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第7章・王位継承と、狙われた魔導書

第310話・東方諸国の事情、海洋国家の危機?

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 のんびりとナンバ屋さんで順番を待っています。
 まあ、大体一時間程度は待たされるかと思っていましたけれど、見ていた感じ受付の流れが実にスムーズでして、20分ほどで私の名前が呼び出されました。

「フェイール商店のクリスティナ・フェイールさま、6番窓口へどうぞ」
「あ、はいっ」
「まあ、良そうよりも早いし、余計な商人が集まってこなかったのはよかったな」
「う~ん、そこが気になりますが。ブランシュさん、なにかしましたか?」
「いや、別になにもしていないなぁ。ということは、それだけここに集まっている商人の質がいいっていうことじゃないか?」
「なるほど!!」

 ということで話が終わり、受付に向かいます。
 そこで商業ギルドの身分証を提示し、さらに別室へと向かいまして。

「お久しぶりです! フェイールさんもお変わりなくお元気そうで」
「はい、3年……4年ぶりぐらいでしょうか? ルナパークさんもお変わりなくお元気そうで」
「まあ、歳を取りましたからねぇ……それで、早速ですが、本日ここにきた要件について、聞かせていただきたいのですが」

 挨拶もそこそこに、さっそく本題へ。
 このあたり、ガンバナニーワ王国の商人だっていうのが感じられますね。
 商人にとって時間は大切、タイム・イズ・マニーという勇者語録もありますから。
 これは確か、勇者の世界では『時間貸し』なる制度があるらくし、馬車を止めておくとその時間分だけ停車料金が発生するという恐ろしい制度だそうです。そこで、余計な支払いを終わらせるために、馬車を止めるとすぐに荷下ろしとか馬車のメンテナンスが始まるそうですよ。
 大手商会の場合、馬車が止まった瞬間に専門スタッフが飛び出してきて、馬の交換から車輪の点検、はては荷物の積み下ろしまで一分以内に終らせる『ピットクルー』なるプロフェッショナルがいるそうで……って、あの、ブランシュさん、私の頭の中を除きこんでニヤニヤするのやめて貰えますか?

「ん、俺の顔になにかついていますか?」 
「いえ、私の気のせいでしたか。では、本日伺ったのはほかでもありません、こちらの商品について買い取りたくやってきました。どれだけご用意できるでしょうか」
「拝見させていただきます」

 ハーバリオス王国王都商業ギルドから渡された納品依頼書。 
 それを目録のまま、ルナパークさんに提出します。

「うんうん。こちらの商品、殆どご用意できますが、数日ほどお時間をいただ来ます」
「どれぐらいでしょうか?」
「まあ、町はずれの問屋も通す必要がありますから、大体3日程度というところでしょうね。ただ、こちら『海産物』だけは、現在は流通量がかなり制限されていまして、ご用意することができません」
「ではも、海産物以外でお願いします。私たちも3日ほど滞在しますので、3日後にまたこちらに伺えばよろしいでしょうか?」
「ええ。それではさっそく、手配しますので」

 これで話し合いは終わり。
 がっちりと握手をして契約は完了です。
 あとは3日後に納品して貰い音ハーバリオスへととんぼ返りです。
 でも、どうして着た場所に戻ることを『とんぼ返り』っていうのでしょうかねぇ。
 勇者語録、難しいですよ。

「さて、商売の話は終わったようだから、ここからは俺の疑問に答えてほしいんだが」
「えぇっと、ブランシュさん、でしたわね。なにかありましたか?」

 これで終わったと思いましたけれど、どうやらブランシュさんはなにか感じたようです。

「さっきの海産物の入荷についてだが。このガンバナニーワ王国は、【東方諸国の台所】とも呼ばれているぐらい、食に対しては他国の追従を許さない国だとおもう。その国が海産物の入荷について眉を顰めることになっているということ。確か、この栗海産物は東方海岸およびそのすぐ先にある諸島によよる国家……えぇっと、【ハマスタ王国】からの輸入が大半だったはず。そのハマスタ王国で、何か起こったのか?」

 ハマスタ王国……東方連合王国屈指の海洋国家。
 王都カンナイは、小さい島でありながらも雨季と乾季に分かれているという、じつに珍しい国です。
 そして、ハマスタ王国上空には、クラウドホエールが泳ぐ巨大な雲海が流れているとか。
 海洋国家であり、海神の加護を得ている国……にも関わらず、海産物の輸出が制限されているということですよね。
 確かに、それはおかしいです。

「ここ数年、この東方諸国連合は魔族の侵攻に幾度となくさらされていました。ですが、その都度、諸国連合は団結し、魔族の猛威を跳ね返していたのですが……。つい半年ほどまえから、魔族の侵攻が急激にやみまして。これで一安心と思ったとたん、ハマスタ王国からの輸出制限が起こりまして。私たちとしても、何が起きたのかさっぱりわからずで」
「ふぅん。半年ほど前……ああ、カマンベール王国侵攻と同じタイミングだから、当ほわう諸国から西方諸国制圧に舵取りしたのだろうと予想はできるが。それにしても、海産物の制限か。なにか起きているということだけ、留めておくとしよう」
「はい。その程度の認識で大丈夫かと」

 うん。
 私たちの西方諸国連合も、まもなく魔族との全面戦争に突入します。
 それさえなかったら、ハマスタ王国に行ってみるのもいいかとおいますけれど。
 まずは、三日後に商品を受け取り、そしてハーバリオスへ帰ります。
 西方諸国については、そのあとです。
 
「理溶解だ。ということで、俺の用事も終わったから、どこか宿でも探すとしようかねぇ」
「そうですね。では、これで失礼します」
「宿でしたら、ナンバ屋直営の宿がありますので、そちらをご紹介しますわ」
「それは助かります。では、よろしくお願いします」

 そのままもう一度挨拶をして、受付で紹介状を受け取ってさっそく宿にチェックイン。
 うん、このチェックインも勇者語録、私たちの生活には勇者さまが残した言葉や風習が根強く残っていますね。
 さて、三日後まで、どうやって時間を潰しましょうか。
 商店や商会巡り、食い倒れ、露店の設営、いろいろとやりたいことが大きすぎますわ。
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