないようだ。
「ストーム様、スコット様。朝食が出来ています」
 新しくストーム付きとなった『シャーリィ』という侍女が二人を呼びに来たので、二人は食堂へと向かい、朝食を取ったのである。
「おはよう諸君。今日はいい目覚めぢゃのう」
 と朝からご機嫌のシルヴィー。
「ああ。おはよう。今日は随分と機嫌がいいな。何かあったのか?」
「いやいや、馬車での車中泊ではなくフカフカのベットで寝られたので満足ぢゃ。ストームは、今日は例のマチュアとやらを探しにいくのぢゃろう?」
 ご機嫌でパンを頬張るシルヴィー。
 ここのパンは小麦の柔らかいパンである。
「ああ、取り敢えずはいって見ようと思う。シルヴィーもいくか?」
「うむ。共に探しに行こうぞ」
 といっても、場所は決まっているから其処に向かうだけなんだけどなぁ。
 そう考えては見たが、シルヴィーの元気そうな表情を見ていると、まあいいかと考えてしまう。
「それじゃあ、そうしますか」
 ということで、のどかな朝食を楽しんでいた。


 ○ ○ ○ ○ ○ 


 マチュアがここラグナに来た初日、商人ギルドで露店の手続きをしていた時に、とある貴族の訪問があった。

『貴方がトリックスターのマチュアさんですね。私はトゥバクロ男爵の執事でヒクソンと申します。此の度、来たる竜王祭に行われる大武道大会にて、貴方は当家の推薦で出場して頂く事になります』
 と突然やってきた、全身まさに筋肉という雰囲気の執事が、マチュアに話しかけてきたのである。
「謹んでお断りする。私は露店で忙しいので。それでは」
 と再びカウンターで手続きを再開した時。

──ガシッ
 すると、突然後ろからヒクソンに肩を掴まれた。
「男爵様の好意をお断りすると‥‥ハウッ!!」
 背後にいるヒクソンの右足を踵で踏むと同時に、素早く鳩尾に左肘を入れるマチュア。
 其処から裏拳を顔面に叩き込むと、体勢を入れ替えて、ヒクソンの腕を取って逆回転し、そのまま体落とし風に投げた。

――ズドオオオオン
 まともに受け身も取れないまま、ヒクソンが床に崩れる。

(あ、修練拳闘士でも、これ出来るんだ)

 ギュッと拳を握り、倒れているヒクソンの身体を起こす。
「無礼には無礼で返します。先程も申した通りです。それに、貴方も昔、言われたことはありませんでしたか?」
 ゆっくりと身体を起こしたヒクソンに、そう問い掛ける。
「な、なんと?」
「知らない人に付いていってはいけないってね」
 軽くウィンクするマチュア。
 と、ヒクソンもようやく体が揺くようになったので、マチュアに一礼する。
「貴方の言葉にも一理ある。誠に申し訳なかった。しかし、今の技は一体‥‥」
「これは私の格闘技の師匠の一人。柳という方のスペシャルな技だ」

 漫画で見た技の説明をするマチュア。
 とある柔道だったりプロレスだったりする漫画に出てきた、ライバルの使う技。マチュアはこっちの世界に来て、それら興味のある技も一つ一つ吟味して連射うしていたようである。

「そ、そうですか。その方は格闘技の達人なのですね‥‥では、主人には断られたことを伝えておきますので。それでは‥‥」
 と告げてヒクソンは退場する。

――パチパチパチパチ
 すると、周囲から拍手が湧き上がる。
「おお、いまの戦い、一部始終見させてもらいました。私は『アレン・マクドガル侯爵』の執事をしているグランと申します。『ギャロップ商会』の護衛をしていた冒険者から貴方の話は聞かせていただきまして。此の度の大武道大会に我が陣営として参加して頂きたく、貴方を推薦させていただきました」
 今度はピシッとしたスーツを来た、渋い執事が話しかけてきた。
「まあ、さっきのトバイチローだかツバクローみたいな名前の男爵よりは礼儀を知っているようで」
 と返事を返すマチュア。
「もし、貴方が詳しいお話を聞きたいのでしたら、私たちの主は貴族街に宿泊していますので、一度おいでになられませんか?」
「誠に申し訳ありません。お誘い頂いたのは嬉しいのですが、少し考えさせて下さい。色々とやりたいこともありますので」
 と丁寧に頭を下げる。
「いえ、此方こそお時間を取らせてもらって申し訳なかったです。それでは失礼します」
 と一礼して、グランはその場を立ち去っていった。
「‥‥一介のトリックスターに何を求めているのやら、と、露天の申請しないと」
 とカウンターに戻っていくマチュアであった。


 ○ ○ ○ ○ ○


 そして今日。
 マチュアたちの露店は朝一番の行列、とはならない。
 先日の夜に食材の仕入れと仕込みを行い、今日は朝から簡易設備オープンキッチンで作り出した炉で、次々とタンドリーチキンを焼いている。
 その横では、アンジェラがライ麦パンを次々とカットし、サンドイッチの準備をしていた。

「マチュアさん、作り方は昨日教えて貰った方法で宜しいのですよね?」
 カウンターテーブルの前で、サンドイッチの制作手順の確認を開始するアンジェラ。
「そうそう。カットしたライ麦パンを手にとってね。そこにある黄色いマスタード塗って、レタス挟んで、タンドリーチキン挟んで、タマネギの焼いたの乗っけて、またレタス挟んでパン挟む。はいオッケーです、お願いしますねー!!」
 マチュアも丁寧に説明して、すぐさま作業に戻っていく。
 その手順にそって、アンジェラは次々と具材を挟み込み、最後に木皿に乗せていった
 隣のコンロでは、ウォルフラムがコツコツとタマネギの輪切りを丁寧に焼いている。
「こちらは30人分は焼けました。次の焼き始めますね」
「あ、ウォルさんお願いしますー」
 兎に角、昼までには一通りの材料をスタンバイしようと仕込みに大忙しのようだ。

「スパイスのいい匂いがしてたまらない。まだ売ってないのか?」
「ここか? 異国のサンドイッチとかいうものが食べられるのは? 一ついくらだね?」
 と次々と客がくるのだが。
「誠に申し訳ありません。販売は正午の鐘が鳴ってからですので!!」
 と丁寧に頭を下げるマチュア。
  数日前にこの王都ラグナに到着し、護衛の仕事は一旦終了となったマチュアたち。
 マルチの話だと、ギャロップ商会は一月ぐらいはこの街に滞在するらしく、もしその後で何処かに移動する時は声を掛けてくれるらしい。
 ウォルフラムは大武道大会に参加するらしく、暫くはここで滞在。
 そしてシスター・アンジェラは一度神聖教会に行ってきた後、今度はマチュアの露店を手伝うという奉仕活動を行っていたのである。
 しばし仕込みを続け、おおよそ200食の準備が完了した。
 さらにマチュアは無限袋から大量の寸胴を取り出し、コンロで温め始める。
「それが噂のチキンカレーですね」
「そ。鐘がなったら販売を開始するからねー。ウォルフラムは注文を受けたらカレーを盛り付けて、パンを添えて出してね。アンジェラは注文を受けたら私と一緒にサンドイッチを作ってお客さんに出す。どっちも一人前銀貨1枚!!」
 豪気な値段設定。
 だがそれでも行けるとマチュアは確信していた。

「済まないが、手頃な冒険者を一つ頼む」
 ふと、マチュアの背後から声が聞こえる。
「手頃な‥‥って、おやストーム。ここに居たのか」
 と目の前に現れたストームにそう問い掛けるマチュア。
 ストームとシルヴィーは、マチュアを探してここにやってきたのである。
「久しぶりだな。で、カレーとサンドイッチは昼からか?」
「ストームなら構わんよ。カレーとサンドイッチを一人前‥‥ちがうや、3人前作って」

「「喜んで!!」」 

 とマチュアの声でウォルフラムとアンジェラが盛り付けを開始。
 あんたら、どこの居酒屋の店員だよ。
「貴方がマチュア殿か。妾はシルヴィーと申す。実は頼みがあって参ったのぢゃが」
 するとストームの横のシルヴィーが頭を下げつつマチュアに話しかける。
「んんんんん? このパターンは大武道大会に参加して下さいですか? 貴方も推薦したのですか?」
 やれやれという表情でそう呟くマチュア。
「まさか、もう決まったのか?」
「いえいえ。一つは断りましたよ。もう一つは保留です」
 そう告げると同時に、ウォルフラムたちが盛り付けを完成した。
「取り敢えず食事をどーぞ。後ろの侍女さんもね」
 と盛り付けた皿を手渡す。
「ああ、久しぶりに食べるとするか‥‥」
 とストームとシルヴィー、そしてその侍女が座って食事を始める。

――ンッ!! ムグッ、ハフハフ‥‥

 美味そうに食べるシルヴィーと侍女。
「しっかし、よくもまあ、この世界でこの味を再現したよなぁ。調味料とかどうしたんだ?」
「そんなもの、魔法でなんとでもなるわい!!」
 と笑いながらストームとマチュアが話している。
「で、ストームの状況はどうなんだ? 修練は進んでいるのか?」
「今まさにその最中だ。ちなみに鍛冶師としても、いいもの作ってあるぞ」
「なら柳刃と薄刃、出刃を大小一つずつ、ペティナイフと牛刀、以上よろしく!!」
「ハァ? そんなにか。言っとくが俺の作るものは高いぞ」
「こっちの料理も高いぞ」
 ニィっと笑った後お互いが拳を突き出す。

――ガシッ
 と拳が打ち鳴る。
「楽しそうぢゃのう‥‥あ、すまぬが、こっちのサンドイッチのおかわりを二つほしいのぢゃが」
 とアンジェラに話しかけるシルヴィー。
「はい、今つくります‥‥あれ?」
「カレーのおかわりは要らないので‥‥えええ?」
 と、ようやく自分が誰に料理を渡したのか理解したアンジェラとウォルフラム。 

「「ベ、ベルナー公爵様っ」」

 慌てて立ち上がる二人。
「あーよいよい。それよりもおかわりをはよ!!」
 と手をヒラヒラとするシルヴィー。
「ストーム、この子、凄い子なの?」
「いまの雇い主だ。王家の正当血筋を持つ公爵だ」
 ほほうと納得して、マチュアは無限袋から大きめのフライパンも取り出した。
「それじゃあ特別だ。お嬢ちゃんたちにデザートを作ってあげよう」
 次々と中袋から調味料の入った壺を取り出し、調理を開始する。

 木製のボウルに小麦粉を入れ、牛乳とタマゴと砂糖を加え、手早くかき回した。
 そのボウルを一旦横に置き、別のボウルに牛乳とバターを加えて力いっぱい混ぜ合わせる。
 これで生クリームのようなものが出来上がる。
 朝市で買ってきた、りんごとミカンのような果実の皮を剥いてフライパンでソテーする。 
 一度それを取り出してから、油を引いたフライパンで、最初に作った生地を薄く焼いて、焼いた果物と生クリームを盛り付けて折る。

「あー、焼きリンゴのクレープか」
「そういうこと。ほれ、デザートだよ」
 とシルヴィーと侍女、ついでに食べたそうにしているウォルフラムとアンジェラにも渡した。
「これは売らないからね!!」
 と告げてから、とりあえず一休み。
「そういえば、マチュアを推薦した貴族の名前は分かるか?」
 とシルヴィーが聞きたかったことをストームが問い掛ける。
「ああ、畜ペンみたいな名前の貴族と、えーと、マクドナルド?」
「マクドガルか!!」
 とシルヴィーが叫ぶ。
「そ、そのマクドガルの使いの人。畜ペンは断ったけれど、マクドガルて人は保留」
「マチュア殿、後生だ、マクドガルには手を貸さないで欲しいのぢゃ」
 と告げるシルヴィー。
 そのままストームの方を見ると、ストームも静かに頷く。
「ふむ。なんか色々とありそうだねぇ。夕方の鐘がなり終わったら話を聞くよ」
 と立ち上がる。
 それと同時に、正午の鐘が鳴り響いた。
 いよいよ販売開始である。
「さあさあ、よってらつしゃいみてらっしゃい。『居酒屋・なじみ亭』の屋台だよー」
 その掛け声と寸胴から立ち上るカレーの香りに、一人、またひとりとお客が集まってきた‥‥。


 ○ ○ ○ ○ ○


 夕方の鐘が鳴り響き、マチュア達は露店を締めた。
 まだ食べたかった人たちが大勢居たが、残ったお客には頭を下げて露店を閉じた。
 ストームは夕方まで鍛冶ギルドに向かい、残ったシルヴィーと侍女はそのままマチュアの店で売り子になってしまった。
 もっとも売り子をしていたのは侍女のほうで、シルヴィーは時折つまみ食いをしたり、近くの露店を散策していたらしい。
 丁度ストームも戻ってきた所で、一行はそのまま近くの酒場へとなだれ込む。
 シルヴィーが店に頼み込んで個室を一つ借り切って、そこで大宴会に突入した。

――かんぱーーーい
 エールで地球式の乾杯をし、次々と運び込まれる食事に舌鼓を打つ。
 まだストックしてあった寸胴カレーとタンドリーチキンも並べて、しばし楽しい時を過ごしていた。
 そこでシルヴィーは、その場にいる者にのみということで、話を始めた。
 自分の生い立ち、いまの状況。
 そしてこれから何をしたいのか。
 ただ、サムソンでストームに告げた本音は、この場では明かしていなかった。

「つまり、そのマクドガル侯爵っていうのに加担してはダメだということは理解した。なら明日の夜にでも断りをいれてくるよ」
 とエールの入ったジョッキ片手にマチュアが告げる。
「相変わらず話をちゃんときいていないというか‥‥まあそれでいいわ」
 あきれたように告げるストーム。
「で、大武道大会には登録すればいいのでしょ? それはかまわないけれど、もしストームと私でぶつかったらどうすればいいの?」
「そ、それはその‥‥」
 とシルヴィーが言葉に詰まる。
「まあ、ガチでやるしか無いわな」
「なら、こっちもようやく本気を出せるっていうことだぁね」
 と告げるストームとマチュア。
「ええっと。マチュア、今までのは本気ではなかったのか?」
 とウォルフラムがマチュアに問い掛ける。
「ん? ああ、隊商護衛のときのやつね。半分も力を出していないよ」

「「えええええーーーーっ」」
 
 と驚くウォルフラムとアンジェラ。
「まあ、大会になったらどうとでもなるのぢゃが。ストームとマチュア、二人ともうちの騎士団に登録しておかぬか?」
「その件については、俺はサムソンに家もあるので」 
「ほほう。ストームは既にサムソンに家があるのかー。私はどうしようかなー」
 と呟くストームとマチュア。
「登録したからと言って、ベルナー領に住めとはいわぬ。ただ、二人の実力ならば決勝まで行く可能性もあるぢゃろ。そうなった場合、かなりの貴族たちが二人を取り込もうと動き始めるぢゃろう。が、ベルナー公爵家の騎士となると、少なくとも伯爵家以下の貴族は手を出してこなくなる」
 真面目な表情で告げるシルヴィー。
「名前だけでも登録しておけということか」
「うむ。それに王位を取り戻したら、まず何処も手を出してはこない。どや?」
 とテーブルに身を乗り出して話しかける。
「もし二人がうちに来るのであれば、ウォルフラムとアンジェラも家で雇い入れても良い。立場的には『自由騎士』と『巡回修道士』の叙勲をしてやる。それさえあれば、別に冒険者をやっていても構わぬぞ」  
 なんと。
 その言葉にウォルフラムとアンジェラもやる気十分である。
「マチュアさん、是非登録しましょう」
「ストーム殿。宜しく頼む」
 と二人に話しかける。
「あ、わ、分かった分かった。それで構わない」
「王室御用達の料理人か。それも悪くはないが。登録しても私は自由にやらせて貰っていいのですよね?」
 ということで、急遽二人はベルナー領付きの騎士として登録を行うことになった。
 もっとも、騎士団長の前で宣誓を行い、のちに各ギルドあてに書面で通達するだけなのだが。

「スコットの部下というのもあれぢゃからな。近衛騎士‥‥違う。何かいい名前はないかのう」
 と頭を捻るシルヴィー。
「さてね。それを考えるのは主君の仕事だろう?」
 ニィッと笑いながら呟くストーム。
「ふん。ストームは意地悪なのぢゃ。マチュア、何かないのう」
 と問い掛ける。
「えー、ジェダイでいいしょ。姫専属のジェダイの騎士」
「いや、それは色々と駄目だろう?」
 と呟くストーム。
 うむ、色々と不味い。
 昔より、今はもっとやばい。
「姫専属の騎士か。ミラージュとかはありなんだけれどなぁ‥‥」
 それも駄目。
 装備がゴティックなメイド風になりそうだからダメ。
 他の考えてください。
「まあ、存在していても、その姿を表すのは滅多にないというのなら、幻影はありですよね」
 とウォルフラムが呟く。
 さらにシルヴィーもノリノリであった。
「よし、妾直属の騎士団として、この場にいる者達に幻影騎士団ザ・ファントムのメンバーとなることを命ずる!!」
 ドャァ。という顔で叫ぶシルヴィー。
「では、今日はこのまま妾の屋敷に皆で泊まるのぢゃ。明日、正式に皆を騎士団として登録に向かおうではないか」
 という感じでシルヴィーが話を纏めた。

 新しく騎士団を設営する場合、王国に登録が義務付けられている。
 貴族がどんな力を保有しているか把握するためである
 これは侯爵家でも例外はなく、シルヴィーも明日、王城にある騎士団関係の文官に申請書類を持って行かなくてはならない。

 ウォルフラムとアンジェラもそれには同意しているので、ストームとマチュアはなし崩し的に騎士団に登録することになった。
 まさか、あのような状況に追いやられるとは、ストームとマチュアは思っても居なかったであろう。  
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