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銀色の世界
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「俺に?何故?」
「ここから連れ出すためだよ」
俺の言葉を理解出来ないのか、眉を寄せている。
今のカイウスを見たら、無理矢理拘束されているように感じない。
俺がなんでこんな事を言っているのか、本当に分からないんだろう。
記憶の事や、元のカイウスの話はしない方がいい。
まだ、この人格のカイウスを理解していない状態で刺激するのは良くない。
もしかしたら、暴走したカイウスのように元のカイウスが嫌いなのかもしれない。
同じ肉体でも、性格はそれぞれあって…皆唯一無二の存在だ。
「俺を連れ出してどうするつもりだ?」
「どうって、ここにいちゃいけないから」
カイウスの眉間にシワが寄ってきている。
ただここにいてはいけないなんて言われたら誰でも嫌だよな。
でも、カイウスはこの国を守るために今までやってきたんだ。
今のカイウスは騎士団長という事も忘れているんだ。
それだけでも分かってほしい、カイウスが守ろうとしたこの国をカイウス自身の手で傷付けないためにも…
ズキズキと頭が痛くなってきて、体中の傷が痛み出す。
下を向いて、そのまま倒れそうになるのを何とか片腕で支える。
この空間にいるからなのかな、手を握りしめて痛みに耐えながらカイウスを見上げた。
「カイウスはこの国を守るためにずっと頑張ってきたのに、ダメにしてほしくないんだ」
「俺が…?人間の世界を?」
「関係ないよ、人と精霊は分かり合えるから」
俺が精霊と分かり合えたように、カイウスが人々に信頼されてるように、種族なんて関係ないんだ。
カイウスも記憶は失っても思う事があると思っていた。
俺の言葉を軽く鼻で笑う前までは、カイウスはまだ消えていないと思っていた。
俺が見ているカイウスは、とても冷たい瞳をしていた。
「くだらない」と、一言呟いて俺に背を向けた。
とっさに服の袖を掴むと、鬱陶しそうに俺を見ていた。
「くだらなくなんてない!貴方はまだこの国を見た事がないんだろ?」
「……見る必要が何処にある?人間など、俺にとってどうでもいい」
カイウスは腕を振り払い、傷だらけで力が入らなかった俺の手はすぐに離れた。
それでもカイウスの足にしがみついて止めた。
記憶を失ってからずっとこの地下にいるなら、外の世界を見た事がないんだ。
見た事がないのに、そんな事を言ってほしくない。
俺はカイウスに人の世界を見せる目標が新たに出来た。
それを見てどう思うのかはカイウスの自由だ。
カイウスが守ってきた国を見てもらいたい、ここにいるよりよっぽどいい。
「俺はカイウスを絶対にここから連れ出して、外の世界を見せる!」
「……」
「それでどう思うかはカイウスの自由だけど、こんな埃っぽいところよりは空気は美味しいから!」
俺の言葉にカイウスはしばらく沈黙していた。
景色を見て、この地下に帰るかどうかはカイウスが決める事だ…そこは強制したりしない。
自由を奪って閉鎖空間でカイウスを閉じ込めておくのが許せないんだ。
カイウスが俺を思い出してくれたら嬉しいけど、一つずつ俺がカイウスが見てきたものを教えたい。
そうしたら、きっと元のカイウスも何かしら反応してくれると思うから…
カイウスは俺の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「なんでそこまでして俺に構う?初めて会ったのに…」
「……一目惚れ、したからかな」
面と向かって言うのは恥ずかしかったけど、本当だから。
俺はカイウスに会う度に惚れてるんだよ。
カイウスは目を丸くしていて、首を傾げていた。
俺が察する前に「ひとめぼれって何?」と聞いてきた。
そうだった、このカイウスは恋をした事がないから分からないか。
愛に否定的だった神がカイウスに教えるわけないし…
俺も上手く説明出来る気がしなくて、相手の事をずっと考えてしまう事としか言えなかった。
カイウスにとってそんな経験がないから、分かっていない。
だんだん俺も恥ずかしくなってきた、元々人を好きになるのに理由なんていらない。
「と、とにかく!ほっとけないんだ、カイウスを…」
「人間のくせに俺が怖くないんだな、変な奴」
「……カイウスを怖いなんて思わないよ、それで変人ならそれでいい」
俺は大真面目で言ったつもりだったのにカイウスが吹き出して笑われてしまった。
冷たい表情が和らいだだけで、嬉しい気持ちになった。
カイウスはまだ笑っているが、俺に手を伸ばしてきた。
何をするんだろうと、ジッとまっすぐ見つめていた。
俺の頭に触れようとした手を止めて、そのまま口元に指を這わせた。
口内の傷の痛みが触れられた瞬間消えていった。
「どうやら、本当に怖くないんだな」
「…え?なにが?」
「俺を見る人間は恐怖に怯えている、俺に歩み寄ろうとした人間も内心では俺に怯えているから、表情で分かる」
「怖くないよ、気が済むまで触っていいよ、痛い事も…カイウスなら我慢する」
「なるほど、だからそんなに死にそうなのか」
「……これのほとんどは全然それとは関係ないから」
カイウスの与えた傷ならいいけど、それ以外の傷は勘違いされたくない。
この記憶が元に戻ったら、カイウスはショックを受けるかもしれない。
俺を守ろうとしてくれたのに、俺を傷付けたって知ったら…嫌だよね。
じゃあこういうのが好きって言った方がカイウスは安心出来るかな。
変な性癖だって、ドン引きされたら俺が嫌だな。
どっちがいいのか考えていたら、頬を軽くつねられて伸ばされた。
「へぁっ?」
「またなにか考えているのか?楽しい事?」
「…わふぁんにゃい」
「分かんない」と言おうとしたのに、変な言葉になってしまった。
カイウスが頬を離すと、ちょっとヒリヒリした。
頬が伸びてないだろうかと押さえていると、カイウスは背中を向けた。
俺はまたカイウスが行ってしまうと思って腕を伸ばした。
伸ばしすぎて鋭い痛みが腕を駆け抜けて、カイウスに触れられなかった。
まだ話があるのに、このまま離れたら今度はいつ会えるか分からない。
嫌だ、カイウス…行かないで…
少し歩いて、カイウスは足を止めて俺の方を向いた。
「ずっと退屈だったんだ、メシアの話はつまらないし、似たような人間が来るだけ」
「カイウス…」
「俺をここから連れ出してみせてくれ、言っておくが俺をその気にさせないと絶対にお前が言う景色は見ない」
「…分かった、カイウスに絶景見せてあげる!」
カイウスは楽しそうな顔をして俺を見ていた。
それだけじゃダメなんだ、カイウスが見たいと思わせないといけない。
人間に興味がないカイウスを興味津々にさせるのは簡単ではない。
それでも俺はやる、カイウスが与えてくれたチャンスだから。
カイウスは俺に向かって手をかざしていた。
カイウスの手には魔力が集まってきていた。
いつもとは明らかに魔力の強さが違った。
「ここから連れ出すためだよ」
俺の言葉を理解出来ないのか、眉を寄せている。
今のカイウスを見たら、無理矢理拘束されているように感じない。
俺がなんでこんな事を言っているのか、本当に分からないんだろう。
記憶の事や、元のカイウスの話はしない方がいい。
まだ、この人格のカイウスを理解していない状態で刺激するのは良くない。
もしかしたら、暴走したカイウスのように元のカイウスが嫌いなのかもしれない。
同じ肉体でも、性格はそれぞれあって…皆唯一無二の存在だ。
「俺を連れ出してどうするつもりだ?」
「どうって、ここにいちゃいけないから」
カイウスの眉間にシワが寄ってきている。
ただここにいてはいけないなんて言われたら誰でも嫌だよな。
でも、カイウスはこの国を守るために今までやってきたんだ。
今のカイウスは騎士団長という事も忘れているんだ。
それだけでも分かってほしい、カイウスが守ろうとしたこの国をカイウス自身の手で傷付けないためにも…
ズキズキと頭が痛くなってきて、体中の傷が痛み出す。
下を向いて、そのまま倒れそうになるのを何とか片腕で支える。
この空間にいるからなのかな、手を握りしめて痛みに耐えながらカイウスを見上げた。
「カイウスはこの国を守るためにずっと頑張ってきたのに、ダメにしてほしくないんだ」
「俺が…?人間の世界を?」
「関係ないよ、人と精霊は分かり合えるから」
俺が精霊と分かり合えたように、カイウスが人々に信頼されてるように、種族なんて関係ないんだ。
カイウスも記憶は失っても思う事があると思っていた。
俺の言葉を軽く鼻で笑う前までは、カイウスはまだ消えていないと思っていた。
俺が見ているカイウスは、とても冷たい瞳をしていた。
「くだらない」と、一言呟いて俺に背を向けた。
とっさに服の袖を掴むと、鬱陶しそうに俺を見ていた。
「くだらなくなんてない!貴方はまだこの国を見た事がないんだろ?」
「……見る必要が何処にある?人間など、俺にとってどうでもいい」
カイウスは腕を振り払い、傷だらけで力が入らなかった俺の手はすぐに離れた。
それでもカイウスの足にしがみついて止めた。
記憶を失ってからずっとこの地下にいるなら、外の世界を見た事がないんだ。
見た事がないのに、そんな事を言ってほしくない。
俺はカイウスに人の世界を見せる目標が新たに出来た。
それを見てどう思うのかはカイウスの自由だ。
カイウスが守ってきた国を見てもらいたい、ここにいるよりよっぽどいい。
「俺はカイウスを絶対にここから連れ出して、外の世界を見せる!」
「……」
「それでどう思うかはカイウスの自由だけど、こんな埃っぽいところよりは空気は美味しいから!」
俺の言葉にカイウスはしばらく沈黙していた。
景色を見て、この地下に帰るかどうかはカイウスが決める事だ…そこは強制したりしない。
自由を奪って閉鎖空間でカイウスを閉じ込めておくのが許せないんだ。
カイウスが俺を思い出してくれたら嬉しいけど、一つずつ俺がカイウスが見てきたものを教えたい。
そうしたら、きっと元のカイウスも何かしら反応してくれると思うから…
カイウスは俺の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「なんでそこまでして俺に構う?初めて会ったのに…」
「……一目惚れ、したからかな」
面と向かって言うのは恥ずかしかったけど、本当だから。
俺はカイウスに会う度に惚れてるんだよ。
カイウスは目を丸くしていて、首を傾げていた。
俺が察する前に「ひとめぼれって何?」と聞いてきた。
そうだった、このカイウスは恋をした事がないから分からないか。
愛に否定的だった神がカイウスに教えるわけないし…
俺も上手く説明出来る気がしなくて、相手の事をずっと考えてしまう事としか言えなかった。
カイウスにとってそんな経験がないから、分かっていない。
だんだん俺も恥ずかしくなってきた、元々人を好きになるのに理由なんていらない。
「と、とにかく!ほっとけないんだ、カイウスを…」
「人間のくせに俺が怖くないんだな、変な奴」
「……カイウスを怖いなんて思わないよ、それで変人ならそれでいい」
俺は大真面目で言ったつもりだったのにカイウスが吹き出して笑われてしまった。
冷たい表情が和らいだだけで、嬉しい気持ちになった。
カイウスはまだ笑っているが、俺に手を伸ばしてきた。
何をするんだろうと、ジッとまっすぐ見つめていた。
俺の頭に触れようとした手を止めて、そのまま口元に指を這わせた。
口内の傷の痛みが触れられた瞬間消えていった。
「どうやら、本当に怖くないんだな」
「…え?なにが?」
「俺を見る人間は恐怖に怯えている、俺に歩み寄ろうとした人間も内心では俺に怯えているから、表情で分かる」
「怖くないよ、気が済むまで触っていいよ、痛い事も…カイウスなら我慢する」
「なるほど、だからそんなに死にそうなのか」
「……これのほとんどは全然それとは関係ないから」
カイウスの与えた傷ならいいけど、それ以外の傷は勘違いされたくない。
この記憶が元に戻ったら、カイウスはショックを受けるかもしれない。
俺を守ろうとしてくれたのに、俺を傷付けたって知ったら…嫌だよね。
じゃあこういうのが好きって言った方がカイウスは安心出来るかな。
変な性癖だって、ドン引きされたら俺が嫌だな。
どっちがいいのか考えていたら、頬を軽くつねられて伸ばされた。
「へぁっ?」
「またなにか考えているのか?楽しい事?」
「…わふぁんにゃい」
「分かんない」と言おうとしたのに、変な言葉になってしまった。
カイウスが頬を離すと、ちょっとヒリヒリした。
頬が伸びてないだろうかと押さえていると、カイウスは背中を向けた。
俺はまたカイウスが行ってしまうと思って腕を伸ばした。
伸ばしすぎて鋭い痛みが腕を駆け抜けて、カイウスに触れられなかった。
まだ話があるのに、このまま離れたら今度はいつ会えるか分からない。
嫌だ、カイウス…行かないで…
少し歩いて、カイウスは足を止めて俺の方を向いた。
「ずっと退屈だったんだ、メシアの話はつまらないし、似たような人間が来るだけ」
「カイウス…」
「俺をここから連れ出してみせてくれ、言っておくが俺をその気にさせないと絶対にお前が言う景色は見ない」
「…分かった、カイウスに絶景見せてあげる!」
カイウスは楽しそうな顔をして俺を見ていた。
それだけじゃダメなんだ、カイウスが見たいと思わせないといけない。
人間に興味がないカイウスを興味津々にさせるのは簡単ではない。
それでも俺はやる、カイウスが与えてくれたチャンスだから。
カイウスは俺に向かって手をかざしていた。
カイウスの手には魔力が集まってきていた。
いつもとは明らかに魔力の強さが違った。
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