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カイウスの話34
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「この世界は素晴らしい、もう一つの似た世界があるなんてな」
「……」
神が話している時も攻撃を止めず、隙が出来るまで剣を振り上げた。
ライムが言っていた本の世界か、神も知らないもう一つの世界。
それがいったいなんだ…可笑しな事が起きてはいたが、俺とライムの間には関係ない。
ずっと立っていた神が俺の後ろに移動した。
覆い被さるように後ろから腕に触れて来たから引き剥がそうとしたが、魔力を使っていない俺が抵抗したところで相変わらず神が笑っているだけだ。
ぬるっとした手つきで触られて、不快以外の何ものでもない。
「別の世界には、もう一人のカイウスと悪魔の子がいた」
「だからどうした、俺じゃなくてそのもう一人の俺になにかするために来たのか?」
「ふふっ、興味はない…この世界のお前は神の器に相応しくない」
「俺も神なんかに相応しくない」
「私の力と合わさるこの感覚、お前には分からないが」
そんな反吐が出る事、分かりたくはないし、ずっと眉を寄せている。
その時、俺の力のなにかが壊れる感覚がして下を見る。
ライムと繋がっている紐が元気なく垂れていた。
さっきまで繋がっていたのに、なにがあったんだ?ライム!
あっさり神が手を離して、ライムの紐が繋がっていた方向に急いだ。
空間が遮断されているから当然ライムまで辿り着けないが、ライムが危ないなら力を使わない手はない。
「力を使うのか?人間など私が手を下さずとも死ぬ生き物だ」
「…っ!!」
空間の間に俺の力を込める、少し込めただけで魔力が高まり俺の力は暴走寸前になる。
神は俺が暴走するのを、今か今かと見つめていた。
神の思い通りにいくのは嫌だが、そんな事よりライムの事しか考えられない。
なんで俺の防御が破られたかなんて、考える暇はない。
「ここはもう一人の私がいる世界、お前にどうにか出来るのか?」
後ろからそう言う声が聞こえて、俺は空間を破壊して手を伸ばした。
服に触れた感触がして、そのまま俺のところに腰を掴んで引き寄せた。
驚いて俺の顔を見つめているライムが俺の名前を呼んだ。
ライムの顔を見て安心したいのに、力が強すぎて制御出来ない。
はぁはぁと荒い息を吐いて落ち着こうと必死になる。
後ろから神が歩いてくる足音が聞こえて来て、理性を保とうとライムを抱きしめる。
「カイウス、どうしたの?髪が変化してる」
暴走した時の黒髪になりつつあり、理性を保とうとする。
神の思い通りにはならない、絶対に…ライムを…安全な場所…に…
ポタリと真っ赤な雫が俺の手の甲に落ちて、流れてくる。
ふとライムを見ると、頭や頬に血が流れている。
心の魔力が沸騰して、溢れて器いっぱいで止まらなくなる。
守れなかった、ライムを……俺が怪我をさせてしまった。
「カイウス?」
「人間一人に苦戦するなんて、本当にこの世界の私ですか?いくら私には劣るとはいえ、もう一人のメシアとしてちゃんとしてもらいたいものだ」
「うるさいな、面倒を押し付けたのはそっちのくせに」
アイツらが何を話しているのか、俺の耳には届かない。
「痛むか?」と聞くと、ライムは自分の怪我の事を言っていると気付いて笑って「大丈夫だよ」と言っていた。
そんな痛々しい姿で大丈夫なわけがない、俺の前では優しい嘘を付かないでくれ。
神ともう一人の男は言い合いを終わらせて、こちらに目線を向けた。
ライムを傷付けたのは赤い髪の男か……許さない許さない。
魔力を注ぐ心の器に一筋のヒビが入るのを俺でも分かった。
殺す、ライムに傷を付けた事を後悔させてやる。
鮮やかな青い髪は黒く染まり、やがて灰色になった。
「やはり、もう既に神の器を手にしているんだな、私のメシア」
「……」
手に力を込めて最大限に魔力を放ち、一瞬で空間が壊れた。
ローベルト卿の仕事部屋になったが、カイウスの衝撃はまだまだ続き、床に大きなヒビが現れた。
そのまま床が抜けて、ライムはなにかに掴もうと手を伸ばすと体がふよふよと浮いていた。
優しく地面に足を付けて、呆然と俺を見つめていた。
赤髪の男は自分が狙われている事に気付いたのか、槍を構えた。
槍の先を変形させて、花が開いたかのようなカタチになる。
そこから電流を流して振り上げるが、その前に赤髪の男を風の魔力で吹き飛ばした。
まだ理性がある、魔法を選べる…ここはまだ建物の中だからライムを巻き込まない方法でこの男を殺す。
壁に体を打ち付けて、赤髪の男は呻き声を上げていたが俺の耳には届かない。
赤髪の男の前に立ち、首を片手で掴んで力を込める。
俺の大切な人を苦しめた罪は死ぬだけじゃダメだ…消滅して償え。
「カイウス!」
目の前の男が憎い事しか頭になかったのに、無音の中で声が聞こえた。
背中からギュッと抱きしめられる感覚がして、ふと我に返る。
後ろを見ると、ライムが俺に必死にしがみついていた。
ズキッと頭が痛くなる、俺はライムに心配掛けてしまった。
腰に回された腕に触れて、赤髪の男を解放する。
苦しげな声を上げていて、俺の魔力を破った人外には見えなかった。
こうして見るとただの人間だ、でも…野放しには出来ない。
「カイウス、これ以上したらカイウスがカイウスでなくなっちゃう!そんなのダメだ!」
「……もう大丈夫だ、ライムが嫌な事はしないよ」
俺は赤髪の男に向かって手をかざすと、胸の部分が小さく発光した。
その発光体は赤髪の男から俺に向かってゆっくりやってきて握りしめた。
内側から防御の魔力を張った、流石に内側にある魔力は自分では壊せないだろう。
ただの人間になったのなら、騎士団で管理する事が出来る。
ライムの言った通り、このまま殺していたら俺は俺でなくなっていたかもしれない。
恨みに囚われて、神の思い通りになっていたんだろう。
ライムが俺を助けてくれた、だんだん落ち着いて髪の色も元に戻る。
「余計な事を、やはりお前から始末するしかないな」
神がライムに向かって手をかざしていて、すぐに引き寄せて結界を張った。
ライムがいれば、俺は強くなる…神の攻撃なんて俺達に通さない。
怒りに任せて大きな攻撃をしたからか、俺達がいる空間が歪んだ。
そして、空間は破壊されて俺達は深い深い奥底に落ちていった。
もう二度と離れないように、しっかりとライムを抱きしめて…
俺の心の中の魔力の器はヒビが入ったままだが、ギリギリ溢れないように持ち堪えている。
それがいつ器が壊れて溢れてしまうのか、俺には分からない。
「……」
神が話している時も攻撃を止めず、隙が出来るまで剣を振り上げた。
ライムが言っていた本の世界か、神も知らないもう一つの世界。
それがいったいなんだ…可笑しな事が起きてはいたが、俺とライムの間には関係ない。
ずっと立っていた神が俺の後ろに移動した。
覆い被さるように後ろから腕に触れて来たから引き剥がそうとしたが、魔力を使っていない俺が抵抗したところで相変わらず神が笑っているだけだ。
ぬるっとした手つきで触られて、不快以外の何ものでもない。
「別の世界には、もう一人のカイウスと悪魔の子がいた」
「だからどうした、俺じゃなくてそのもう一人の俺になにかするために来たのか?」
「ふふっ、興味はない…この世界のお前は神の器に相応しくない」
「俺も神なんかに相応しくない」
「私の力と合わさるこの感覚、お前には分からないが」
そんな反吐が出る事、分かりたくはないし、ずっと眉を寄せている。
その時、俺の力のなにかが壊れる感覚がして下を見る。
ライムと繋がっている紐が元気なく垂れていた。
さっきまで繋がっていたのに、なにがあったんだ?ライム!
あっさり神が手を離して、ライムの紐が繋がっていた方向に急いだ。
空間が遮断されているから当然ライムまで辿り着けないが、ライムが危ないなら力を使わない手はない。
「力を使うのか?人間など私が手を下さずとも死ぬ生き物だ」
「…っ!!」
空間の間に俺の力を込める、少し込めただけで魔力が高まり俺の力は暴走寸前になる。
神は俺が暴走するのを、今か今かと見つめていた。
神の思い通りにいくのは嫌だが、そんな事よりライムの事しか考えられない。
なんで俺の防御が破られたかなんて、考える暇はない。
「ここはもう一人の私がいる世界、お前にどうにか出来るのか?」
後ろからそう言う声が聞こえて、俺は空間を破壊して手を伸ばした。
服に触れた感触がして、そのまま俺のところに腰を掴んで引き寄せた。
驚いて俺の顔を見つめているライムが俺の名前を呼んだ。
ライムの顔を見て安心したいのに、力が強すぎて制御出来ない。
はぁはぁと荒い息を吐いて落ち着こうと必死になる。
後ろから神が歩いてくる足音が聞こえて来て、理性を保とうとライムを抱きしめる。
「カイウス、どうしたの?髪が変化してる」
暴走した時の黒髪になりつつあり、理性を保とうとする。
神の思い通りにはならない、絶対に…ライムを…安全な場所…に…
ポタリと真っ赤な雫が俺の手の甲に落ちて、流れてくる。
ふとライムを見ると、頭や頬に血が流れている。
心の魔力が沸騰して、溢れて器いっぱいで止まらなくなる。
守れなかった、ライムを……俺が怪我をさせてしまった。
「カイウス?」
「人間一人に苦戦するなんて、本当にこの世界の私ですか?いくら私には劣るとはいえ、もう一人のメシアとしてちゃんとしてもらいたいものだ」
「うるさいな、面倒を押し付けたのはそっちのくせに」
アイツらが何を話しているのか、俺の耳には届かない。
「痛むか?」と聞くと、ライムは自分の怪我の事を言っていると気付いて笑って「大丈夫だよ」と言っていた。
そんな痛々しい姿で大丈夫なわけがない、俺の前では優しい嘘を付かないでくれ。
神ともう一人の男は言い合いを終わらせて、こちらに目線を向けた。
ライムを傷付けたのは赤い髪の男か……許さない許さない。
魔力を注ぐ心の器に一筋のヒビが入るのを俺でも分かった。
殺す、ライムに傷を付けた事を後悔させてやる。
鮮やかな青い髪は黒く染まり、やがて灰色になった。
「やはり、もう既に神の器を手にしているんだな、私のメシア」
「……」
手に力を込めて最大限に魔力を放ち、一瞬で空間が壊れた。
ローベルト卿の仕事部屋になったが、カイウスの衝撃はまだまだ続き、床に大きなヒビが現れた。
そのまま床が抜けて、ライムはなにかに掴もうと手を伸ばすと体がふよふよと浮いていた。
優しく地面に足を付けて、呆然と俺を見つめていた。
赤髪の男は自分が狙われている事に気付いたのか、槍を構えた。
槍の先を変形させて、花が開いたかのようなカタチになる。
そこから電流を流して振り上げるが、その前に赤髪の男を風の魔力で吹き飛ばした。
まだ理性がある、魔法を選べる…ここはまだ建物の中だからライムを巻き込まない方法でこの男を殺す。
壁に体を打ち付けて、赤髪の男は呻き声を上げていたが俺の耳には届かない。
赤髪の男の前に立ち、首を片手で掴んで力を込める。
俺の大切な人を苦しめた罪は死ぬだけじゃダメだ…消滅して償え。
「カイウス!」
目の前の男が憎い事しか頭になかったのに、無音の中で声が聞こえた。
背中からギュッと抱きしめられる感覚がして、ふと我に返る。
後ろを見ると、ライムが俺に必死にしがみついていた。
ズキッと頭が痛くなる、俺はライムに心配掛けてしまった。
腰に回された腕に触れて、赤髪の男を解放する。
苦しげな声を上げていて、俺の魔力を破った人外には見えなかった。
こうして見るとただの人間だ、でも…野放しには出来ない。
「カイウス、これ以上したらカイウスがカイウスでなくなっちゃう!そんなのダメだ!」
「……もう大丈夫だ、ライムが嫌な事はしないよ」
俺は赤髪の男に向かって手をかざすと、胸の部分が小さく発光した。
その発光体は赤髪の男から俺に向かってゆっくりやってきて握りしめた。
内側から防御の魔力を張った、流石に内側にある魔力は自分では壊せないだろう。
ただの人間になったのなら、騎士団で管理する事が出来る。
ライムの言った通り、このまま殺していたら俺は俺でなくなっていたかもしれない。
恨みに囚われて、神の思い通りになっていたんだろう。
ライムが俺を助けてくれた、だんだん落ち着いて髪の色も元に戻る。
「余計な事を、やはりお前から始末するしかないな」
神がライムに向かって手をかざしていて、すぐに引き寄せて結界を張った。
ライムがいれば、俺は強くなる…神の攻撃なんて俺達に通さない。
怒りに任せて大きな攻撃をしたからか、俺達がいる空間が歪んだ。
そして、空間は破壊されて俺達は深い深い奥底に落ちていった。
もう二度と離れないように、しっかりとライムを抱きしめて…
俺の心の中の魔力の器はヒビが入ったままだが、ギリギリ溢れないように持ち堪えている。
それがいつ器が壊れて溢れてしまうのか、俺には分からない。
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