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おかえり

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「カイウス…本当にカイウス?」

「…あぁ、俺はここにいる」

髪は元に戻っているが、本当に戻ったのか確認しようと手を少し上げた。
まだ力が戻っていないから、手から力が抜ける。

すぐにカイウスに手を掴まれて、頬に触れる事が出来た。
カイウスの頬に触れて、確かめるように撫でた。
俺の手を握るカイウスの力が少しだけ強くなった。

良かった、元に戻って…本当に…

カイウスは俺の手を優しく離して、もう片方の俺の腰に腕を回して支えている手に力が込められた。

耳元でバチバチと火花が散るような音が聞こえる。

音のした方を見ると、真っ黒い触手が俺達の方に向かって伸びていた。

「これって…」

「まだ、安心は出来ない…アイツを消滅させる必要がある」

カイウスは手を広げて、触手の方に翳した。
結界が触手によって破られそうになりカイウスが結界の力を強めている。
それほどまでに触手が強いという事になる。

あの黒いのはカイウスの力の一部、そして操っているのは神だろう。

さっきよりも染まっていて、完全な黒い影のようになっていた。
黄色く光る瞳がこちらを睨みつけていた。

ポタポタと黒いなにかが神の足元に落ちていき、広がるように伸びている。

その伸びた黒いものは生き物のように動いて触手になった。

神はうわ言のようにカイウスの名前を呼びながら、口から黒い液体を吐き出していた。

「…カイウス、これって」

「染まりすぎたんだ、俺にとっての毒を吸いすぎてアイツは理性を失っている」

ずっと触手からの攻撃を防ぐわけにはいかない。
今の俺は一人で逃げる事も出来ないし、カイウスの足手まといにはなりたくない。

それに、もうカイウスを一人にしたくない。
俺だって戦うんだ、力をカイウスに全部返してもまだ俺には残されているものがある。

大丈夫、カイウスと一緒ならもう何も怖くはない。

強く願っても、俺の体は俺の願いを聞いてくれない。

カイウスを見つめると、カイウスと目が合った。
見つめ合うお互いの瞳に愛しい人が映り込む。

「カイウス、俺も戦いたい…足手まといにはならないようにするから…だから」

「分かってる、ライムは俺を助けてくれた…足手まといだなんて思わない」

額をくっつけて、瞳を閉じると温かな光に包まれた。
唇に柔らかいものが当たり、なにかが全身に流れ込んでいく。

さっきまでの怠さがスッと消えていくのが分かる。
唇を離して、カイウスの腕に触れた…自分の力で…

それだけじゃない、さっきまでの力が戻ってきたようだ。

カイウスが俺に戻したって事?だとしたら、カイウスはどうなっているんだ?
また戻ってしまったらと心配して見てみたら、カイウスの髪は普通だった。
表情も険しそうだけど、それは結界を張り続けているからだから顔色は悪くなさそうだ。

「カイウス、今何したの?」

「戦うなら神に対抗出来る力が必要だ、人間の力ではどうやっても勝てない」

「でも、この力は俺がカイウスに返した力じゃ…」

「あの力じゃない、アレは俺の心の力だ…本当の力ではない」

「大丈夫、ライムにあげたのは俺の完全魔力の一部だから」とカイウスはそう言って、もう一度俺に口付けをした。

カイウスの魔力だけの力、さっきよりも強い力だ。
長くカイウスの心が俺の中にあったからか、その強い力が入っても痛くも苦しくもない。

俺の全力をぶつけよう、これが神と戦う最後だ。

後ろを振り返り、触手の方を見つめて息を吐いた。

カイウスの結界は限界までヒビが入っていて、長くは持たない。

その前にカイウスが結界を消して、振り下ろされた触手に触れて破壊した。
触手はそれだけではなく、何本も蠢いている。

触手を一本一本倒しても、また黒い液体になって触手に戻る。
キリがないなら、直接神に攻撃するしかない。

神と直接戦えるほどの力はカイウスにしかない。

俺はカイウスが神のところに行けるように、触手を倒して道を開くしかない。

「カイウス!触手は俺に任せて神のところに行って!」

「分かった」

黒い触手はカイウスの力だから確かに強い、でも俺がカイウスに与えられた力はこんなドス黒いものではない。
この触手が毒だというなら、これはきっと薬だ。

カイウスの行く道を作るために、触手に向かって拳を叩き込んだ。
ゼリーのようにグネグネ動いて、液体に戻った。

俺の腕にも液体が掛かってびっくりしたが、腕が染まる事はなかった。
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