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第3章・神と精霊と、契約者と

第131話・光と影と、お約束の展開?

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 ガンバナニーワ王国王都中央。

 そこにあるナニワ屋という商業ギルドで綿羊の綿毛を購入しました。
 でも、際は予定の数よりは少ないため、ギルドの受付さんに教えてもらった道順に従って布問屋へと向かっていますが。
 行けども行けども辿り着くことができません。
 途中で道を聞いてみても、やはりガーッとかコンコンとかわかりずらい説明をされました。
 それでも、もう近くまで来ているようなのであとは説明通りに行くしかないと頑張ってみたのですけれど。

「……なぁ、お嬢や。先ほどの角は右に曲がってコンコンコーンではなかったか?」
「うう、そのはずです。でも、ここはどう見てもスラム街ですよね?」

 大通りから中に入り、角を曲がってゴワーッて進んで十字路をチャイヤーって曲がって。そこから先へとコンコンコーンと進みました。
 すると、どうやらスラムに紛れ込んでしまったようで、広い道ではありますがあまり活気がないと言いますか、むしろ店など一つも開いていません。

「ふむ、これは道に迷ったということではないか?」
「そのようですね、引き返しますか」
「そうしたほうが良さそうじゃな……と、わしらが来た道は何処にいったんじゃ?」
「え?」

 今来た道を戻ろうとしましたが。
 そこにあったはずの道がありません。
 いえ、この家と家の間には、確かに道があったはずなのですけれと。

「あら? 道がなくなっていますよ? これはどういうことでしょうか?」
「道が消えたというのか? それはどういう意味じゃ?」
「如何にもこうにも、ここの壁のところにあった道がなくて……あれぇ?」

 クリムゾンさんに説明してから振り向きますと、今度は街道自体が消えてしまい、私たちは細い恥の真ん中に立っています。
 ここにくる途中までは使っていた街道も消えてしまい、私たちは細い路地の中にポツンと立っています。
 しかも、私たちの前後には武装した人々が立っていて、こちらを見ています。

「ん? お嬢ちゃん、道に迷ったのかい?」
「この辺りは道が入り組んでいてねぇ。迷い込んだっていうことは、この辺りの住民じゃないんだよな?」

 ヘッヘッヘっと笑いながら、ゆっくりと間合いをつめてきました。
 
「あ、あの、急いでいますので通してもらえますか?」
「構わないよ。ただ、通行料を払ってもらえたら通してやるさ」
「あんたの所持金全部だ。あと、その綺麗な服も置いて行ってもらうし、お嬢ちゃんは奴隷ギルドに売り払ってやるから安心しろよ」

──ゾクッ
 下卑た笑いとは、このような顔なのですか。
 腰からナイフを引き抜いて、私たちに向かって近寄ってきますと。

──タッ!
 いきなりクリムゾンさんの前の男がナイフを構えて駆け寄ってきて。

──シュンッ
 その振り抜いてきたナイフを掻い潜って後ろに回り込むと、背後から腰に手を回して拳をクラッチ。
 そのまま地面にある酒樽を持ち上げるようにぐいっと引き抜きますと、後方にそりかえって暴漢の頭を地面めがけて叩きつけましたよ!!
 それ、死にますから!

「ふん。この程度の打撃程度で頭が割れるはずがあるまい。地面にぶつかる前に放ってやったわ、肩から地面にぶつかっただけじゃ」
「ぐうぁぁぁぁ、肩が、俺の肩が砕けたぁぁぁ」

 左肩を押さえてのたうち回る暴漢。
 そしてもう一人はナイフを構えている手が震えてきています。

「お! おい、こいつの肩を壊しやがってどうしてくれるんだ?」
「どうするもこうするも、人様に向かってナイフを向けてきて、追い剥ぎしようとしたではないか。人に武器を構えるということは、自分が向けられる覚悟があるということじゃよ……」
「な、なにを訳のわからないことを言ってやがる!」

 逆上してナイフで斬り込んできましたが。
 その右腕を膝の辺りに向かって蹴りを叩き込みますと、ぐるりと回って左足で暴漢の腹部に向かって強烈な蹴りを叩き込み……。
 あ、あら~。

「す、すまんな。ちょいと蹴りの軌道を間違えたようじゃ」
「くぁwせdrftgyふじこlp」

 ええっと、言葉に~でき~な~いようです。
 そこは、確か男性の急所ですよね?
 そこに全力で蹴りが入ったのですから、口から泡を吹いて気絶しましたよ。

──グニャァァァァァァ
 すると周囲の風景が歪み始め、元の街道が見えてきました。
 これは一体何だったのでしょうか。

「どうやら古代魔術が封じられている魔導具を使ったのじゃろうなぁ。使っていた奴が意識を失ったので、効果が切れて元の空間に戻ったようじゃよ」
「そうなのですか……あら?」

 ふと、股間を押さえて泡を吹いている人の近くに壊れた指輪があるのに気がつきました。
 それを手に取りますが、鑑定結果は『砕けた魔導具』としか表示されません。
 元々がどのようなものであったのかなど、壊れてしまってはわからないようです。

「それよりもお嬢、そこに布問屋があるではないか!!」
「え、どこに……ありました!!」

 私たちが立っている街道の十字街、そこからすぐそこにこんこんっと進んだ場所に布問屋の看板がありましたよ!!
 あら、うつったかもしれません。
 
「はぁ、つまりこの二人が、わしらを狙って魔導具で迷宮のような場所に引き摺り込んだだけで、とっくに近くまではきていたようじゃな?」
「そのようで……とりあえず、この二人は縛っておいて、問屋さんにでもお願いして騎士団にでも回収してもらいましょう」

 すぐさまアイテムボックスから取り出したロープで男たちを縛り上げますと、クリムゾンさんが二人とも肩に担いでついてきてくれました。

「あの~、すいません。綿羊の綿毛が欲しいのですが」
「はい、いらっしゃいませ。職人さん? それともどこかの商会の方ですか?」
「フェイール商店という個人商隊トレーダーです。こちらが商業ギルドの証明書、そしてこちらが紹介状です」

 一通りの身分証明を取り出して提示します。
 店員さんは丁寧に一つずつ確認してくれまして、商業ギルドで書いてもらった紹介状にもウンウン斗頷きながら笑顔で読んでくれています。

「わかりました。まさか南西のハーバリオス王国からいらっしゃったとは、遠路はるばるご苦労様です。それで、どらぐらい必要になりますか?」
「はい、実は少し多めになるのですけれど……」

 羊皮紙を取り出して必要量を書き出します。
 その間に、別の店員さんが騎士の方を呼びに走ってくれましたので、そちらはクリムゾンさんにお任せします。
 
「まあ、今のうちの在庫で間に合いますし、年明けにはまた届きますから大丈夫ですよ。倉庫は裏にありますので、そちらに馬車を回してもらえますか? それともアイテムバックをお持ちで?」
「いえ、アイテムボックスがありますので。では。先に支払いを済ませて構いませんか?」
「では、今計算しますね」

 そのままパチパチとそろばんを弾く店員さん。
 そして提示された金額をアイテムボックスから支払いますと、店員さんが困った顔になっていますけど。

「ひょっとして足りませんでしたか?」
「いえいえ、まさか本当に払うとは思っていなくてですね。この辺りでは、提示した金額をどこまで値切るか勝負っていう商人が多いもので、つい、いつもの癖で値切られるのを前提に値段を出しちゃいまして」

 そう話しながら、少しだけおまけしてくれたらしく金貨を数枚、戻してくれました。
 そして裏手に周り荷物を受け取ってから戻ってきたのですが、問屋さんの前では騎士の方と攫いのチュニックを着た商人が揉めています。

「おうおうおう!! こいつらはうちのシマで許可なく商人を襲っていた輩だ、責任を持ってリューガ屋が処分するから国の犬どもは帰ってくれ!!」
「またお前たちか……追い剥ぎ野党は騎士団で処分すると法で決まっているだろうが。わかったなら、とっとと帰ってくれ」
「冗談じゃない、島荒らしをそのまま騎士団に渡したなんてことになったら、リューガ屋のメンツが潰れるってものだ」

 うわ、何か揉めていますよ。
 
「クリムゾンさん、何があったのですか?」
「それがな、氣騎士団が来てこの男たちを引き取ってもらおうとしたら、こちらのチンピラ風情がイチャモンをつけてきてなぁ」
「おいこらそこの赤い奴、誰がチンピラじゃい!!」
「お主らじゃわ。ということで、貴様らには引き渡さん、こやつらは国の法の下に裁いてもらうから帰れ帰れ」

──シッシッ
 ああっ、その手の動きは相手を激情させますよ!!

「おう。なんじゃわ……れの足元、ズボンが汚れていますよ……と。では、わしらはこれで」
「な、なんだよ兄貴、こんなどこの誰だか……知らないけれど、おそらく騎士団が知っているかたなのですね……待ってくださいよォォォォォ」

 あれれ? 
 チンピラさんが逃げて行きましたが。

「クリムゾンさん、何かしましたか?」
「睨んだだけじゃよ。タイタン族特有の『魔眼』でな」
「なるほど。では、あとは騎士団にお任せして、私たちは帰るとしますか?」
「その前に腹ごしらえじゃ。このガンバナニーワ王都中央は食い倒れの町とも言われていてな。とにかく美味いものがたくさんある。お嬢も腹ごなしをしてから帰らぬか?」

 はぁ、やはり食いしん坊が発動しましたか。
 まあ、道に迷ったのは予想外でしたけど、それでも想定した時間よりはかなり早く終わりました。
 少しぐらいは寄り道をしても構いませんよね?
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