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ユリウスと共に

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「でも、すぐに屋敷の門番に止められた」

「ユリウス…様は外に家があるから自由に行けるんじゃないの?」

「ローベルト卿の後を付いて行かないように時間を置いてから行けって言われたんだよ、ローベルト家とか言って誰も信じていないローベルト卿らしい」

ユリウスはその後に慌てて追いかけていったが、見失ってしまったみたいだ。
だとしたら正面から行かなければいいんだけど、ローベルト家の敷地は内側に見張りが何人もいる…そう簡単にはいかない。

せめてローベルト卿が何処に行くのか知れたらユリウスも後から行けるよな。
ただ、どうすれば良いかだよな……あれ?

後を付けるのがダメなら、先に行って待ち伏せすればいいんじゃないのかな。
ユリウスに言うと、ユリウスも気付いたのか「俺だって分かってた!」と怒られた。

俺はどう言えば正解だったんだ?

ユリウスはやる気になっていて、早速待ち伏せしようと部屋を出て行こうとしていた。
俺は他にユリウスに頼みたい事があったからユリウスを呼んだ。

「ユリウス様、ちょっと待って」

「…何だよ、今忙しいんだよ」

「ユリウス様って武器を作ってるんだよね」

「だったら何だよ、あげねぇからな」

「いや、それはいらないけど…俺も作りたいものがあるんだ」

ユリウスはジッと俺を見つめていて、変に緊張した雰囲気になる。
俺がなにか悪用すると思っているのかもしれない。

ユリウスが考えている期待には応えられないけど、俺が自分で作らないと意味がないんだ。

ユリウスの条件は、一緒なら構わないと言っていた。
隠す事じゃないから、それは全然いいんだ。

でも、ユリウスはローベルト卿のはいいの?今すぐに飛び出しそうだったけど。

「じゃあ行くぞ」

「え?今から?」

「こういうのは早く終わらせたいんだよ」

「でも、ローベルト卿は…」

「行きたくねぇなら行かねぇからな!」

ユリウスが怒り出したから、これ以上余計な事を言わない事にした。
せっかく行ってくれるんだし、ユリウスに従おう。

部屋を出てから、てっきり屋敷の中にあると思ったら屋敷も出た。

そして、ローベルト家の敷地も出てびっくりした。
俺の事は任務での同行とだけ言っていた。

ユリウスは家に帰るだけだと伝えたら通れる。
だけど、俺の場合は神に気付かれてはいけないから外に出してくれない。

門番にも当然通すなと言われている筈だとユリウスに言った。
そうしたらユリウスは何を思ったのか、俺に変装をさせてきた。
素顔を見せない方法は確かにそれしかない。

でも、格好はどうにかならないものなのか。

「あの…」

「口を開くな、気付かれるだろ」

「……」

ユリウスに言われて口を閉ざして一歩後ろに下がって歩いた。

門番には当然怪しまれたが、ユリウスが「サクヤの使いだ」と言うと通してくれた。

まさかまたこの格好をするとは思わなかった。
俺は今、ローベルト家のメイドの格好をしている。

メイドの服はユリウスがメイドの一人に貸してほしいと頼んだ。
しかも俺を女装趣味の変態って事にされた。
反論しようとしたが、ユリウスに口を塞がれて何も言えなかった。

俺を見るメイドのドン引きした顔はきっと一生忘れないだろう。
流石に誰かが着ているのは無理だと、新品のメイド服をもらった。

俺がローベルト卿の息子だから何も言えない感じがして、可哀想だった。
必死にメイドに謝っていたらユリウスに襟をまた掴まれて引きずられた。

俺、もう部屋から出れない…周りの目が痛い。
かつらはさすがに無理だから、黒いローブを頭から被って下をずっと向いていた。
顔を上げろって言われても絶対に上げられない。

幸い着替えたのは空き部屋で、誰も見ていない時に入ったから俺がメイドだとは誰も思わないだろう。
性別までも変わってるし、簡単には結びつかないと信じよう。

このまま誰にも気付かれずに終わりたいな。
あのメイドの子には変態だって思われてしまったけど。

「それで、ユリウス様…何処に行くの?」

「俺の家」

「えっ!?」

何処を歩いているのか分からずに聞いたら驚きの事を言っていた。

ユリウスの家って事はカイウスの家でもあるよな。
そこに武器を作る工房があるとユリウスは言っていた。
知らなかった、そんなものが家にあるなんて…

ユリウスは実家である屋敷の前でため息を吐いた。
物凄く入りたくないってオーラを感じる。

「どうしたの?」

「うるせぇ、久々に帰るから嫌なんだよ」

「久々って、普段は何処で寝泊まりしてるの?」

「カイウスがいるところなんかに帰りたくねぇんだよ、寝泊まりなんて何処だって寝れるだろ!」

ユリウスは怒りながら家を開けて、俺もユリウスに付いて行く。
まさか、野宿みたいな事をしてるのかな。

ユリウスはしばらく家に帰ってないから、カイウスが家にずっといなかったのは知らなかったみたいだった。
今、カイウスはローベルト家にいるから堂々と帰れるみたいで「帰ったぞ!」と声を上げていた。

目立つ行動はあまりしてほしくなかったが、ユリウスは久々に我が家に帰れてやっぱり嬉しいのかと思ってそっとしておいた。
ユリウスの声に数人のメイドが気付いて頭を下げていた。

メイドの一人がユリウスのところに駆け寄っていた。
久々…ではないけど、現実では久々のマリーだった。

「ユリウス様、カイ様の事でお話が」

「俺にカイウスの話はするな」

「ですが、ローズ様も帰ってこなくて…ローズ様が自分になにかあったらカイ様を……」

「……っ!」

バシッと乾いた音が、静かになったエントランスに響く。
おかえりなさいと口を揃えて言っていたメイド達も俺達に注目していた。

ユリウスが手を上げていて、俺はユリウスの手を掴んだ。
俺の事を睨んで「退け」と言うが、さらにユリウスを掴む手に力を込めた。

マリーはただカイウスとローズが心配で、ユリウスに聞いただけだ。
ユリウスがカイウスを嫌いで、イラついたのは分からなくもないが暴力はダメだ。

ユリウスはジークほどの怪力ではないから、俺を振り払えないみたいでさらにイラついていた。
また剣を抜こうってしたから剣も押さえた。
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