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その後の話

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その時、何処からか声が聞こえているのに気付いた。

周りを見渡すと、入り口付近から声が聞こえて足音も聞こえる。
もう残っているのは俺達と数人だけだと思っていた。

でも、声や叫び声からしてそれ以上の人の声が聞こえる。

誰が来たのか分からず、カイウスのところにしゃがんで守るように覆い被さった。
カイウスをまた取られてしまう、その不安で助けを呼びに行く事が出来なかった。
助けに呼ばないといけないのは分かってるけど、一歩が踏み出せない。

カイウスを運んでここから出ようと持ち上げようとした。

「おい!何やってんだ!」

「…えっ?」

聞き覚えがある声に、声がした方を振り返るとカイトが複数の騎士を連れて立っていた。
一瞬、なんでカイトがここにいるのか分からなかったがすぐに思い出した。

そうだ、ハイドレイに頼んだんだった…カイウスの事で頭がいっぱいで忘れていた。

俺がカイトに頼む前に騎士達がカイウスに気付いて駆け寄ってきた。
なにがあったかカイトは聞きたそうな顔をしていたが、それは後回しにしてカイウスの状態を騎士達に伝えた。

カイトが連れてきた騎士ならきっと大丈夫だ。
既に他の騎士達が向かっている事を聞いてホッとした。

良かった、これで本当に安心出来るんだ…皆。

けど死んでしまった人達は戻らない、だから俺に出来る事はその人達の家族に説明して、この屋敷全体をその人達の場所にする。
それが、生きている者達が出来る唯一の事だ。

「カイウスのところに行ってもいい?」

「説明は後で聞くから、今は行ってやれ」

カイトの言葉に頷いて、カイウスのところに向かった。
騎士達に運ばれているカイウスの意識は、まだ戻らなかった。






あれから数日が経過して、俺はずっとカイウスの側を離れなかった。

街の中の病院に運ぶとカイウスというのもあり、騒ぎになる。
治療に専念するために騎士団の医務室に運ばれたカイウスは、ずっとベッドで眠ったままだ。

外傷もなく、医師は原因が分からず…カイウスが目を覚ますかすら運次第だと言っていた。
きっとあの最後の魔力放出した時にカイウスの魔力はなくなってしまったのかもしれない。

それでもカイウスは強い、きっと大丈夫…帰って来てくれると信じて手を握りしめた。
食事も忘れてカイウスの傍にいる俺にカイトが呆れて料理を持ってきてくれた。

俺もお世話になったクマさんの温かい料理。

食べないのはクマさんにも、心配してくれたカイトにも悪いからちゃんと完食した。
カイウスが俺を見た時具合が悪そうだったら心配するよね。

カイトは仕事だから、夕飯を運ぶ時に食器を回収すると言って医務室を出た。
カイトに感謝して、食事をしながらカイウスを見つめた。

温かいスープを飲んでいた時、カイウスの手が微かに動いた気がした。
驚いて、スープをひっくり返してしまい熱さで立ち上がった。
椅子も派手に倒れて大きな音が響いたが、構わずカイウスの手を握りしめた。

「どうかした!?」

「…先生、カイウスが…」

医者のフレイ先生がカイウスが眠る部屋にやって来た。
カイウスの意識が戻った事を伝えると、俺を押し退けてカイウスに近付いた。

俺もカイウスを見守っていたけど、フレイ先生に「お前はまず着替えてこい」と言われてしまった。

確かにスープをこぼしちゃったし、着替えてきた方がいいよな。
急いで医務室から出て、俺とカイウスの家に向かった。

戦った後とはいえ、元々旧兵舎だから多少ボロかったからあまり変わらないように思えた。
少しだけだけど、カイウスと過ごした大切な場所…またここで一緒に暮らせたらいいな。

そのためにはいろいろと修復するところがある。

それはまた後でにして、先に服を着替えに向かった。
適当に昔に残された綺麗な服を引っ張り出して、着替えた。

どうなったのか、早くカイウスの様子が知りたくて全速力で医務室に戻った。

息を切らしながら滑り込むようにして病室に入ると、フレイ先生「走り回るな!」と怒られてしまった。
慌ててて走っちゃいけない事を忘れていた。

フレイ先生に謝って、カイウスの方を見た。
カイウスは起き上がる事は出来ないけど、ちゃんと目を開けて俺の方を見ていた。
泣きたくて気持ちが溢れてきて、でも自分を落ち着かせてカイウスに近付いた。

「カイウス、俺が分かる?」

手を握って、カイウスに聞くと返事の代わりに手を握り返してくれた。

フレイ先生にカイウスを任せて、俺は病室の外に出た。
追い出されただけだけど、医者としての腕は完璧なフレイ先生ならきっと大丈夫だ。
俺には出来ないから、病室の前で待っていた。

あれから何日が経過したんだろう、眠るカイウスとずっと過ごしていたから分からない。
医務室の中まで、あの後のローベルト家の話は聞こえて来ない。
気にはなっているが、カイウスの方が先だ。

それからでも遅くはない、俺もカイウスが回復したら事情を聞かれるから嫌でも情報が入る。
カイウスの事も代わりに俺が話す、カイウスには負担を掛けたくない。

窓をジッと眺めていたら、俺を呼ぶ声が聞こえた。
声の方を見たら、杖で体を支えているハイドレイが見えた。
腕も足も包帯が巻かれていて、平気じゃないのに俺に笑顔を向けていた。

ハイドレイにこちらに来させるわけにもいかず、俺から近付いた。

「ハイドレイ、同じところにいたんだね」

「まぁな、ローベルト家の奴ら皆ここにいる…アイツらは監視もあるけどな」

「ローベルト家って…」

「知らないのか?」

ハイドレイは驚いていたが、ずっとカイウスといた俺には何の事か分からなかった。
ハイドレイが知っている話を聞いて、驚いた。

俺とカイウスの後にハイドレイが医務室に運ばれた。
その時にローベルト家の屋敷から数人の生き残りが一緒に出てきた。

ユリウスとローズもローベルト家の生き残りになるが、それ以外にもいた。
ハイドレイは見舞いに来た騎士に話を聞いていた。

ローベルト家はほとんどが無惨な姿だったが、数人は不思議な事に傷一つなかった。
ただ、なにが起こったのか理解していない者がほとんどだった。

記憶がない…ローズの状態と似ている事に気付いた。

まさか、俺とカイウスの声の力で死んだ人が生き返った?
カイウスに貰った今までよりも強い力だったから広範囲に広がったのかもしれない。

生き返らなかった人は、きっと治らない傷を負った人達なのかもしれない。
あくまでも俺の想像だから、真相は分からない……俺にも分かっていない力だから。

記憶がない人達にも一応話を聞いているが、あまり有力な情報は得られていないようだ。

けど、一人だけ…全てを覚えている人がいて、ずっと話を聞いているとハイドレイは言っていた。
覚えている素振りだが、話をする様子はないらしい。
もっと時間を掛けたら、きっといつか口を割らせる事が出来るかもしれない。

「生き残っていた奴ら皆記憶が曖昧なのに、なんでローベルト卿だけ他とは違うんだろうな」

「それは、多分…ユリウスがローベルト卿を殺していないって事だよ」

「…?そりゃあローベルト卿が生きているんだから、そうだろうな」

ハイドレイは首を傾げているが、俺の想像が当たっていればそういう事なんだと思う。
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