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第7章・王位継承と、狙われた魔導書
第300話・狙われた魔導書は、女王の証?
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八千草さんに付きまとわられて一週間が経過しました。
ここ最近の彼女は、夕方6つの鐘がなるちょっと前に店を訪れては、そのまま閉店時間になるまでのんびりとティータイムを楽しんでいるだけに思われます。
事実、以前なら『ペルソナさんは、いつ来るのかしら?』って執拗に問いかけてきていたのですが、最近は店に入ってきたらお勧めのスイーツと紅茶の茶葉を購入。
そして店内の丸テーブルに座って小さなティータイムを開きつつ、従業員のお二人と楽しく語らっているという感じです。
ちなみに、私の存在は無視です。
「……う~ん、どうも不可思議ですよ」
「ん? 姐さん、なにかあったのか?」
今日も朝一番でクラウンとんが納品に来ました。
ええ、ペルソナさんは相変わらず多忙らしく、主にクラウンさんとジョーカーさんが配達に来るようになりました。
ちなみにアルルカンさんはというと、どうやら前回の配達で要教育という判定が出たらしく、今は王城で内務を担当しているとジョーカーさんが話していましたよ。
「いえ、あの聖女さんの動向が掴めなくて。最近はほら、ペルソナさんに会わせろとか話してこなくなりましたし。なにか企んでいるのでしょうか?」
「ああ、そっちについては俺もよく分からん。あの聖女は自分に素直に生きているらしくてなぁ。なんというか、俺の危険人物センサーにも反応が薄いんだわ」
「どう見ても危険人物なのですけれど……」
ええ、ペルソナさんと私の平穏を脅かすという点でギルティです。
でも、ブランシュさん的にはノータッチ、セーフらしいです。
うん、今一つ判断基準が判らないのですけれど。
――カランカラーン
そんなことを考えつつ開店準備を行っていますと、突然、店の入り口が開きました。
そして宮廷魔導師のローブを身に付けた男性が一人、店内に入ってきましたよ。
「クリスティナ・フェイールくんはいるかな?」
「はい、私ですが」
白いひげを蓄えた壮年の魔導師が、優しい目をこちらに向けています。
「うん、確かに報告に合った通り、君からは初代カナン・アーレストの力を感じる。君の所有している魔導書について、魔法協会から要審査が必要であるという連絡が届いてね。申し訳ないが、魔法協会まで同行してくれるかな?」
「私の持つ魔導書ですか? それがどうして要審査ということになったのでしょうか?」
「君が保持している魔導書が、初代勇者であり大魔導師であるカナン・アーレストの遺産である可能性があるのだよ。古くから、勇者ゆかりの遺品などについては、王宮で厳重に管理し、時が来たら新たな勇者に齎すという盟約があってだね……まあ、簡単な審査だけなので、そう緊張することはないよ」
なるほど、宮廷魔導師さんの言い分も理解できますけれど、どうして今なのでしょうか?
私の魔導書についての審査が必要でしたら、先代勇者である柚月ルカさんが召喚された時にも行われているはずなのですよ。
それが無かったのに、どうして今回は審査が必要なのでしょうか。
そう考えてブランシュさんをチラッと見ましたが、彼も頭を傾げています。
「ブランシュさん、どう思いますか?」
「別にこの魔導師さんの話していることについてはおかしなところはないんだよなぁ。ただ、何か引っかかっている節がある。魔導師さんよ、俺は姐さんの護衛なんだけれど、俺も同行して構わないか?」
「それは構いませんよ。流石に大商会に匹敵するフェイール商店の店主を、護衛もなく一人でついてこいだなんて言えませんので。では、外で馬車を待たせてありますので、そちらへどうぞ」
「はい、では、店の事はお二人にお任せします」
ジェイミーさんとルメールさんの二人がいれば、よほどのことが無い限りはも問題はないでしょう。
ということで、あとはお任せして私とブランシュさんは魔法協会へと向かう事になりました。
〇 〇 〇 〇 〇
――王都魔法協会
フェイール商店から馬車で15分ほど。
そこには王都大聖堂に匹敵する巨大な建物がそびえたっていました。
ここが魔法協会、森羅万象様々な叡智が集められた、知識の殿堂。
私とブランシュさんは、そのまま応接室へと案内されました。
そこには白いローブを着た女性と、今回召喚された魔導師の三田森正一さん、そして聖女の八千草さんが座っていました。
うん、嫌な予感しかありません。
「ご足労いただき、ありがとうございます。魔法協会にて監査および鑑定を担当しているマルガレートと申します。実はですね、フェイールさんの所有している魔導書がカナン・アーレストゆかりのものであった場合、その権利をこちらの魔導師・三田森さんに譲渡して頂きたいのです」
「突然なにをおっしゃるかと思いましたら……それは謹んでお断りし ま す」
ええ、堂々とお断りし ま すよ。
どうして私の大切な魔導書を、勇者というだけで譲渡しなくてはならないのでしょうか。
「フェイールさん、その魔導書があなたにとって大切なものであることは私も重々承知しています。ですが、この世界に来て過去の勇者についての歴史を学び、今現在も魔族の脅威に晒されている人々を救うためには、どうしてもカナン・アーレストの残した『勇者の書』と呼ばれている魔導書が必要なのです。ご理解いただけましたよね?」
うん、三田森さんが必死に説得しようとしていますけれど、私には関係のないこと。
そもそも、これは勇者の書ではありませんよ?
ん? 勇者の書?
なにか引っかかるところがあります。
「お話は理解できますが、そもそも、私の持つ魔導書は勇者の書ではありませんよ?」
「フフン、それは嘘ね。あなたが初代勇者である魔導師カナン・アーレストの直系の血筋であることはすでに調べはついているわ。しかも、初代の持つチートスキルであるアイテムボックスと鑑定眼がつかえるっていうこともね。そして、そのあなたが精霊界の住人を召喚し、使役している。それがなによりも証拠じゃないの!! 勇者の書に記されている秘術を使ったのでしょう?」
んんん?
この聖女さんは、いきなり勝ち誇ったような顔をして話を進めていますけれど。
ほら、私の横でブランシュさんが笑いを必死にこらえているではないですか。
「あの……確かに私は初代勇者の持つスキルを継承しています。けれど、魔導書については違いますよ?」
「嘘をおっしゃい。では、今、この場で、マルガレートさんに鑑定してもらいますけれど構いませんわね? そうね、ついでにここで、契約の精霊とも契約して頂きましょうか? もしもあなたの所有している魔導書が『勇者ゆかりのもの』であったなら、それを彼に契約譲渡し、ついでペルソナを私の僕としましょう」
んんん……うん、アウトですね。
その条件では、契約の精霊と約束を交わすことはできませんよ。
「その条件でしたら、契約の精霊を介しての鑑定は御断りします」
「なっ、どうしてよ……ああ、そう、やっぱり後ろめたいことがあるのでしょう? だから、契約の精霊を介して鑑定することができない、そうなのね?」
うんうん。
この人が行っている手段は、相手を怒らせて冷静な判断が出来ないようにして、そのまま勢いで契約の精霊を使わせようとしているのでしょう。二流商人でもあるまいし、そんな稚拙な手に私が引っかかると思っているのですか?
「別に、後ろめたくはありませんが。私にとってのメリットが無い、そういうことです。私は商人であり、一方的に交渉相手のみが利を得るような商談は行わないだけです。それとマルガレートさん、こちらが私の所有している【シャーリィの魔導書】です。どうぞ、鑑定を行ってください」
アイテムボックスから取り出すようなふりをして、指輪に納めてある【シャーリィの魔導書】を取り出します。
それをテーブルの上に置きますと、八千草さんはゴクリと喉を鳴らしていました。
ちなみに三田森さんは好奇心ありありの表情で、魔導書を眺めていますよ。
「では、鑑定させていただきます」
そう告げてから、マルガレートさんは【シャーリィの魔導書】を手に取り、詠唱を開始。
すると魔導書が銀色に輝き、そしてスッと光が収まっていきました。
「なるほど……まずは、この魔導書は正当な所有者であるフェイールさんにお渡しします」
「ありがとうございます」
そのまま魔導書を受け取って、アイテムボックスに納めたふりをして、再び指輪の中に納めます。
「ちっょと待ちなさいよ、まだ鑑定結果は出ていないでしょう?」
「いえ、フェイールさんの所有している魔導書は、カナン・アーレストゆかりのものではありませんでした。ですので、権利の譲渡も必要なく、そのままお返ししたまでですが」
「嘘でしょ? 精霊を、それも勇者であるカナン・アーレストに使えていたエセリアルナイトを従えているのよ?」
うわ、そこまで調べていましたか……って、柚月さんあたりは知っていましたし、そのまま記録として残っていたのかもしれませんね。
「はい。フェイールさんの所有している魔導書の正式名称は、【フェリシモアの魔導書】といいます。その魔導書に加護を与えている女神の名前から、【シャーリィの魔導書】あるいは【精霊女王の魔導書】とも呼ばれておりまして。カマンベール王国王家の女性にしか契約することができない魔導書です」
「ふ、ふ~ん、そのフェリシモアの魔導書とやらは、結局はカナン・アーレストの関係者が持っていたのでしょう? だったら、それも回収対象ではなくて?」
腕を組んで、すねたような言い方をする八千草さん。
なるほど、今回のこの茶番劇は、すべて彼女の仕業でしたか。
「いえ、フェリシモアの魔導書は、カマンベール王国の王位継承の証の一つ。つまり、それを所有しているクリスティナ・フェイールさんは、次期カマンベール王国女王候補者であるということです。回収なんて、とんでもない」
「「……はぁ?」」
ああっ、迂闊にも八千草さんとハモってしまいました。
それよりも、今、王位継承とかいいました?
どどど、どうして私が、次期女王候補なのですか!!
ちらりとブランシュさんを見ますと、ギギギと私から視線を逸らしていくではないですか。
ああっ、この様子では全て知っていますね、帰ってから追及させてもらいますので。
それよりも、今のこの混沌とした空気を、どうにかしてください!
ここ最近の彼女は、夕方6つの鐘がなるちょっと前に店を訪れては、そのまま閉店時間になるまでのんびりとティータイムを楽しんでいるだけに思われます。
事実、以前なら『ペルソナさんは、いつ来るのかしら?』って執拗に問いかけてきていたのですが、最近は店に入ってきたらお勧めのスイーツと紅茶の茶葉を購入。
そして店内の丸テーブルに座って小さなティータイムを開きつつ、従業員のお二人と楽しく語らっているという感じです。
ちなみに、私の存在は無視です。
「……う~ん、どうも不可思議ですよ」
「ん? 姐さん、なにかあったのか?」
今日も朝一番でクラウンとんが納品に来ました。
ええ、ペルソナさんは相変わらず多忙らしく、主にクラウンさんとジョーカーさんが配達に来るようになりました。
ちなみにアルルカンさんはというと、どうやら前回の配達で要教育という判定が出たらしく、今は王城で内務を担当しているとジョーカーさんが話していましたよ。
「いえ、あの聖女さんの動向が掴めなくて。最近はほら、ペルソナさんに会わせろとか話してこなくなりましたし。なにか企んでいるのでしょうか?」
「ああ、そっちについては俺もよく分からん。あの聖女は自分に素直に生きているらしくてなぁ。なんというか、俺の危険人物センサーにも反応が薄いんだわ」
「どう見ても危険人物なのですけれど……」
ええ、ペルソナさんと私の平穏を脅かすという点でギルティです。
でも、ブランシュさん的にはノータッチ、セーフらしいです。
うん、今一つ判断基準が判らないのですけれど。
――カランカラーン
そんなことを考えつつ開店準備を行っていますと、突然、店の入り口が開きました。
そして宮廷魔導師のローブを身に付けた男性が一人、店内に入ってきましたよ。
「クリスティナ・フェイールくんはいるかな?」
「はい、私ですが」
白いひげを蓄えた壮年の魔導師が、優しい目をこちらに向けています。
「うん、確かに報告に合った通り、君からは初代カナン・アーレストの力を感じる。君の所有している魔導書について、魔法協会から要審査が必要であるという連絡が届いてね。申し訳ないが、魔法協会まで同行してくれるかな?」
「私の持つ魔導書ですか? それがどうして要審査ということになったのでしょうか?」
「君が保持している魔導書が、初代勇者であり大魔導師であるカナン・アーレストの遺産である可能性があるのだよ。古くから、勇者ゆかりの遺品などについては、王宮で厳重に管理し、時が来たら新たな勇者に齎すという盟約があってだね……まあ、簡単な審査だけなので、そう緊張することはないよ」
なるほど、宮廷魔導師さんの言い分も理解できますけれど、どうして今なのでしょうか?
私の魔導書についての審査が必要でしたら、先代勇者である柚月ルカさんが召喚された時にも行われているはずなのですよ。
それが無かったのに、どうして今回は審査が必要なのでしょうか。
そう考えてブランシュさんをチラッと見ましたが、彼も頭を傾げています。
「ブランシュさん、どう思いますか?」
「別にこの魔導師さんの話していることについてはおかしなところはないんだよなぁ。ただ、何か引っかかっている節がある。魔導師さんよ、俺は姐さんの護衛なんだけれど、俺も同行して構わないか?」
「それは構いませんよ。流石に大商会に匹敵するフェイール商店の店主を、護衛もなく一人でついてこいだなんて言えませんので。では、外で馬車を待たせてありますので、そちらへどうぞ」
「はい、では、店の事はお二人にお任せします」
ジェイミーさんとルメールさんの二人がいれば、よほどのことが無い限りはも問題はないでしょう。
ということで、あとはお任せして私とブランシュさんは魔法協会へと向かう事になりました。
〇 〇 〇 〇 〇
――王都魔法協会
フェイール商店から馬車で15分ほど。
そこには王都大聖堂に匹敵する巨大な建物がそびえたっていました。
ここが魔法協会、森羅万象様々な叡智が集められた、知識の殿堂。
私とブランシュさんは、そのまま応接室へと案内されました。
そこには白いローブを着た女性と、今回召喚された魔導師の三田森正一さん、そして聖女の八千草さんが座っていました。
うん、嫌な予感しかありません。
「ご足労いただき、ありがとうございます。魔法協会にて監査および鑑定を担当しているマルガレートと申します。実はですね、フェイールさんの所有している魔導書がカナン・アーレストゆかりのものであった場合、その権利をこちらの魔導師・三田森さんに譲渡して頂きたいのです」
「突然なにをおっしゃるかと思いましたら……それは謹んでお断りし ま す」
ええ、堂々とお断りし ま すよ。
どうして私の大切な魔導書を、勇者というだけで譲渡しなくてはならないのでしょうか。
「フェイールさん、その魔導書があなたにとって大切なものであることは私も重々承知しています。ですが、この世界に来て過去の勇者についての歴史を学び、今現在も魔族の脅威に晒されている人々を救うためには、どうしてもカナン・アーレストの残した『勇者の書』と呼ばれている魔導書が必要なのです。ご理解いただけましたよね?」
うん、三田森さんが必死に説得しようとしていますけれど、私には関係のないこと。
そもそも、これは勇者の書ではありませんよ?
ん? 勇者の書?
なにか引っかかるところがあります。
「お話は理解できますが、そもそも、私の持つ魔導書は勇者の書ではありませんよ?」
「フフン、それは嘘ね。あなたが初代勇者である魔導師カナン・アーレストの直系の血筋であることはすでに調べはついているわ。しかも、初代の持つチートスキルであるアイテムボックスと鑑定眼がつかえるっていうこともね。そして、そのあなたが精霊界の住人を召喚し、使役している。それがなによりも証拠じゃないの!! 勇者の書に記されている秘術を使ったのでしょう?」
んんん?
この聖女さんは、いきなり勝ち誇ったような顔をして話を進めていますけれど。
ほら、私の横でブランシュさんが笑いを必死にこらえているではないですか。
「あの……確かに私は初代勇者の持つスキルを継承しています。けれど、魔導書については違いますよ?」
「嘘をおっしゃい。では、今、この場で、マルガレートさんに鑑定してもらいますけれど構いませんわね? そうね、ついでにここで、契約の精霊とも契約して頂きましょうか? もしもあなたの所有している魔導書が『勇者ゆかりのもの』であったなら、それを彼に契約譲渡し、ついでペルソナを私の僕としましょう」
んんん……うん、アウトですね。
その条件では、契約の精霊と約束を交わすことはできませんよ。
「その条件でしたら、契約の精霊を介しての鑑定は御断りします」
「なっ、どうしてよ……ああ、そう、やっぱり後ろめたいことがあるのでしょう? だから、契約の精霊を介して鑑定することができない、そうなのね?」
うんうん。
この人が行っている手段は、相手を怒らせて冷静な判断が出来ないようにして、そのまま勢いで契約の精霊を使わせようとしているのでしょう。二流商人でもあるまいし、そんな稚拙な手に私が引っかかると思っているのですか?
「別に、後ろめたくはありませんが。私にとってのメリットが無い、そういうことです。私は商人であり、一方的に交渉相手のみが利を得るような商談は行わないだけです。それとマルガレートさん、こちらが私の所有している【シャーリィの魔導書】です。どうぞ、鑑定を行ってください」
アイテムボックスから取り出すようなふりをして、指輪に納めてある【シャーリィの魔導書】を取り出します。
それをテーブルの上に置きますと、八千草さんはゴクリと喉を鳴らしていました。
ちなみに三田森さんは好奇心ありありの表情で、魔導書を眺めていますよ。
「では、鑑定させていただきます」
そう告げてから、マルガレートさんは【シャーリィの魔導書】を手に取り、詠唱を開始。
すると魔導書が銀色に輝き、そしてスッと光が収まっていきました。
「なるほど……まずは、この魔導書は正当な所有者であるフェイールさんにお渡しします」
「ありがとうございます」
そのまま魔導書を受け取って、アイテムボックスに納めたふりをして、再び指輪の中に納めます。
「ちっょと待ちなさいよ、まだ鑑定結果は出ていないでしょう?」
「いえ、フェイールさんの所有している魔導書は、カナン・アーレストゆかりのものではありませんでした。ですので、権利の譲渡も必要なく、そのままお返ししたまでですが」
「嘘でしょ? 精霊を、それも勇者であるカナン・アーレストに使えていたエセリアルナイトを従えているのよ?」
うわ、そこまで調べていましたか……って、柚月さんあたりは知っていましたし、そのまま記録として残っていたのかもしれませんね。
「はい。フェイールさんの所有している魔導書の正式名称は、【フェリシモアの魔導書】といいます。その魔導書に加護を与えている女神の名前から、【シャーリィの魔導書】あるいは【精霊女王の魔導書】とも呼ばれておりまして。カマンベール王国王家の女性にしか契約することができない魔導書です」
「ふ、ふ~ん、そのフェリシモアの魔導書とやらは、結局はカナン・アーレストの関係者が持っていたのでしょう? だったら、それも回収対象ではなくて?」
腕を組んで、すねたような言い方をする八千草さん。
なるほど、今回のこの茶番劇は、すべて彼女の仕業でしたか。
「いえ、フェリシモアの魔導書は、カマンベール王国の王位継承の証の一つ。つまり、それを所有しているクリスティナ・フェイールさんは、次期カマンベール王国女王候補者であるということです。回収なんて、とんでもない」
「「……はぁ?」」
ああっ、迂闊にも八千草さんとハモってしまいました。
それよりも、今、王位継承とかいいました?
どどど、どうして私が、次期女王候補なのですか!!
ちらりとブランシュさんを見ますと、ギギギと私から視線を逸らしていくではないですか。
ああっ、この様子では全て知っていますね、帰ってから追及させてもらいますので。
それよりも、今のこの混沌とした空気を、どうにかしてください!
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