上 下
25 / 80

お姉様、堅物に求婚される。

しおりを挟む
 


王女殿下に許可を頂き、ギルバートと共に庭園へ移動する。


「迷ってしまいそうな庭園ですわね。」

「そうだろうか。」

「きっと、大公殿下は幼い頃からよく来られていたからそう思われないだけですわ。初めてここに来た者はどこから来たのか分からなくなってしまいますわ。」


それにしても綺麗な花々が似合わない男ね。

貴方には断崖絶壁の岩がお似合いよ。



「それで、こんな素敵な場所でわたくしにお話とはなんでしょうか。」


どうせ、誕生日会でのパートナーの依頼でしょう?

貴方も私もお互いに嫌々パートナーになるんだから早く話を済ませたいわ。




「私は、貴方に求婚する。」


はい?





「……今なんと?

申し訳ございません。わたくし、最近耳が悪くなったようでして」



「貴方に求婚状を送りたいと言っているのだ。」


まさかお父様が懲りずに……?

前の人生でお父様がアルフォンスとの婚約破棄後に選んだのもこの男だったから驚きはしないけれど、でもこんな急なタイミング求婚してくる人がいるなんて聞いたことがないものだから驚いてしまったじゃない。

しかも私達仕事中なのよ。やっぱり非常識だわこの男。




「それは私の父からなにか殿下にお話があっての事ですか?」


「いや、違うが。」



……なんですって?



「お隠しにならなくてもよろしいのです。私も父の考えに薄々気付いておりましたの。」


「フェルディナント侯爵が貴方と私の婚約を望まれていたのは存じていなかった。だが、これは私からの提案によるものだ。」


「……ですが殿下は、わたくしに恋心などお持ちではないですよね?」


「………そういうわけではない。貴女の真っ直ぐな性格と魔力の強さに惹かれたのだ。」



今絶対に変な間がありましたわよ。

それにその理由って、私にではなく私の魔力に惚れたってことになりますが。

本当の理由がなんであれ、今世でも失礼極まりない男だわ。



「リビア嬢は王女殿下の侍女に選ばれたばかりなので、すぐに結婚とは言わない。どうだろうか。」


どうだろうかと言われても、普通の令嬢ならドン引きものな無骨な告白よ。



「折角のお話ですが、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか。かなり急なお話ですし。」

「分かった。急にこんなことを言って悪かったな。」



……悪いと思っているなら言わないでくださるかしら。



  
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

王太子殿下の小夜曲

緑谷めい
恋愛
 私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?

婚約破棄のお返しはお礼の手紙で

ルー
恋愛
十五歳の時から婚約していた婚約者の隣国の王子パトリクスに謂れのない罪で突然婚約破棄されてしまったレイナ(侯爵令嬢)は後日国に戻った後パトリクスにあててえ手紙を書く。 その手紙を読んだ王子は酷く後悔することになる。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

姉が私の婚約者と仲良くしていて、婚約者の方にまでお邪魔虫のようにされていましたが、全員が勘違いしていたようです

珠宮さくら
恋愛
オーガスタ・プレストンは、婚約者している子息が自分の姉とばかり仲良くしているのにイライラしていた。 だが、それはお互い様となっていて、婚約者も、姉も、それぞれがイライラしていたり、邪魔だと思っていた。 そこにとんでもない勘違いが起こっているとは思いもしなかった。

処理中です...