死を取り扱う精霊の物語

Spitfire

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1 羽無き精霊

1-3 双子とケモノたち

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 ざぁぁぁと、音が鳴る学園の外。
昼から雨が降り始めていた。ちょっと強めの雨。
僕はいつも通り勉強を終え、廊下の掃除を終えて、帰宅をした中、今日は暇があったので何となくラフィの所にでも行こうと思っていた。
いつも帰る寮とは真逆の寮、エルヴェンド寮。
鉄骨と白の壁のシュティーア料理をとは逆で木造建築だ。ナチュラルな雰囲気を持つ建造物でシュティーア寮が1人部屋なのに対し、エルヴェンド寮は共有部屋。
お師匠様から貰った大きな傘を畳み、僕はエルヴェンド寮に入る。
「ラフィ、居るぅ?」
入口でラフィを呼んでると奥から「はぁい!」という聞きなれた声が飛んできた。
「あ、ベクターだ!」
そして奥から泡の精霊竜であるラフィがぴょこぴょこと来てくれた。
「ふふ、遊びに来たよ♪」
ハイタッチをして、お互いにっこりしてる中、ラフィを呼ぶ声が入る。
ラフィと共に僕はその奥を見る
「はぁはぁ……」
奥からピンク髪の小さな精霊が来る。かなり走ったのか息が荒れていて、用事でもあるのだろうか?
「どうしたの?クロープ?」
ラフィはその精霊・クロープを見て言う。
「姉が……レインコートを忘れたの」
どうやら姉は今日、学園内で用事があったようで居残りをしていた。
そんな中、昼から雨が降り初め、レインコートを忘れた姉は帰れないらしい。
まぁ今回の雨はかなり強いし、なんなら小型の精霊にとっては驚異でしかないのだろう。
「それにしてもクロープが忘れなかったんだね」
ラフィはこの2人とかなり面識があるのか、かなりのんびりとした対応を取っている。
「わ、私だってちゃんとします!」
そんなラフィに向けて彼女はムスッとする。
ラフィ曰く、クロープはアホの子らしい。
「とりあえず、こんな雨だし、僕達で言った方がいいね」
僕達人間サイズの精霊からしたらちょっと強い雨程度である為、僕やラフィで行くのがいいと思ったからだ。
しかし彼女は自分も行きたいと僕らに頼んでくる。
「なら僕がクロープを頭に載せるよ」
と、泡の精霊は言う。
確かにその案は名案だ。彼女を運ぶなら彼はかなり適してるだろう。
「よし、なら行くか!」
傘を刺し、僕ら3人はその黒く大きい傘の中に入る。
3人で世間話や翼を求める理由を話す。
雨の中でのんびり明るく話す3人、窓越しでそんな3人を見ている白色の精霊と灰色の精霊……多分シューヴァだと思われるふたりが話しておるのが見えた。
あちらもあちらで楽しそうだなっと思っていると僕らは目的地の校舎に着いた。
「さて、お姉さんを探さないとね」
ラフィとクロープが室内に先に入り、次に僕が傘を閉じて校舎にお邪魔する。
放課後というものだが、まだ校舎には色々する者がいる。
勉強に努力する者、先生方に頼まれ残る者、図書館などで資料を集める者。
様々な思惑で動く中、僕らは探し人を見つけるべく、校舎内を見て回る。
3階、2階、1階とちょっとめんどくさい順で探していった。
1階にある第2講義室の扉を開き、室内を確認した時、クロープは「あっ」と言う短い発言をしたかと思うと教室内に走っていった。
「あわっわ!?」
いきなり頭の上で走り出されたラフィはその行動によってバランスを崩し、尻もちを着く。
とりあえずラフィを立たせて、僕らもクロープの後を追う。
「姉ぇぇ!」
「あらら……」
妹のクロープは姉と言われるピンク髪の精霊にくっつく。
「どうしたのです?いきなり抱きついたりして」
優しく妹を撫でる雰囲気はまさに姉と言わざる負えないな……と考える中、僕とラフィは事情を説明した。
「あらら……そういうことでしたのね、妹をありがとうございますですの」
微笑みを作り、僕ら2人に感謝をした。
「いえいえ、困った時はお互い様なので……!」
お師匠様に言われた言葉、困った時はお互い助けること。
「ふふ、いい事を言いますのですね」
そう彼女は微笑みながら答える。
「あ、そう言えば……あなたのお名前はなんですの?」
「あ……そういえば聞くの忘れてた」
そう言えば彼女らには名前を教えていなかった。
「僕はベクター、死の精霊だよ」
「……」
2人は目を丸くした。
ラフィはそんなことを知っているので特に気にせず、そんな光景を見てる。
「死、死の精霊なのですの!?」
先に口にしたのは姉だ。
「う、うん……死の精霊、こう見えてもね?」
「そ、そうなのですね……」
ちょっと怖ばっている2人。
「あ、その……2人は死んでないから……僕な何もしないよ」
焦りながら言葉をつける僕。
「……ホントです?」
妹のクロープが言う。
「うん……僕は死んだ霊や悪霊を元に戻すということをする精霊だよ」
「なら安心なの……」
姉と妹はホッとため息をつく。
「まぁ、ベクターがそんな魂を抜くとかできたら僕はすぐに逃げてたよ」
のんびりとラフィは言う。空気を和ませてくれるのはありがたい。
「死の精霊……?」
そんな僕ら4人に向けて、男の声と思われる鋭い一言が飛ぶ。
「あ……あぁ、僕は死の精霊ですが」
いきなりの言葉に僕は戸惑いながらも声の主を見る。
ふと、あっと言う声を漏らし、その主を見る。
黄色い髪の毛を持った精霊。片翼を持ち、三日月を連想させる模様が入る服を着てる青年のような精霊は僕を見て「ふむ」とだけ、声を漏らす。
「あ、あの……」
僕はその精霊に声をかけようとする前に
「セラ君!何してるの!!」
セラと呼ばれる精霊を呼び止める女性の声が 響く。
僕ら4人はその声主を見てみると、セラと同じ金髪で、黒いワンピースというのか?そんな服を着た少女がセラに向けて走ってきた。
「っと、気になる子がいてね」
セラはその少女に振り向く。
「気になる子?どんな子!!」
少女は物凄い速さで食い付き、セラが言う面白い子を探す。
セラはその面白い子を見る。つまり僕の事。
そのことに気がついた少女はすぐに近づき、僕を見る。
「わぁ……!可愛い子、あなたの名前は?私はアウローラ!!」
元気で活発的な彼女は僕に質問する。
その強い活発心に僕はあとじさりをする。
「ローラ、迷惑をかけてるよ」
と、セラが言う。
「だ、大丈夫ですよ……」
ぎこちない笑みを作り、セラに言うと、一息ついて、口を開く。
「僕はベクターです」
そう伝える。
「ふーん、ベクターくんか、よろしく!」
にっこりとして彼女はそう言うと、セラを見て、
「セラ君にしては珍しいね、他の精霊に話しかけるなんて」
そうセラに言う。
セラ本人はちょっと適当な感じで、
「いや、死の精霊と聞いて気になっただけだ」
と返す。
ふーんと納得したアウローラは僕を後にして、セラに向け、
「この宿題、分からなくてね、教えてくれない?」
人間界についての宿題をセラに聞くアウローラ。
「……生憎、俺は人間には興味無い……それに、その範囲はまだ終わっていない」
と、返す。
そんなぁと、言いたそうな彼女を見ていると、体が動く。
「あの、その範囲なら僕終わっていますよ」
その発言を聞いたアウローラはぱっと目を光らせ、僕を見る。
「ほんと!それなら教えて!」
彼女は直ぐに僕に飛びついて、拝む。
「あ、ずるーい!僕も教えて」
「わたし達も!」
泡の精霊とピンクの精霊達も終わってなかったようで、同じく僕に飛びつく。
「わ、わかったから……お、落ち着いてぇぇ」
そんなだらしない声が教室内に響いた。

その後僕ら6人で人間界についての宿題を図書館でやる事になったのは隠すこともない。

「ふふ、楽しそうですね」
1人、その楽しそうな雰囲気の中、扉の奥で見ている少女。カメラを軽くいじり、スっと図書館の扉を閉めると、次の記事を探す為なのか、廊下をゆっくり歩いていった。
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