褒美は変わった皇女様

よしき

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侯爵領へ2

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 ジェットラム侯爵領は、帝都スラムのすぐ近くで、主要道の要の地である。
 肥沃な土地でもあるため、農産が盛んで、帝都スラムへは良質な野菜や肉を交易品としており、領地内は活気付いている。
 そして、もし帝都スラムへ進軍するとしたら、この地が最後の砦ともなる重要な場所でもある。
 
 シアは、遅くに侯爵領に到着したにもかかわらず、朝はいつもの時間に起き出した。
 そして、隣で寝ているサージャを起こさない様にベッドを抜け出すと、ケイティに頼んでターリャ風のドレスに着替えた。本日は深みのある藍色のドレスである。ケイティがドレスにあったがうんを着せると、シアは急いで屋敷の外へと出かけていった。
 シアは屋敷の外を見ると、まだ寒気の残る屋敷の前の庭で深呼吸をした。
「本当に帝都から離れたのだな!」
 その口から白い息が漏れる。
 シアは生まれてこの方、帝都から出たことがなかった。まあ、皇帝がそれだけシアを大切に育てた事もあったのだが・・・。そのため、実は今回の侯爵領へ来ることを楽しみにしていたのだ。
「夜だったから分からなかったが。あそこに見えるのがライル湖?」
「はい、シア様。」
「湖の辺りにあるのが、噂に聞いたライル要塞・・・」
「今日はパーティーが昼過ぎからありますが。明日、要塞の広間でシア様のお披露目がされますから行けますよ」
 シアは頬を赤く染める。
「そうなのか?!明日が楽しみだ」
 そんなシアをケイティは、もう皆が起き出す時間だからと、シアに屋敷へと戻る様にうながす。今日は地元の有力者達との社交の場があるのだ。
「降嫁して、そんなものしなくても良いかと思っていた・・・」
 シアは深くため息をついたが、
「アナスタシア様の美しさを見たら、皆んな感嘆のため息しか出ませんは!」
 と、ケイティはうなずいて見せる。まあ、そこは侍女の見せ所でもあるのだが。 
 この2週間の間に、2人は大分打ち解けてきていた様だ。年頃も近いせいもあるのだろう。
 「アナスタシア様には、こんばんは都で流行っているドレスを着ていただきますから、そのおつもりで!」
 と、冗談めいた感じでケイティが言うと、
「それは逃げられないものか・・・」
シアは、本当に嫌そうに天を仰いだ。

 2人が屋敷の中に入っていく様子をサージャは窓から眺めていた。
 「私にも、あれぐらいはそろそろ慣れてもらえるといいのだが・・・」
 サージャは、そう呟く。
 しかし、この2週間。手にキスをする事と、一緒のベッドで寝る事以外は、全く2人の間に変化は起きていなかった。
 サージャとしては、領地に戻ってきている間に、もう少しお互いのことがわかればいいのだが・・・と思っている。
 「とにかく、今日と明日の予定をこなさなくては、か。」
 サージャは、そう呟くと部屋を出た。


 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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