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第6章・ミュラーゼン連合王国と、王位継承者と
第267話・大人と子供の狭間には
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メルセデス夫人の別荘で行われていた、出張展示即売会。
ちなみにですが、お二人の婦人が暴走して退場となりましたけれど、午後からは即売会も再開。
夕方まで楽しいひとときを過ごすことが出来ましたが。
貴族夫人の懐事情については、私たちは見通しが甘かったといわざるを得ませんでした。
本日持ち込んだ商品のうち、目玉商品につきましてはほぼ完売。いつものようにおひとり5個までの購入制限を10個まで広げたのが敗因です。
ええ、まさかご婦人たちが別荘までの移動に使用していた馬車に、大勢の侍女が待機しているなんて予想はしていませんでしたよ。
午前中はめぼしい商品などをチェックし、一番欲しいものはそこで購入。そしてほかに欲しいものはしっかりと購入リストを作り出し、午後からは侍女のみなさんがリスト片手に買い物にやってきましたよ。
大体、ご婦人おひとりにつき侍女が4名~6名。中には、御者や護衛の騎士に至るまで総動員される方がいるだなんて、どこの誰に予想が付くというのですか。
そして夕方からは晩餐会も始まり、奥様たちは購入したばかりの装飾品やドレスなどを身に付けてご満悦状態。
ちなみに私たちは、とにかく食事を取ったのちにあてがわれた部屋へ移動。本日の販売分の売上チェックと在庫チェックを敢行し、最後は明日用の発注リストを作成している真っ最中です。
「やっばり、化粧品とダイエット関係の売り上げは尋常じゃないですね。常日頃から貴族のパーティーに通ったり、催し物に招待されているからでしょうか……」
「そりゃあそうよ。貴族夫人にとって、社交界は戦場なのよ? 爵位階級に合わせた装飾品を身に付け、羨望の眼差しで見つめられるのが仕事なのですからね。あとは……まあ、自分たちよりも爵位が上の方よりも目立たなくするために、常に装飾品などは複数を持参し、あらかじめ侍女に確認をして貰って付け替えたりなんていうのはざらにあるのですから」
へぇ~。
私がアーレスト家に在籍していた時代は、そのようなパーティーに連れられて行ったことなど殆どありませんでしたからね。グラントリ兄さまとオストールの二人を連れて参加していたらしいですけれど、私は自宅でお留守番でしたので……。
まあ、変に気を使うことが無い分、気分が楽だったのは事実ですし。
父もたまには私だけを連れてこっそりとパーティーに参加していたこともありましたので。
「ふぅん。まあ、今日の様子を見て、なんとなく理解することは出来ました。ということで、これが明日の目玉商品のリストです」
ずらっと書き込んだ発注書の山。
その半分ぐらいが甘味と、可愛い系の装飾品。
ドレスなどもありますけれど、明日は納品から開場までの時間が余りないため、過去に入荷していた商品から厳選させてもらいました。そうすれば、付与された魔法についてもある程度のめどがつきますので、チェックは早いのですよ。
「ははぁ、なるほどねぇ……これは女性向ですわね……と、これは?」
クレアさんが気にしたのは、女性用の肌着。
貴族のご婦人たちはコルセットやカルソンと呼ばれているものを着用することが多いのですが、かわいらしさはなく、むしろ実用性一辺倒なものが多いのです。
それに対して、【型録通販のシャーリィ】で販売されているのは、かわいらしさを強調させるデザインのものが多く、ちょっと視点を変えれば破廉恥ともいわれそうなきわどいデザインのものが多いのです。
ですが、あくまでもこれらは肌着であり下着。服の下に着用するものであり、人目にさらすようなものでありません。
ちなみに私も愛用していますよ……ええ、まだお子様体系の私でも、可愛いデザインのものを身に付けています。
なんといっても肌ざわりがよくてですね、一度でも着用したならば手放すことが出来ないという。
ちなみにですが、クレアさんも一昔前はカルソンを着用していたそうですけれど、いまやシャーリィで購入した商品以外は身に付けることが出来なくなっています。
実は【型録通販のシャーリィ】で取り扱っている商品のうち、女性衣類などは全て【提携商会】のものだそうです。それ故に季節限定のものが多く、タイミングを逃すと型録から消えることもあるため、仕入れの際は常に商品在庫があるかどうか確認しなくてはなりません。
「それはですね、シルクのタンクトップです。まあ、簡単に言いますと、おしゃれインナーというものだそうです。ちょうど今月のおすすめ型録にありましてですね、これはいいものだと思ってチェックしてあったのですよ」
「ふぅん……まあ、頭の固い貴族のお嬢様たちには刺激が強すぎるかもね……まあ、その時はその時、私も欲しいから少し多めにお願いね」
「クスクス……はいはい、分かりましたよ」
なんだかんだといっても、クレアさんも女性。
きれいに着飾るのは好きですからね。
ああ、明日の即売会が楽しみです。
………
……
…
――翌日
朝一番でペルソナさんから荷物を受け取り、私とクレアさん、キリコさんは三人で最後のチェックを行いました。
特におかしくて怪しい効果は付与されていませんでしたので、このまま先日のように荷物を各ブースに割り振りし、値札を付けて展示してもらいました。
ちなみに今日の商品は、ある程度価格帯を設定してまとめて並べてあります。
あちらのブースは銀貨5枚、こちらは金貨一枚といった具合で。
あとは、先日はそれほど人気のなかった美顔マッサージコーナーなども用意してありますけれど、多分今日も人気がないかと。ええ、やはり飲むだけでダイエットできる健康飲料などの方が効果が高いですからね。
「では、本日もよろしくお願いします!!」
「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
大広間で侍女の皆さんに説明を行い、いよいよ開場。
ええ、すでに廊下からは大勢の女性たちのかしましい声が響き渡ってきています。
でも、流石に自分のお小遣いで買える程度しか購入しないでしょうから、昨日ほど忙しくはないかと思いますわ。
「それでは開場します!! お待たせしました、フェイール商店出張販売開場へようこそ!!」
私が挨拶を終えるや否や、子女のみなさんが開場になだれ込みます。
そしてあらかじめ目当ての商品があったかのように、一斉に書くブースへと散っていきました。
「こ、これが、武田さんの話していた【聖地巡礼開幕ダッシュ!】ですか……」
それぞれのブースに殺到したお嬢様たちは、我先にと商品を手に取りお会計を済ませています。
そして次のブースへと移動して別の商品を購入、さらに次へと走っていきました。
「5番のブース、売り切りました!」
「2番ブース、在庫僅かです」
「6番ブースですが、追加注文を受け付けてよろしいでしょうか!」
私の待機している1番ブースには、他のブースの状況がリアルタイムで……侍女の方が走って来て報告してくれます。
「5番は安めの化粧品ですか、そこは終了で、8番に回ってください。2番の装飾品ですが、在庫はまだあります。この箱を持って行ってください。6番は健康飲料品……と、追加は受け付けません、今日が最終日ですから!!」
「クリス店長!! エマージェンシー!!」
次々と指示出しをして、足りない商品については在庫確認して手渡しましたが。
クレアさんから、いきなりのエマージェンシーですか。
「どうしましたか!!」
「3日で痩せるアイテムをお求めのお嬢様がいらっしゃっています!」
「は、はぁ!! 3日でですか、どれぐらい痩せたいので……ええっと、今そちらに行きますわ!!」
1番ブースを侍女さんにお任せして、私は12番のクレアさんのブースへと走ります。
そして到着した私が見たのは……。
――デップリ~ン
それはもう、見事にふくよかな体型のお嬢様が、困り果てて泣きそうな顔でブースの前で立っていました。
うん、これは不摂生してお太りになられたようですわね、オストール兄さんよりも丸いというのは、病気を疑ってしまいそうですが。
「クリス店長。こちらはゴステローザ子爵家のお嬢様で、ジュリアさまとおっしゃります。では、あとはクリス店長にお任せしますので、よろしくお願いします」
「はい、それではジュリアお嬢様、詳しいお話を聞かせていただけませんでしょうか」
いくらダイエット商品を扱っているとはいえ、流石に3日で痩せるというのはかーなーり、厳しいです。ええ、不可能とは申しませんが、厳しいです!
ですから、詳しいお話を伺いたいということで、私はジュリアお嬢様とベランダの席へと移動することにしました。
果たして、鬼が出るか蛇が出るか……って、これ、勇者語録にありのですけれど、使い方は間違っていませんよね。
ちなみにですが、お二人の婦人が暴走して退場となりましたけれど、午後からは即売会も再開。
夕方まで楽しいひとときを過ごすことが出来ましたが。
貴族夫人の懐事情については、私たちは見通しが甘かったといわざるを得ませんでした。
本日持ち込んだ商品のうち、目玉商品につきましてはほぼ完売。いつものようにおひとり5個までの購入制限を10個まで広げたのが敗因です。
ええ、まさかご婦人たちが別荘までの移動に使用していた馬車に、大勢の侍女が待機しているなんて予想はしていませんでしたよ。
午前中はめぼしい商品などをチェックし、一番欲しいものはそこで購入。そしてほかに欲しいものはしっかりと購入リストを作り出し、午後からは侍女のみなさんがリスト片手に買い物にやってきましたよ。
大体、ご婦人おひとりにつき侍女が4名~6名。中には、御者や護衛の騎士に至るまで総動員される方がいるだなんて、どこの誰に予想が付くというのですか。
そして夕方からは晩餐会も始まり、奥様たちは購入したばかりの装飾品やドレスなどを身に付けてご満悦状態。
ちなみに私たちは、とにかく食事を取ったのちにあてがわれた部屋へ移動。本日の販売分の売上チェックと在庫チェックを敢行し、最後は明日用の発注リストを作成している真っ最中です。
「やっばり、化粧品とダイエット関係の売り上げは尋常じゃないですね。常日頃から貴族のパーティーに通ったり、催し物に招待されているからでしょうか……」
「そりゃあそうよ。貴族夫人にとって、社交界は戦場なのよ? 爵位階級に合わせた装飾品を身に付け、羨望の眼差しで見つめられるのが仕事なのですからね。あとは……まあ、自分たちよりも爵位が上の方よりも目立たなくするために、常に装飾品などは複数を持参し、あらかじめ侍女に確認をして貰って付け替えたりなんていうのはざらにあるのですから」
へぇ~。
私がアーレスト家に在籍していた時代は、そのようなパーティーに連れられて行ったことなど殆どありませんでしたからね。グラントリ兄さまとオストールの二人を連れて参加していたらしいですけれど、私は自宅でお留守番でしたので……。
まあ、変に気を使うことが無い分、気分が楽だったのは事実ですし。
父もたまには私だけを連れてこっそりとパーティーに参加していたこともありましたので。
「ふぅん。まあ、今日の様子を見て、なんとなく理解することは出来ました。ということで、これが明日の目玉商品のリストです」
ずらっと書き込んだ発注書の山。
その半分ぐらいが甘味と、可愛い系の装飾品。
ドレスなどもありますけれど、明日は納品から開場までの時間が余りないため、過去に入荷していた商品から厳選させてもらいました。そうすれば、付与された魔法についてもある程度のめどがつきますので、チェックは早いのですよ。
「ははぁ、なるほどねぇ……これは女性向ですわね……と、これは?」
クレアさんが気にしたのは、女性用の肌着。
貴族のご婦人たちはコルセットやカルソンと呼ばれているものを着用することが多いのですが、かわいらしさはなく、むしろ実用性一辺倒なものが多いのです。
それに対して、【型録通販のシャーリィ】で販売されているのは、かわいらしさを強調させるデザインのものが多く、ちょっと視点を変えれば破廉恥ともいわれそうなきわどいデザインのものが多いのです。
ですが、あくまでもこれらは肌着であり下着。服の下に着用するものであり、人目にさらすようなものでありません。
ちなみに私も愛用していますよ……ええ、まだお子様体系の私でも、可愛いデザインのものを身に付けています。
なんといっても肌ざわりがよくてですね、一度でも着用したならば手放すことが出来ないという。
ちなみにですが、クレアさんも一昔前はカルソンを着用していたそうですけれど、いまやシャーリィで購入した商品以外は身に付けることが出来なくなっています。
実は【型録通販のシャーリィ】で取り扱っている商品のうち、女性衣類などは全て【提携商会】のものだそうです。それ故に季節限定のものが多く、タイミングを逃すと型録から消えることもあるため、仕入れの際は常に商品在庫があるかどうか確認しなくてはなりません。
「それはですね、シルクのタンクトップです。まあ、簡単に言いますと、おしゃれインナーというものだそうです。ちょうど今月のおすすめ型録にありましてですね、これはいいものだと思ってチェックしてあったのですよ」
「ふぅん……まあ、頭の固い貴族のお嬢様たちには刺激が強すぎるかもね……まあ、その時はその時、私も欲しいから少し多めにお願いね」
「クスクス……はいはい、分かりましたよ」
なんだかんだといっても、クレアさんも女性。
きれいに着飾るのは好きですからね。
ああ、明日の即売会が楽しみです。
………
……
…
――翌日
朝一番でペルソナさんから荷物を受け取り、私とクレアさん、キリコさんは三人で最後のチェックを行いました。
特におかしくて怪しい効果は付与されていませんでしたので、このまま先日のように荷物を各ブースに割り振りし、値札を付けて展示してもらいました。
ちなみに今日の商品は、ある程度価格帯を設定してまとめて並べてあります。
あちらのブースは銀貨5枚、こちらは金貨一枚といった具合で。
あとは、先日はそれほど人気のなかった美顔マッサージコーナーなども用意してありますけれど、多分今日も人気がないかと。ええ、やはり飲むだけでダイエットできる健康飲料などの方が効果が高いですからね。
「では、本日もよろしくお願いします!!」
「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
大広間で侍女の皆さんに説明を行い、いよいよ開場。
ええ、すでに廊下からは大勢の女性たちのかしましい声が響き渡ってきています。
でも、流石に自分のお小遣いで買える程度しか購入しないでしょうから、昨日ほど忙しくはないかと思いますわ。
「それでは開場します!! お待たせしました、フェイール商店出張販売開場へようこそ!!」
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「こ、これが、武田さんの話していた【聖地巡礼開幕ダッシュ!】ですか……」
それぞれのブースに殺到したお嬢様たちは、我先にと商品を手に取りお会計を済ませています。
そして次のブースへと移動して別の商品を購入、さらに次へと走っていきました。
「5番のブース、売り切りました!」
「2番ブース、在庫僅かです」
「6番ブースですが、追加注文を受け付けてよろしいでしょうか!」
私の待機している1番ブースには、他のブースの状況がリアルタイムで……侍女の方が走って来て報告してくれます。
「5番は安めの化粧品ですか、そこは終了で、8番に回ってください。2番の装飾品ですが、在庫はまだあります。この箱を持って行ってください。6番は健康飲料品……と、追加は受け付けません、今日が最終日ですから!!」
「クリス店長!! エマージェンシー!!」
次々と指示出しをして、足りない商品については在庫確認して手渡しましたが。
クレアさんから、いきなりのエマージェンシーですか。
「どうしましたか!!」
「3日で痩せるアイテムをお求めのお嬢様がいらっしゃっています!」
「は、はぁ!! 3日でですか、どれぐらい痩せたいので……ええっと、今そちらに行きますわ!!」
1番ブースを侍女さんにお任せして、私は12番のクレアさんのブースへと走ります。
そして到着した私が見たのは……。
――デップリ~ン
それはもう、見事にふくよかな体型のお嬢様が、困り果てて泣きそうな顔でブースの前で立っていました。
うん、これは不摂生してお太りになられたようですわね、オストール兄さんよりも丸いというのは、病気を疑ってしまいそうですが。
「クリス店長。こちらはゴステローザ子爵家のお嬢様で、ジュリアさまとおっしゃります。では、あとはクリス店長にお任せしますので、よろしくお願いします」
「はい、それではジュリアお嬢様、詳しいお話を聞かせていただけませんでしょうか」
いくらダイエット商品を扱っているとはいえ、流石に3日で痩せるというのはかーなーり、厳しいです。ええ、不可能とは申しませんが、厳しいです!
ですから、詳しいお話を伺いたいということで、私はジュリアお嬢様とベランダの席へと移動することにしました。
果たして、鬼が出るか蛇が出るか……って、これ、勇者語録にありのですけれど、使い方は間違っていませんよね。
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