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第四章 戻ってきた日常と甘い日々

第二十五話 ♡

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「ん……ふぅ……」

 いつも通りの甘いキス。だけど、部屋が暗いせいで神経が研ぎ澄まされているのか、いつもよりもリヒトさんの柔らかい唇の感触がより伝わってきた。

(どうしよう。キスだけで気持ち良いだなんて。私、本当にどうかしちゃったのかな……)

 お腹がキュン……と終始疼くので内股気味に足を小さく擦り合わせてみると、先程よりもアソコが濡れているような気がした。キスだけでもとっても気持ちが良い――けれど、何か物足りない気がする。

(私には何が足りないのか分からないけれど、リヒトさんなら分かるのかな?)

 そんな事を思いながら彼とのキスを堪能していると、頬に添えられた手がするすると肌を這うのを感じる。何をされるのだろうと少し身構えていると、一度頬から髪をかける為に耳へ移動し、そのまま首筋にゆっくりと手を這わせていった。

「……っ」

 擽ったい――そう思った私はリヒトさんの手を掴んだ。だが、上手いこと指を交差させるように彼にガッチリと手を握られてしまい、顔の横に押し付けられる。

「捕まえた」
「リヒトさん、擽ったいです――ひゃっ」

 リヒトさんは私の言葉を無視して反対の手で首筋を撫でてきたので、私は首筋を撫でる手を止めようと手を上げた。だが、彼の手が首筋から鎖骨に移動したのを感じたので、私はピタリと手を止める。

(え? 待って、そこは――!!)

「ちょ……ちょっと待って下さい!」
「どうした?」
「そ、そこは胸……です」

 服越しに胸の辺りを触ろうとしてきたので私は恥ずかしそうに言うと、リヒトさんは少し間を開けた後にようやく口を開いた。

「……怖いか?」
「こ、怖くはないですけど」

 嘘だ。本当はちょっぴり怖い。でも、断ったらリヒトさんが悲しそうな顔をするような気がしたから、ほんの少しだけ強がってみただけだ。

 私は気分を落ち着かせる為に静かに深呼吸をする。

(リヒトさんを信用しているから怖い事はされない。きっと大丈夫よ。だって、これは身体の火照りを鎮める為のマッサージ……だよね?)

 自分自身にそう言い聞かせるも自信はなかった。私の知ってるマッサージとは孤児院にいた子供達に肩揉みをしてもらったり、足で腰を踏んでもらう事を指していたのだが――。

(……もしかして、私が思ってるのと違う?)

 なんだかそんな気がしてきた。よくよく考えると普通のマッサージだったら胸を触ろうとはしないだろうし、部屋も暗くする必要はない。何かがおかしい――そう思ったのだ。

(はぅあっ!? こ、これってまさか……私がずっと知りたかった子作りの過程では!?)

 それならリヒトさんが言った言葉や部屋を暗くした意味も合点がつく。自分の性知識の無さと無防備さに恥ずかしくなり、顔が一気に熱くなった。

(怖かったら言えってそういう事!? もぉぉ……それなら初めからそう言ってよぉぉ~~! あ――でも、リヒトさんは考えなしにそんな事しないだろうし、私の身体の疼きや火照りもきっと関係あるのよね? 私としては暗かったらリヒトさんの顔が見えないから余計に怖いんだけど、灯りは点けてくれないのかな?)

「むむっ……」

 私は灯りを点けようと暗闇の中、ベッドサイドランプに手を伸ばしてみた。すると、リヒトさんが私の動きを察知したのか「どうした?」と声をかけてきた。

「灯りを点けようと思いまして。リヒトさんの顔とか動きが見えないから、ちょっとだけ怖くて……」
「悪いがそれは却下で」
「ど、どうしてですか? さっき嫌だと思ったらちゃんと言うんだぞって言ったのはリヒトさんなのに」

 私が早口でそう言うと、リヒトさんは余裕がなさそうな声音で「……すまない。無理なものは無理だ」と言った。

「えぇ……嘘ぉ……」

 理不尽という言葉が頭を過ぎった。私は暗闇の中、唇をへの字にさせてムッとした表情を作る。リヒトさんから言ったくせに! そう思った私は抗議しようと口を開こうとした。

「……え?」

 突如、リヒトさんの手がネグリジェの裾から侵入してきたのを感じ、私は目をパチパチと瞬きさせて身体を硬直させた。

(ど、どど……どうして手が服の中に入ってくるの!?)

 直に触ってくる意味が分からず「◯×△◇ッ~~~!?!?」と、意味不明の言葉を上げる。私はパニックになって酸素を求める魚のように口をハクハクとさせていた。そんな私の様子を分かっていても止めてはくれず、極め付けにはクスッ……と小さく笑う声が聞こえてきたではないか!

(待って……この人、私の反応を面白がってないですか!?)

 太腿をゆっくりと上下に撫でた後、くびれに手を這わせて向かった先は決して大きいとは言えない自身の胸。下着の隙間からリヒトさんの指が侵入してきたのを感じた私は「あ……」と声を漏らした。

「リヒ、ト……さんっ!」

 彼の指が胸の頂きに触れた瞬間、ビクッと腰が引けた。だけど、逃げ場はない。そうしている間にリヒトさんの手が完全に下着の中に入ってきた。私の小さな胸が彼の大きくて温かい手に包まれる。

「っ……ひぅ♡」

 やんわりと優しく胸を揉まれたが、声は極力あげないように努めた。初めて他人の手の温もりを直に感じ、恥ずかしさで胸が一杯になった。

「ハァ……ハァ……リヒ、トさん」
「どうした?」
「は、恥ずかしいです……!」
「っ……シャリファは反応が本当に可愛いな」

 そう言いながら、今度は指先で胸の頂きを優しく弄ってきた。最初は先端を撫でるように触り、指で優しく挟んで擦り上げられる。すると、次第に胸の頂きが芯を持ち、キュッと硬度が増してきたのを自覚する事となってしまった。

(なにこれぇ……乳首までジンジンしてきた。けど、恥ずかしすぎるからどうにかして抜け出さないと!)

 身を捩ってなんとかこの状況を抜け出そうとするも、片手はリヒトさんに押さえられたままなのだ。なので、私は唇を縫い付けるように結び、声を漏らさないように注意しながら、されるがまま弄られた状態が続く。

「っ……っ……」
「固くなってきたな。シャリファ、服が邪魔だからお互いに脱ごうか」
「ぬ、脱ぐ!?」
「あぁ、服が邪魔でちゃんと触ってやれてないからな。今のシャリファみたいに中途半端な状態はキツいと思うんだよ」
「ちゅ……中途半端?」

 リヒトさんの言う中途半端が何を指すのか分からない。だが、とりあえずアソコがジンジンしたり、身体が火照るのは何かが中途半端だからだそうだ。

 私がうーんと悩んでいると、リヒトさんは「大丈夫か?」と声を掛けてきた。

「もう……なんで今更聞くんですか?」

 私は頬をプクッと膨らませながら不機嫌そうに言う。それを聞いたリヒトさんは許してくれと言わんばかりにククッと笑った。

「悪い。シャリファが可愛いから虐めたくなったんだ」
「むぅぅ……わっ、キャッ! リ、リヒトさんっ!!」 

 繋いだ手をいきなり引っ張られ、リヒトさんの胸に飛び込むような体勢をとったのだ。

 いきなり何するんですか! と非難の言葉を浴びせるつもりだったが、ある事に気付いてしまった。

(リヒトさんの心臓の音、とっても早い!)

 シャツ越しでも伝わる彼の熱い体温と心臓の鼓動――それは私の心臓と匹敵する程の速さだった。私は一人で緊張していたわけではないのだと安堵し、少しだけ嬉しくなる。

(今は部屋が暗いし、少しだけ甘えても良いよね……?)

 暗闇に目が慣れてもリヒトさんの表情が見えない事を良い事に私はスリスリと頬擦りするように彼の胸に顔を埋めた。そして、勇気を出して彼の気持ちを確かめるように問いかける。

「……リヒトさんも緊張してますか?」
「いや。俺はシャリファより一回り違うから、そんな緊張はしてないぞ」

 それを聞いてズキッと心が痛む。やっぱりこういう事に慣れてるんだ……と思ってしまったのだ。

(ハハ……そりゃ、一回りも離れてたらそうなるよね)

 私は聞かなきゃ良かったと後悔した。だが、嘘という可能性も捨て切れずにいた。現にリヒトさんの心臓はドッドッドッ……と激しく脈打っている。という事は彼の耳は真っ赤になっているはずだと思ったのだ。

 それを確かめたいが為に私は良い方法を思い付いた。一人でニヤッと笑いながら、優しくリヒトさんの顔に両手を添えてみた。顔が熱い。よし……そのまま耳を触って確かめてみよう!

「えいっ!」

 無事にリヒトさんの耳に触る事に成功した。触った時の感想はまるで熱々のカイロを指で挟み込んでいる時のような熱さだった。

「いきなりどうしたんだ?」

 リヒトさんの少し驚いたような声が響く。

「リヒトさんの本心を確かめようと思って!」
「俺の本心?」
「リヒトさんは恥ずかしくなる時は必ず耳が赤くなるんです! 耳が熱いのがその証拠ですね! だから、リヒトさんも今、とっても緊張してると思います!」
「ほう? だけど、俺もシャリファの事はよく知ってるぞ」
「ひゃっ――な、何するんですか?」

 リヒトさんが私の顎に手を添え、顔を上に向けるように促されるといきなり瞼にキスを落としてきた。そして、頬に。頬の次は唇と順にキスしてきたのである。

 私はされるがままジッとしていると、暗くて見えないはずなのに彼の表情がニヤッと笑ったように感じた。

「俺を玄関で見送る時は頭を撫でて欲しそうにしてるだろ? 幸せを感じてる時は頬がピンク色に染まる。小さな唇はいつもキスして欲しそうに尖らせながら待ち構えてるし、寝る前の腕枕だってそうだ――全部、俺にして欲しいんだろ?」
「~~~~っ!!」

 なんと全て図星だった。さすがに自分の頬の色までは分からないが、リヒトさんが言うならそうなのだろう。まさかそこまで事細かに見られているとは思わず、私はカァァァ……と顔が熱くなってしまった。

「照れてるな、シャリファ」
「…………はい、照れてます」
「やっぱり、シャリファは素直で可愛いな。そんな君が可愛くて可愛くて仕方がない」
「そ、そんな事――ふっ、んぅ……」

 リヒトさんはそのまま唇を塞いできた。角度を変えて口付けされ、少し空いた唇の隙間から熱い舌が侵入してきた。

(これ、前にやった大人のキスだわ)

 キス自体は嫌いじゃない。けど、この大人のキスはまだ不慣れでどうしたら良いのか分からない。リヒトさんにされるがまま舌を絡め取られたり、吸われたり、口内をなぞられ続けていると、体の内側から爆ぜるようにジンジンとした感覚に襲われた。

「んぁ……ハァッ、んん♡」
「ハ……気持ち良いか?」
「は、はい……キス、好きです」

 私は息継ぎをどこですれば良いか分からず、軽い酸欠で頭がくらくらとした。

(やっぱり、リヒトさんとのキスは気持ち良い……♡)

 ボーッとしたままリヒトさんに身体を預けて息を整えていると、彼の手がネグリジェの裾から下着に伸ばされたのを感じた。

「キャッ!」

 私は目を見開き、微かに開いていた足を勢いよく閉じた。そのせいでパチッと肌を叩くような音が部屋に響き渡った。

「な、ななっ……何をするんですか!?」

 さすがに想定外すぎて、リヒトさんから距離を取ろうとするもギュッと抱きしめられて逃げられないようにされてしまう。

「何って、ココがジンジンするって言ってただろ? だから、直接見てやろうと思ってな。ほら、いい加減服を脱ぐぞ。バンザイしろ、バンザーイ」
「あ……だ、だめぇ!」

(うわぁぁぁ……待って待って待って! 展開が早すぎてついていけない~~~~!)

 ジタバタと手を動かしたものの、そのままブラとネグリジェを一緒にスポーンと脱がされてしまった。暗闇にも関わらず、私は慌てて胸を手で隠して小さく身体を丸める。

(うぅ……お風呂とはまた違う恥ずかしさだわ。でも、まだ下の下着は脱がされてない――ここだけはなんとか死守をしなければ!!)

 私はキッとリヒトさんの顔辺りを睨む。

「ヤダって言ってるじゃないですか!」
「そのわりには素直に脱がされたじゃないか」
「そ、そんな事ないですよっ! うぅ~~、私ばっかり脱がされて恥ずかしいです……」
「俺も脱ぐんだから一緒だろ?」
「え……?」

 確かにそう言いながら微かに衣擦れの音が聞こえてくる。恐らく、これはシャツのボタンを外している音だ。その後、すぐにパサッという音がしたからベッドの上にシャツを置いたんだろう。ここまではいつもよく聞く音だ。

(じゃ、じゃあ……今聞いてるジーっていう音はジッパーを下ろす音!? リヒトさんも下を脱ぐ気なの!?)

 私はドキドキが止まらなくなってしまった。リヒトさんの裸体はお風呂の時に見た。恥ずかしくて直視出来なかったけど、腹筋は割れてて肩周りもがっしりしてたし、異性の身体を見慣れてない私でも良い身体付きをしているなぁ……と思ったくらいである。

 そんな事を考えているうちにパンツを床に放り投げるバサッという音が聞こえてきた。

「俺も下着だけになったぞ」
「は……はい」

 リヒトさんから距離を取るべく、ススス……と背後へ下がると背中にベッドフレームが当たった。その音を聞いたリヒトさんはすぐに私の細い腕を探し当てて掴む。

「こら、逃げるな」
「だってぇ……恥ずかしいんですもん」
「そんなに恥ずかしがるな。これからはこれ以上にもっと凄い事をするんだぞ?」
「も、もっと? 冗談ですよね?」

 私の引いたような声にリヒトさんは言葉を失った。どうやら、私にどう説明すれば良いのか迷っているらしい。顔は見えなくとも雰囲気でなんとなく伝わってくる。

「ち、知識不足でゴメンナサイ……」
「いや、構わない。君は悪くないからな。シャリファの身体の疼きの事なんだが、君の身体は性的に興奮してる状態だ」
「せ、性的に……?」
「そうだ。だから、ここが濡れるんだ――って、凄い濡れてるな」

 そう言ってリヒトさんは下着越しに私の秘部を触ってきた。少し触れただけでクチュ……という水音が響きわたってしまう。その音を聞いた私は思わず「キャアッ! い、いきなり触らないでください!」と声を上げてしまった。

 私の反応を見てなのか、下着の濡れ具合を感じたからなのかリヒトさんは「シャリファ、今までこんな状態でよく我慢してたな」と心配そうな声音で言う。

「ハァー、ハァー……これ以上は駄目です。恥ずかしすぎてどうにかなっちゃいそう」

 涙声でそう言うと、リヒトさんは「少しこっちに引き寄せるぞ」と言い、腰を掴んで私が寝転べる位置まで下がった。ここからは何をされるのか本当に分からず、身体が少しだけ震えてしまう。

「リヒトさんっ……こ、怖いです」

 今度は本心で言った。カチカチに緊張して身体が強張ってしまう。それを感じとったリヒトさんは私の顔中にキスを落として微笑みかけてくれた。

「痛くしないから大丈夫、俺を信じて。それに恥ずかしいと思うのも最初だけだ。後は気持ち良さで一杯になるから」
「……気持ち良さ?」

 ハァ……ハァ……と胸を上下させながら、呼吸を繰り返しているとリヒトさんが私の髪を手に取って、チュ……とキスを落とした。

「一度、経験したら分かるよ」

 リヒトさんは瞼にキスをしてから小さな声で「……いい子」と呟き、私の下着に手を掛けてゆっくりと下ろしていった。
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