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お姉様、疲労にてクタクタ。
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「本日はお招きいただきありがとうございます。」
晩餐会は高級料理店を貸し切って行われた。
「急なお誘いで申し訳ありません、侯爵。無礼をお詫び致します。」
「いえ、夫人にまたお会い出来て光栄です。」
ジェイダ夫人と父の談笑で始まった餐会。
違和感しかないこの状況で、年長二人は何事もないように話している。
なんでもいいけど、私は疲れたから黙々と食事をさせてもらうわ。
こっちは何もかも疲れてやってられない気分なのよ。
エリーゼも気まずいのか会話に愛想笑いをしているだけ。
意外と空気は読めるのよね、この子。
「それで、昨日のことですけれど、」
「ああ、うちの娘がご迷惑をおかけして申し訳ございません。何やら戦おうとしたらしいですが、付け焼き刃な魔法で何が出来るというのか……。身の程知らずに出しゃばるような娘に育てた覚えはなかったのですが、いやはや大変申し訳ございません。
賠償金の請求もしていただいて構いません。」
「リビア嬢は炎の使い手でいらっしゃいますが、そのことについて侯爵はいかが思われていますの?」
「これもまたお恥ずかしいお話ですが、我々としてもなぜリビアが火属性として産まれたのか不思議でなりません。出自が不正確でいい嫁ぎ先が見つかるといいのですが。」
「リビア嬢は元々のご婚約者様と婚約を破棄されたという事でしたね。」
「ええ。まあその件については向こう側にも難点がありましたから、破棄して良かったと思っています。」
「そう。ならば、リビア嬢……私の横へ来ていただけるかしら。」
「え、は、はい。ジェイダ夫人。」
私は突然呼ばれ、緊張しながらジェイダ夫人の元へ向かう。
「改めてお礼を言うのが遅れてごめんなさい。昨日は貴女に命を救われたわ。本当にありがとう。」
「ジェイダ夫人……いえ、夫人がご無事でよかったですわ。」
お互いに見つめ合い微笑み合う。
そしてジェイダ夫人は再びキリッとした瞳でお父様を見据え、手にしていたフォークとナイフを皿にカチャッと置き、
「今回貴方たちを呼んだ目的は、フェルディナント侯爵家でリビア嬢が不当な扱いを受けているという噂の真偽を確かめるためでした。
侯爵様、今の貴方のお言葉の数々でその答えがよく分かりましたわ。」
「ど、どういうことでしょう。」
「貴方はリビア嬢のことを全く分かっていらっしゃいのね。
この国の爵位持ちの親が子どもの魔力量を知らないだなんてこと、ありえないのではなくて?」
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