ステラ皇女と初恋の捕虜様

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隣国である、イスター王国。


元々友好国であったが、六年前に抗争が起きてからは度々戦争が起きており、今回の遠征隊もイスター王国との国境で正面衝突を起こしたという。




「我が帝国に勝利をもたらした優秀な騎士らを誇りに思う。」


「帝国に栄光と繁栄を。」


皇帝を前に膝をつき勝利を報告するエリクセン小公爵。



だが、ステラの目には今日の帝都の主人公であるエリクセンではなく、その後ろで捕虜として捉えられた一人の男しか目に入らなかった。




「アスラン……！」


数年振りに目にした大陸一の皇女が愛する男は、ボロボロの服を着せられ鎖で繋がれていた。


それでも、ステラが心を惹かれた意思の強い漆黒の瞳はその輝きは失っていなかった。





「皇帝陛下、敵国の将を捕らえてまいりました。」


「おお、よくやった！

若き大将の大きな勝利を記念し褒美をとらせよう。欲しいものはあれば言ってみよ。」



皇帝の言葉に民達の歓声が湧いた。

エリクセンは皇女の婚約者候補1番手とあって、帝国貴族の証である色素の薄い絹肌と透けるような金髪に、それとは対照的な男らしい筋肉隆々のその体格で帝国中の女性の憧れの的の貴公子だ。

器用がよく、魔力も武術も長けたため幼い頃から貴公子達からも一目置かれる存在で、間違いなく将来の帝国を支える存在だと帝国の誰もが信じて疑わなかった。


だが、そのエリクセンも帝国の華ステラ皇女に心を寄せる一人であり、誰よりもステラを我がものにと幼き日から願っていたのだ。



「では、未来の私の婚約者の手の甲に口付けすることをお許し願います。」



エリクセンのその言葉に大衆は一際大きい歓声を上げた。


そして帰還パレードがエリクセンとステラの婚約式かのような雰囲気に変わり、大衆は帝国の誉れ高い二人の婚約を盛大な歓声で祝った。



その雰囲気に流されるままにステラは涙を堪えながら手の甲をエリクセンに差し出した。



その後、より一層大きな歓声が上がり帝都は祝福ムードに酔いしれていった。