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カイウスの使用人

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「貴方は…」

「お、俺は…」

「俺の使用人だ」

カイウスはそう言って、俺を自分のところに引き寄せた。
肩を抱くくらいだから、ギリギリ友情の範囲内の行動だろうがローズは目を細めた。

聞いていないと言いたげな顔をしていて、俺はとりあえず自己紹介をする事にした。
ライという偽名は使えない、突然居なくなったメイドと同じ名前とか自ら疑って下さいと言っているようなものだ。

とはいえ、ライムという名前はどのくらい知られているかまだ分からない。
ローベルト家が今は大人しくてもいずれ悪さをする。
その時に息子の名前がライムだと知っていたら、ライムを使用人にしたカイウスまでも悪く言われてしまう。

偽名を考えるセンスがなくて、どうしようかと思っていたらカイウスが口を開いた。

「彼の名前は呼ばなくて良い、ローズはメイド長であって彼はメイドではない」

「カイ様の使用人という事は、この方に身の回りの世話を?」

「女にさせるよりいいだろ」

「ですが!この得体の知れない方をカイ様のお傍に置くなど…私が…!」

「ローズより、俺は彼を信頼している」

カイウスの言葉にローズは言葉を失って、目を見開いていた。

さすがに言い過ぎではないかとカイウスを見ると、カイウスも険しい顔をしていた。
そのまま俺を連れて、屋敷の中に入りカイウスの部屋に向かった。

カイウスは部屋に入るなり、ソファーに座って隣を軽く叩いていた。
俺が隣に座ると、そのまま俺の肩に軽く体重を乗せていた。
珍しくカイウスは疲れた様子で、カイウスの頭を撫でた。

「カイウス、さすがに言い過ぎだと思うよ…さっきだって一番信頼しているって言ってたのに」

「あれはメイドの中での話だ」

「でも…」

「ローズにはあれくらいでちょうどいい、ローズだって…俺自身を見た事なんて一度もない…お互い信頼なんてしていないんだ」

「どういう事?」

「俺を神だと思ってるんだ、ずっと…悪魔の紋様よりも俺の方が悪魔だっていうのに皮肉だよな」

やっぱりカイウスは自分の方がずっと悪魔だって言っていたんだ。
国民達はカイウスの裏の姿を知らないから一人も気付いていなかったみたいだけど…

カイウスだって完璧ではない、だからこそ俺はカイウスを周りが思っているような神様だとは思わない。
確かに魔力とか魔法とか凄いと思う、でもそれは万能ではない。

感情を乱すとカイウスの意思ではない、別の人格が現れる。
残酷で、感情むき出しの人格だけど…元のカイウスに戻る事を消えると思って怖がったり別の人格も人間らしいと思った。
全て俺が知っているカイウスだからそう思う、ならローズもそんなカイウスを知れば人間っぽいって思うんじゃないのか?

「カイウスは人と変わらないよ、自分の事を悪魔なんて…そんな悲しい事言わないでよ」

「そう言ってくれるのはライムだけだ」

「そんな事ないよ、話し合えばきっとローズさんも」

「アイツはどんな事があっても、何をしても俺が正しいと思っている…ライムと出会わずアイツといたら邪神になってたかもな」

カイウスは皮肉っぽくそう言うが、冗談を言っている顔ではなかった。
確かに現実でも、俺がカイウスに近付くのはローズはよく思っていなかった。
ゲームでは過保護な幼馴染みくらいにしか思っていなかったが、別の理由があったのか。

ゲームでは攻略キャラクターだから、女装していてもカイウスに恋愛感情を抱いているわけではないだろう。
…いや、カイウスを神だと思っているならそれ以上の存在なのかもしれない。

なんで、カイウス自身を見ないんだろう…国民達もマリーを知ろうとせず決めつけていた。
ただ知らないだけじゃなく、俺ならまだしもローズの話をまともに聞く気はなかった。
カイウスが来なかったら、マリーはもっと酷い事になっていた。

カイウスは俺の手をギュッと握りしめて、瞳を閉じた。
俺なんかよりも、ずっとカイウスは辛く重荷を持って生きてきたんだ。

俺がカイウスの重荷を少しでも減らす事が出来たら…

「俺は恋愛しちゃいけないし、特定の相手と話してもいけない、皆に愛される存在なんだってずっと言われたら人はどうなると思う?」

そしてカイウスは教えてくれた、ローズとの出会いを…

それはゲームでは語られる事がない、裏の話だった。
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