愛の証明

月岡夜宵

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1◇魔女の呪い◇

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 本当の絶望を、まさかこの歳で経験することになるなんて思わなかった。俺は自分の人生がこれまでいかに恵まれていたのかを実感した。


 俺の転機には【魔女】なる存在が関わってくる。
 魔女とは悪戯に災厄をもたらす困った存在である。小者と評するには、その呪術は効果が大きい。基本的に性質が元々悪であることと、人間達に迫害された歴史から、人間というものを憎んでいる。
 その名前のように、魔女は繁殖出来ない。だから時折、人間の女児を拐っては闇の国で育てて新たな魔女としての教育を施す。そうやって彼女達は世界にのさばっている。

 今の世も――。


 なんてこと、おとぎ話だと思っていた。
 目の前、黒ずくめの変わった衣装の〝それ〟と遭遇するまでは。

「いひひひひっ、こりゃ随分上玉だねぇ」

 醜悪な外見の女だと思った。俺の肌を撫でる相手は、歪に曲がった大きな鼻が印象的な老婆。見た目は普通の老婆。だが、それも目の前で負の奇跡まほうが行使されるまでの話だった。

 俺の体を縛り付ける無数の茨。肌に食い込んで、棘が穴を穿つ。出血よりなにより、その痛みから逃れたい一心だった。だが、もがけばもがくほど、地面から出現した茨は体を捕らえようと締まってくる。

「いけすかないねぇ。どうして人間ってのは、時に魔女より悪魔らしい性質を兼ね備えているってのに、綺麗な面で生まれてくるのか。しかも善良なる何物をも祝福する神なんて存在に愛されているのか。謎であたしゃたまらないね」

 その魔女は独りごちた。そんな疑問、俺にはどうでも良かった。俺は足掻きたい気分のまま、魔女を睨んだ。

「なんだいその目は。嫌いだねぇ。あたし達を闇の国に追いやった連中そっくりな目だよ。決めた。お前にはとびっきりの贈り物プレゼントをやろえじゃないか、えぇ」

 反抗的な目付き。それがこの後の俺の人生を狂わせることになるなんてこの時は思いもしなかった。

「それじゃあいくよ。アブラカタブラ、ハナブラム、ランダ、トランタ、ギギリャッタ!!」

 俺の周囲を妖しい紫の光がくるくると回ったかと思えば、目に毒々しい光は俺の体内に入り込んできた。激しい異物感に吐き気が込み上げる。体内を好き勝手暴れまわるそいつらは、やがて静まり、そして――。


 そして俺は老爺になってしまったんだ。


 魔女に掛けられたそれ。老婆は続けて言った。

「う~ん、いいデキだよ。どっからどうみてもジジイとかいう奴だねぇ。自慢の呪いの中でも一番強力なのを付与してやったからね、せいぜい苦しむこった」

 そして魔女なる存在は突然に消えた。

 
 残された俺はその後、絶望することになったのだった。
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