褒美は変わった皇女様

よしき

文字の大きさ
上 下
3 / 21

皇女と皇帝

しおりを挟む
 さて、等の皇女アナスタシアはと言うと、ハルベルトから降嫁の話を聞いたのは、サージャリオンよりも1時間前の話である。
 金糸の様な美しい髪を、帝国風に編み込んだ髪型はとても彼女にあっている。瞳の色はハルベルトと同じ空色の瞳である。
「シアよ、この話どうか?」
 「父上は、面白がっておられますようで。」
「まあ、そう言うな。お前も既に19歳だ。に行かなくてはなるまい。しかも、嫁ぎ先はあの『英雄殿』だ。悪くはあるまい」
 シア(皇女)は、クスクスと笑った。
シアは皇太子との2人兄妹で、ハルベルトは、亡き皇后によく似た娘をとても可愛がっていた。性格としては・・・ハルベルトの様に突拍子もない思いつきをする訳ではないが、2人はとても仲が良かった。
「父上は、本当に面白い事をされるのがお好きなのですね。よろしいでしょう、ジェットラム侯爵に異論がなければ、私も降嫁いたします。」
「侯爵には、異論などないに決まっているだろう。何せシアは帝国1の『英雄』にふさわしいのだから」
 ハルベルトは、胸をそらしてそういった。本気でそう思っているのだろう。
 それを見て、皇女はクスクスと笑った。
「陛下、嫁ぐ私のお願いがございます。お聞きくださいますか?」
 ハルベルトは、
「もちろん」
と、大きく頷いてみせる。
 シアは、ニッコリと笑った。
「実は、が侯爵家に嫁ぐにあたり、盛大なお式はしたくないのでございます。」
「なぜかね?娘よ。降嫁をするとはいえど、お前は私の娘だ。盛大に祝ってやりたいのだが?」
 なんと言っても『英雄』に嫁ぐのだ。ハルベルトはそう言った。
 しかし、シアは少し曇った顔で、
「私は陛下と殿下のお見送りだけで十分でございます。これからはジェットラム侯爵家に馴染まなくてはなりませんし。それに、ジェットラム侯爵には
と、言った。その声は少し震えていたかもしれない。
 ハルベルトは、首を振って否定をした。
 「何を言う、お前ほど素晴らしい娘はおらん!ジェットラム侯爵にはその事を言わなくとも、お前を幸せにしてくれるはず。私が言うのもなんだが、あそこまで浮名を流さず手柄を立てた男はそうはおらん!もし、お前の事を大切にしないと言うのであれば、私が罰してくれる!」
 皇女は、ふわりと笑うと父親である皇帝に傅いた。
 「陛下、そのお言葉で十分にございます。」
「シアよ、いつでも城に遊びに帰っておいで。私の美しい娘よ・・・」
 こうして、シアは降嫁を承諾したのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...