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第一部・アマノムラクモ降臨

第27話・医療設備拡充と、フランスの思惑と

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 フランスへ遺品を運んで行ったロスヴァイゼが帰還した。

 しっかりと、コンテナを携えて。
 状況的には受け取り拒否、もしくは港湾施設での受け取りのみ許可するが、宮殿施設付近への持ち込みは禁止というところだろう。
 未だ、フランスはアマノムラクモを敵対視している節があることはオクタ・ワンからの報告でも感じている。

「あいあい、任務失敗です!!」

 ブリッジに戻って来たロスヴァイゼが敬礼をしながら報告する。
 でも。妙に清々しい顔なのはなんでだ?

「まあ、機動兵器の国内侵入は許可しないっていうことだろうけど。でも、国民感情はどうなるんだ? おそらくだが、プルクワ・パが一方的に攻撃を受けたとか、そんな捏造記事で国民を煽っている可能性も否定できないな……ヘルムヴィーケ、その辺りの情報は?」

 コンソール前に座り、情報を確認しているヘルムヴィーケに問いかける。
 すると、俺の目の前に巨大モニターが浮かび上がり、さらに無数の画面へと分割した。

「フランスの報道各局による、プルクワ・パについての記事およびニュース関連データです。残念ですが、ミサキさまの予想通りです。フランスは議会でもこの件について言及を開始、アマノムラクモへの正式な謝罪と賠償を求めるべきであると、元老院が可決しました」
『ピッ……ですが、インターネットでは、プルクワ・パの船員たちの独断専行による無許可調査についての映像も流れていまして、元老院のなかでも強硬派がアマノムラクモ排除のために、偽りの情報を流したという理噂も流れています。なお、イギリスなどの欧州関係では、アマノムラクモを擁護する声もあり、フランス議院でも対応に追われているようですが」

 一枚岩ではない。
 むしろ、アマノムラクモを敵に回すようなことをして、なんの利があるのかそこが知りたいところだ。
 力関係ならば、今のアマノムラクモはこの地球上のいかなる国に勝てるだけの戦力は保有している。アマノムラクモはそれを侵攻武力として使うのではなく、身を守るために使う方針で決定しているのに、なぜ自分たちで敵対しようなどと考えているのか。

 話し合いによる解決が見込まれないから?
 アマノムラクモを排除するため?
 いずれにしても、他の艦船からの映像なども『なぜか』漏洩しているため、フランスの一方的な被害者という発言はすでに力を持っていない。
 
「ん~、分からん。フランスの議員が何を考えているのか、さっぱり分からん。国民感情を煽りアマノムラクモと敵対する我が国カッコいい? それこそ愚策じゃないか?」
『ピッ……予測ですが、フランスはこの件を欧州連合全体への『アマノムラクモについてよ懸念事項』として利用するのではないかと。国際問題にまで持っていき、アマノムラクモが全面的に敗北を認め、その技術を手に入れようとか?』
「負ける意味がわからん。それに、そんなことをしたらどうなる?」
『ピッ……おそらくは、アメリカが動きます。アマノムラクモに着くでしょうから、そこからあとは、西側と東側の問題になるかと。ついでに言うのなら、ここでアメリカはアマノムラクモへ恩を売り、技術供与の最初の一歩とする可能性も』

 どいつもこいつも、そんなにアマノムラクモの技術が欲しいのかよ。
 確かに神が作った機動戦艦、そんじょそこらの軍事力に負けるほどやわじゃない。
 それこそ、どこぞの漫画やアニメでよく見る、第二次世界大戦で猛威を奮ったちょびひげ親父の第三帝国、その信奉者や残存戦力が集結して新たな帝国を作り出すとか、三年帝国計画とかやらかしたのなら、オカルト兵器も大量にあるだろうから恐怖するかもしれないが。

 そうなったらあれか?
 アマノムラクモはイギリスと手を組んで、吸血鬼の始祖を復活させて戦力投入するか? それとも噂のバチカンの対吸血鬼部署とでも提携するか?

「あはは~。アマノムラクモ単騎でいけますよ~」
「はぁ。ロスヴァイゼはいつも元気だな。はい、場所に戻ってね」
「あいあいさ!!」

 返事をしてから、すぐにロスヴァイゼは自分の席に戻りコンソールを稼働させる。まあ、相変わらず元気なのはそれだけでも良いことなんだよなぁ。

「オクタ・ワン、およびワルキューレ全員に勅命。フランスの動向チェックを開始、まあ、色々とやらかしてくれそうなのは理解しているけど、常にカウンターを打てるように情報だけでも集めてくれるか?」
「了解です」
『ピッ……是……』
「それとヒルデガルド、例の『アマノムラクモ医療国家計画』だが、基本的な流れと方針、どこまで実現可能か精査してくれるか?」

 こっちが本題。
 アマノムラクモの持つ医療システム。
 これを有効的に使って、世界を救う……なんていうほど大袈裟ではないが、少なくともアマノムラクモが敵対国家ではないと言うことを示さないとならないだろうからさ。

「すでに、艦内生活区画の一部を閉鎖し、その内部を医療関係設備に置き換えています。建物自体がコンテナのように丸ごと移動可能ですので、おおまかな配置などは完了しています。なお、医療用ポットおよびメディカルシステムの実稼働実験についてはこれからの予定ですが、ミサキさまは地球の医療知識をどれ程理解していますか?」
「……すまん、俺は営業の人間で、転生時のチートスキルは錬金術だ。人間の臓器をホムンクルスレベルで再生することはできても、それを医療用として移植するために必要な知識はない」

 ここ、大切。
 そうなると、アマノムラクモの医療チームを編成する必要がある。
 本などによる知識の埋め込み程度なら、そんなに難しくはないんだがひつようなのは実務経験。

「……やっぱり、どこかの国の医療機関に協力を仰ぐのが早いか。しかし、どこに頼み込んだら良いことやら」
『ピッ……医療用ポットに患者を収めれば、あとは自動で診察し必要な処置を行えますが。常にミサキさま用に稼働しているのが一台、予備稼働機が一台、バックアップ用のストックが二台、部品だけなら十台分は押さえてあります』
「慎重すぎるわ、それで、俺専用以外には?」
『ピッ……必要ありません』

 うん、言うと思った。
 どこまでも俺を大切にしてくれるのは嬉しいんだが、過保護すぎるだろうが。

「オクタ・ワン、予備部品から四台分を組み上げてくれ、そのあとで終了部品の製作ラインの確立。最終的には十台を組み上げて、医療区画……うん、メディカルエリアとでも命名しておくか、そこに設置してくれ」
『ピッ……了承。なお、外部からの医療従事者についての要請は、アメリカと日本を推薦します』
「また偏ったところを選んだな。その意図は?」
『ピッ……飴と鞭』
「いや、わかんねーよ」

 たまに変な例えをするのは、頼むから勘弁してくれ。

「僭越ながら、この私からご説明します。オクタ・ワンが提示した二国の医療技術ならば、世界中に蔓延している様々な病気や怪我に対しての知識を十分に持ち得ているかどう思われます。なお、それら医療関係者を誘致するとなると、それなりの生活基盤も必要になりますが」
「メディカルエリアの隣に、生活用の都市区画を計画。待て待て、そうなると彼ら用のインフラ整備とか、生活必需品や娯楽の提供も考える必要もあるのか……うわ、どないしろと?」
『ピッ……アマノムラクモの関係者以外には、艦内への長期滞在を認めたくはありません。それだけ多くの人が生活する時間を与えますと、艦内の技術が漏洩する可能性も否定できません』

 オクタ・ワンのいうことも一理ある。
 一つのことを始めるには、そこけら派生する物事まで処理しなくてはならないっていうこと。
 そうなると、アマノムラクモへの誘致ではなく、うちのサーバントたちから数名を、受け入れてくれる場所を探す必要があるのか。

 どっちがいいのか、悩みどころだわ。
 
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