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取り戻すために
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部屋を出て、神がいる場所まで急いだ。
タイミングよくカイウスが出てきて、ホッとしたのも束の間…カイウスの姿に驚いて頭で考えるより先に布を被せた。
もし少しでも遅れていたら誰かにカイウスの姿を見られるところだった。
そのままカイウスを連れて走って逃げた。
正直カイウスがいなければ逃げる事も出来なかったと思う。
それほど、兵士達に追い込まれていて足の怪我も同時に痛みが走った。
それは自分でした怪我とはいえ、走り方がちょっと不自然だった。
当然、カイウスに気付かれてお姫様抱っこされている状態となった。
カイウスの視線が痛い、あれはちょっと強引だったなと俺でも思う。
「ライム」
「こ、これはガラスを割る時に負った怪我で…ごめんなさい」
「いや、俺が一人にしたんだ…謝るのは俺の方だ」
そう言ったカイウスは俺の額と額を合わせていた。
カイウスが謝る事じゃない、俺が自分でした事だし…
誰も悪くはない、こうしてお互い無事だったんだし良かったよ。
裏庭にあるベンチに降ろされて、カイウスが俺の前で跪く。
精霊の宮殿は神によって塞がれたから、どうにか中に入ろうと考える。
その間にカイウスに、ズボンを半分切られて傷口を手当てしてもらった。
カイウスに撫でられるところが、とても温かくなる。
「もう一度宮殿に入れるか試してみる」
「俺も行く」
「ライム、危ない」
「宮殿は俺の帰る場所でもあるんだ、お願い…行かせて」
カイウス一人に任せっぱなしには絶対にしたくない。
俺は何度も宮殿や精霊達に助けられて、今を生きている。
だから、俺も取り戻したい気持ちは一緒だ…足を引っ張らないように頑張るから…
カイウスの隣で、俺も一緒に戦いたい…その気持ちに迷いも偽りもない。
カイウスは俺をジッと見つめていて、手のひらに口付けをしていた。
くすぐったくて、心臓がドキドキとうるさく高鳴る。
「無茶はしない、それだけは守ってくれ」
「うん、分かった…カイウスもだからね!」
「あぁ…」
カイウスはそう微笑んで、約束の印として軽い口付けをした。
大丈夫、俺達がいるんだ…誰にも負けたりはしない。
対比の神の子と悪魔の子だけど、この世で一番強い絆で結ばれている。
神だろうと何だろうと、絶対に負けたりしない!
手当てが終わり、カイウスに支えられて立ち上がる。
手をかざすと、精霊の宮殿の入り口が本来現れる筈だ。
でも、目の前にあるのは真っ黒な何もないもの。
禍々しくて、入るのを躊躇いそうで体が震える。
でも、カイウスの方を見るとカイウスも俺の方を見た。
手を握りしめて、宮殿である筈の場所に一歩一歩と踏み出した。
生暖かい風が吹いていて、耳に付けたイヤーカフに触れた。
永遠と続きそうな暗闇の中、しっかりとお互いを確かめるために握りしめた。
「うわっ!」
「ライム!」
足がなにかに引っ張られて、驚いてもがくとカイウスに引っ張られた。
暗くて下がよく見えないが、頭が痛くなるほどの悲痛な叫び声が聞こえた。
「痛い」「怖い」「助けて」「憎い、憎い、憎い」
此処は精霊の宮殿の筈だ、じゃあこの声は精霊?
いろんな感情が流れ込んできて、ポロポロと涙が溢れてくる。
痛かったんだ、苦しかったんだ、誰にも助けてもらえず…ずっとこんな暗いところにいたんだ。
針で刺されたような小さな痛みが手の甲の悪魔の紋様に感じた。
俺には苦しんでいる精霊をどうにかする事が出来ない、どうしよう…どうすれば…
叫び声に混じって、冷静な別の声が耳に届いた。
「ライム、声に呑まれるな…これは精霊の声なんかじゃない」
「……えっ?」
「俺には何も聞こえない」
カイウスはそう言って、俺を落ち着かせるために背中を撫でていた。
カイウスにはこの叫び声が聞こえないのか?俺に訴えかけているのに?
確かにそれは変だ、助けを求めるなら普通は精霊の王であるカイウスにだ。
なのにカイウスじゃなくて、俺にだけ言うのは可笑しい。
助けてくれるとしたら俺ではなくカイウスの筈だから…
カイウスは俺の状態が可笑しくて、ぶつぶつと「精霊の声が…」とか呟いていたから気付いてくれた。
半分呑まれ掛けていて、意識を保とうと気を引き締めた。
やがて暗い空間に一筋の光が差し込んできて、眩い光に目を細めた。
次に見たのは、俺の知っている精霊の宮殿ではなかった。
そこは見慣れた広場で、俺はボーッと突っ立っていた。
周りを見渡しても俺以外の人がいなくて、カイウスですらいなかった。
「カイウス!何処に行ったんだ!カイウス!」
はぐれちゃった?いや、ずっと手を握っていたからそんな事はない筈だ。
動揺するが、こういう時こそ冷静にならないといけない。
深呼吸していると、何処からかバタバタと走る足音が聞こえた。
音のする方を見て、びっくりして何処かに隠れようと周りを見渡した。
しかし、広場に隠れるようなところなんてなくてベンチの後ろぐらいしかない。
当然丸見えのようなもので、すぐに囲まれてしまった。
兵士二人と真ん中にいる妹のサクヤは俺を見下ろしていた。
あんな屋敷で騒ぎを起こしていたのにサクヤ達はなんで捕まえに来なかったのか不思議だった。
いなかったのか、面倒だったのかと思っていたけど違ったのか?
「さ、サクヤ…俺は戻らないからな!」
「何言ってるの?今から例の作戦を実行するのよ」
「………へ?」
サクヤが言っている意味が分からず、頭が付いていかない。
作戦って何の話?それよりも、俺が逃げた事を責められるのかと思っていた。
サクヤ自身は俺なんてどうでもいいんだろうけど、ローベルト卿はそうではないから鎧の男や他の騎士達があんなに追いかけてきたと思う。
悪魔を召喚したと思い込んでいるから、俺を利用しようとしている。
本当はカイウスなのに…俺の力は悪に使えるような力じゃないのにな。
使い方を間違えなければ…
そうだ、カイウスを探さないと…こんな事してる場合じゃない!
立ち上がって、行こうとしたら襟を掴まれた。
首が締まり、顔を引きつらせて離してほしくて襟を掴む兵士の手を握った。
「またアンタのわがままに付き合ってられないのよ、せっかくあの女を捕らえたというのに」
「……?」
「お父様に認めてほしいならちゃんと仕事しなさい、カイの寵愛を受けるなんて…メイド如きが許せない」
サクヤが恨みを込めてブツブツと言っていて、自分の髪に触れている。
タイミングよくカイウスが出てきて、ホッとしたのも束の間…カイウスの姿に驚いて頭で考えるより先に布を被せた。
もし少しでも遅れていたら誰かにカイウスの姿を見られるところだった。
そのままカイウスを連れて走って逃げた。
正直カイウスがいなければ逃げる事も出来なかったと思う。
それほど、兵士達に追い込まれていて足の怪我も同時に痛みが走った。
それは自分でした怪我とはいえ、走り方がちょっと不自然だった。
当然、カイウスに気付かれてお姫様抱っこされている状態となった。
カイウスの視線が痛い、あれはちょっと強引だったなと俺でも思う。
「ライム」
「こ、これはガラスを割る時に負った怪我で…ごめんなさい」
「いや、俺が一人にしたんだ…謝るのは俺の方だ」
そう言ったカイウスは俺の額と額を合わせていた。
カイウスが謝る事じゃない、俺が自分でした事だし…
誰も悪くはない、こうしてお互い無事だったんだし良かったよ。
裏庭にあるベンチに降ろされて、カイウスが俺の前で跪く。
精霊の宮殿は神によって塞がれたから、どうにか中に入ろうと考える。
その間にカイウスに、ズボンを半分切られて傷口を手当てしてもらった。
カイウスに撫でられるところが、とても温かくなる。
「もう一度宮殿に入れるか試してみる」
「俺も行く」
「ライム、危ない」
「宮殿は俺の帰る場所でもあるんだ、お願い…行かせて」
カイウス一人に任せっぱなしには絶対にしたくない。
俺は何度も宮殿や精霊達に助けられて、今を生きている。
だから、俺も取り戻したい気持ちは一緒だ…足を引っ張らないように頑張るから…
カイウスの隣で、俺も一緒に戦いたい…その気持ちに迷いも偽りもない。
カイウスは俺をジッと見つめていて、手のひらに口付けをしていた。
くすぐったくて、心臓がドキドキとうるさく高鳴る。
「無茶はしない、それだけは守ってくれ」
「うん、分かった…カイウスもだからね!」
「あぁ…」
カイウスはそう微笑んで、約束の印として軽い口付けをした。
大丈夫、俺達がいるんだ…誰にも負けたりはしない。
対比の神の子と悪魔の子だけど、この世で一番強い絆で結ばれている。
神だろうと何だろうと、絶対に負けたりしない!
手当てが終わり、カイウスに支えられて立ち上がる。
手をかざすと、精霊の宮殿の入り口が本来現れる筈だ。
でも、目の前にあるのは真っ黒な何もないもの。
禍々しくて、入るのを躊躇いそうで体が震える。
でも、カイウスの方を見るとカイウスも俺の方を見た。
手を握りしめて、宮殿である筈の場所に一歩一歩と踏み出した。
生暖かい風が吹いていて、耳に付けたイヤーカフに触れた。
永遠と続きそうな暗闇の中、しっかりとお互いを確かめるために握りしめた。
「うわっ!」
「ライム!」
足がなにかに引っ張られて、驚いてもがくとカイウスに引っ張られた。
暗くて下がよく見えないが、頭が痛くなるほどの悲痛な叫び声が聞こえた。
「痛い」「怖い」「助けて」「憎い、憎い、憎い」
此処は精霊の宮殿の筈だ、じゃあこの声は精霊?
いろんな感情が流れ込んできて、ポロポロと涙が溢れてくる。
痛かったんだ、苦しかったんだ、誰にも助けてもらえず…ずっとこんな暗いところにいたんだ。
針で刺されたような小さな痛みが手の甲の悪魔の紋様に感じた。
俺には苦しんでいる精霊をどうにかする事が出来ない、どうしよう…どうすれば…
叫び声に混じって、冷静な別の声が耳に届いた。
「ライム、声に呑まれるな…これは精霊の声なんかじゃない」
「……えっ?」
「俺には何も聞こえない」
カイウスはそう言って、俺を落ち着かせるために背中を撫でていた。
カイウスにはこの叫び声が聞こえないのか?俺に訴えかけているのに?
確かにそれは変だ、助けを求めるなら普通は精霊の王であるカイウスにだ。
なのにカイウスじゃなくて、俺にだけ言うのは可笑しい。
助けてくれるとしたら俺ではなくカイウスの筈だから…
カイウスは俺の状態が可笑しくて、ぶつぶつと「精霊の声が…」とか呟いていたから気付いてくれた。
半分呑まれ掛けていて、意識を保とうと気を引き締めた。
やがて暗い空間に一筋の光が差し込んできて、眩い光に目を細めた。
次に見たのは、俺の知っている精霊の宮殿ではなかった。
そこは見慣れた広場で、俺はボーッと突っ立っていた。
周りを見渡しても俺以外の人がいなくて、カイウスですらいなかった。
「カイウス!何処に行ったんだ!カイウス!」
はぐれちゃった?いや、ずっと手を握っていたからそんな事はない筈だ。
動揺するが、こういう時こそ冷静にならないといけない。
深呼吸していると、何処からかバタバタと走る足音が聞こえた。
音のする方を見て、びっくりして何処かに隠れようと周りを見渡した。
しかし、広場に隠れるようなところなんてなくてベンチの後ろぐらいしかない。
当然丸見えのようなもので、すぐに囲まれてしまった。
兵士二人と真ん中にいる妹のサクヤは俺を見下ろしていた。
あんな屋敷で騒ぎを起こしていたのにサクヤ達はなんで捕まえに来なかったのか不思議だった。
いなかったのか、面倒だったのかと思っていたけど違ったのか?
「さ、サクヤ…俺は戻らないからな!」
「何言ってるの?今から例の作戦を実行するのよ」
「………へ?」
サクヤが言っている意味が分からず、頭が付いていかない。
作戦って何の話?それよりも、俺が逃げた事を責められるのかと思っていた。
サクヤ自身は俺なんてどうでもいいんだろうけど、ローベルト卿はそうではないから鎧の男や他の騎士達があんなに追いかけてきたと思う。
悪魔を召喚したと思い込んでいるから、俺を利用しようとしている。
本当はカイウスなのに…俺の力は悪に使えるような力じゃないのにな。
使い方を間違えなければ…
そうだ、カイウスを探さないと…こんな事してる場合じゃない!
立ち上がって、行こうとしたら襟を掴まれた。
首が締まり、顔を引きつらせて離してほしくて襟を掴む兵士の手を握った。
「またアンタのわがままに付き合ってられないのよ、せっかくあの女を捕らえたというのに」
「……?」
「お父様に認めてほしいならちゃんと仕事しなさい、カイの寵愛を受けるなんて…メイド如きが許せない」
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