249 / 272
第7章・王位継承と、狙われた魔導書
第300話・狙われた魔導書は、女王の証?
しおりを挟む
八千草さんに付きまとわられて一週間が経過しました。
ここ最近の彼女は、夕方6つの鐘がなるちょっと前に店を訪れては、そのまま閉店時間になるまでのんびりとティータイムを楽しんでいるだけに思われます。
事実、以前なら『ペルソナさんは、いつ来るのかしら?』って執拗に問いかけてきていたのですが、最近は店に入ってきたらお勧めのスイーツと紅茶の茶葉を購入。
そして店内の丸テーブルに座って小さなティータイムを開きつつ、従業員のお二人と楽しく語らっているという感じです。
ちなみに、私の存在は無視です。
「……う~ん、どうも不可思議ですよ」
「ん? 姐さん、なにかあったのか?」
今日も朝一番でクラウンとんが納品に来ました。
ええ、ペルソナさんは相変わらず多忙らしく、主にクラウンさんとジョーカーさんが配達に来るようになりました。
ちなみにアルルカンさんはというと、どうやら前回の配達で要教育という判定が出たらしく、今は王城で内務を担当しているとジョーカーさんが話していましたよ。
「いえ、あの聖女さんの動向が掴めなくて。最近はほら、ペルソナさんに会わせろとか話してこなくなりましたし。なにか企んでいるのでしょうか?」
「ああ、そっちについては俺もよく分からん。あの聖女は自分に素直に生きているらしくてなぁ。なんというか、俺の危険人物センサーにも反応が薄いんだわ」
「どう見ても危険人物なのですけれど……」
ええ、ペルソナさんと私の平穏を脅かすという点でギルティです。
でも、ブランシュさん的にはノータッチ、セーフらしいです。
うん、今一つ判断基準が判らないのですけれど。
――カランカラーン
そんなことを考えつつ開店準備を行っていますと、突然、店の入り口が開きました。
そして宮廷魔導師のローブを身に付けた男性が一人、店内に入ってきましたよ。
「クリスティナ・フェイールくんはいるかな?」
「はい、私ですが」
白いひげを蓄えた壮年の魔導師が、優しい目をこちらに向けています。
「うん、確かに報告に合った通り、君からは初代カナン・アーレストの力を感じる。君の所有している魔導書について、魔法協会から要審査が必要であるという連絡が届いてね。申し訳ないが、魔法協会まで同行してくれるかな?」
「私の持つ魔導書ですか? それがどうして要審査ということになったのでしょうか?」
「君が保持している魔導書が、初代勇者であり大魔導師であるカナン・アーレストの遺産である可能性があるのだよ。古くから、勇者ゆかりの遺品などについては、王宮で厳重に管理し、時が来たら新たな勇者に齎すという盟約があってだね……まあ、簡単な審査だけなので、そう緊張することはないよ」
なるほど、宮廷魔導師さんの言い分も理解できますけれど、どうして今なのでしょうか?
私の魔導書についての審査が必要でしたら、先代勇者である柚月ルカさんが召喚された時にも行われているはずなのですよ。
それが無かったのに、どうして今回は審査が必要なのでしょうか。
そう考えてブランシュさんをチラッと見ましたが、彼も頭を傾げています。
「ブランシュさん、どう思いますか?」
「別にこの魔導師さんの話していることについてはおかしなところはないんだよなぁ。ただ、何か引っかかっている節がある。魔導師さんよ、俺は姐さんの護衛なんだけれど、俺も同行して構わないか?」
「それは構いませんよ。流石に大商会に匹敵するフェイール商店の店主を、護衛もなく一人でついてこいだなんて言えませんので。では、外で馬車を待たせてありますので、そちらへどうぞ」
「はい、では、店の事はお二人にお任せします」
ジェイミーさんとルメールさんの二人がいれば、よほどのことが無い限りはも問題はないでしょう。
ということで、あとはお任せして私とブランシュさんは魔法協会へと向かう事になりました。
〇 〇 〇 〇 〇
――王都魔法協会
フェイール商店から馬車で15分ほど。
そこには王都大聖堂に匹敵する巨大な建物がそびえたっていました。
ここが魔法協会、森羅万象様々な叡智が集められた、知識の殿堂。
私とブランシュさんは、そのまま応接室へと案内されました。
そこには白いローブを着た女性と、今回召喚された魔導師の三田森正一さん、そして聖女の八千草さんが座っていました。
うん、嫌な予感しかありません。
「ご足労いただき、ありがとうございます。魔法協会にて監査および鑑定を担当しているマルガレートと申します。実はですね、フェイールさんの所有している魔導書がカナン・アーレストゆかりのものであった場合、その権利をこちらの魔導師・三田森さんに譲渡して頂きたいのです」
「突然なにをおっしゃるかと思いましたら……それは謹んでお断りし ま す」
ええ、堂々とお断りし ま すよ。
どうして私の大切な魔導書を、勇者というだけで譲渡しなくてはならないのでしょうか。
「フェイールさん、その魔導書があなたにとって大切なものであることは私も重々承知しています。ですが、この世界に来て過去の勇者についての歴史を学び、今現在も魔族の脅威に晒されている人々を救うためには、どうしてもカナン・アーレストの残した『勇者の書』と呼ばれている魔導書が必要なのです。ご理解いただけましたよね?」
うん、三田森さんが必死に説得しようとしていますけれど、私には関係のないこと。
そもそも、これは勇者の書ではありませんよ?
ん? 勇者の書?
なにか引っかかるところがあります。
「お話は理解できますが、そもそも、私の持つ魔導書は勇者の書ではありませんよ?」
「フフン、それは嘘ね。あなたが初代勇者である魔導師カナン・アーレストの直系の血筋であることはすでに調べはついているわ。しかも、初代の持つチートスキルであるアイテムボックスと鑑定眼がつかえるっていうこともね。そして、そのあなたが精霊界の住人を召喚し、使役している。それがなによりも証拠じゃないの!! 勇者の書に記されている秘術を使ったのでしょう?」
んんん?
この聖女さんは、いきなり勝ち誇ったような顔をして話を進めていますけれど。
ほら、私の横でブランシュさんが笑いを必死にこらえているではないですか。
「あの……確かに私は初代勇者の持つスキルを継承しています。けれど、魔導書については違いますよ?」
「嘘をおっしゃい。では、今、この場で、マルガレートさんに鑑定してもらいますけれど構いませんわね? そうね、ついでにここで、契約の精霊とも契約して頂きましょうか? もしもあなたの所有している魔導書が『勇者ゆかりのもの』であったなら、それを彼に契約譲渡し、ついでペルソナを私の僕としましょう」
んんん……うん、アウトですね。
その条件では、契約の精霊と約束を交わすことはできませんよ。
「その条件でしたら、契約の精霊を介しての鑑定は御断りします」
「なっ、どうしてよ……ああ、そう、やっぱり後ろめたいことがあるのでしょう? だから、契約の精霊を介して鑑定することができない、そうなのね?」
うんうん。
この人が行っている手段は、相手を怒らせて冷静な判断が出来ないようにして、そのまま勢いで契約の精霊を使わせようとしているのでしょう。二流商人でもあるまいし、そんな稚拙な手に私が引っかかると思っているのですか?
「別に、後ろめたくはありませんが。私にとってのメリットが無い、そういうことです。私は商人であり、一方的に交渉相手のみが利を得るような商談は行わないだけです。それとマルガレートさん、こちらが私の所有している【シャーリィの魔導書】です。どうぞ、鑑定を行ってください」
アイテムボックスから取り出すようなふりをして、指輪に納めてある【シャーリィの魔導書】を取り出します。
それをテーブルの上に置きますと、八千草さんはゴクリと喉を鳴らしていました。
ちなみに三田森さんは好奇心ありありの表情で、魔導書を眺めていますよ。
「では、鑑定させていただきます」
そう告げてから、マルガレートさんは【シャーリィの魔導書】を手に取り、詠唱を開始。
すると魔導書が銀色に輝き、そしてスッと光が収まっていきました。
「なるほど……まずは、この魔導書は正当な所有者であるフェイールさんにお渡しします」
「ありがとうございます」
そのまま魔導書を受け取って、アイテムボックスに納めたふりをして、再び指輪の中に納めます。
「ちっょと待ちなさいよ、まだ鑑定結果は出ていないでしょう?」
「いえ、フェイールさんの所有している魔導書は、カナン・アーレストゆかりのものではありませんでした。ですので、権利の譲渡も必要なく、そのままお返ししたまでですが」
「嘘でしょ? 精霊を、それも勇者であるカナン・アーレストに使えていたエセリアルナイトを従えているのよ?」
うわ、そこまで調べていましたか……って、柚月さんあたりは知っていましたし、そのまま記録として残っていたのかもしれませんね。
「はい。フェイールさんの所有している魔導書の正式名称は、【フェリシモアの魔導書】といいます。その魔導書に加護を与えている女神の名前から、【シャーリィの魔導書】あるいは【精霊女王の魔導書】とも呼ばれておりまして。カマンベール王国王家の女性にしか契約することができない魔導書です」
「ふ、ふ~ん、そのフェリシモアの魔導書とやらは、結局はカナン・アーレストの関係者が持っていたのでしょう? だったら、それも回収対象ではなくて?」
腕を組んで、すねたような言い方をする八千草さん。
なるほど、今回のこの茶番劇は、すべて彼女の仕業でしたか。
「いえ、フェリシモアの魔導書は、カマンベール王国の王位継承の証の一つ。つまり、それを所有しているクリスティナ・フェイールさんは、次期カマンベール王国女王候補者であるということです。回収なんて、とんでもない」
「「……はぁ?」」
ああっ、迂闊にも八千草さんとハモってしまいました。
それよりも、今、王位継承とかいいました?
どどど、どうして私が、次期女王候補なのですか!!
ちらりとブランシュさんを見ますと、ギギギと私から視線を逸らしていくではないですか。
ああっ、この様子では全て知っていますね、帰ってから追及させてもらいますので。
それよりも、今のこの混沌とした空気を、どうにかしてください!
ここ最近の彼女は、夕方6つの鐘がなるちょっと前に店を訪れては、そのまま閉店時間になるまでのんびりとティータイムを楽しんでいるだけに思われます。
事実、以前なら『ペルソナさんは、いつ来るのかしら?』って執拗に問いかけてきていたのですが、最近は店に入ってきたらお勧めのスイーツと紅茶の茶葉を購入。
そして店内の丸テーブルに座って小さなティータイムを開きつつ、従業員のお二人と楽しく語らっているという感じです。
ちなみに、私の存在は無視です。
「……う~ん、どうも不可思議ですよ」
「ん? 姐さん、なにかあったのか?」
今日も朝一番でクラウンとんが納品に来ました。
ええ、ペルソナさんは相変わらず多忙らしく、主にクラウンさんとジョーカーさんが配達に来るようになりました。
ちなみにアルルカンさんはというと、どうやら前回の配達で要教育という判定が出たらしく、今は王城で内務を担当しているとジョーカーさんが話していましたよ。
「いえ、あの聖女さんの動向が掴めなくて。最近はほら、ペルソナさんに会わせろとか話してこなくなりましたし。なにか企んでいるのでしょうか?」
「ああ、そっちについては俺もよく分からん。あの聖女は自分に素直に生きているらしくてなぁ。なんというか、俺の危険人物センサーにも反応が薄いんだわ」
「どう見ても危険人物なのですけれど……」
ええ、ペルソナさんと私の平穏を脅かすという点でギルティです。
でも、ブランシュさん的にはノータッチ、セーフらしいです。
うん、今一つ判断基準が判らないのですけれど。
――カランカラーン
そんなことを考えつつ開店準備を行っていますと、突然、店の入り口が開きました。
そして宮廷魔導師のローブを身に付けた男性が一人、店内に入ってきましたよ。
「クリスティナ・フェイールくんはいるかな?」
「はい、私ですが」
白いひげを蓄えた壮年の魔導師が、優しい目をこちらに向けています。
「うん、確かに報告に合った通り、君からは初代カナン・アーレストの力を感じる。君の所有している魔導書について、魔法協会から要審査が必要であるという連絡が届いてね。申し訳ないが、魔法協会まで同行してくれるかな?」
「私の持つ魔導書ですか? それがどうして要審査ということになったのでしょうか?」
「君が保持している魔導書が、初代勇者であり大魔導師であるカナン・アーレストの遺産である可能性があるのだよ。古くから、勇者ゆかりの遺品などについては、王宮で厳重に管理し、時が来たら新たな勇者に齎すという盟約があってだね……まあ、簡単な審査だけなので、そう緊張することはないよ」
なるほど、宮廷魔導師さんの言い分も理解できますけれど、どうして今なのでしょうか?
私の魔導書についての審査が必要でしたら、先代勇者である柚月ルカさんが召喚された時にも行われているはずなのですよ。
それが無かったのに、どうして今回は審査が必要なのでしょうか。
そう考えてブランシュさんをチラッと見ましたが、彼も頭を傾げています。
「ブランシュさん、どう思いますか?」
「別にこの魔導師さんの話していることについてはおかしなところはないんだよなぁ。ただ、何か引っかかっている節がある。魔導師さんよ、俺は姐さんの護衛なんだけれど、俺も同行して構わないか?」
「それは構いませんよ。流石に大商会に匹敵するフェイール商店の店主を、護衛もなく一人でついてこいだなんて言えませんので。では、外で馬車を待たせてありますので、そちらへどうぞ」
「はい、では、店の事はお二人にお任せします」
ジェイミーさんとルメールさんの二人がいれば、よほどのことが無い限りはも問題はないでしょう。
ということで、あとはお任せして私とブランシュさんは魔法協会へと向かう事になりました。
〇 〇 〇 〇 〇
――王都魔法協会
フェイール商店から馬車で15分ほど。
そこには王都大聖堂に匹敵する巨大な建物がそびえたっていました。
ここが魔法協会、森羅万象様々な叡智が集められた、知識の殿堂。
私とブランシュさんは、そのまま応接室へと案内されました。
そこには白いローブを着た女性と、今回召喚された魔導師の三田森正一さん、そして聖女の八千草さんが座っていました。
うん、嫌な予感しかありません。
「ご足労いただき、ありがとうございます。魔法協会にて監査および鑑定を担当しているマルガレートと申します。実はですね、フェイールさんの所有している魔導書がカナン・アーレストゆかりのものであった場合、その権利をこちらの魔導師・三田森さんに譲渡して頂きたいのです」
「突然なにをおっしゃるかと思いましたら……それは謹んでお断りし ま す」
ええ、堂々とお断りし ま すよ。
どうして私の大切な魔導書を、勇者というだけで譲渡しなくてはならないのでしょうか。
「フェイールさん、その魔導書があなたにとって大切なものであることは私も重々承知しています。ですが、この世界に来て過去の勇者についての歴史を学び、今現在も魔族の脅威に晒されている人々を救うためには、どうしてもカナン・アーレストの残した『勇者の書』と呼ばれている魔導書が必要なのです。ご理解いただけましたよね?」
うん、三田森さんが必死に説得しようとしていますけれど、私には関係のないこと。
そもそも、これは勇者の書ではありませんよ?
ん? 勇者の書?
なにか引っかかるところがあります。
「お話は理解できますが、そもそも、私の持つ魔導書は勇者の書ではありませんよ?」
「フフン、それは嘘ね。あなたが初代勇者である魔導師カナン・アーレストの直系の血筋であることはすでに調べはついているわ。しかも、初代の持つチートスキルであるアイテムボックスと鑑定眼がつかえるっていうこともね。そして、そのあなたが精霊界の住人を召喚し、使役している。それがなによりも証拠じゃないの!! 勇者の書に記されている秘術を使ったのでしょう?」
んんん?
この聖女さんは、いきなり勝ち誇ったような顔をして話を進めていますけれど。
ほら、私の横でブランシュさんが笑いを必死にこらえているではないですか。
「あの……確かに私は初代勇者の持つスキルを継承しています。けれど、魔導書については違いますよ?」
「嘘をおっしゃい。では、今、この場で、マルガレートさんに鑑定してもらいますけれど構いませんわね? そうね、ついでにここで、契約の精霊とも契約して頂きましょうか? もしもあなたの所有している魔導書が『勇者ゆかりのもの』であったなら、それを彼に契約譲渡し、ついでペルソナを私の僕としましょう」
んんん……うん、アウトですね。
その条件では、契約の精霊と約束を交わすことはできませんよ。
「その条件でしたら、契約の精霊を介しての鑑定は御断りします」
「なっ、どうしてよ……ああ、そう、やっぱり後ろめたいことがあるのでしょう? だから、契約の精霊を介して鑑定することができない、そうなのね?」
うんうん。
この人が行っている手段は、相手を怒らせて冷静な判断が出来ないようにして、そのまま勢いで契約の精霊を使わせようとしているのでしょう。二流商人でもあるまいし、そんな稚拙な手に私が引っかかると思っているのですか?
「別に、後ろめたくはありませんが。私にとってのメリットが無い、そういうことです。私は商人であり、一方的に交渉相手のみが利を得るような商談は行わないだけです。それとマルガレートさん、こちらが私の所有している【シャーリィの魔導書】です。どうぞ、鑑定を行ってください」
アイテムボックスから取り出すようなふりをして、指輪に納めてある【シャーリィの魔導書】を取り出します。
それをテーブルの上に置きますと、八千草さんはゴクリと喉を鳴らしていました。
ちなみに三田森さんは好奇心ありありの表情で、魔導書を眺めていますよ。
「では、鑑定させていただきます」
そう告げてから、マルガレートさんは【シャーリィの魔導書】を手に取り、詠唱を開始。
すると魔導書が銀色に輝き、そしてスッと光が収まっていきました。
「なるほど……まずは、この魔導書は正当な所有者であるフェイールさんにお渡しします」
「ありがとうございます」
そのまま魔導書を受け取って、アイテムボックスに納めたふりをして、再び指輪の中に納めます。
「ちっょと待ちなさいよ、まだ鑑定結果は出ていないでしょう?」
「いえ、フェイールさんの所有している魔導書は、カナン・アーレストゆかりのものではありませんでした。ですので、権利の譲渡も必要なく、そのままお返ししたまでですが」
「嘘でしょ? 精霊を、それも勇者であるカナン・アーレストに使えていたエセリアルナイトを従えているのよ?」
うわ、そこまで調べていましたか……って、柚月さんあたりは知っていましたし、そのまま記録として残っていたのかもしれませんね。
「はい。フェイールさんの所有している魔導書の正式名称は、【フェリシモアの魔導書】といいます。その魔導書に加護を与えている女神の名前から、【シャーリィの魔導書】あるいは【精霊女王の魔導書】とも呼ばれておりまして。カマンベール王国王家の女性にしか契約することができない魔導書です」
「ふ、ふ~ん、そのフェリシモアの魔導書とやらは、結局はカナン・アーレストの関係者が持っていたのでしょう? だったら、それも回収対象ではなくて?」
腕を組んで、すねたような言い方をする八千草さん。
なるほど、今回のこの茶番劇は、すべて彼女の仕業でしたか。
「いえ、フェリシモアの魔導書は、カマンベール王国の王位継承の証の一つ。つまり、それを所有しているクリスティナ・フェイールさんは、次期カマンベール王国女王候補者であるということです。回収なんて、とんでもない」
「「……はぁ?」」
ああっ、迂闊にも八千草さんとハモってしまいました。
それよりも、今、王位継承とかいいました?
どどど、どうして私が、次期女王候補なのですか!!
ちらりとブランシュさんを見ますと、ギギギと私から視線を逸らしていくではないですか。
ああっ、この様子では全て知っていますね、帰ってから追及させてもらいますので。
それよりも、今のこの混沌とした空気を、どうにかしてください!
483
お気に入りに追加
5,327
あなたにおすすめの小説
とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます
兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。