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第7章・王位継承と、狙われた魔導書
第306話・やるべきこと、これからのこと
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カマンベール王国王都王城。
そこにある尖塔の最上階に、セシール女王は監禁されていました。
私とペルソナさんは敵に見つかることなく尖塔に突入、そして無事にセシール様を馬車の中に一時的に保護することに成功しました。
まずは体力回復、そして万が一にも呪詛が施されている可能性も考慮して、元気溌剌シュワシュワドリンクを手渡しましたよ。
幸いなことに、セシールさまは疑うことなくそれを一気飲み。
すると全身が光り輝き、顔色も良くなり始めましたよ。
さすがは、霊薬エリクシールと肩を並べるほどの奇跡の魔法薬です。
「……これって、本当にエリクシールではないの?」
「はい。初代カナン・アーレスト様が残した遺産のようなものです。と、まずはこちらを」
アイテムボックスから、おばあさまから受けていた注文の品を取り出すと、それをセシールさまにお渡しします。
「これは?」
「おばあさまから、この商品を配達して欲しいと頼まれましたので、お届けに参りました。ということで、詳しいお話を説明します」
「そうね、お願いするわ」
ここからは、淡々と説明を開始。
精霊女王の加護を持つセシール女王には、全ての説明を行って構わないとペルソナさんも話してくれましたので、それはもう、全て包み隠さず伝えましたよ。
【シャーリィの魔導書】のこと、【型録通販のシャーリィ】のこと。
アイテムボックスから【シャーリィの魔導書】を取り出し、それを見せて説明もしました。
そして私が実家を勘当され王都払いにあったことから始まり、つい最近、ようやくハーバリオス王国へと戻ってきたこと、そして攫われたおばあさまを助けるところまで、しっかりと話しましたよ。
それらの説明を一通り終えると、セシールさまは涙を浮かべていました。
「そんな苦労を……ごめんなさい」
「いえ、セシールさまにはなにも罪はありません。私を魔王国に嫁がせようとしたことについても、この国の貴族院の決定。それについては恨み言はありましたけれど、もう終わったことです」
「そうね、そういって貰えると嬉しいわ……それで、このあとは、どうするのかしら?」
このあと。
うん、偵察任務は終わりましたし、セシール様の安否も確認できました。
それに、元気溌剌シュワシュワドリンクを飲んだのですから、洗脳や隷属が施されていたとしても全て解除されているはず。
「う~ん。そうですね……いったん、私はハーバリオス王国に戻り、この国の現状を国王に報告します。でも、それ以上の事はできません。セシールさまもご存じかと思いますが、精霊王国の人々は、人間世界の戦争に加担することはできないのですから」
「つまり、このまま私を助けてくれるという選択肢もないということですか」
その悲しそうな問いかけに、私は思わずペルソナさんを見てしまいましたが。
「私としては、これ以上の干渉はできませんとしか言えませんが……」
そう告げつつ、彼は私の手にしている【型録通販のシャーリィ】をちらっと見ています。
うん、つまりここにヒントが隠されていると?
そう思ってペルソナさんの方を見ると、やっぱり私の考えはあっていたようで、笑顔で頷いていました。
「ちょっと待っていてください、ここに何かヒントがあります。セシール様をこの尖塔から救い出して……そうですね、ハーバリオス王国まで来ていただければ、戦争の状況も全てお話できるはず……って、あれれ?」
うん、私はこのパターンを知っています。
それも数年前、同じような窮地を救ったことがありますよ、ええ、そうですよ。
「旅行券!! そうですよ、それがありましたよ……今回はヴェルディーナ王国のように閉鎖された空間ではない、ここからハーバリオス王国なら、すぐにでも移動する事が出来るではないですか!!」
そう告げてから、チラッとペルソナさんを見ます。
いえ、別に答え合わせを求めているとかではないのですけれど、ウンウンって頷いていますよ。
一言説明してくれてもいいのではと思いましたけれど、精霊人はこれ以上の干渉はできない、そういうことなのですよね。
「さて、今から注文を受け付けますと……そうですね、明日の朝一番での配達は可能ですが、どうしますか?」
「それで構いません。そしてペルソナさん、明日の配達ですが、私も同行させてください。セシールさまと一緒に、ハーバリオスに戻りたいのです」
「それぐらいでしたら、別に構いませんよ。ではセシールさん、私どもは一旦、これで失礼します。また明日の朝、6つの鐘が鳴り終わるころには、再びこちらに赴きます」
「その時には、セシールさまを助けるための商品もお届けにきますので、それまで待っていてください!」
「え、ええ、分かったわ」
私とペルソナさんの迫力に押され、ややドン引き状態のセシールさま。
「では、今から幻影を解除しますので、セシールさんは馬車の外へどうぞ」
「ええ、ありがとうございます」
ペルソナさんに促されて、セシールさまが馬車の外に出ました。
そのタイミングで幻影を消去すると、セシールさまは何事もなかったかのように窓辺の席へと戻っていきました。そしてこちらをちらっと見ると、私とペルソナさんは静かに頭を下げたのち、そのまま馬車で移動を開始します。
また明日、必ず来ますので、それまで待っていてください。
………
……
…
――翌日・早朝
私とペルソナさんは朝一番で【旅行券】を届けに向かうと、そのままセシールさまも伴って一気にハーバリオス王国王都へと帰還しました。
ええ、この旅行券についても、セシールさまには秘密を守ってくださいと念を押してあります。
そしてハーバリオス王城へ私とセシール様の二人で向かいます。
ちなみにペルソナさんは一旦、ヘスティア王国へと戻る必要があるとかで。
「私一人だけが、魔族に占拠されている地から逃れてくるというのは……非常に心苦しいです」
「でも、女王自ら、カマンベール王国で起こった出来事のすべてを伝えた方がいいに決まっています。ということで、向かいましょう!」
旅行券で到着するのは、王都王城前。
つまり、この正門を越えると、いよいよ国王との謁見に向かう事になります。
うん、流石に私も武者震いがしてきましたよ。
これからの話し合いで、カマンベール王国の未来が掛かってくるのですから。
そこにある尖塔の最上階に、セシール女王は監禁されていました。
私とペルソナさんは敵に見つかることなく尖塔に突入、そして無事にセシール様を馬車の中に一時的に保護することに成功しました。
まずは体力回復、そして万が一にも呪詛が施されている可能性も考慮して、元気溌剌シュワシュワドリンクを手渡しましたよ。
幸いなことに、セシールさまは疑うことなくそれを一気飲み。
すると全身が光り輝き、顔色も良くなり始めましたよ。
さすがは、霊薬エリクシールと肩を並べるほどの奇跡の魔法薬です。
「……これって、本当にエリクシールではないの?」
「はい。初代カナン・アーレスト様が残した遺産のようなものです。と、まずはこちらを」
アイテムボックスから、おばあさまから受けていた注文の品を取り出すと、それをセシールさまにお渡しします。
「これは?」
「おばあさまから、この商品を配達して欲しいと頼まれましたので、お届けに参りました。ということで、詳しいお話を説明します」
「そうね、お願いするわ」
ここからは、淡々と説明を開始。
精霊女王の加護を持つセシール女王には、全ての説明を行って構わないとペルソナさんも話してくれましたので、それはもう、全て包み隠さず伝えましたよ。
【シャーリィの魔導書】のこと、【型録通販のシャーリィ】のこと。
アイテムボックスから【シャーリィの魔導書】を取り出し、それを見せて説明もしました。
そして私が実家を勘当され王都払いにあったことから始まり、つい最近、ようやくハーバリオス王国へと戻ってきたこと、そして攫われたおばあさまを助けるところまで、しっかりと話しましたよ。
それらの説明を一通り終えると、セシールさまは涙を浮かべていました。
「そんな苦労を……ごめんなさい」
「いえ、セシールさまにはなにも罪はありません。私を魔王国に嫁がせようとしたことについても、この国の貴族院の決定。それについては恨み言はありましたけれど、もう終わったことです」
「そうね、そういって貰えると嬉しいわ……それで、このあとは、どうするのかしら?」
このあと。
うん、偵察任務は終わりましたし、セシール様の安否も確認できました。
それに、元気溌剌シュワシュワドリンクを飲んだのですから、洗脳や隷属が施されていたとしても全て解除されているはず。
「う~ん。そうですね……いったん、私はハーバリオス王国に戻り、この国の現状を国王に報告します。でも、それ以上の事はできません。セシールさまもご存じかと思いますが、精霊王国の人々は、人間世界の戦争に加担することはできないのですから」
「つまり、このまま私を助けてくれるという選択肢もないということですか」
その悲しそうな問いかけに、私は思わずペルソナさんを見てしまいましたが。
「私としては、これ以上の干渉はできませんとしか言えませんが……」
そう告げつつ、彼は私の手にしている【型録通販のシャーリィ】をちらっと見ています。
うん、つまりここにヒントが隠されていると?
そう思ってペルソナさんの方を見ると、やっぱり私の考えはあっていたようで、笑顔で頷いていました。
「ちょっと待っていてください、ここに何かヒントがあります。セシール様をこの尖塔から救い出して……そうですね、ハーバリオス王国まで来ていただければ、戦争の状況も全てお話できるはず……って、あれれ?」
うん、私はこのパターンを知っています。
それも数年前、同じような窮地を救ったことがありますよ、ええ、そうですよ。
「旅行券!! そうですよ、それがありましたよ……今回はヴェルディーナ王国のように閉鎖された空間ではない、ここからハーバリオス王国なら、すぐにでも移動する事が出来るではないですか!!」
そう告げてから、チラッとペルソナさんを見ます。
いえ、別に答え合わせを求めているとかではないのですけれど、ウンウンって頷いていますよ。
一言説明してくれてもいいのではと思いましたけれど、精霊人はこれ以上の干渉はできない、そういうことなのですよね。
「さて、今から注文を受け付けますと……そうですね、明日の朝一番での配達は可能ですが、どうしますか?」
「それで構いません。そしてペルソナさん、明日の配達ですが、私も同行させてください。セシールさまと一緒に、ハーバリオスに戻りたいのです」
「それぐらいでしたら、別に構いませんよ。ではセシールさん、私どもは一旦、これで失礼します。また明日の朝、6つの鐘が鳴り終わるころには、再びこちらに赴きます」
「その時には、セシールさまを助けるための商品もお届けにきますので、それまで待っていてください!」
「え、ええ、分かったわ」
私とペルソナさんの迫力に押され、ややドン引き状態のセシールさま。
「では、今から幻影を解除しますので、セシールさんは馬車の外へどうぞ」
「ええ、ありがとうございます」
ペルソナさんに促されて、セシールさまが馬車の外に出ました。
そのタイミングで幻影を消去すると、セシールさまは何事もなかったかのように窓辺の席へと戻っていきました。そしてこちらをちらっと見ると、私とペルソナさんは静かに頭を下げたのち、そのまま馬車で移動を開始します。
また明日、必ず来ますので、それまで待っていてください。
………
……
…
――翌日・早朝
私とペルソナさんは朝一番で【旅行券】を届けに向かうと、そのままセシールさまも伴って一気にハーバリオス王国王都へと帰還しました。
ええ、この旅行券についても、セシールさまには秘密を守ってくださいと念を押してあります。
そしてハーバリオス王城へ私とセシール様の二人で向かいます。
ちなみにペルソナさんは一旦、ヘスティア王国へと戻る必要があるとかで。
「私一人だけが、魔族に占拠されている地から逃れてくるというのは……非常に心苦しいです」
「でも、女王自ら、カマンベール王国で起こった出来事のすべてを伝えた方がいいに決まっています。ということで、向かいましょう!」
旅行券で到着するのは、王都王城前。
つまり、この正門を越えると、いよいよ国王との謁見に向かう事になります。
うん、流石に私も武者震いがしてきましたよ。
これからの話し合いで、カマンベール王国の未来が掛かってくるのですから。
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