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昼下がりのパーティーで
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昼下がりのパーティーは、立食式の簡易的なもので、それも侯爵領内での小さなパーティーのはずだったのだが。初めてお目見えする侯爵夫人=皇女様を一眼見ようと、それは華やかなものとなった。
地方といえども、帝都からはそれほど遠くないこの地には、貴族がそれなりに集まる。
その中でも一段と目立ったのは、やはり本日の主役でいる領主夫妻であった。
近衛隊の制服をしっかり着こなしたサージャと、今年の流行のドレスを優雅に着こなすシア・・・しかも、美男美女とくれば、誰もがざわめき立つ。
「お噂には聞いていたが、アナスタシア様がこれほどのお美しさとは・・・」
「英雄に天使だなんて、本当に素敵ですわね・・・」
「褒美でのご結婚だなんて、侯爵様が羨ましい・・・」
どこもかしこも、そんな言葉が飛び交う。
しかし、当の本人たちはと言うと。皆から少し離れた雛壇の上で、次から次と挨拶に来る客人をもてなす傍、
「お披露目をしなくても良いと言ったはずだが?」
「これは仕方がないだろう。俺もこんなに人が集まるとは思わなかったんだ」
と、ボソボソと何やら内輪揉めの様な会話がされていた。
「明日の領民へのお披露目も、まさかこんな感じではあるまい?」
「あぁ、明日はお披露目だけで、パーティーはやらないから。それにしてもシアは、人目があるところは好きではないのだね?」
「貴殿だって、目立つのは良くも悪くも・・・では?」
シアは、はぁっと小さく扇子の中でため息をつく。サージャも笑いながらも、それには同感していた。
丁度そこへ、1組の夫婦がやってきた。夫婦はお互いに帝都式の挨拶を優雅にサージャ達に行って見せる。サージャから先に挨拶を述べると、夫妻は元気よく顔を上げた。タッダン子爵夫妻である。
「おお、閣下におかれましては、おめでたく。また、パーティーに来させていただきまして、ありがたき幸せ・・・」
サージャは、小太りのタッダン子爵の口上を手でさえぎると、シアを二人に紹介した。
「本当に、なんとお美しいのかしらぁ」
子爵夫人がそう言った顔は、印象としてはガマガエルと言ったところだろう。ある意味忘れられない顔である。
「・・・子爵ご夫妻に、神の恵みがあらん事を。」
2、3話を済ませると、サージャはそう言って2人を下がらせた。その会話は、中々スマートである。
シアもニコニコと笑顔を見せながら、扇を口元へと当てて2人の後ろ姿を見つめていた。
「あまり好かないのか?」
「あぁ、昔チョット嫌なことがあってね」
「英雄にも好き嫌いなぞがあるのか?」
サージャは、あははっと笑う。
「俺も人間だからね。好ましい人もいれば、付き合うのを遠慮する人もいる。」
「なるほど。しかし、城でもこんなに人から話かけられることは無かったのだが?」
そう、シアはいつも皇帝の挨拶の時しかパーティーには参加しない。社交界へは、ほとんど顔を見せないことで有名だった。
サージャは、少し苦笑いをすると、
「まあ、最初で最後だと思ってくれ」
と、言ってシアに頭を下げた。
結局、シアは『気分が優れない』とのことで、その15分後にその場を後にした。
1人後に残されたサージャの元へ、1人の男がやってきた。
「ジュードじゃないか?!」
「なんだ?麗しの奥方は帰られたのか?!」
そう言って、赤毛と緑色の瞳の男はサージャに笑いかけた。ジュードベルト・フォン・マルン伯爵は、サージャの幼なじみでもある。
「済まない、昨日の夜中にこちらについたので、疲れたのだろう」
「楽しみにしてたのだが仕方ない」
「明日はお顔を拝見できるんだろう?!」
「それは大丈夫だ」
「では、明日を楽しみにしているよ」
ジュードは、そのまま笑いながらその場を去っていった。サージャも、ふぅっと小さく息をついた。全く、褒美の結婚でなければ自分もこんなことはしなくてもよかったのだが・・・
サージャは、心の中でそう呟いた。
地方といえども、帝都からはそれほど遠くないこの地には、貴族がそれなりに集まる。
その中でも一段と目立ったのは、やはり本日の主役でいる領主夫妻であった。
近衛隊の制服をしっかり着こなしたサージャと、今年の流行のドレスを優雅に着こなすシア・・・しかも、美男美女とくれば、誰もがざわめき立つ。
「お噂には聞いていたが、アナスタシア様がこれほどのお美しさとは・・・」
「英雄に天使だなんて、本当に素敵ですわね・・・」
「褒美でのご結婚だなんて、侯爵様が羨ましい・・・」
どこもかしこも、そんな言葉が飛び交う。
しかし、当の本人たちはと言うと。皆から少し離れた雛壇の上で、次から次と挨拶に来る客人をもてなす傍、
「お披露目をしなくても良いと言ったはずだが?」
「これは仕方がないだろう。俺もこんなに人が集まるとは思わなかったんだ」
と、ボソボソと何やら内輪揉めの様な会話がされていた。
「明日の領民へのお披露目も、まさかこんな感じではあるまい?」
「あぁ、明日はお披露目だけで、パーティーはやらないから。それにしてもシアは、人目があるところは好きではないのだね?」
「貴殿だって、目立つのは良くも悪くも・・・では?」
シアは、はぁっと小さく扇子の中でため息をつく。サージャも笑いながらも、それには同感していた。
丁度そこへ、1組の夫婦がやってきた。夫婦はお互いに帝都式の挨拶を優雅にサージャ達に行って見せる。サージャから先に挨拶を述べると、夫妻は元気よく顔を上げた。タッダン子爵夫妻である。
「おお、閣下におかれましては、おめでたく。また、パーティーに来させていただきまして、ありがたき幸せ・・・」
サージャは、小太りのタッダン子爵の口上を手でさえぎると、シアを二人に紹介した。
「本当に、なんとお美しいのかしらぁ」
子爵夫人がそう言った顔は、印象としてはガマガエルと言ったところだろう。ある意味忘れられない顔である。
「・・・子爵ご夫妻に、神の恵みがあらん事を。」
2、3話を済ませると、サージャはそう言って2人を下がらせた。その会話は、中々スマートである。
シアもニコニコと笑顔を見せながら、扇を口元へと当てて2人の後ろ姿を見つめていた。
「あまり好かないのか?」
「あぁ、昔チョット嫌なことがあってね」
「英雄にも好き嫌いなぞがあるのか?」
サージャは、あははっと笑う。
「俺も人間だからね。好ましい人もいれば、付き合うのを遠慮する人もいる。」
「なるほど。しかし、城でもこんなに人から話かけられることは無かったのだが?」
そう、シアはいつも皇帝の挨拶の時しかパーティーには参加しない。社交界へは、ほとんど顔を見せないことで有名だった。
サージャは、少し苦笑いをすると、
「まあ、最初で最後だと思ってくれ」
と、言ってシアに頭を下げた。
結局、シアは『気分が優れない』とのことで、その15分後にその場を後にした。
1人後に残されたサージャの元へ、1人の男がやってきた。
「ジュードじゃないか?!」
「なんだ?麗しの奥方は帰られたのか?!」
そう言って、赤毛と緑色の瞳の男はサージャに笑いかけた。ジュードベルト・フォン・マルン伯爵は、サージャの幼なじみでもある。
「済まない、昨日の夜中にこちらについたので、疲れたのだろう」
「楽しみにしてたのだが仕方ない」
「明日はお顔を拝見できるんだろう?!」
「それは大丈夫だ」
「では、明日を楽しみにしているよ」
ジュードは、そのまま笑いながらその場を去っていった。サージャも、ふぅっと小さく息をついた。全く、褒美の結婚でなければ自分もこんなことはしなくてもよかったのだが・・・
サージャは、心の中でそう呟いた。
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