褒美は変わった皇女様

よしき

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湖畔のキス2

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 しばらくして、サージャがゆっくりとシアの唇を自分の唇からはなした。
「ずるい・・・」
 しあは、蕩けそうな顔をしながらそう呟く。サージャは、優しくシアの額にキスを落とすと、すくりと笑った。
「よかった、シアがキスを嫌がったらどうしようかも思った。」
「べ、別に私は・・・コレくらい・・・」
 シアは、顔面を赤面させぷいっとまた顔を横にする。
 その仕草が、とても可愛らしくって。サージャは、まだ体を抱きしめたまま離してはくれない。
「ねえ、シア?」
 サージャは、優しくそうシアに話しかける。
「あなたは何を心配している?よかったら、教えてくれないか?」
 心配事・・・。
 シアはその言葉を聞いて、顔が青ざめる。まるで投獄されていた人の様に。そして、空色の瞳がさらに際立って強い光を放って、サージャを見返した。
「何も・・・心配事などない。」
「何故?!何かあるのはこの俺でも分かる。どうか心を開いて。」
 しばらくの間、2人は見つめ合う。そこに爽やかな湖からの風が吹いてきて、シアの髪をそよがせる。
 シアは大きくため息をついた。
「分かるのだ・・・この先の出来事が」
「出来事?」
 真剣な2人の眼差しが、お互いを捉える。
「私は、この先起こる不幸な出来事が分かるのだ。」
 シアは再び同じことを繰り返すと、サージャの服にしがみついて言葉を選びながら話を始めた。
「私には前世の記憶がある。そう、帝国皇女アナスタシアとしての記憶がだ。・・・私はこのまま行けば、サージャリオン、お前を戦地へと行かせ、その・・・死に追いやった悪女として大罪を犯すことになる・・・」
 空色の瞳は、真剣に訴えかける。
「多分、半年後にスパダム地方で戦になるはずだ。だから、同じ鉄は踏まないように・・・」
 するとサージャは、シアの唇を再び奪ってみせる。そして、優しく抱きしめてる。
「そんなこと、信じろと?」
「信じまいが、それが現実だ・・・」
 シアが話をしようとすると、三度目のキスが降ってきた。
「なら、何故俺と結婚を?陛下からの打診のあった段階で君は断れたはずだが?」
 シアは耳まで顔を赤くしていた。
「・・・それは、その・・・」
ゴニョゴニョと、シアが小さく呟く。それを楽しそうにサージャが見る。
「と、とにかく。私にも色々と事情というものが・・・」
 「それでも、わけだよな?」
 黒い瞳がまるで獲物を捉えたかのようにキラリと光ったようだった。
 それを見て、シアは咳払いをしてなんとか自分を落ちつかさる。
「と、とにかく。この状態をなんとかしてくれサージャ・・・その、せっかくのサンドイッチを食べたいのだが・・・」
「俺はシアを食べたいが?」
 シアは思わずアングリと口を開けてしまう。サージャは、こんな奴だったのかと言いたげだ。
 それを見て、悪戯っ子のようにサージャは笑うと、
「嘘だ。シアを困らせてやりたかった」
と、言って、シアを腕から解放してくれた。
「とにかく、その『前世』とやらの話をしながらサンドイッチをいただくとしよう。」
 シアもコクンと頷くと頷いた。

 

 
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