ミニュイの祭日

月岡夜宵

文字の大きさ
上 下
5 / 21
前章 星降る夜(ニュイ・エトワレ)

みんなでステキな朝食を

しおりを挟む
「おやおや私が一番最後だったか」

 主人席に座ったのは伯爵家当主、フレデリック・ド・ベルナルド様。柔らかな物腰と知的な印象の眼鏡姿の、リュカ様の優しいお父様である。
 眼鏡を指でくいっとあげたと思えば、眉間を揉みながらフレデリック様は言う。

「本当に君たちは朝から元気だね。私にもそのパワーを分けてくれるかな」
「なにをおっしゃいますか。父上だって武官が顔負けする丈夫さをお持ちでしょう?」
「はは、私なんて一族の中では貧相な方だよ。なんたって我が頑強のベアズリーは四日間の籠城戦で勝利を収めて興った家なのだから」

 頑強のベアズリーとはベルナルド家を表す呼び名である。
 なんでも、古くは熊の家紋を王家より頂いたご先祖の武勇伝から始まるものである。
 今となってはベルナルドよりベアズリーの方が有名で、人によっては家名をこっちに間違える方もおられる。間違い方もベアトリスよりはましだが。

「まあ、お祖父様など絵に書いたような脳筋……げふん、実直な方でしたものね」

 リュカ様が亡くなられたおじい様を思い出すとフレデリック様は苦い顔をしながらコーヒーをすする。
 昔話として耳にした程度だが、フレデリック様は婿養子に来るにあたりおじい様に鍛えられたとか。その稽古からよく逃げていた、なんてこともメイド長が語っていた。僕には真面目なフレデリック様が逃げるほどの稽古というのがわからない。一体どんな修行をしたんだろうか?

「さて、そろそろ朝食にしようか。冷める前に食べないとコック長がやきもきしてしまうからね」

 そういえば食堂に屋敷の一族全員が揃っていた。慌ててリュカ様の横に僕も座る。おこぼれを分けてもらえる立場ではないはずだがなぜか一緒に食事をとることが許されている。僕はありがたくメイドのお姉さんに食事を取り分けてもらう。

 いただきますと食事に手を付ける。トーストした食パンにバターとジャムをたっぷりと塗る。大口を開けて 思わずほころんでしまう。手製のマーマレードジャムは甘すぎずどちらかというと酸味が強め。それが既製品のものより自然の味わいを残していて食べやすいのだ。パンは外カリカリ中もちもちでたまらない。うう、控えめにいっても最高。これだから一緒に食べるのを辞退できないんだよなあと内心思った。

「うまそうに食ってるとこ悪いが今日の予定は?」
「……は! ほ、えっと……ええと本日の予定は、……」

 目印にしておいたスピンで手帳を開く。中の予定を音読すればニヤニヤとしたリュカ様の顔が真横にあった。

「ふーん。まだメモ見なきゃだめか。俺は頭に入ってるけどな?」
「んぐ!?」

 ここでもまだまだだなと指摘されてしまう。

「気にすることないよルナくん。君は君のペースで成長しなさい」
「はい……」

 フレデリック様が援護してくれる。やっぱりお優しい人だ。

「ま、がんばれ。期待してるぞ」
「ガンバリマス」

 ずずずと吸った紅茶は茶葉が染み出し過ぎて随分濃いものになってしまった。せっかくおいしい茶葉を用意してもらったのに僕ってやつはダメダメだな……、ああ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

調教生活

ri.k
BL
ドMの人が送る調教生活。アブノーマルを詰め込んだ作品。 ※過激な表現あり。(鞭打ち・蝋燭・失禁など) 初登校なので至らない部分もありますが暖かいめで見てくれると嬉しいです。🙇‍♀️

処理中です...