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03 王都で噂のゴブリン男ですが何か ?

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 異世界に来て初めての戦いは泥臭く、子供のケンカみたいでぜんぜん良いところが無かったけれど、それでも辛うじて勝つ事ができたんだ。

  やったのか ? 勝った ? 勝ったぁーー !! だけど、本当に厳しいっ ! ロープレのクエクエなんかとは全然違うんだ ! 恐い、恐すぎる。臨場感ハンパねえよ !

 これはマズイぜ。女神の言った通り、やっぱり俺はゴブリン程度の実力だ。何か少しでも作戦を立てなければヤバイッ !

 鑑定で調べて、どうにかゴブリンの胸から魔石を取り出しアイテムボックスへ入れたんだけど、まだ手がプルプルと震えている。

 それからすぐにまた次のゴブリンを見つけた。 
 さっきの戦いの反省点。わーって言って、斬りかかりますよという合図を出しながら攻撃するのはまずかった。初心者丸出しだよね。今度は隙を狙って闇討ちをしたいんだ。
  向こうは気付いてないので、木かげから特訓した弓矢で狙った。
 
 シューーーーーーーー        バスッ !!!
 「ギーーーーーーッ ギュギュ ?」
 上手く背中に当たった !!! 

 今だ、行くぞーーー !!! (今度は声は出さずに…… )
 一気に近付いて剣を振り抜く。

 ザシュッッ !
 
 すると一撃で倒すことができた。

 「やったーー !!!!」
 
 今度こそは効率良く倒すことに成功した。最初の戦闘とは大違いだった。できることなら、あんな恐い思いは二度としたくないものだからね。

 次は二体のゴブリンと戦った。もちろん一体は不意討ちで倒したのさ !!
 不意討ちなんて、あまり胸を張っていえる戦法じゃないけれど、よわよわな俺が生き抜くためには手段を選ぶ余裕は無いんだ。

  少し苦労したけれど、なんとか勝利したんだ。落ち着いて戦えばやれる。更に二体を何とか倒すと、やっとレベルが4に上がった。
 よーーし !!!

 そこで続けて一体のゴブリンと腕試しをすると、今までよりも楽に倒すことができたんだ。レベルアップの恩恵はそれなりに大きいようだね。

 このまま快調に日が傾くまでレベリングを続けたんだ。
 森の入り口付近ではポツポツとゴブリンが現れて、たまにライトボアやホーンラビットが混ざる程度で特に問題は無かった。

 弱い魔物ばかりでも1日でレベルを7まで上げることができたんだ。これは低レベルの恩恵だね。
 
 途中でメイジゴブリンが現れた時には慌てたし、かなり手こずったけど、それ以外は順調だった。


 この日は王都の安宿、一泊大銅貨1枚で1000ギル(日本円で約1000円)の名もない宿に泊まることにした。

 翌日も翌々日もこの森の入り口付近でレベリングをして、レベルは12まで上がったけどそれも厳しくなってきた。ここの魔物ではここから先のレベルは中々上げられないような気がしてきたんだよね。

ケンタロー スキルマスター 16才 男 
 レベル:12 人族 異世界人
 攻撃力:45
 守備力:26
 ラック:20
 体力 :38
 速さ :35
 魔力 :33
 HP:50/55 MP:28/28 SP:72
 スキル:鑑定・アイテムボックス

 そして、避けて通れないギルドへ行ってみた。
 初めて行くギルドに少し緊張してドアを開けた。

 奥のカフェではすでに酔っぱらっている冒険者も何人かいて、室内にはそれなりに人がいる。知らない顔の俺が来たので、皆がこっちに注目しているみたいだ。
 
 不意に声を掛けられた。
 「あっお前 ! ゴブリン男だな !」

 「「「 ゴブリン男 ??? 」」」

 「コイツ異世界から来たけど能力がゴブリン並みみたいでさぁ、兵士に城から放り出されてゴブリン男めー つって怒鳴られてたとこ、見たんだよ俺 !」

 「ハハハハハ」
 「最低ーー !」
 「イヤーン、私たちゴブリンにやられちゃう~ !」

 コイツら……  女神と同じだ。
 人を見下し、コケにして喜んでやがる。

 異世界に飛ばされた上にクズ扱いで放り出された俺が、どんなに傷付いているのかも知らないで……
 怒りがこみ上げ腹が立つけど、逆上できるような性格じゃないし…… 

 相手にせず、できればやり過ごしたかったから、スルーしてカウンターの受付嬢のところへ行った。

 「登録したいのですが、お願いできますか ?」

 「はい、良いです…… けど~」

 「おいおい、無視されちゃったぜスケルター ! 
 お前とゴブリン野郎との一戦、楽しみにしてたのによー⤵⤵」

 「やれやれー !! ゴブリン退治だー !」
 「ヘイヘイヘーーイ !」

 「転移者なのに逃げるなよー !!」

 「おいお前 ! こんなに言われてるのに逃げるのかよ。このスケルター様が、見事にゴブリン退治してやるからよ !」

 馬鹿馬鹿しい。こんな奴に勝っても負けても得るものなんて何も無いよな。一応鑑定してみるか ?
 
 スケルター 剣士 19才 男 
 レベル:21 人族 
 攻撃力:35
 守備力:31
 ラック:5
 体力 :40
 速さ :23
 魔力 :11
 HP:31/39 MP8:/8 SP:2
 スキル:剣技LV3 フェイント LV2 身体強化LV1 

 あれ ? 俺よりレベルが9も上なのに、ステータスは低いんだな。
 スキルマスターと剣士との違いだろうか ? それとも異世界人の特典なんだろうか ?

 「おらーーーーーーーー !!!!!」

 スケルターはイライラしてシビレを切らしたようで、俺の顔目掛けて、右ストレートのパンチで殴り掛かってきた。

 冗談じゃ無いぞ !! 俺は何もしてないのにいきなり殴り掛かってくるのか ? 日本では考えられないよ !! いじめか差別か階級的なモノでもあるのだろうか ??

 しかし遅いパンチだった。軽いフットワークで横に動き、サッと避けた。

 「ええっ ? くそがー !!」

 すると彼はムキになって右、左、右、左と何発もパンチを放った。
 全てを軽くかわした。こんな遅いパンチなんて当たるはずもない。

 「おいおいスケルター ! どうしたどうしたー !」

 スケルターの仲間が騒ぎ立てるけど、奴等のステータスも治癒士、戦士、魔術師、シーフ等で、似たり寄ったりだった。

 しかし、離れて静かに見守る者の中にはレベル40、50を超える強者も居た。
 そうか、コイツらは冒険者でも落ちこぼれで、まあ学校とかでいえばグレた奴やヤンキーのような感じなのかもな ?

 最後のパンチを左手で受け止め、奴の拳をぐぐっと強く握り締めてやった。

 「ううっ、ぐっ、痛てぇ !!」

 「ゴブリン並に弱くてクズ扱いされた俺を倒しても自慢にならないんだろ ? 俺は君達には敵意も無いし怒ってもない。悲しいだけでさ…… 」

 「何だよ、情けねえ奴だなぁ !」

 スケルターはひるまずにどんどんパンチをくり出した。
 その全てをかわして思いっきり右のパンチを放つとスケルターの左頬に当たり彼は倒れた。

 「コイツ、やりやがったなーー !! 皆、やっちまえー !!」

 周りにいたスケルターの仲間達は俺の顔と言わず腹と言わず、横から後ろから、一気に殴るわ蹴るわでボコボコにされてしまった。

 「オラー !! 思いしったかゴブリン野郎めっ !!!」

 「くっ !!」

 倒されたスケルターは腹が立つのだろう、最後まで倒れた俺の背中に蹴りを入れていた。やりたいだけ暴行して気がすむと奴らは散っていった。何人かは奥のカフェかバーのようなところでたむろしていた。

 起き上がろうとすると、倒れた俺にギルドの受付嬢が声をかけた。

 「大丈夫ですか ?」

 「ああ、何とかね !」

 「ここで行き倒れになると困りますので大丈夫そうで良かったですわ !!」

 あーーあ、受付嬢のコイツも奴らと似たようなモノか ?! どうせ俺のことなんてゴブリン程度に思ってるんだろうな ?

 冒険者同士のゴタゴタは自己責任でということなんだろう。それにしても、もう少し言い方ってもんがあるだろうに…… 
 本当にどんどんこの国がイヤになってくるな !


 そんな心の声はグッと押し殺して、とりあえず声をかけてくれた受付嬢のクルトアンナにギルドカードの発行をお願いした。
 冒険者はFランクからのスタートということで、他にも簡単な説明を受けたが、事務的でおざなりな仕事だった。

 オレに身分を証明できるものは他に何も無い。どうしてもギルドカードは必要だ。
 我慢、我慢。



 
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