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力の成長

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激しく拳がぶつかり合う音が訓練所に響く。
リーズナの微かな隙を見つけて、打ち込む。
攻撃は食らったが、避けるのはまだ遅い。
結果、俺も殴られている状況だ。

口から血を出して、服の袖で拭って間を開けずにリーズナに向かう。

お互い手加減なしの真剣勝負で、重い拳を叩きつける。

最初に声を上げたのは、意外にもリーズナだった。

「待て待て、ちょっと休憩しよう!」

「まだ俺は大丈夫だから!」

「やっぱりヤケになってるだろ」

「なってない!」

「とにかく休憩だ、口の中怪我してるんだろ」

リーズナは休憩モードに入ってしまい、俺と戦ってくれる気はないみたいだ。
無抵抗の相手を殴るわけにはいかないから、その場で座った。

確かに口はヒリヒリするけど、こんな傷…戦いでは当然出来るものだ。
舐めれば治ると、舌で触ったら鉄の足が口いっぱいに広がり、涙が出てきた。

リーズナが部屋から救急箱を持ってきて俺に渡した。
冷たい風を浴びて、少しだけ頭が冷えてきた。

「ありがとう、リーズナ」

「訓練中は師匠だろ」

「そうだった…師匠!」

リーズナはこちらを向かずに、木に寄りかかっていた。
小鳥もリーズナの頭から離れて、指先に止まったりして遊んでいた。

リーズナはカイウスの力だけど、カイウスの人格そのものじゃないんだよな。
精霊の一種で、生まれた時からずっとカイウスといた。

本当は俺のところにいるより、カイウスのところに行きたいんだよな。
でも、カイウスの気持ちを優先して俺のところにいる。

「師匠、カイウスのところに行きたい?」

「…どういう意味だ?」

「カイウスの傍で守りたいんじゃないかと思って」

リーズナがいれば今まで通りカイウスの精神を安定させる事が出来る。
もう一人のカイウスが出てきた時もリーズナは傍にいたらって感じてたんじゃないかと思う。
俺を修行する事でリーズナが後悔するような事になってほしくない。

そう思っていたら、コツンとなにかが頭に当たった。
頭を押さえて下を見ると、小石が転がっていた。
リーズナの方を見ると、俺を睨みつけていてまだ小石を投げようと手に持っていた。

「カイウスがそうしてくれって言ったから俺はここにいる、俺の意思なんだから今更変わるわけないだろ」

「ごめん…」

「それにお前の攻撃は戦闘では使えない」

「…え!?」

リーズナの言葉に驚いていたら、小石を軽く飛ばして俺の頭に当たった。
痛くはないけど、さっき飛ばされた小石を見つめていたら「避ける動きが鈍いんだよ」と言われた。

確かにさっき攻撃ばかりして、避けようと思った時にはリーズナからの攻撃が当たっていた。

攻撃ばかりしていて、防御をしていない…戦いに仮に勝利したとしても自分も無事では済まない。
相打ちを狙うならそれでいいが、自分を守るなら避ける事も必要だ。
だからリーズナは俺の攻撃は使えない攻撃だと言った。

防御を忘れる攻撃は必要ない、俺に今必要な事は…

「休憩終わったんならやるぞ、時間がもったいねぇ」

リーズナが木から離れて俺に近付いてくるから、救急箱を置いて俺も立ち上がる。

手に集中して、リーズナに向かって拳を振り今度は避ける事に集中した。
攻撃だけだと避ける事が疎かになる、それだと死んでしまう。
一番大切なのは避ける事だ、避けて相手の隙を見つける。
それが戦いだ、攻撃ばかりして突っ走るわけにもいかない。

リーズナの動きをずっと見ていても、リーズナは新しい動きをするから先回りは難しい。
だからこその瞬発力でリーズナの拳を受け止めて、手を振り膝でリーズナの顎目掛けて攻撃した。

さっきまでお互い攻撃を食らっていたが、俺は攻撃を受けていない。
やった、成功した…でもまだ油断出来ない…戦闘は終わってないんだから

リーズナから少し距離を取って、次の攻撃を構える。
顎を押さえているリーズナ、膝を付いたまま立ち上がらなかった。

「お前、フェイントとか…人間のくせに生意気だな」

「それも戦略だよ、ダメだった?」

「まぁ、それもいいんじゃねぇの…確実にお前は前よりも強くなってると思う」

リーズナは笑っていた、初めてみた笑みで俺も嬉しくなった。
もしかしたら今なら訓練所の扉をこじ開けられるかもしれない。
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