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第6章・ミュラーゼン連合王国と、王位継承者と
第250話・イブさんのカバン、再び
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お稲荷さんも完成し、しっかりとネプトゥス教会に向かったのち、アゲ・イナリさまにお供えしにやってきました。
教会奥につくられた大聖堂に入り、壁際にずらりと並んでいる神像の中からアゲ・イナリさまを探し出すと、クレアさんと共にその場に跪いて頭を下げます。
「アゲ・イナリさま、大変お待たせしました。前回のような名店街シリーズではなく、私とクレアさん二人の共同制作です。どうぞお納めください」
「つきましては、私にもより高位の加護を授けて頂けると幸いですわ。私は商人として独り立ちしたいのです、過去の確執につきましてはすでに清算したと思っていますので」
『コーーーーーン!!』
最後はキリコさんの一鳴き。
するとアゲ・イナリ様の神像がゆっくりと輝き始めました。
『おーおー、今日は二人の手作りかいな。それじゃあ、捧げてもらおかな?』
「はい、こちらです」
アイテムボックスからお稲荷さんの収められている保存容器を取り出し、私たちの目の前に捧げました。
するとお稲荷さんが光り輝き、次々と消えていくではありませんか。
『では、一つ味見を……と、ほほう、これはまたいい仕上がりやな。味付けその他は全てスタンダード、でも、うちに捧げようていう気持ちがギュッと詰まっておる。よし、クレア・エルスハイマー、あんたに加護を授けたるわ!!』
――ザワザワザワザワ
すると、周囲に集まって来ていた商人たちがざわめき始めます。
お供え物をするだけで加護が授かるだなんて、誰も予測をしていなかったのでしょう。
そしてクレアさんもイナリさまの言葉を聞いて、呆けた顔になっていますけれど。
「クレアさん……お礼を」
ツンツンと肘で彼女を突きますと、我に返った彼女が深々と頭を下げました。
「あ、有難うございます~」
『ええでええで。あんたも商人としてがんばっていたのはうちの眷属たちを通じて見ていたからな。キリコもお疲れ様や』
『コンココンコーーーン』
とてもうれしそうな二人。
私はすでに商人としての加護は得ていますので、これ以上を望むのはよろしくありません。
商人たるもの、欲をかいてはダメです。アーレスト商会の教えにもありました……。
そしてクレアさんとキリコさんの姿が光り、アゲ・イナリさまの声が響きます。
『クレア・エルスハイマー。あんたには【アイテムボックス】と【商業全般】の加護を授けたる。ついでにな、【鑑定のメガネ】もつけてやるわ。それを付けて居れば鑑定というスキルが使えるようになる。ただし、あんたがフェイール商店を裏切るようなことをしたら、その加護は全て消えるから気を付けてや』
「はいっ。私はフェイール店長を裏切るようなことは決して行いません」
『まあ、クリスと共にいるか、彼女を裏切らない限りは加護は永久に持続するで。と、キリコ、あんたにはこれや!!』
――ボフッ
突然、私の真横でキリコさんが獣人の姿に変化しました。
しっかりとガンバナニーワ式の作務衣という衣服を身に付けています。
私と年齢は私と同じぐらいかな?
『キリコは二人の護衛と仕事の御手伝いを頑張るようにな。さて、クリスには……今回はなしや。その代わり、シャーリィからの伝言を伝えておくで』
「は、はい、このあとシャーリィさまのところにも伺う予定でした」
『今、ここにはおらん。留守やな。ということで伝言。【フォンミューラー王国内なら、今まで通りに加護は使えますよ】だそうや。まあ、うちの祠や神像を仲介するので、ネプトゥス大聖堂がある都市だけや』
「ありがとうございます。シャーリィさまにも、私が無事に到着したことをお伝えください」
『それぐらいかまへん。そんじゃ、あとはきばってや~や~や~』
ああ、セルフエコーという奴ですね。
遠くに消え入るように、小声になるのを、この大陸ではそういうそうです。
でも、ハーバリオスの勇者語録ではドップラー効果といっていたような気が。
「では、いきましょうか? 今日は町の中を散策したいのと、商業ギルドにいって露店の使用許可を取りたいのですよ」
「そうね。それじゃあそうしましょう……と、この子は、子狐のキリコでいいのよね?」
「そーだよー。キリコだよー」
尻尾をパタパタと振りつつ呟くキリコちゃん。
うん、可愛いですねぇ。
ギュッと抱きしめて眠りたい気分です。
〇 〇 〇 〇 〇
――バンクーバー・商業ギルド
「フェイール商店さん、こちらのギルドカードはフォンミューラーでは使えませんね」
教会を出て町の中心部に向かい、そこから商業区と呼ばれている大手商会の密集する地区にやってきまして。この一角に巨大な商業ギルドがあったので、まずはここで諸々の手続きを行おうとしたのですが。
突然の出来事に、ちょっと困りそうです。
「それはつまり、新しくこの国でも登録する必要があるということですか?」
「ええ。フォンミューラー王国およびその近郊の国々で商業を生業とする場合、商会登録を行う必要があるのですが。その際は王国もしくは都市に本店を構えている必要があります。こちらのハーバリオス発行のギルドカードですと、フェイール商店の本店はオーウェンという都市になっていますよね。他国の商人がフォンミューラーで商売を行う場合、こちらの『通商許可証』を購入していただくことになります」
この通商許可証を購入し登録すれば、フォンミューラー近郊の国家での商業は可能だそうで。
これは仕方がありません、素直に購入することにしましょう。
「……では、購入させていただきます」
「はい、通商許可証は金貨20枚ですけれど、他国の商人の場合、通行税と商業税が別途必要になりますのでお気を付けください。ちなみにバンクーバーでの露店での商売は可能ですが、現在は空いている場所がございません。どこか店舗を借りるか、もしくは軒下を使う許可を取った方がよろしいかと思いますが」
「うーん、ちょっと待ってくださいね」
これは、予定を切り上げてバンクーバーを離れた方が良いかもしれません。
そう考えていると。
「あれ、見た顔のお嬢さんだと思ったら、フェイールさんか。ひょっとして商業手続きかな?」
イブさんが私たちの近くにやって来て、話しかけてくれました。
「ええ。ですが、露店の場所に空きがなくてですね。それなら次の町に向かった方がいいかなぁと思ったのですが」
「ふぅん。それなら、うちの店の隅っこで使う? うちのカバン屋ってさ、私ひとりで回しているんだけれど店舗だけは大きくてすきまだらけなんだよ。この街にいる間ぐらいなら、貸してあげるよ、格安で」
「借ります!! 貸してください!!」
「ということなんだけれど、ミランダ、うちをフェイール商店に貸すので手続きをしておいて。私は納品を終わらせてくるから」
そう告げて、イブさんはとっととどこかに行ってしまいました。
「それでは、手続きを再開しますね……」
「はい、お願いします」
これでようやく、バンクーバーでの店舗も確保できました。
さて、あとは何を販売するか、そこが勝負ですね。
教会奥につくられた大聖堂に入り、壁際にずらりと並んでいる神像の中からアゲ・イナリさまを探し出すと、クレアさんと共にその場に跪いて頭を下げます。
「アゲ・イナリさま、大変お待たせしました。前回のような名店街シリーズではなく、私とクレアさん二人の共同制作です。どうぞお納めください」
「つきましては、私にもより高位の加護を授けて頂けると幸いですわ。私は商人として独り立ちしたいのです、過去の確執につきましてはすでに清算したと思っていますので」
『コーーーーーン!!』
最後はキリコさんの一鳴き。
するとアゲ・イナリ様の神像がゆっくりと輝き始めました。
『おーおー、今日は二人の手作りかいな。それじゃあ、捧げてもらおかな?』
「はい、こちらです」
アイテムボックスからお稲荷さんの収められている保存容器を取り出し、私たちの目の前に捧げました。
するとお稲荷さんが光り輝き、次々と消えていくではありませんか。
『では、一つ味見を……と、ほほう、これはまたいい仕上がりやな。味付けその他は全てスタンダード、でも、うちに捧げようていう気持ちがギュッと詰まっておる。よし、クレア・エルスハイマー、あんたに加護を授けたるわ!!』
――ザワザワザワザワ
すると、周囲に集まって来ていた商人たちがざわめき始めます。
お供え物をするだけで加護が授かるだなんて、誰も予測をしていなかったのでしょう。
そしてクレアさんもイナリさまの言葉を聞いて、呆けた顔になっていますけれど。
「クレアさん……お礼を」
ツンツンと肘で彼女を突きますと、我に返った彼女が深々と頭を下げました。
「あ、有難うございます~」
『ええでええで。あんたも商人としてがんばっていたのはうちの眷属たちを通じて見ていたからな。キリコもお疲れ様や』
『コンココンコーーーン』
とてもうれしそうな二人。
私はすでに商人としての加護は得ていますので、これ以上を望むのはよろしくありません。
商人たるもの、欲をかいてはダメです。アーレスト商会の教えにもありました……。
そしてクレアさんとキリコさんの姿が光り、アゲ・イナリさまの声が響きます。
『クレア・エルスハイマー。あんたには【アイテムボックス】と【商業全般】の加護を授けたる。ついでにな、【鑑定のメガネ】もつけてやるわ。それを付けて居れば鑑定というスキルが使えるようになる。ただし、あんたがフェイール商店を裏切るようなことをしたら、その加護は全て消えるから気を付けてや』
「はいっ。私はフェイール店長を裏切るようなことは決して行いません」
『まあ、クリスと共にいるか、彼女を裏切らない限りは加護は永久に持続するで。と、キリコ、あんたにはこれや!!』
――ボフッ
突然、私の真横でキリコさんが獣人の姿に変化しました。
しっかりとガンバナニーワ式の作務衣という衣服を身に付けています。
私と年齢は私と同じぐらいかな?
『キリコは二人の護衛と仕事の御手伝いを頑張るようにな。さて、クリスには……今回はなしや。その代わり、シャーリィからの伝言を伝えておくで』
「は、はい、このあとシャーリィさまのところにも伺う予定でした」
『今、ここにはおらん。留守やな。ということで伝言。【フォンミューラー王国内なら、今まで通りに加護は使えますよ】だそうや。まあ、うちの祠や神像を仲介するので、ネプトゥス大聖堂がある都市だけや』
「ありがとうございます。シャーリィさまにも、私が無事に到着したことをお伝えください」
『それぐらいかまへん。そんじゃ、あとはきばってや~や~や~』
ああ、セルフエコーという奴ですね。
遠くに消え入るように、小声になるのを、この大陸ではそういうそうです。
でも、ハーバリオスの勇者語録ではドップラー効果といっていたような気が。
「では、いきましょうか? 今日は町の中を散策したいのと、商業ギルドにいって露店の使用許可を取りたいのですよ」
「そうね。それじゃあそうしましょう……と、この子は、子狐のキリコでいいのよね?」
「そーだよー。キリコだよー」
尻尾をパタパタと振りつつ呟くキリコちゃん。
うん、可愛いですねぇ。
ギュッと抱きしめて眠りたい気分です。
〇 〇 〇 〇 〇
――バンクーバー・商業ギルド
「フェイール商店さん、こちらのギルドカードはフォンミューラーでは使えませんね」
教会を出て町の中心部に向かい、そこから商業区と呼ばれている大手商会の密集する地区にやってきまして。この一角に巨大な商業ギルドがあったので、まずはここで諸々の手続きを行おうとしたのですが。
突然の出来事に、ちょっと困りそうです。
「それはつまり、新しくこの国でも登録する必要があるということですか?」
「ええ。フォンミューラー王国およびその近郊の国々で商業を生業とする場合、商会登録を行う必要があるのですが。その際は王国もしくは都市に本店を構えている必要があります。こちらのハーバリオス発行のギルドカードですと、フェイール商店の本店はオーウェンという都市になっていますよね。他国の商人がフォンミューラーで商売を行う場合、こちらの『通商許可証』を購入していただくことになります」
この通商許可証を購入し登録すれば、フォンミューラー近郊の国家での商業は可能だそうで。
これは仕方がありません、素直に購入することにしましょう。
「……では、購入させていただきます」
「はい、通商許可証は金貨20枚ですけれど、他国の商人の場合、通行税と商業税が別途必要になりますのでお気を付けください。ちなみにバンクーバーでの露店での商売は可能ですが、現在は空いている場所がございません。どこか店舗を借りるか、もしくは軒下を使う許可を取った方がよろしいかと思いますが」
「うーん、ちょっと待ってくださいね」
これは、予定を切り上げてバンクーバーを離れた方が良いかもしれません。
そう考えていると。
「あれ、見た顔のお嬢さんだと思ったら、フェイールさんか。ひょっとして商業手続きかな?」
イブさんが私たちの近くにやって来て、話しかけてくれました。
「ええ。ですが、露店の場所に空きがなくてですね。それなら次の町に向かった方がいいかなぁと思ったのですが」
「ふぅん。それなら、うちの店の隅っこで使う? うちのカバン屋ってさ、私ひとりで回しているんだけれど店舗だけは大きくてすきまだらけなんだよ。この街にいる間ぐらいなら、貸してあげるよ、格安で」
「借ります!! 貸してください!!」
「ということなんだけれど、ミランダ、うちをフェイール商店に貸すので手続きをしておいて。私は納品を終わらせてくるから」
そう告げて、イブさんはとっととどこかに行ってしまいました。
「それでは、手続きを再開しますね……」
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