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指輪と共に
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「カイに会ったんだな、カイはどうだった?」
「カイウス…が、ごめんなさい…俺のせいでカイウスが死んじゃった」
泣いてもカイウスは戻ってこない、泣く暇があったらカイウスを助けに行かないと…
そう思っていても、何も考えずに行ってまた同じ結果になる。
カイウスがいなくなってしまった今、俺にはどうする事も出来ない。
ハイドレイにもリーズナにも、カイウスを助けるために協力してくれたのに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
ハイドレイは驚いていて、地面に座り込んでいた。
リーズナにも殴られる覚悟はしていたが、冷静だった。
俺に呆れたのかもしれない、何もせずに戻ってきたんだ…当然だ。
カイウスの事を受け入れなかった俺への罰なんだ。
ズキッと、針で刺されたような痛みが走り服を捲ってみる。
腹に手のひらサイズの黒いなにかが見えて、ゆっくりだが俺の体を染めようとしていた。
これって、神も黒いなにかに触れて体を染めていたが俺も染まっている。
カイウスの一部に……神の言葉を思い出す。
木が倒れて、すぐ近くまで神の化身は迫っていた。
「お前に伝えたい事がある、どうするかはお前の判断に任せる」
「…リーズナ」
「神は俺の力を毒だと言った、だから俺の力は神に通用する…今のお前の中にある力で神を倒せるかもしれない…そして、今のカイウスも倒せる可能性がある」
リーズナの言葉は、カイウスを助ける方法はないと言っているようだった。
リーズナは息を吐いて、足音がする方に向かって構えた。
ハイドレイも、立ち上がってリーズナのように拳で戦うのか構えた。
リーズナは俺に力を渡して戦えないし、ハイドレイも安静にしていないと死んでしまう。
戦える俺がやらないと…
動こうとすると、腹の黒い部分が拒むように痛みが走る。
腹に触れて、強く爪を立てて痛みを少しでも感じないようにしたかった。
血が出そうだが、黒い部分を引っ掻いても痛みしか感じなかった。
どうして、なんでこんなに上手くいかないんだ。
ゲームだったら、簡単にハッピーエンドになれるのに…
俺は、所詮バッドエンドキャラクターなのか?
俺は死んだって構わない。
だから皆を、カイウスを、助ける力がほしい。
黒い部分からの痛みが増していき、息も出来なくなる。
首まで黒くなっているのかもしれない、そのまま俺はどうなっていくのか。
そこで指輪が光っているのが分かった。
温かな光に涙が出てくる。
その光は、神を最後に見た時の光に似ていた。
あれは、リーズナが言っていた魔法陣の光だったのか。
俺をいつも危ない事から助けてくれた。
守るために、カイウスが俺に渡してくれた。
『人差し指の指輪は、愛する人と永遠を誓う意味があるんだ』
カイウスは俺にそう言って、指輪を渡してくれた。
カイウスの願いが込められた力、そうか…そうだったんだ。
気付く場所はいくらでもあったのに、まさか魔法陣で気付くなんて…
あの温かな包まれた気配、カイウスがおまじないを掛けた力ではない。
あれは、カイウスそのものだったんだ。
カイウスに指輪をもらったあの日から、俺はずっと今までカイウスと一緒にいたんだ。
神の化身くらいだと、俺の悪魔の力でも防ぐ事が出来た。
でも、ローズのあの神のような変化した姿や神の力は俺の力ではどうする事も出来なかったと思う。
ローズは人間とはいえ、神に直接力を与えられて化け物になっていた。
神本人相手で俺の力が通じる筈がないのは少し考えれば分かりきっていた事だ。
俺は全部自分の力だと思っていた。
それすらも間違いだったんだ。
俺だけだったら、とっくにローズに殺されていただろう。
俺をジークや他の人から指輪を通して守ってくれたのはカイウスだ。
カイウスの力じゃない、これはカイウスなんだ。
指輪に触れて、ギュッと拳を握りしめた。
カイウスの力は守るためにあるんだ。
俺はもう迷わない…諦めない…前を見て進むんだ!
「来るぞ!」
リーズナの声に反応するかのように、俺達を覆っていた木が倒された。
これ以上逃げる事は出来ない、ここで戦わなくてはいけないほどに追い詰められていた。
ハイドレイは気を抜くと倒れそうになる足を必死に立たせている。
リーズナにハイドレイを気遣う余裕なんてなくて、自分の事で精一杯だった。
二人の影が現れて、倒れた木に立っていた。
見た事がある神の化身の二人は俺達を見ていた。
神の化身でも無傷ではなく、三つ編みの赤髪の男は目立った傷はなさそうだが、息を荒げて体力は削れていた。
もう一人の目に包帯を巻いている男は、服が破れて全身ボロボロで立っているのがやっとの様子だった。
それでもリーズナとハイドレイを探すほどの殺意は残っている。
俺は二人の前に立った。
二度と、カッコ悪い姿は見せない。
涙も痛みも、もうないよ。
「カイウス…が、ごめんなさい…俺のせいでカイウスが死んじゃった」
泣いてもカイウスは戻ってこない、泣く暇があったらカイウスを助けに行かないと…
そう思っていても、何も考えずに行ってまた同じ結果になる。
カイウスがいなくなってしまった今、俺にはどうする事も出来ない。
ハイドレイにもリーズナにも、カイウスを助けるために協力してくれたのに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
ハイドレイは驚いていて、地面に座り込んでいた。
リーズナにも殴られる覚悟はしていたが、冷静だった。
俺に呆れたのかもしれない、何もせずに戻ってきたんだ…当然だ。
カイウスの事を受け入れなかった俺への罰なんだ。
ズキッと、針で刺されたような痛みが走り服を捲ってみる。
腹に手のひらサイズの黒いなにかが見えて、ゆっくりだが俺の体を染めようとしていた。
これって、神も黒いなにかに触れて体を染めていたが俺も染まっている。
カイウスの一部に……神の言葉を思い出す。
木が倒れて、すぐ近くまで神の化身は迫っていた。
「お前に伝えたい事がある、どうするかはお前の判断に任せる」
「…リーズナ」
「神は俺の力を毒だと言った、だから俺の力は神に通用する…今のお前の中にある力で神を倒せるかもしれない…そして、今のカイウスも倒せる可能性がある」
リーズナの言葉は、カイウスを助ける方法はないと言っているようだった。
リーズナは息を吐いて、足音がする方に向かって構えた。
ハイドレイも、立ち上がってリーズナのように拳で戦うのか構えた。
リーズナは俺に力を渡して戦えないし、ハイドレイも安静にしていないと死んでしまう。
戦える俺がやらないと…
動こうとすると、腹の黒い部分が拒むように痛みが走る。
腹に触れて、強く爪を立てて痛みを少しでも感じないようにしたかった。
血が出そうだが、黒い部分を引っ掻いても痛みしか感じなかった。
どうして、なんでこんなに上手くいかないんだ。
ゲームだったら、簡単にハッピーエンドになれるのに…
俺は、所詮バッドエンドキャラクターなのか?
俺は死んだって構わない。
だから皆を、カイウスを、助ける力がほしい。
黒い部分からの痛みが増していき、息も出来なくなる。
首まで黒くなっているのかもしれない、そのまま俺はどうなっていくのか。
そこで指輪が光っているのが分かった。
温かな光に涙が出てくる。
その光は、神を最後に見た時の光に似ていた。
あれは、リーズナが言っていた魔法陣の光だったのか。
俺をいつも危ない事から助けてくれた。
守るために、カイウスが俺に渡してくれた。
『人差し指の指輪は、愛する人と永遠を誓う意味があるんだ』
カイウスは俺にそう言って、指輪を渡してくれた。
カイウスの願いが込められた力、そうか…そうだったんだ。
気付く場所はいくらでもあったのに、まさか魔法陣で気付くなんて…
あの温かな包まれた気配、カイウスがおまじないを掛けた力ではない。
あれは、カイウスそのものだったんだ。
カイウスに指輪をもらったあの日から、俺はずっと今までカイウスと一緒にいたんだ。
神の化身くらいだと、俺の悪魔の力でも防ぐ事が出来た。
でも、ローズのあの神のような変化した姿や神の力は俺の力ではどうする事も出来なかったと思う。
ローズは人間とはいえ、神に直接力を与えられて化け物になっていた。
神本人相手で俺の力が通じる筈がないのは少し考えれば分かりきっていた事だ。
俺は全部自分の力だと思っていた。
それすらも間違いだったんだ。
俺だけだったら、とっくにローズに殺されていただろう。
俺をジークや他の人から指輪を通して守ってくれたのはカイウスだ。
カイウスの力じゃない、これはカイウスなんだ。
指輪に触れて、ギュッと拳を握りしめた。
カイウスの力は守るためにあるんだ。
俺はもう迷わない…諦めない…前を見て進むんだ!
「来るぞ!」
リーズナの声に反応するかのように、俺達を覆っていた木が倒された。
これ以上逃げる事は出来ない、ここで戦わなくてはいけないほどに追い詰められていた。
ハイドレイは気を抜くと倒れそうになる足を必死に立たせている。
リーズナにハイドレイを気遣う余裕なんてなくて、自分の事で精一杯だった。
二人の影が現れて、倒れた木に立っていた。
見た事がある神の化身の二人は俺達を見ていた。
神の化身でも無傷ではなく、三つ編みの赤髪の男は目立った傷はなさそうだが、息を荒げて体力は削れていた。
もう一人の目に包帯を巻いている男は、服が破れて全身ボロボロで立っているのがやっとの様子だった。
それでもリーズナとハイドレイを探すほどの殺意は残っている。
俺は二人の前に立った。
二度と、カッコ悪い姿は見せない。
涙も痛みも、もうないよ。
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