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ローベルト家の企み

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足を必死に踏ん張ってもよろけてしまい、転びそうになる。

腰を掴まれて、転ぶ事はなくて兵士の足も止まった。

「俺の使用人になにか用か?」という凛とした声を聞いて上を見る。
俺の腰を掴んでいたのはカイウスで、兵士達は驚いて後ずさっていた。
まさか、カイウスがここにいるとは思っていなかったんだろう。

「な、何故ここに!?」

「俺の家の前だからだ」

「こ、この方はローベルト家の跡取りでして、連れ戻すように言われてまして…」

「……」

「……」

「俺、すぐに戻りますから…大丈夫です」

カイウスに迷惑掛けられないと、俺はカイウスから離れた。
家からの呼び出しだと言われたらカイウスは引き止めるが出来ない。

この世界のローベルト家はまだ大人しいから、引き止める理由がない。
今後起こる事を話しても、頭が可笑しくなったと思われるだけだ。

カイウスと会えなくなるかもしれないと思っていたが、会えなくなるなら会えるように頑張ればいいんだ。

前のようにゲームをねじ曲げる、神の思い通りにはさせない。

「俺も宮殿を探すから、また会おう」とカイウスに言った。

カイウスから離れて、兵士達に連れられて歩いていった。
大丈夫だ、俺はゲーム関係なく自分の意思でカイウスに会いに行く。

兵士達はサクヤが待っているであろう小屋ではなく、ローベルト家の屋敷に帰ってきた。
さすがにサクヤも長時間あんなところにいないか。

「それで、あのメイドはどうしたの?」

「…その、連れてくる機会がありませんでした」

「本当に使えないわね!アンタに頼むんじゃなかった!」

自分の部屋で椅子に座っていたサクヤの前で俺は正座していた。
圧が凄い、ゲームのサクヤってこんな感じだっただろうか…ライム視点だからかな。

サクヤはゲームの通りに、本物の女の子を使ってカイウスの屋敷に潜入させようとしている。
マリーが捕まっても、こっそり逃がせば俺が死ぬフラグは回避出来る。
そもそもカイウスは俺の知ってるカイウスだから、死亡フラグにならないと思う。

カイウスルートなら、俺が死ぬのはだいたいカイウスに殺られるからどうなるんだろう。
神の事だから、きっとそれも想定内なんだろうけど…

「サクヤ様、ライム様とカイ様が仲がよろしくなったようで」

「……何それ、どういう事?」

サクヤは新しい作戦を考えていたら、兵士は余計な事を口にした。
あの場面を見られたら、そう思ってしまうのかもしれない。

カイウスとの関係はさすがに分からないだろうけど、冷や汗を流しながらサクヤを見つめた。
サクヤは目を細めて俺を見つめていた。

俺はカイウスに女装がバレて、話しているうちに使用人にしてくれる事になったと簡単に話した。
嘘は言っていないから、俺がちゃんと堂々としていれば大丈夫だ。

「なんでアンタが仲良くなってんのよ、あのメイドを連れてくる機会なんていくらでもあったでしょ!!」

「ご、ごめんなさい!」

「でもカイ様の懐に入れたのならいろいろと使えるのでは?」

サクヤに殴られそうになって頭をガードしていたら兵士がサクヤにそう提案した。
サクヤは視線を兵士に向けて、俺の方を見て振り上げた拳を下ろした。

ちょっと考え事をして、なにか閃いたのか笑みを浮かべていた。
絶対に嫌な事だと、惚けている兵士の間に挟まれて思った。

今の俺の利用価値は、こうしてサクヤの駒として扱われる事。
ゲームのライムはただの人間だからだと、悪魔の紋様がなくなった手の甲を見つめていた。

「私とカイ様のキューピットになりなさい!」

「無理無理無理無理!!」

「なんでよ!」

「だって、人の恋をコントロール出来ないし…俺は嫌だ」

たとえやらなきゃ殺すと言われても、絶対にやらない。
不満そうな顔をしたサクヤは「じゃあ何ならやれんのよ」と言っていた。
恋愛関連はやらないし、危ない事もしたくない……俺が出来る事なんて何もない。

そんな事より、宮殿を探したいのが俺の本音だ。

今は悪魔の子ではないし、ローベルト卿が俺を必要としているわけではない。
だから俺が使えないと分かったら、すぐに追い出してくれるかもしれない。

ゲームのライムも、家族に使えないと言われながらも必死に悪い事をして家に居ようとしていた。
今回の失敗で、カイウスと仲良くなったが使い物にならないなら同じだろう。

サクヤの言葉を待っていた、一言…一言だけ言ってくれたらそれでいいんだ。
お願いだ、サクヤ!

「だから言ったのよ、私に兄は必要ないって…」

「……サクヤ」

「あのメイドをカイ様から引き剥がして、それが出来ないならこの家にいらないわ」

「出来ない…俺はサクヤの役に立てない」

「あっそ…なら…」

サクヤは椅子から立ち上がって、俺の目の前まで来た。
口を開いた瞬間、勢いよく部屋のドアが開かれた。
タイミングよく邪魔が入るのはお約束みたいだけど、今はそのお約束はいらない。

使用人の一人が息を切らして慌てた様子で入ってきた。

言葉を遮られたからか、サクヤの怒りは頂点に達していた。
掴みかかる勢いで使用人のところに歩いていった。

「何よ!何の用!?」

「も、申し訳ございません!でも、早くサクヤ様に知らせないとと思いまして」

使用人はサクヤに耳打ちをして、サクヤの表情が変わった。
さっきは美人顔も真っ青なほど鬼のような顔をしていた。
でも、今はその顔が嘘のように穏やかに感じた。

サクヤにとって悪くない話なのかもしれない、今のサクヤはカイウス関連の話くらいしか良い話はなさそうだ。
なにかあったのか、聞きたいが聞いたら変な命令をされるかもしれないから俺は無能のフリをし続けた。

使用人は下がっていき、サクヤは俺達を部屋から追い出した。
状況が分からない兵士は呆然としていたが、俺は内心嬉しかった。

これで自由の身だと、サクヤの気が変わらないうちに屋敷を出た。
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