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しおりを挟むそれは、生誕祭の宴での出来事だった。
「小公爵様、私と踊っていただけますか?」
麗しい一人の令嬢がカルディ小公爵の前に出て、可憐な声でダンスを申し込んだのだ。
「シュリー侯爵令嬢が小公爵様にダンスの申し込みを……!?」
「どういうことだ!?」
「た、大変なことになるぞ!」
シュリー侯爵令嬢は侯爵家の一人娘で花よ蝶よと侯爵家で大事に育てられたこの帝国で一番の社交界の華だ。
煌めく絹のような銀髪をサラサラとなびかせ、帝国一と謳われる美貌に誰もが見惚れる彼女は、皇家に嫁ぐのではと噂もあった彼女が小公爵にダンスを申し込む……つまり、好意を伝えたということはつまりどういうことなのか。
その場にいた貴族たちは大きく混乱していた。
ダンスを申し込まれた側のカルディも一体これはどういう状況なのか理解出来ずに一瞬躊躇ったが我に返り、一先ず目の前の令嬢に恥をかかせるわけにはいかないとその手をとった。
するとシュリーはカルディに微笑みを向け、ダンスホールへと誘った。
ダンスが始まり、
皆が若き二人の男女の事の次第を緊迫した面持ちで見守った。
「何故、私のような者をダンスに誘われたのですか?」
カルディはシュリーにしか聞こえない声で問いかけたが、シュリーはいたずらに微笑んだ。
「そんな恥ずかしいことを私に言わせるのですか?」
「いえ、」
「そのままの意味と受け取っていただいて結構ですわ。」
そう言って優雅に舞う妖精のようなシュリーにカルディは、これは夢なのだろうかと今起きている現実を疑ってしまった。
貴族令息の誰しもが一度は彼女のパートナーの座を夢見た。
実は小公爵であるカルディもその内の一人だった。
だが、憧れはあくまで憧れ。
伴侶の寿命を奪ってしまう、呪いともいえるものを背負った自分では到底シュリーに見合わないと憧れたその時からシュリーのパートナーの座を望んではいなかった。
だがこの日、いつものように令嬢たちから一線を置かれ、そしていつものようにダンスの時間を暇に過ごす予定だったというのに。
この蝶は一何を思って自分のところへやって来たのだとカルディは内心戸惑いながらシュリーをエスコートしたのだった。
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