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『その体温を分けて《尚紀の視点》』
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(うわああああああぁぁぁぁっ!? ど、どどど、どうしよ!!)
ベッドの上。枕に頭を押し付けて、脚をバタバタさせる。俺……俺…………っ。
「やっちまったあああーっ」
紫君相手に完全にやらかした。――野沢尚紀、死す。完。って、そう簡単に終わってたまるか。
(はぁぁぁ)
にしても、すっかりブチまけて逆に腹の中はスッキリ。頭は、打ち明けてしまったストレートな告白のせいでヒート寸前。混乱していたとはいえ、後から思い出すと恥ずかしい。あんな告白、するつもりもなかったのに。
ガキかよ、俺。
大好き過ぎて、死んでしまいそう。思い続けることに耐えられず、壊れそうになる、心。持て余した「すき」の感情は募って募って、でも行き場がない。そんな体の中にたまっていた感情はすべて紫君へぶつけてしまった。彼はどんな気持ちで受け止めたのだろうか。
耳に残る声。
『尚紀、怖いなら、今は何も言わないよ。ただ、もしよかったら……今言ったこと、しないか。ふたりっきりで。あのホテルで待ってる。時間は――また連絡するな』
今もまだ返事を聞くのは怖い。彼から突き放されたらと思うと、余計に。それでもあんなことを言われたら期待してしまうじゃないか。紫君のばか。振られるのも怖いけど、淡い希望が潰える時ほど、痛いことはないというのに。
(でも、もしかして。期待、してもいいのかな。望みに縋っても、俺は許されるのだろうか)
だって、シないかって……。
(いやいやいや、ただの聞き間違いかも! あるいは俺がなにかと勘違いしてる可能性……だ……って)
やばい情緒不安定過ぎる。考え過ぎだと思うとそれすら悲しい。枕にぎゅうぎゅうと顔を押し付けても泪は止まらない。
ピローン♪
チャットだ。メッセージの送信主を見るとそこには紫君の文字。がばっと体を起こして恐る恐る内容を開く。
紫:今夜9時、ホテルで待ってる。必ず来いよ。独り寝強制されたら泣くからな!
「ふっ、ふふ……。紫君、泣いちゃうってさ」
これはもうダメかもしれない。
彼から直接別れを切り出されるまでは、この夢の中にいたい。
深呼吸。ノブに手をかける。扉をおずおずと開け、中の人を探す。ちょうどドライヤーの音が聞こえる。洗面台へと向かえば、優しく微笑む彼に出迎えられた。
「会いたかったよ、尚紀」
乾きかけの髪。腰にバスタオルをまいただけの格好でハグされる。彼の見事な金髪からはホテルのシャンプーの匂いがした。それにちょっと残念な気持ちになる。いつもの彼の香りとは違うから。嗅ぎなれた体臭が恋しくて首元に鼻先を近づける。すんすんと匂いをかいでいたら、目元を赤らめた紫君と目が合う。
「ずいぶん大胆だね」
(ふわぁっ!? しまった……)
つい耐えきれず、本能のまま体臭を嗅ぐなんて行為に出てしまった。俺の理性さんどこ行った!!
紫君は目を細めて、俺の髪をすくような手の動きをする。
あ、だめ。頭なでられるのきもちいい。それに、あの日のこと思い出して恥ずかしくなる。
羞恥から顔を下に向けてしまう。俺の上からフッと格好いい吐息が降りてくる。
「可愛い尚紀も好きだよ。時計塔の上ではすごく素直だったよね? ね、もっと甘えて。俺の知らない尚紀をもっと見せて」
(ひぃいいいいいいいいンンン、何ですか!? いつだれが紫君を、こんな官能ボイスであまあまな台詞を囁く色男に仕立てたんですか!? 俺の紫君になにがあ)
って、俺のじゃないよな。履き違えるな、俺。
「ごめん。ちょっと動揺した。俺もシャワー浴び、」
「そのままでいい」
「え? でも汗臭いし」
「そうでもない。せっかくだし天然の匂いが知りたいな」
「ふぎゃ!?」
「あーやばい。あんまり可愛い声で鳴かれると俺の息子が元気になるぞ。最初はゆっくり楽しみたいから、ちょっと抑えてくれ」
「あ、……うん」
納得した、と頷くと、ハグをしていた紫君に促され寝室へ。
「今日は俺もシたいようにするから。尚紀も要望があったら正直に言うこと。わかった?」
「わかった。……え?」
「ぷ。分かってないじゃん。だめだぞぉ、内容聞く前に頷いたら。そんなことしたらケダモノに襲われることになるからな」
「ケダモノって。俺を襲うようなモノ好きいないよ」
「いーや。それがいるんだな。ここに」
とても、眼の前の彼にそんなイメージは抱けない。だってあまりにも眩しい。いつだって君は俺から見たら、光を集めたような存在。その光があまりに綺麗で、俺は目がくらむ。容易に手なんか伸ばせないほどに。
ちゅ。ぴちゃ。ちゅるる。
何の音かと手元を見ると、紫君が、俺の指を、舐めている!? は、何のプレイですか!
「いや、あの、紫君! そんなことしなくていいよ。むしろ俺がするから!? え。俺がするの!?」
「あ~~、おかしな尚紀もくせになりそう。もっと困らせたいから、この手はしばらく俺のキャンディーだね」
「ひゃんでえ!?」
「あー、腰にクる。指まで性感帯なの? ほかの触りたくなっちゃうなぁ」とかいうくせに、紫君は俺の指と指の間を舐めたり、口に入れたりして弄んでいる。そんなことされたら俺の方だってたまらないのに。
いい顔だね、なんていわないで。そんな褒めるみたいなニュアンスで。
「ん。肩の力抜けてきたね。そろそろ愛撫始めてもいいかな」
「一つおねだりしてもいい?」
「何?」
――この前の下着の白いバージョンがあったら眼の前で穿いてみせて。
「そんなことでいいの?」
「ああ! え、まさか本当にやってくれるの!?」
「やって……?」
「言い忘れた。ついでに俺の前でその格好で一人えっちしてね」
つまり、ええとその、紫君が見てる前で紫君を想って、恥ずかしい格好をしながら自慰をしろ、と。
「そんなの絶対ムリだからぁ!!」
「ああもう、泣いちゃった? 引くほど気持ち悪がらせたらごめん……」
「ちがうよ。あんまりにも恥ずかしいから……俺、そんな羞恥プレイやだ」
(そんなはしたないこと)
「紫君が手伝ってくれなきゃ、やだ」
「え? それって俺も参加していいの? マジ!」
「一緒にシてくれるならやってあげてもいいよ。どうする?」
「やりますやります! 次は絶対堪能するから! うおおお、燃えてきた」
「というかなぜああいうパンツに固執するの?」
「そんなのエロ可愛いからに決まってるだろ! 分かるだろ、男なら」
紫君は手元をおざなりにしながら、白のレースやフリルの紐パンは最強だと力説する。最高に甘くてかわいいのにエロエロな所が男の股間を滾らせる、と。いや分からなくはないよ? ただそれを穿くのが男の自分だというだけで。
話の間中、ローションで冷たい指が尻の穴をまさぐっている。しゃべりながらなのに器用だ、と感心してしまう。
「じゃあパンツは俺に贈らせて。尚紀にはやっぱり白だよ。絶対純白!」
(ひぇ!?)
今でも十分恥ずかしいのに、それ以上のことを要求されている。真っ赤になった頬の熱が引かない。でも、腹の底がきゅんとしてしまった体は、実に正直者だ。
「えーっと、尚紀も期待してる? やっぱ、かわいーのな」
「えああああっ!?」
かわいい、なんて褒めそやされて。それに喜んでしまう自分も自分だが、紫君だって相当どうかと思う。そんなリップサービスが平然と言えてしまう口が嬉しい反面ちょっとだけ憎らしい。今まで抱いてきた相手と比較してしまって、胸中に寂しさがこみ上げる。
心の中まで見透かしたわけではないだろうが、紫君は俺に誠意をみせる。
「あの時は間違ってた。傷つけて、乱暴にしてごめん。今度こそはとびきり良く抱くから だから……だから、抱かせてほしい」
それは懇願だった。俺は迷わずどうぞと、おずおずと自分を差し出した。勇気を出して、脚を広げ、奥の奥まで見えてしまいそうなぐらい、卑猥なポーズをとって。そうして紫君を誘う。
「の、残したら許さないから。食べるなら思い一つ残さず、奪ってくれ」
「おう。一思いに食べる。がっつくから覚悟しろよ。じゃ、尚紀のセカンドバージン、貰うな」
もう一度処女を、なんて、その意味を捉えかねた。だが分かった。彼はまるで処女のように俺を抱いてくれていたのだ。そういう気持ちで大切に扱っていたのかと、嬉しくなかった。
「あっ」
体を重ねた瞬間、これだと思った。俺の足りなかったピースが埋まるように。待ちに待った刺激に感動する。ハマった時には気づいたらイっていた。ぴゅゅぴゅっと小さく震えて精を吐き出す俺の陰茎。すでに満足に吐き出せないほどイかされていた証。きもちいいが止まらない。まぶたの裏には宇宙が広がっているような気がする。断続的にやってくる快楽のビッグウェーブが俺の意識をさらってしまう。
「大丈夫か!? 尚紀、尚紀、返事を!」
「あ…………うん。ちょっとトんでた、だけ。きもちよすぎて、へへ」
「勘弁してくれ。心配したぞ。ほんとに死んだらどうしようかと思った……」
「ごめんね?」
「ま、悪気がないのは分かってるから許す」
ぎゅっと手を繋がれる。それは俗にいう恋人つなぎというやつで。今日の俺はおかしい。脳内で幸福物質がドパドパ溢れている気がする。過剰摂取のし過ぎで頭がふわふわする。
「応えは今度、きちんとした形で返す。だから今はとびきり楽しんでくれ」
「うん。うん……うん!!」
やっとありのままの気持ちで君に抱かれることができた。すごくしあわせな気分だ。もう涙腺まで緩んでしまった。彼の腕の中に囚われ、その甘い拘束の心地。もはやこれ以上のしあわせなど無い気がした。初めてのセックスでは満たされなかったものが、今、ようやく満たされた。
「ううぅっ……ゆか、り、くっ……ん!!」
「なおき、……夢みたいだ」
紫君の手や体で丁寧に作り変える体。愛する存在によって、惜しみなく愛の色で染めあげられる。優しく労られ、ぐずぐずに溶けるまで撫で回される。イっても、イッても、終わらない夜。ロマンチックは明け方まで続いた。
ベッドの上。枕に頭を押し付けて、脚をバタバタさせる。俺……俺…………っ。
「やっちまったあああーっ」
紫君相手に完全にやらかした。――野沢尚紀、死す。完。って、そう簡単に終わってたまるか。
(はぁぁぁ)
にしても、すっかりブチまけて逆に腹の中はスッキリ。頭は、打ち明けてしまったストレートな告白のせいでヒート寸前。混乱していたとはいえ、後から思い出すと恥ずかしい。あんな告白、するつもりもなかったのに。
ガキかよ、俺。
大好き過ぎて、死んでしまいそう。思い続けることに耐えられず、壊れそうになる、心。持て余した「すき」の感情は募って募って、でも行き場がない。そんな体の中にたまっていた感情はすべて紫君へぶつけてしまった。彼はどんな気持ちで受け止めたのだろうか。
耳に残る声。
『尚紀、怖いなら、今は何も言わないよ。ただ、もしよかったら……今言ったこと、しないか。ふたりっきりで。あのホテルで待ってる。時間は――また連絡するな』
今もまだ返事を聞くのは怖い。彼から突き放されたらと思うと、余計に。それでもあんなことを言われたら期待してしまうじゃないか。紫君のばか。振られるのも怖いけど、淡い希望が潰える時ほど、痛いことはないというのに。
(でも、もしかして。期待、してもいいのかな。望みに縋っても、俺は許されるのだろうか)
だって、シないかって……。
(いやいやいや、ただの聞き間違いかも! あるいは俺がなにかと勘違いしてる可能性……だ……って)
やばい情緒不安定過ぎる。考え過ぎだと思うとそれすら悲しい。枕にぎゅうぎゅうと顔を押し付けても泪は止まらない。
ピローン♪
チャットだ。メッセージの送信主を見るとそこには紫君の文字。がばっと体を起こして恐る恐る内容を開く。
紫:今夜9時、ホテルで待ってる。必ず来いよ。独り寝強制されたら泣くからな!
「ふっ、ふふ……。紫君、泣いちゃうってさ」
これはもうダメかもしれない。
彼から直接別れを切り出されるまでは、この夢の中にいたい。
深呼吸。ノブに手をかける。扉をおずおずと開け、中の人を探す。ちょうどドライヤーの音が聞こえる。洗面台へと向かえば、優しく微笑む彼に出迎えられた。
「会いたかったよ、尚紀」
乾きかけの髪。腰にバスタオルをまいただけの格好でハグされる。彼の見事な金髪からはホテルのシャンプーの匂いがした。それにちょっと残念な気持ちになる。いつもの彼の香りとは違うから。嗅ぎなれた体臭が恋しくて首元に鼻先を近づける。すんすんと匂いをかいでいたら、目元を赤らめた紫君と目が合う。
「ずいぶん大胆だね」
(ふわぁっ!? しまった……)
つい耐えきれず、本能のまま体臭を嗅ぐなんて行為に出てしまった。俺の理性さんどこ行った!!
紫君は目を細めて、俺の髪をすくような手の動きをする。
あ、だめ。頭なでられるのきもちいい。それに、あの日のこと思い出して恥ずかしくなる。
羞恥から顔を下に向けてしまう。俺の上からフッと格好いい吐息が降りてくる。
「可愛い尚紀も好きだよ。時計塔の上ではすごく素直だったよね? ね、もっと甘えて。俺の知らない尚紀をもっと見せて」
(ひぃいいいいいいいいンンン、何ですか!? いつだれが紫君を、こんな官能ボイスであまあまな台詞を囁く色男に仕立てたんですか!? 俺の紫君になにがあ)
って、俺のじゃないよな。履き違えるな、俺。
「ごめん。ちょっと動揺した。俺もシャワー浴び、」
「そのままでいい」
「え? でも汗臭いし」
「そうでもない。せっかくだし天然の匂いが知りたいな」
「ふぎゃ!?」
「あーやばい。あんまり可愛い声で鳴かれると俺の息子が元気になるぞ。最初はゆっくり楽しみたいから、ちょっと抑えてくれ」
「あ、……うん」
納得した、と頷くと、ハグをしていた紫君に促され寝室へ。
「今日は俺もシたいようにするから。尚紀も要望があったら正直に言うこと。わかった?」
「わかった。……え?」
「ぷ。分かってないじゃん。だめだぞぉ、内容聞く前に頷いたら。そんなことしたらケダモノに襲われることになるからな」
「ケダモノって。俺を襲うようなモノ好きいないよ」
「いーや。それがいるんだな。ここに」
とても、眼の前の彼にそんなイメージは抱けない。だってあまりにも眩しい。いつだって君は俺から見たら、光を集めたような存在。その光があまりに綺麗で、俺は目がくらむ。容易に手なんか伸ばせないほどに。
ちゅ。ぴちゃ。ちゅるる。
何の音かと手元を見ると、紫君が、俺の指を、舐めている!? は、何のプレイですか!
「いや、あの、紫君! そんなことしなくていいよ。むしろ俺がするから!? え。俺がするの!?」
「あ~~、おかしな尚紀もくせになりそう。もっと困らせたいから、この手はしばらく俺のキャンディーだね」
「ひゃんでえ!?」
「あー、腰にクる。指まで性感帯なの? ほかの触りたくなっちゃうなぁ」とかいうくせに、紫君は俺の指と指の間を舐めたり、口に入れたりして弄んでいる。そんなことされたら俺の方だってたまらないのに。
いい顔だね、なんていわないで。そんな褒めるみたいなニュアンスで。
「ん。肩の力抜けてきたね。そろそろ愛撫始めてもいいかな」
「一つおねだりしてもいい?」
「何?」
――この前の下着の白いバージョンがあったら眼の前で穿いてみせて。
「そんなことでいいの?」
「ああ! え、まさか本当にやってくれるの!?」
「やって……?」
「言い忘れた。ついでに俺の前でその格好で一人えっちしてね」
つまり、ええとその、紫君が見てる前で紫君を想って、恥ずかしい格好をしながら自慰をしろ、と。
「そんなの絶対ムリだからぁ!!」
「ああもう、泣いちゃった? 引くほど気持ち悪がらせたらごめん……」
「ちがうよ。あんまりにも恥ずかしいから……俺、そんな羞恥プレイやだ」
(そんなはしたないこと)
「紫君が手伝ってくれなきゃ、やだ」
「え? それって俺も参加していいの? マジ!」
「一緒にシてくれるならやってあげてもいいよ。どうする?」
「やりますやります! 次は絶対堪能するから! うおおお、燃えてきた」
「というかなぜああいうパンツに固執するの?」
「そんなのエロ可愛いからに決まってるだろ! 分かるだろ、男なら」
紫君は手元をおざなりにしながら、白のレースやフリルの紐パンは最強だと力説する。最高に甘くてかわいいのにエロエロな所が男の股間を滾らせる、と。いや分からなくはないよ? ただそれを穿くのが男の自分だというだけで。
話の間中、ローションで冷たい指が尻の穴をまさぐっている。しゃべりながらなのに器用だ、と感心してしまう。
「じゃあパンツは俺に贈らせて。尚紀にはやっぱり白だよ。絶対純白!」
(ひぇ!?)
今でも十分恥ずかしいのに、それ以上のことを要求されている。真っ赤になった頬の熱が引かない。でも、腹の底がきゅんとしてしまった体は、実に正直者だ。
「えーっと、尚紀も期待してる? やっぱ、かわいーのな」
「えああああっ!?」
かわいい、なんて褒めそやされて。それに喜んでしまう自分も自分だが、紫君だって相当どうかと思う。そんなリップサービスが平然と言えてしまう口が嬉しい反面ちょっとだけ憎らしい。今まで抱いてきた相手と比較してしまって、胸中に寂しさがこみ上げる。
心の中まで見透かしたわけではないだろうが、紫君は俺に誠意をみせる。
「あの時は間違ってた。傷つけて、乱暴にしてごめん。今度こそはとびきり良く抱くから だから……だから、抱かせてほしい」
それは懇願だった。俺は迷わずどうぞと、おずおずと自分を差し出した。勇気を出して、脚を広げ、奥の奥まで見えてしまいそうなぐらい、卑猥なポーズをとって。そうして紫君を誘う。
「の、残したら許さないから。食べるなら思い一つ残さず、奪ってくれ」
「おう。一思いに食べる。がっつくから覚悟しろよ。じゃ、尚紀のセカンドバージン、貰うな」
もう一度処女を、なんて、その意味を捉えかねた。だが分かった。彼はまるで処女のように俺を抱いてくれていたのだ。そういう気持ちで大切に扱っていたのかと、嬉しくなかった。
「あっ」
体を重ねた瞬間、これだと思った。俺の足りなかったピースが埋まるように。待ちに待った刺激に感動する。ハマった時には気づいたらイっていた。ぴゅゅぴゅっと小さく震えて精を吐き出す俺の陰茎。すでに満足に吐き出せないほどイかされていた証。きもちいいが止まらない。まぶたの裏には宇宙が広がっているような気がする。断続的にやってくる快楽のビッグウェーブが俺の意識をさらってしまう。
「大丈夫か!? 尚紀、尚紀、返事を!」
「あ…………うん。ちょっとトんでた、だけ。きもちよすぎて、へへ」
「勘弁してくれ。心配したぞ。ほんとに死んだらどうしようかと思った……」
「ごめんね?」
「ま、悪気がないのは分かってるから許す」
ぎゅっと手を繋がれる。それは俗にいう恋人つなぎというやつで。今日の俺はおかしい。脳内で幸福物質がドパドパ溢れている気がする。過剰摂取のし過ぎで頭がふわふわする。
「応えは今度、きちんとした形で返す。だから今はとびきり楽しんでくれ」
「うん。うん……うん!!」
やっとありのままの気持ちで君に抱かれることができた。すごくしあわせな気分だ。もう涙腺まで緩んでしまった。彼の腕の中に囚われ、その甘い拘束の心地。もはやこれ以上のしあわせなど無い気がした。初めてのセックスでは満たされなかったものが、今、ようやく満たされた。
「ううぅっ……ゆか、り、くっ……ん!!」
「なおき、……夢みたいだ」
紫君の手や体で丁寧に作り変える体。愛する存在によって、惜しみなく愛の色で染めあげられる。優しく労られ、ぐずぐずに溶けるまで撫で回される。イっても、イッても、終わらない夜。ロマンチックは明け方まで続いた。
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Twitter↓
@rurunovel
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