褒美は変わった皇女様

湖畔のキス1

　侯爵領には、後一日止まる予定の2人はケイティの一言でピクニックへといく事になった。
「丁度いいお天気ですし、サンドイッチもご用意しましたので！」
　ニコニコニコ。
　サージャもシアも特に何も用がなかったので、このケイティの無言の圧力になす術がなかく、2人だけでライル湖へと馬車で向かう事となった。(馬車は簡易的
　いつも乗る立派な馬車ではなく、荷台のついた馬車・・・シアは驚いていたが、
「これも悪くない」と、サージャが手綱を引く隣へと乗り込んだ。

　ライル湖は、屋敷からは馬車で10分程離れたところにあり、湖畔には小さな小屋があった。
　サージャは、颯爽と馬車から降りると、馬車からシアが降りるのを手伝う。そして、荷物もキビキビと小屋の近くの机へとはこぶ。シアが丸太の椅子に座ると、
「子供の頃はよくここで遊んだものだ」
　と、
「そうか・・・その、こんなに近くで湖を見るのは初めてだ・・・」
　シアは、少し嬉しそうにそう言う。その仕草を見て、サージャは思わず笑顔になった。そして、少し考え込んでから話し出す。
「・・・シア、実を言うと。あなたの言動は子供の様で、初めは少々この結婚に俺も不安もあった。でも、昨日のシア、あなたを見て俺はあなたと結婚してよかったと思ってる！」
　それを聞いて、シアは目を見開く。
「シア、アナスタシア。」
　サージャがシアには跪くと、金糸の髪を手に取ってキスをする。
「昨日のシアは美しかった・・・」
　空色の瞳に、黒髪の男が映る。
「シア。君が嫌でないのなら・・・私の本当の妻になってくれないか？」
　シアはびっくりした表情を浮かべる。
そして、なんとか口を開けてしまった。
　サージャは、そんな表情をするシアがとても可愛らしくて見えて、言葉を続ける。
「シアが何故、俺の前にいる時だけ大人ぶった言葉を言うのかは分からない。でも、本当のシアは、とても素晴らしいレディだと思い知った。」
　サージャの熱がこもった言葉・・・シアは少しの間、黒い瞳に映る自分の姿を見てしまった。そんなシアはサージャから顔を背ける。
「何故？シアは俺を避けるのか？」
　サージャは、そう言うと立ち上がり、シアを抱きしめた。
「な、何を？！」シアは、慌ててサージャを退けようとするが、男のそれも英雄の体を退けられるはずがない。
「シア・・・アナスタシア・・・」
　明るい空の下、サージャは声を絞るようにしながら紡ぐ。
「初めからおかしかった、あなたの態度は。あなたは何故私に嫁いだのに、去勢をはったり、わざと嫌われようとする？
それでいて、民たちにはあのように慈愛に満ちた事をする？　心根の優しさがなければ、あなたの様な高位のお育ちの姫君が最敬礼などするはずがない・・・」
　サージャは、シアから顔を離すと見開かれたシアの瞳をもう一度見つめた。
「シア、今あなたの唇を奪っても構わないだろうか？」
　そう言うと、サージャは、ゆっくりとシアの唇に優しくキスをした。
　初めこそシアは抵抗をしようと試みたが、優しいサージャのキスは柔らかくって、そして懐かしいものだった。気がつけば、お互いにそれを求め合い、激しいキスをしていた。