蜜色の瞳のシェヘラ

よしき

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夕食の後で

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  次にアレックスが目覚めたのは、シェヘラがお粥グリュッチェを持って部屋に入って来た時だった。
  お粥グリュッチェの香りがアレックスの鼻をくすぐり、無性に腹が減る。
(俺はどれだけ眠っていたんだ!?)
頭の中で、アレックスはふと思うのだが。一度刺激された空腹は、そんな理性的な考えを上回る。そして、体を起こそうとするとアレックスは、左肩の激痛と激しい目眩に襲われた。
  「あまり無理をするな」
  甘い・・・花の様な香り・・・
シェヘラは、アレックスを抱きかかえると、ベッドの上に座らせた。
  そしてベッドの横に椅子を置くと、お粥グリュッチェを匙にすくってアレックスの口元に差し出す。その指先は細く白かった。
  アレックスは、先ほどからしている香りと、その指先になんとも言えない欲望を感じた。体の芯が火照る様な・・・本能的な、何かであった。
  「早く食べて。」
  シェヘラは、そんなことにはお構いなく、素っ気なくアレックスにそう命じる。アレックスは言われるまま匙を口にした。
「美味い・・・」
 アレックスは、ペロリとお粥グリュッチェを平らげた。
「そんだけの元気があるのなら、傷の回復も早いだろう」
  シェヘラは、空になった器を部屋の机の上に置いてから、再び椅子へと座った。
  アレックスは、腹が膨れて少し余裕ができた様で。改めてシェヘラを見てみた。豊かで艶のある黒髪に、牛乳ミルヒの様な白い肌。唇は小ぶりで形もよく、ルージュをさしているように紅い。粗末な服で隠されてはいるが、胸元はふっくらとしている。そして何より、蜜色の・・・猫の様に感情の分からない美しい双眸・・・
(これ程の美しい娘を、俺は知らない・・・)   
  アレックスは、甘い香りを嗅ぎながらそう思った。
  そんなアレックスの考えを、知ってか知らずしてか。シェヘラが突然ベッドの上に、アレックスの膝の上にまたがって来たのだ。
「!?」
  流石にアレックスは、驚いた。
 しかし、等のシェヘラは、表情を1つも変えることなくアレックスの顎を手で触れた。
「この数日、私の精気を少し分けてやった。そうでなければ、お前はすでに死んでいた。」
  そう言うとシェヘラは、ゆっくりと顔をアレックスに近づける。
「あんたの体は、まだ不安定だ。また少しだけ・・・私の精気をわけてやるから、そのまま動くな・・・

  シェヘラは、軽くアレックスに口づけをした。
「あんたは、『私の口づけ』を得た男。だから、死ぬ事は許されない・・・」
  そう言うと、シェヘラは再びアレックスに口づけをした。
  今度は、優しく唇と唇が重なり合い、触れ合う部分が熱を帯びる。そして柔らかなシェヘラの唇が、アレックスの唇を包む。
  甘い香り・・・シェヘラの甘い花の様な香りが、さらにアレックスを甘美な世界に誘う。次第にアレックスは、夢中でシェヘラの柔らかな唇を何度も何度も求めた。
  そして、ゆっくりと。シェヘラの舌がアレックスの中に入って来た。アレックスは、それを自分の舌に絡める。何とも言えない生温く、ヌルヌルとした感触。次第に2人は深いキスでお互いを感じ合う。
「ふっ、うふっ、うん・・・」
  声にならない声がしばらく続く。
  そのうち、アレックスの右手が無意識の内にシェヘラの胸へと伸びた。
  それは、服の上からは想像もできないほど、たわわに実る果物の様であった。アレックスは、思わずその果実を優しく掴んだ。シェヘラの体がピクンと反応する。アレックスの中の理性は崩壊寸前にまでなっていた。
  しかし、次の瞬間。アレックスの左肩に激痛が走った。
「あぁっ!!」
  アレックスはうめきながら、ベッドに沈んだ。そして体を丸めながら、その痛みに耐える。その姿を少し息を弾ませたシェヘラが静かに見つめていた。
「今日は、ここまでだ」
  そういうと、踵を返して部屋の外へと出ていってしまった。
  その後ろ姿を写しながら、アレックスもまた意識が遠のいていった。
  
  
  


  
  
  






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