221 / 299
知る者と知らぬ者
しおりを挟む
「そんな震えた手で人を殺せるのか?」
「…っ」
「人の感情など無意味だ、俺は感情というものがない…ローベルト家に入りたいのなら恐怖など必要ない」
強い瞳で言われて、男は俺を感情のない瞳で見つめていた。
本当にそうなのだろうか。
見た目は確かにそうかもしれないが、俺には彼が無感情だとは思えなかった。
戦いに対しての恐怖はないだろう、カイウスや俺を攻撃した時の迷いは一切なかった。
痛みも感じてはいない顔をしていたから、その感情はないのかもしれない。
でも、感情っていろんなものがある…彼にはまだ愛情が残っている筈だ。
彼には似つかわしくないであろう、大切な感情。
「貴方だってまだ感情が残されている筈です」
「……」
「愛情は、残されているんじゃないんですか」
俺の言葉に眉を寄せて、腕を掴む力を込められて感覚がなくなる。
顔をしかめるが、男だって人形じゃなくただの人間なんだって伝えたい。
嫌いな相手だけど、それは違うってちゃんと言いたい。
誰であろうと、人の感情を無意味だなんて否定されたくない。
愛情がいらないと思っているなら自由だけど、俺はカイウスに与えられた大切な感情だ…俺の生きる意味であり勇気になっているんだ。
なんで薬を飲まないでローベルト家に協力しているのか分からない。
でも、人から生まれたなら必ず感情はあるものだ。
あの写真のような似顔絵にいた彼が本物のような気がするんだ。
「家族に愛情があるから、人形じゃないです」
「…俺の何を知っている」
「勝手に部屋に入っちゃってごめんなさい、そこで家族と一緒に笑ってる貴方を見つけて」
「…っ」
顔を思いっきり殴られて、その衝撃で地面に倒れた。
口の中に血の味が広がっていき、鋭い痛みが走る。
これは俺が悪いから殴られても仕方ない、踏み込まれたくない場所に踏み込まれたんだから…
男を見ると、俺を睨んでいて…俺はもう何も言わない事にした。
死んでも生き返っているのか本当のところは分からないが、不死身のような人と戦っても勝てる可能性はない。
周りの人達に喧嘩だと思われてしまい、注目を集めてしまう。
奥の方で騎士と目が合って、俺達のところに行こうとしていた。
このまま捕まったらカイウスを助けられなくなる!
狭い路地に入り、通り抜けると男も付いて来た。
少し広い場所に行って、後ろから俺達の名前を叫ぶ声が聞こえた。
絶対怪しまれたよな、逃げ切れるだろうか…こんな注目を集めて目的の似顔絵の人にバレない保証は何もない。
どのくらい離したか後ろを見ると、さっきまで付いて来ていた男がいなくなった。
まさかはぐれた?捕まるなんて事はなさそうだけど。
俺を追いかけてきた騎士は、俺が止まったから足を止めた。
この先は行き止まりだったから、止まるしかなかった。
よく行き止まりにぶつかるな、と自分でも思う。
「…っ」
「人の感情など無意味だ、俺は感情というものがない…ローベルト家に入りたいのなら恐怖など必要ない」
強い瞳で言われて、男は俺を感情のない瞳で見つめていた。
本当にそうなのだろうか。
見た目は確かにそうかもしれないが、俺には彼が無感情だとは思えなかった。
戦いに対しての恐怖はないだろう、カイウスや俺を攻撃した時の迷いは一切なかった。
痛みも感じてはいない顔をしていたから、その感情はないのかもしれない。
でも、感情っていろんなものがある…彼にはまだ愛情が残っている筈だ。
彼には似つかわしくないであろう、大切な感情。
「貴方だってまだ感情が残されている筈です」
「……」
「愛情は、残されているんじゃないんですか」
俺の言葉に眉を寄せて、腕を掴む力を込められて感覚がなくなる。
顔をしかめるが、男だって人形じゃなくただの人間なんだって伝えたい。
嫌いな相手だけど、それは違うってちゃんと言いたい。
誰であろうと、人の感情を無意味だなんて否定されたくない。
愛情がいらないと思っているなら自由だけど、俺はカイウスに与えられた大切な感情だ…俺の生きる意味であり勇気になっているんだ。
なんで薬を飲まないでローベルト家に協力しているのか分からない。
でも、人から生まれたなら必ず感情はあるものだ。
あの写真のような似顔絵にいた彼が本物のような気がするんだ。
「家族に愛情があるから、人形じゃないです」
「…俺の何を知っている」
「勝手に部屋に入っちゃってごめんなさい、そこで家族と一緒に笑ってる貴方を見つけて」
「…っ」
顔を思いっきり殴られて、その衝撃で地面に倒れた。
口の中に血の味が広がっていき、鋭い痛みが走る。
これは俺が悪いから殴られても仕方ない、踏み込まれたくない場所に踏み込まれたんだから…
男を見ると、俺を睨んでいて…俺はもう何も言わない事にした。
死んでも生き返っているのか本当のところは分からないが、不死身のような人と戦っても勝てる可能性はない。
周りの人達に喧嘩だと思われてしまい、注目を集めてしまう。
奥の方で騎士と目が合って、俺達のところに行こうとしていた。
このまま捕まったらカイウスを助けられなくなる!
狭い路地に入り、通り抜けると男も付いて来た。
少し広い場所に行って、後ろから俺達の名前を叫ぶ声が聞こえた。
絶対怪しまれたよな、逃げ切れるだろうか…こんな注目を集めて目的の似顔絵の人にバレない保証は何もない。
どのくらい離したか後ろを見ると、さっきまで付いて来ていた男がいなくなった。
まさかはぐれた?捕まるなんて事はなさそうだけど。
俺を追いかけてきた騎士は、俺が止まったから足を止めた。
この先は行き止まりだったから、止まるしかなかった。
よく行き止まりにぶつかるな、と自分でも思う。
49
お気に入りに追加
8,081
あなたにおすすめの小説
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
会えないままな軍神夫からの約束された溺愛
待鳥園子
恋愛
ーーお前ごとこの国を、死に物狂いで守って来たーー
数年前に母が亡くなり、後妻と連れ子に虐げられていた伯爵令嬢ブランシュ。有名な将軍アーロン・キーブルグからの縁談を受け実家に売られるように結婚することになったが、会えないままに彼は出征してしまった!
それからすぐに訃報が届きいきなり未亡人になったブランシュは、懸命に家を守ろうとするものの、夫の弟から再婚を迫られ妊娠中の夫の愛人を名乗る女に押しかけられ、喪明けすぐに家を出るため再婚しようと決意。
夫の喪が明け「今度こそ素敵な男性と再婚して幸せになるわ!」と、出会いを求め夜会に出れば、なんと一年前に亡くなったはずの夫が帰って来て?!
努力家なのに何をしても報われない薄幸未亡人が、死ぬ気で国ごと妻を守り切る頼れる軍神夫に溺愛されて幸せになる話。
※完結まで毎日投稿です。
【完結】悪役令息の義姉となりました
かずきりり
恋愛
-国を救うは二人の愛-
そこで悪役令息であるルイス・セフィーリオ公爵令息の義姉に生まれ変わった!?
ルイスは最高の推しなんですけれど!?
冷たい家族。
愛を知らず、感情を殺し、孤独の中で生きてきたルイスは、最後に魔力暴走を起こし
唯一愛したヒロインと攻略対象に捕らえられて……そして最後は殺されてしまう。
なんて最期にさせるわけもなく!
推しの幸せが私の幸せ!
今日もルイスが可愛いです!
ゲームとは全く違う人生を歩む事になったルイス。
ヒロインと出会うけれど……?
あれ……?何か……
どうしてこうなった!?
続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜
ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎
『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』
第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。
書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。
第1巻:2023年12月〜
改稿を入れて読みやすくなっております。
是非♪
==================
1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。
絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。
前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。
そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。
まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。
前作に続き、のんびりと投稿してまいります。
気長なお付き合いを願います。
よろしくお願いします。
※念の為R15にしています。
※誤字脱字が存在する可能性か高いです。
苦笑いで許して下さい。
【3章まで完結】病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!
松原硝子
BL
三枝貴人は総合病院で働くゲーム大好きの医者。
ある日貴人は乙女ゲームの制作会社で働いている同居中の妹から依頼されて開発中のBLゲーム『シークレット・ラバー』をプレイする。
ゲームは「レイ・ヴァイオレット」という公爵令息をさまざまなキャラクターが攻略するというもので、攻略対象が1人だけという斬新なゲームだった。
プレイヤーは複数のキャラクターから気に入った主人公を選んでプレイし、レイを攻略する。
一緒に渡された設定資料には、主人公のライバル役として登場し、最後には断罪されるレイの婚約者「アシュリー・クロフォード」についての裏設定も書かれていた。
ゲームでは主人公をいじめ倒すアシュリー。だが実は体が弱く、さらに顔と手足を除く体のあちこちに謎の湿疹ができており、常に体調が悪かった。
両親やごく親しい周囲の人間以外には病弱であることを隠していたため、レイの目にはいつも不機嫌でわがままな婚約者としてしか映っていなかったのだ。
設定資料を読んだ三枝は「アシュリーが可哀想すぎる!」とアシュリー推しになる。
「もしも俺がアシュリーの兄弟や親友だったらこんな結末にさせないのに!」
そんな中、通勤途中の事故で死んだ三枝は名前しか出てこないアシュリーの義弟、「ルイス・クロフォードに転生する。前世の記憶を取り戻したルイスは推しであり兄のアシュリーを幸せにする為、全力でバッドエンド回避計画を実行するのだが――!?
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる