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侯爵領へ1
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月日が過ぎるのは早いもので。
挙式から2週間。一緒のベッドで寝る様にはなったものの、二人の関係はまったくもって清いものだった。
一つだけあるとするならば、サージャが寝る前にシアの手の甲にキスをすることは続いていたと言っておこう。
そんな二人の周りが急に慌ただしくなったのは、侯爵領へ二人で出かけるからである。領民たちへのアナスタシアのお披露目である。
いくら結婚式などは、質素にしたといえども、皇女の降下のであり、新たなる侯爵夫人の誕生である。
『領民皆んなにお披露目』と言うわけである。
サージャは、最初、シアは嫌がるかと思ったのだが。中々どうして・・・シアは、すぐにテキパキとケイティに指示を出して2~3日ほどの出かける準備をしてしまった。普通の御令嬢であれば、最低でも一日はかかる。
しかし。やればと言うよりも、もっていくものが少なかったこともあり、1時間ほどで済んでしまったのだ。用意したものも、普段から使っているものばかりで、新調したものはなかった。流石のサージャも、これにはビックリしてしまった。男の自分・・・それも軍人と大差ないほどの時間だったからだ。
一つ注意したのは、本を詰め込もうとしたことぐらいだろうか?侯爵領にも図書室があるからとなだめて、シアはやっと3冊だけ本を持っていくことで了承したのだが・・・
そして、出立の当日のこと。
朝食を済ませたあと、一旦部屋に戻ったシアが、いつもよりは豪華なターリャ風のドレスに身を包み出てきた。髪は帝国風に結衣上げ、さりげなく帽子を被った姿は、細い首筋が見えて、それはそれで美しい。ドレスの色も、落ち着いた深みのある青色で。空色の瞳とよく似合う。
マーリンが玄関に馬車を用意させた馬車に2人は乗り込こみ、まだそれほど陽が高くない内に侯爵領へと向かうこととなった。もちろん、ケイティは別の馬車に乗ってついてくることになっている。
さて、帝都にある屋敷から、侯爵領へ向かうには馬車でも半日はかかる。
「この様な事は、生まれて初めてだ。」
シアは馬車に揺られながら呟いた。
「侯爵家にきてから、シアには初めてのことばかりなのでは?」
サージャも、少し意地悪そうに呟く。
「陛下が城から外へは連れ出してはくれなかったから・・・馬車に乗ったのも、侯爵家に来たときが初めてなのだ」
確かに・・・。
何しろ、皇帝ハルベルトは、子供たちを大切に育てた。一番それが顕著に現れていたのは、皇位を継ぐ皇太子ではなく、アナスタシアの方であった。なくなった皇妃によく似ていたせいもあるが・・・
蝶よ花よと、シアを育てたのだ。その結果が、あまり人目に出されなくなった『本の妖精』なのだが。
領地では、シアは『麗しい皇女様』『美しい褒美』と、ある事ないこと言いふらかされていたのだが・・・
サージャは、その事を知ってはいたが、あえてシアには伝えてはいなかった。シア自体があまり人に騒がれるのがどうも好きではなさそうだったこともある。
2人は大した会話もなく、一日馬車に揺られて。侯爵領へ着いたのは、真夜中のことであった。
挙式から2週間。一緒のベッドで寝る様にはなったものの、二人の関係はまったくもって清いものだった。
一つだけあるとするならば、サージャが寝る前にシアの手の甲にキスをすることは続いていたと言っておこう。
そんな二人の周りが急に慌ただしくなったのは、侯爵領へ二人で出かけるからである。領民たちへのアナスタシアのお披露目である。
いくら結婚式などは、質素にしたといえども、皇女の降下のであり、新たなる侯爵夫人の誕生である。
『領民皆んなにお披露目』と言うわけである。
サージャは、最初、シアは嫌がるかと思ったのだが。中々どうして・・・シアは、すぐにテキパキとケイティに指示を出して2~3日ほどの出かける準備をしてしまった。普通の御令嬢であれば、最低でも一日はかかる。
しかし。やればと言うよりも、もっていくものが少なかったこともあり、1時間ほどで済んでしまったのだ。用意したものも、普段から使っているものばかりで、新調したものはなかった。流石のサージャも、これにはビックリしてしまった。男の自分・・・それも軍人と大差ないほどの時間だったからだ。
一つ注意したのは、本を詰め込もうとしたことぐらいだろうか?侯爵領にも図書室があるからとなだめて、シアはやっと3冊だけ本を持っていくことで了承したのだが・・・
そして、出立の当日のこと。
朝食を済ませたあと、一旦部屋に戻ったシアが、いつもよりは豪華なターリャ風のドレスに身を包み出てきた。髪は帝国風に結衣上げ、さりげなく帽子を被った姿は、細い首筋が見えて、それはそれで美しい。ドレスの色も、落ち着いた深みのある青色で。空色の瞳とよく似合う。
マーリンが玄関に馬車を用意させた馬車に2人は乗り込こみ、まだそれほど陽が高くない内に侯爵領へと向かうこととなった。もちろん、ケイティは別の馬車に乗ってついてくることになっている。
さて、帝都にある屋敷から、侯爵領へ向かうには馬車でも半日はかかる。
「この様な事は、生まれて初めてだ。」
シアは馬車に揺られながら呟いた。
「侯爵家にきてから、シアには初めてのことばかりなのでは?」
サージャも、少し意地悪そうに呟く。
「陛下が城から外へは連れ出してはくれなかったから・・・馬車に乗ったのも、侯爵家に来たときが初めてなのだ」
確かに・・・。
何しろ、皇帝ハルベルトは、子供たちを大切に育てた。一番それが顕著に現れていたのは、皇位を継ぐ皇太子ではなく、アナスタシアの方であった。なくなった皇妃によく似ていたせいもあるが・・・
蝶よ花よと、シアを育てたのだ。その結果が、あまり人目に出されなくなった『本の妖精』なのだが。
領地では、シアは『麗しい皇女様』『美しい褒美』と、ある事ないこと言いふらかされていたのだが・・・
サージャは、その事を知ってはいたが、あえてシアには伝えてはいなかった。シア自体があまり人に騒がれるのがどうも好きではなさそうだったこともある。
2人は大した会話もなく、一日馬車に揺られて。侯爵領へ着いたのは、真夜中のことであった。
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