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侯爵と皇女
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サージャリオンは、皇女アナスタシアとは普段から顔を合わせてはいた。何しろ近衛兵として、皇族を守ってきたのだから、当然のことである。
しかし、警備をしていた訳で、気軽に話をすることなどはない。(もっとも、皇帝は、いつも気軽に声をかけてくれるのだが・・・)
金のアナスタシアと呼ばれる程、見た目は美しく履かない皇女が、降嫁してくるのである。それも3ヶ月後に・・・
サージャリオンは、急いで侯爵家に戻り、家令に家の修繕やアナスタシアへの贈り物の準備をさせることにしたのだが。
皇帝からの使いの者が言うには、式も神前で違う以外はこじんまりと行うと言うし。ドレスも全ての必要品は、皇女が持参すると言う。侯爵家に於いては、無用な出品も必要がないとのお達しだった。
「旦那様、せめて寝室と奥方様の自室だけは改装なさせては?」
と、家令マチフスの助言を行うのみであった。(もちろん、侯爵家だけあるので、作りは豪華であるが、古い屋敷でもあるのでそうすることとした)
しかし、屋敷の者たちも皆、口を揃えて不思議がった。
「普通、迎える側の家は、降嫁する方の身の回りのものを整えて迎えるのが普通なですが・・・?」
「皇女様とのご結婚なのに、どうしてかしら?」
「きっと、皇女様には何か秘密があるんだよ!」
しかし、サージャリオンは、それを嗜めるように使用人達に徹底をさせた。
サージャリオン自体、あまり噂話は好きではなかったこともある。自身も、『英雄』と言われることは好きではなかったこともあるのだが。
そんな中、後一月で婚礼が行われると言うある日のこと。サージャリオンは、城に呼ばれ初めて皇女にお茶に誘われた。やっと周囲でも降嫁の話が物珍しくなくなった頃のことである。
薔薇の咲き誇る城の庭にテーブルが用意されて、2人は初めてお互いの顔を間近で見る事となったのである。
「ジェットラム侯爵・・・いえ、これからはサージャリオン様ですわね。」
皇女の金糸の髪は、今日も美しく結い上げられている。白い肌は白磁の様で、触れてしまったら壊れてしまいそうだ。
「皇女様にはおかれましては、ご機嫌麗しく・・・」
「ああ、私の事はアナスタシア・・・シアとお呼びください。」
「では、シア様。私の事もサージャとお呼び下さい。」
「あら、そうね。ではサージャ、陛下の事、怒っておられます?」
皇女は、そうニッコリと笑いながらカップに入ったお茶を口に入れた。私の事ではなく、陛下の事と。
「私如きに少々お戯れが過ぎるかと。」
サージャは、実直にそう語った。
「あら、『英雄』と言われる割には控えめなのですね?」
ふふふっと、皇女は笑った。それを見て、サージャはため息をつく。
「私は本来貴方様や陛下を守るための者。この様な席に呼ばれる様な者ではありません」
「なぜ?私、貴方に嫁ぎますのに?それとも、顔を見ずとも結婚してもよろしかったのでしょうか?」
「いえ、ご尊顔を・・・」
「あなた、本当に昔から堅物です事。私は子供の頃からあなたの事を知っているのに。サージャ、あなたは私の事を全く知らないのですね?」
シアは、表情一つ変えずにサージャにお茶を飲む様に勧めた。仕方ないとばかりに、サージャは、お茶を口にする。
それを見ながらシアは、話始める。
「一つ聴きたかったのです。陛下の戯れと知っていながら、私との結婚を承諾してくださったのは、何故ですの?」
「それは・・・」
不自然な間合い。
皇女は、ふふふと笑いながら細い指を組み、その美しい顔を乗せた。
「いいのですわ。言いたくない事を答えなくても。」
皇女は、そういうと、少し楽しそうな表情をした。
「私、生まれて初めてですの。こんなに心が動くのは。」
「サージャ、一月後が楽しみですね」
そういうと、皇女は席を立った。
しかし、警備をしていた訳で、気軽に話をすることなどはない。(もっとも、皇帝は、いつも気軽に声をかけてくれるのだが・・・)
金のアナスタシアと呼ばれる程、見た目は美しく履かない皇女が、降嫁してくるのである。それも3ヶ月後に・・・
サージャリオンは、急いで侯爵家に戻り、家令に家の修繕やアナスタシアへの贈り物の準備をさせることにしたのだが。
皇帝からの使いの者が言うには、式も神前で違う以外はこじんまりと行うと言うし。ドレスも全ての必要品は、皇女が持参すると言う。侯爵家に於いては、無用な出品も必要がないとのお達しだった。
「旦那様、せめて寝室と奥方様の自室だけは改装なさせては?」
と、家令マチフスの助言を行うのみであった。(もちろん、侯爵家だけあるので、作りは豪華であるが、古い屋敷でもあるのでそうすることとした)
しかし、屋敷の者たちも皆、口を揃えて不思議がった。
「普通、迎える側の家は、降嫁する方の身の回りのものを整えて迎えるのが普通なですが・・・?」
「皇女様とのご結婚なのに、どうしてかしら?」
「きっと、皇女様には何か秘密があるんだよ!」
しかし、サージャリオンは、それを嗜めるように使用人達に徹底をさせた。
サージャリオン自体、あまり噂話は好きではなかったこともある。自身も、『英雄』と言われることは好きではなかったこともあるのだが。
そんな中、後一月で婚礼が行われると言うある日のこと。サージャリオンは、城に呼ばれ初めて皇女にお茶に誘われた。やっと周囲でも降嫁の話が物珍しくなくなった頃のことである。
薔薇の咲き誇る城の庭にテーブルが用意されて、2人は初めてお互いの顔を間近で見る事となったのである。
「ジェットラム侯爵・・・いえ、これからはサージャリオン様ですわね。」
皇女の金糸の髪は、今日も美しく結い上げられている。白い肌は白磁の様で、触れてしまったら壊れてしまいそうだ。
「皇女様にはおかれましては、ご機嫌麗しく・・・」
「ああ、私の事はアナスタシア・・・シアとお呼びください。」
「では、シア様。私の事もサージャとお呼び下さい。」
「あら、そうね。ではサージャ、陛下の事、怒っておられます?」
皇女は、そうニッコリと笑いながらカップに入ったお茶を口に入れた。私の事ではなく、陛下の事と。
「私如きに少々お戯れが過ぎるかと。」
サージャは、実直にそう語った。
「あら、『英雄』と言われる割には控えめなのですね?」
ふふふっと、皇女は笑った。それを見て、サージャはため息をつく。
「私は本来貴方様や陛下を守るための者。この様な席に呼ばれる様な者ではありません」
「なぜ?私、貴方に嫁ぎますのに?それとも、顔を見ずとも結婚してもよろしかったのでしょうか?」
「いえ、ご尊顔を・・・」
「あなた、本当に昔から堅物です事。私は子供の頃からあなたの事を知っているのに。サージャ、あなたは私の事を全く知らないのですね?」
シアは、表情一つ変えずにサージャにお茶を飲む様に勧めた。仕方ないとばかりに、サージャは、お茶を口にする。
それを見ながらシアは、話始める。
「一つ聴きたかったのです。陛下の戯れと知っていながら、私との結婚を承諾してくださったのは、何故ですの?」
「それは・・・」
不自然な間合い。
皇女は、ふふふと笑いながら細い指を組み、その美しい顔を乗せた。
「いいのですわ。言いたくない事を答えなくても。」
皇女は、そういうと、少し楽しそうな表情をした。
「私、生まれて初めてですの。こんなに心が動くのは。」
「サージャ、一月後が楽しみですね」
そういうと、皇女は席を立った。
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